ここだけレグルスに姉がいて幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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3話 私もまだ子供なんだ、だからしょうがないよね

魔法を探求するのは、楽しい。魔法と魔法を組み合わせて、新しいものを作り出せた時などは私でも感動するものだ。

何より、森は静かで人の目や雑音が気にならないことが良かった。

 

エルフは長寿だから、フリーレンのように魔法を収集して国々を周るのもいいなと思った。

 

両親は……父は、稼ぎがあまり多い方ではなく、酒に溺れては、こちらにぐちぐちと悪意を向けてくることがあったし、母は、やはり不貞を疑われてから精神が不安定になってしまったのだろうか。愚痴、不平、不満、憤りをぶつけてくることがあった。

 

どちらからも時折強い畏怖の念や後悔の念を、言葉や態度で感じる。

 

 

それでも。

 

ここまで育ててくれただけでも感謝するべきだ。

捨てたり、殺さずに育ててくれただけでも、本当に感謝している。

 

もうすこし大きくなったら、村を出ていこうと思う。

 

村を出て行くのは、もちろん魔法の収集もあるが、それ以上に弟達がもっと大きくなった時に、万が一私という存在が認知されてしまって、異物であると感じるようになったり、私が原因でいじめられることが嫌だったからだ。

 

エルフの姉が居ると認識されるより先に家を出れば良い。

 

それに、そうした方が弟たちに無駄な火の粉は降りかからないだろう。

 

見たことのないものは、居ないも同然だから。

 

私は居るはずのない姉として生きていけば良い。

 

独り立ちをする為に、まずは一人暮らしを始めることにした。

 

森の近くの、人が寄り付かない場所に建っている誰も住まなくなったボロボロの小さな小屋を利用して、そこに何年か住んで自立してから外に出て国を周ってみようと思うと両親に告げると、ほっとしたような、苦しそうな表情をして、ありがとう、ありがとう、本当にごめんね、と泣きながら小さく呟かれた。

 

出て行く時には、少ないけれど、と幾らかのお金を持たせてくれた。

 

まだまだ幼いといえる年齢である、私だけでの小屋生活はなかなか大変だった。

なにより自炊が難しい。自炊が。

 

転生する前も自炊が苦手だったことを思い出した。

 

こればっかりは自分が上手く料理を作るイメージができない。だから材料を用意しても、完成した料理を出す魔法に落とし込めない。

しかたがない、森で狩ってきた獲物をどうにかこうにか捌き、魔法で丸焼きにする。木の実や果物を摘んできて、保存用に乾燥させたり、瓶詰めにしたり。

その日に食べる分とで分けて……。

 

あとは生活の殆どを魔法の探求、鍛錬に時間を割いた。魔力は、あぁ、マナと言ったか。

 

魔力はフリーレンの世界では基本的に鍛錬を積み重ねた年月に比例して増加していく。

こちらではゲートと呼ばれる器官が保有等できるマナ量を左右する。

 

私は1000年以上生きた大魔法使い、フリーレンの体と能力を受け継いで産まれてきた。

だからその能力が変換されて、ゲートは強大。絶大なマナを保有し、吸収や放出等の操作をできる力を秘めている。

 

チートゲーだこれ。

 

産まれおちた瞬間から隠さなければ、と思った。

 

だから産まれた時から、マナ制限の訓練をしてきた。

 

流石に最初はずっと制限をしているとかなり疲れた。

 

マナの総量差で、弱い者に擬態して、魔獣や人を欺くのだ。魔法使いの風上にも置けない、卑怯者のやることだ。でもそれでもいい。

 

波風立てずに生きていきたかった。

 

起きて、ご飯を食べて、森に魔法の練習をしに出かけ、夕方ごろに食料を確保して、またご飯を食べて、川で水浴びをして眠る。

 

新しい魔法を思いついたら魔導書に記録していく。

 

毎日、毎日これの繰り返し。

 

