ここだけレグルスに姉がいて幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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4話 ちいレグかわいいね

レグルスにとって、この時まで、この世のありとあらゆるものがストレスだった。

 

いや、あの姉との出会いの後もストレスにまみれていた。

 

稼ぎの悪いくせに酒浸りでたまに土産を買ってくる父親なんて、クソだ。死ね。

 

毎日毎日不平不満を垂れるばかりの上に、苦労させてごめんねなんて当たり前のこと繰り返す母親なんて、クソだ。死ね。

 

僕の取り分にまで虎視眈々と目を光らせているけど、僕が皿をひっくり返したときに自分の分を分けてくれるような卑しい兄弟たちは、クソだ。死ね。

 

優しくするってことは僕を低く見てるってことだろうが、下に見てるってことだろうが。

 

他人を見下す奴なんて、クソで、他人どころか、家族を見下すような奴らは人間以下だって蔑まれて当然だろうが。

 

そんな中現れた姉は村の奴らに人間未満のバケモノだと罵られ、蔑まれ、見下され、疎まれてきたのだ。

家族にすら居ないものとして扱われていたってことは、誰よりもずっとずっと見下されてきたってことだ。

 

それでも、僕が本当に偶然知ることになるまで我関せずと馬鹿どもに興味もなく、存在を消してひっそりと暮らしてきた。

 

あの時、僕と馬鹿どもの間に降り立ち、初めて僕と話した時。

 

僕に対して彼女から憐れみを感じなかった。何も感じなかった。

何も感じなかったんだ。

 

それでもかけてきた言葉は優しく、僕を尊重してくれた。

 

僕を見下さず、憐れまない存在。それに普段なら優しい言葉なんて、優しい眼差しなんて嫌悪感を催すはずのものでしかないのに、なぜかほんのちょっと心地よかったのだ。

 

おかしな感覚だった。

誰かに優しくされるなんて、僕を下に見て、見下しているも同然。

 

それは変わらない。

 

でも、冷たく凪いだ中に隠れる、初めて見下されていると感じなかった優しさに、僕は少しだけ興味を惹かれた。

 

 

 

それから何日かして、ボロ小屋のドアがノックされた。

驚いた、誰かがここを訪れるなんて初めてだった。

 

おおかた、ここのことを知って何か文句を言いにきた村人か、旅の商人か何かかなと思ってしばらく考えてからドアを開けた。

 

 

 

びゅうびゅうと寒い風が家の中に入ってきて、一瞬開けなければよかったな、と思った。

 

雪の降る中見えたのは、思ったよりも小さな人影で、目線を下げるとそこには不機嫌そうなレグルスが居た。

 

「ノックしてから扉が開くまでずいぶん待たせてくれたね。姉さんは誰に対してもそう緩慢な対応をするのかい?せっかく弟がこんな村の端の辺鄙なところにわざわざ足を運んで顔を見せに来てあげたっていうのに、その対応はどうなのかなぁ?しかも、ドアを開けて僕を確認したのに家の中に招き入れることもなく玄関先に放置するのもいかがなものかと思うよ。風邪でもひいたらどうしてくれるんだい?あぁ、得意だっていう魔法で治して、恩着せがましい態度をとるつもり?そうでないなら早く家の中に入れて欲しいところだね」

 

ごめん、と謝りながらすぐに家の中に招き入れた。

 

玄関先で雪を払いながらよく喋ること、よく喋ること。

 

「素直に謝ることができるというのは、とてもいいことだと思うよ。僕も、姉さんの家に行きますとあらかじめ言っていたわけでもないし、そこはおあいこだね。それで、こんな寒い中、健気に会いにきた弟に、何か出してくれても良いと思うんだけど、というか客人がきたらお茶やお茶菓子を少しでも振る舞おうとする気持ちが大切だと思うんだけどさぁ。お茶菓子はこの時期だからね、乾燥させた果物とかなんかでもあれば上等だと思うよ。弟の為に、姉さんがどれくらい頑張ってくれるのか、僕は座って待っているとしよう」

 

暖炉の炎を魔法で少し強くして、鼻先や耳が赤くなった弟が風邪をひかないように、弟の周囲の空間が温かかくなるよう魔法をかける。

 

まだあって2回目なのに、ぐいぐいくるなぁと心の中で苦笑しつつ、「悪かったよ、言い訳になってしまうけれど、ここを訪ねてくる人なんて今まで誰もいなかったからね。何か文句を言いにきた村人か、商人かと思ったんだ。そうしたら、弟が来てくれたからね、びっくりしてしまって。思わず固まってしまったっていう訳だよ。今、お茶とお茶菓子を用意するから、一緒に食べてもいいかな?」とレグルスの方を見ると、少し顔をムッとさせながら(これはきっと少し照れているんだろうな)「いいとも。僕は寛大だからね。そうなってしまったことを許そう。それに、一緒にお茶をする為にわざわざ来たんだし、そうするのが良い」とおとなしく椅子に座って待ち始めた。