服は、着られれば良いやと捨てられていた手触りの悪いゴワゴワした生地の布を白い簡素なワンピースタイプの物に変えて何着か作り着回した。

 

商人が時折村に来るので、村から出た後を見計らい、フードを深く被り追いかけて困りごとを解決したり、物々交換をして、お金や足りないものを補充する。

 

 

 

そんな生活をして、何年たったか分からないある日の夕暮れのことだった。

 

 

魔法の練習が一区切りついたのでそろそろ小屋に帰ろうと森から出ることにし、歩き出した。そうやって歩いていると、遠くから何か言い争う声が聞こえてきた。

 

 

巻き込まれる可能性があるのはめんどくさいなぁ、と考えて別の道から帰ろうかと思い、踵を返そうとした。

 

しかし、はたと立ち止まる。

 

 

それは、はっきりと聞こえた。

 

「お前の姉ちゃんはバケモノだ、父さんと母さんが言ってたぞ!!人間からエルフが産まれるなんて聞いたことがないって!気味が悪いって!不吉だって!恐ろしいバケモノだって!お前も、頭がいいふりをして、俺らを見下すことばかり言いやがって、流石はあのバケモノの弟だな!」

 

「あのさぁ。毎回毎回、バケモノ、バケモノって馬鹿の一つ覚えみたいに騒がないでくれないかなぁ?悪い頭が余計に悪く見えるよ、それ。

そもそも、僕の家族に姉は居ないと何度言ったら分かるんだ?じゃあ、君たちは僕の姉だっていうそのエルフを見た事があるのかい?ないだろう?僕はこの目で見たものなら信じるが、そうではないなら話は別だ。それなのに揃いも揃ってやれバケモノだのなんだのと喚き散らして恥ずかしくないのかな。おおかた、親から言われた事をなんだって信じる頭の悪いお子さまなんだろうね。あとねぇ、見下されたとか言っているけれど、本当のことを言って何が悪いんだい?僕が思った事を、考えた事を言うのは僕の権利で、それは守られるべき主張で、君たちがそれを聴くのは義務だ。僕は僕としては正しい意見を提示しているだけなのに、勝手に見下されたと思って騒いでいるのは君たちの方じゃないか。まったく、勘弁してほしいところだね」

 

レグルスだ。この言い方、見えていないけれど絶対にレグルスだ。

 

それより、相手の言っている内容が全く気に食わなかった。

 

私のことをいくら言われたって何とも思わない。

しかし、家族のこととなると話は別だ。

 

家族が何か言われる筋合いはない。

 

まあレグルスのあの性格も一癖あると思うが、人のことを見下す、というのは、それはそちらがずっと私に、こちらの家族にしてきたことではないか。

 

だから村人とも、家族とも関わりを無くして、おとなしく隠れるように生活をしていたというのに、まだバケモノ呼ばわりされていたのかと驚いた。

 

閉鎖的な空間はダメだね、と考える。

 

 

何年も見かけなくなった者、それも口に出すのも悍ましいバケモノだと忌避していた者のことを、わざわざ口に出す人間なんて居ないと思っていたが、甘かった。

 

私が一方的に距離をとっても、村人たちは弟たちに私のことを、こう言う形で教えてしまうのか。迂闊だった。

 

姿と気配を一時的に消す魔法をかけて家族の様子は時折こっそりと確認していた。

 

誰かが具合が悪そうな時は治癒魔法をかけたり、食料に困っていそうな時は保存食からいくつか分けて玄関前に中身の内容を書き置きして一緒に置いてきたりしていた。ここまで私を、疎ましく思いながらも愛情をもって育ててくれた家族への私なりの勝手な恩返しだ。

 

さて、どうも我が弟、レグルスは、世界を達観していて、世界に怒っていて、見下していて、安心できる場所がまるで無いようないつでも張り詰めたような感覚をもっているようだった。

 

 

私は人のことなんてどうでもいいが、大切な弟が目と鼻の先で、いじめられたとなると話は別だ。

 

気に食わなかった。

 

私もまだ子供だったのだ。

 

あと先考えず、感情のままにぎゃんぎゃんと言っているレグルスとクソガキたちの間に空から、ふわり、とん、と着地する。

 

瞬間、エルフだ!本当に居た!!バケモノだ!と逃げ出す子供たちの背中に向かって直近の記憶を消し飛ばず魔法を撃つ。(この魔法はすっ転んだ時に記憶が飛んだことからイメージを得て作った。実にくだらない)これでクソガキどもは村に戻るまで自分が何をしていたのかも分からず駆けていくだろう。

 

そうして残ったのは、私とレグルスだけだった。

 

こうしてきちんと顔を合わせるのは初めてだった。

 

彼は、もうすでに白髪だった。

 

こんなに幼いのに、これまでずっと、彼なりの、ではあるが強いストレスにさらされてきたのかと思う。

 

レグルスの目線に合わせてしゃがみこみ、話出す。

 

「初めまして、だね。私の家名はコルニアス、君の実の姉だよ。種族はあいつらが言う様に、エルフだ。突然だけれど、よろしくね。それにしてもあいつら、ずいぶんと口だけだね。私のことはどうだっていいんだ。でも、レグルス、君まで言われる筋合いはない。君は世界を達観しているようだ、それが彼らには見下されているように感じたんだろうね。知能の差があると会話が通じないとはいうから仕方ないかもしれないけれど、でもそれって君の考え方への、ひいては君らしい生き方に対する権利の侵害じゃないかなぁ」とひといきに言って、握手のために手を差し出した。

 

 

 

レグルスは珍しくポカンとした顔をして静止した。

 

 

村人たちが言うには、どうも僕ら兄弟には姉が居るらしい。

 

しかも人間では無くエルフの。普通に考えてあり得ない話だと鼻で笑ってきた。 

 

バケモノの家族だと陰で散々言われ続けてきた。両親に姉が居るのか聞いても歯切れが悪い答えしか返ってこなかった。

 

レグルスは、自分の目で見ていない話を鵜呑みにするような馬鹿では無かったし、愚図な家族や馬鹿な村人たちを相手にするのも貴重な時間の無駄になると気にしてこなかった。

 

しかし、どうだろう。

 

蓋を開けてみれば目の前には、確かに姉が居た。

 

エルフの、姉が居た。

 

伝えてもいないこちらの名前や家名を知っており、揃いの目の色、癖っ毛を見れば、なるほど、血が繋がっていると言えるのも分かった。

そもそも、家族でなければ態々先程の言い争いに割って入ってくる理由がない。

 

そうでなければ、そいつは姉を自称するただの狂人だ。

 

落ち着きを取り戻したレグルスはいつもの調子で言う。

 

「僕はレグルス。レグルス・コルニアス。よろしく。本当に姉が居るとは思わなかったよ。驚いている。でも、僕は姉さんがエルフだからってあいつらみたいにとやかく言わない。僕の考え方を尊重してくれている事には感謝している。でも、口論の途中で部外者が勝手に入ってくるのはどうかなぁ?部外者っていっても、話の始まりは姉さんへの罵倒からだし、厳密に言えば関係者でもあるんだけどさ。あれじゃ、僕が何も言い返せないから姉さんが来たみたいになってなんだか僕が腰抜けみたいじゃないか。僕はあの後言い返さなければいけないことが沢山あったのに、それを軽視して突然割って入ってきて、その機会を奪ったって事、忘れないでほしいな」

 

ひとしきり言った後、そのまま村へと走って行ってしまった。

 

握手、できなかったなぁ、と思いながら、ぐっと伸びをして、また魔法の探求に勤しむ生活に戻っていった。




レグルス構文は難しいねぇ。
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