 

どうやら両親を問い詰めて、ここのことを吐かせたらしい。

 

 

パチパチと暖炉の薪が跳ねる音がする。

 

紅茶の淹れ方はだいぶ上手くなった。

魔法以外の娯楽が紅茶と料理くらいしかなかったからとも言える。

 

最初は頑張れば食べられないこともない、というレベルだった料理も上達し、いまはお菓子作りさえできるようになった。

 

ただでさえ年中貧困の村で冬の時期は、甘いものなど特に手に入りにくい。

 

だから、レグルスは長期保存がきいて比較的に手に入りやすいドライフルーツをお茶菓子にあげたのだろう。

 

気難しいところのある弟の気遣いに、あっ、これがツンデレってやつか……と思う。

 

実のところ、作物を上手に育成する魔法や肥料で作物をぐんと大きくする魔法、食材を長期保存させる魔法など、実用的な細々とした魔法を習得していたり、計画的に保存食を作っておいた為、あまり冬場の食事情には困っていない。

 

魔法はイメージの世界だ。

 

イメージさえできればなんでもできる。

 

慣れれば便利なものだ。

 

ちょうど、昨日の夜にクッキーを何種類か作っておいたのだ。

 

特にベリーのジャムが乗っているクッキーはとても美味しく、何度か試作を重ねて作った自信作だ。

 

紅茶とお茶菓子の用意ができたので、テーブルへと持っていく。

 

 

あのレグルスが驚いた表情をみせた。

 

 

「ふぅん?へえ。

これ、なかなかすごいじゃないか。姉さんが作ったの?魔法魔法ってなんでも魔法に頼るのは魔法をうまく使えない人への配慮が少しかけているんじゃないかとおもっていたけれど、少しは見直したよ。味もなかなか美味しいし。まあ、僕はもう少し甘さが控えめの方が好みだから次からはそうしてほしいところだね」

 

 

憎まれ口を叩きつつも、クッキーを食べる手を止めないあたり、なかなか気に入ってくれたようだ。

 

「分かった。次からはそうするよ。ところで、こんなところまで会いに来てくれてありがとう。

何か聞きたいことや話したいことでもあったのかな?もちろん、私はレグルスの話なら何だって聞きたいよ。

聞きたいことでなくてもいいよ、最近どう過ごしているとか、そんな他愛のない会話でもうれしいんだ。何せ誰とも喋らない期間が長くてね、もし失礼なことを言ったりしたらごめんね」

 

レグルスはクッキーを食べる手を止めて、それからしばらく無言だった。

 

何か気に触ることを言ってしまったのかと、心配になってきた時に、ふと思い立った。

 

 

「もしかして、もしかしてだけれど、レグルス。特に何の気無しに会いにきてくれたのかな?そうだとしたらとてもうれしい、かわいい弟が、さらに愛おしく思えるよ」

 

 

「あの、さぁ。言いたいことは沢山あるんだけどまず、かわいい、とか勝手な解釈の押し付けでしかない言葉で僕を縛りつけようって気?しかもかわいいって言葉だけどさぁ、僕がまだ子供だからっていうのを差し引いても気安く男に向ける言葉じゃ無いんじゃ無いかなぁ?かわいいって、自分が上の立場じゃ無いと言わないよね?守ってあげなくちゃいけないから、とか、弱そうだから、かわいいとか、そんな風に上から見た解釈だよね?僕は心が広いからね、一度目は許すよ。だけどもし何度も言うようなら、それは僕の、僕に対する侮辱的な言葉と受け取るよ。僕を弱者だと縛り付けて、僕が自由に思考し、行動し、発言する機会を奪うってことになる。それは、僕らしく生きる権利を侵害しているってことになるから、勘違いしないでほしいな。あとさぁ、僕の考えを勝手に決めつけないでくれるかなぁ。まぁ実際、何となく気になって来たってところはあっているけれど、それでも僕のことを分かった風な言い方で言われるのは良い気分がしないな。僕の考えは僕のものであって、僕が言う権利があるんだ。そこのところ、考えて欲しいものだね」

 

なんとまぁ、図星だったのか。

 

初対面のあの感じから、何となく気になって来てくれるほど、好感度は高くなかったと思うけど、それでもうれしい。

 

それから、しばらく村の現状や(村人への愚痴ばかりだった)家族の話(こちらも不平不満ばかりだった)を聞いて、3杯目のおかわりの紅茶を飲み終えたあたりで、

「さて、そろそろ僕は帰るとするよ。姉さんのところに行ってたとバレたら、村の馬鹿どもにあぁだのこうだのぐちぐちと言われかねないしね。まぁ?僕の気が向いたらまた来てあげてもいいとも。それじゃあ、ごちそうさま」

 

そう言ってお茶会は終わり、レグルスは帰って行った。




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