機動戦士ガンダムSEED DESTINY REBIRTH 運命の再生――運命に抗う少年と、崩れゆく世界―― 作:屠龍
今回はシンが主人公です。
ちょっと主人公補正が強いですが、そこはお目こぼしください。
シンちゃんが救われる運命があってもよくないですか?
この世界は前作【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。
の続きです。
ステラとマユが生き残ってます。
【第一章開幕】第一話 静寂の楽園
第一話 静寂の楽園
─もしも、ステラが死ななかったら。
ブルーコスモスの施設から救われた少女ステラ。
彼女と共に未来を掴んだシン・アスカ。
ニコルも、マユも生きている。
しかし平和は長く続かない。
ナチュラルとコーディネイターの対立は再び動き始める。
かつて世界は憎しみに引き裂かれた。
戦いと別れの果てに掴んだ平和は、まだ脆く小さな灯火に過ぎない。
だが今――
静寂の楽園で微笑む少年と少女がいる。
失われた命が戻り、
消えた未来が静かに息を吹き返した。
これは“DESTINY”が辿らなかったもう一つの未来。
機動戦士ガンダムSEED DESTINY REBIRTH
シン・アスカが“守る側”として戦う物語。
◇◇◇
ハーバーコロニー外縁軌道では、ザフト巡回艦が警戒態勢に入っていた。
「タリア艦長、ミラージュ・コロイド反応に異常を確認」
通信士候補生メイリン・ホークの声が艦橋に響く。
「位置は?」
「ハーバーコロニー外縁……数は不明」
レーダーには何も映らない。
だが確かに“何か”がいる。
静かな宇宙の闇の中で、
戦いの影がゆっくりと目を覚まそうとしていた。
――しかし、そのことをまだ誰も知らない。
◇◇◇
朝のハーバーコロニーは、いつも柔らかな光に包まれていた。
人工の太陽が昇り、透明なドームの天井から光が差し込む。
空気は穏やかで、水面を渡る風にはわずかに花の香りが混ざっていた。
地球とプラント、二つの世界から持ち寄られた花々が咲き誇っていた。
穏やかな風が草原を撫で、まるで世界そのものが息をしているようだった。
かつて世界を揺るがした戦争の影は、ここではほとんど感じられない。
このコロニーには、ブルーコスモスの施設から救出された子供たちが多く暮らしている。
キラとラクスは今地球で、同じように戦争孤児の救出任務にあたっていた。
もし二人がここにいたなら、きっと静かな歌声がこの風に混ざっていただろう。
湖畔の道を、二つの影がゆっくりと歩いている。
黒髪の青年、シン・アスカ。
もうひとりは金色の髪を風になびかせる少女、ステラ・ルーシェ。
ステラと手を繋いで歩くシンの表情は穏やかで、どこか誇らしげだった。
「ねぇ、シン。今日は湖、きらきらしてる」
ステラが嬉しそうに指を指した。
湖面では人工太陽の光が反射し、小さな虹を作っている。
草原には穏やかな風が吹き、野原の花々が揺れていた。
「本当だな。風も気持ちいい」
シンは笑い、ステラの髪をそっと撫でる。
その仕草にステラは少し照れくさそうに頬を赤らめ、シンの手を握り返した。
その瞬間、ステラの笑顔が朝の光よりも眩しく見えた。
「……やっぱり、ステラの笑顔が一番だな」
「も、もう。シンったら恥ずかしい事をさらっと言うの禁止」
「あはは、ごめんごめん。でも本当だから」
湖畔の広場では、子供たちが走り回っている。
彼らは、かつてブルーコスモスの実験施設から救出された子供たちだ。
ステラもその中のひとりだった。
だが今の彼女はもう「戦う兵器」ではない。
彼女の歌声は子供たちを安心させ、夜になると彼らの子守歌になっていた。
「……みんな、笑ってる。うれしいね」
「そうだな。もう誰にも奪わせない。この世界も、君の笑顔も」
その言葉にステラは小さく頷いた。
もう少しステラが成長したらシンはステラに告白するつもりだ。
そうなったらステラはステラ・ルーシェではなくステラ・アスカになる。
ステラには家族がいないからきっと喜ぶだろう。
美しく愛らしい妻と穏やかで優しい夫。
シンとステラはこのコロニーで平和な時を生きていく。
少し離れたステージでは、ピアノの音が風に乗って響いていた。
弾いているのはニコル・アマルフィ。ザフト所属の士官であり、今はこのハーバーコロニーに駐留する小隊の指揮官だった。
彼の隣で笑っているのは、シンの妹、マユ・アスカ。
プラントから休暇で訪れ、恋人ニコルを支えるようにピアノの譜面を整えている。
「お兄ちゃ~ん! ステラさ~ん、こっち~!」
マユが手を振りながら笑う。
ステラも嬉しそうに手を振り返した。
四人で過ごす穏やかな時間――それは、まるで家族のようだった。
湖畔のベンチに腰を下ろすと、ニコルがコーヒーを差し出してくれた。
「これ、僕の手作りなんです。バルトフェルドさんのより、少しだけ香りが強いけど」
「へぇ……ニコルって意外と家庭的なんだな」
シンが笑うと、マユが「ニコルは何でもできるんだよ」と得意げに胸を張る。
最近まで「ニコルさん」だったのだが家族の前では「ニコル」と呼んでいる。
マユはニコルの実家、アマルフィ家に歓迎されているので遠からずマユ・アマルフィになるだろう。
妹を溺愛しているシンは少し複雑だが、ニコルとマユが本気で愛し合っているのを改めて目にして微笑んだ。
シンもステラを愛しているから、マユの気持ちはよくわかる。
それにニコルならマユを愛し守ってくれるだろう。
見た目こそ柔らかいが、ニコルはザフトでも数少ない赤服の士官だ。
才能も努力も本物で、戦場では冷静沈着な指揮を執る。
だが今の彼はただの軍人ではなく、マユを優しく見つめる一人の青年だった。
兄としてシンも、その穏やかな眼差しに安心を覚えた。
あのヤキン・デューエで、地球とプラントを救ったニコルの姿を思い出した。
あの時の勇気が、今も彼の中に生きている――。
───きっとマユを守れるのはこいつしかいない。
最愛の妹と素晴らしい家庭を築くはずだ。
ステラも嬉しそうにカップを手に取り、両手で包むように香りを吸い込んだ。
今では定番となったバルトフェルドのブレンドコーヒーはプラント、地球でも愛飲されている。
そのバルトフェルドもアイシャと無事結婚し、もうすぐ父親になるという。
「いいにおい……やさしい味」
その一言に、ニコルとマユは顔を見合わせて微笑む。
ステラの微笑みは穏やかで優しく、その声は天使のように心地好い。
プラントの歌姫ラクス・クラインと天使の歌声ステラ・ルーシェといえば知らない人の方が珍しい。
草の匂い、笑い声、柔らかな風。
この場所は、ナチュラルとコーディネーターが共に生きる“未来の証”そのものだった。
ステラの歌声と、ラクス・クラインの祈りが紡いだ道が、
ようやく形になり始めた――そんな希望を誰もが感じていた。
湖の向こうでは子供たちがカモを追いかけ、カモたちは逃げながら水面を跳ねる。
老人たちは釣り糸を垂らし、若者たちは花壇の整備をしていた。
移住してきた人々は畑を耕している。
今年のキャベツは豊作だろう。
「こういう時間が永遠に続けばいいな」
シンがぽつりと呟く。
その声に、マユも静かにうなずいた。
「うん……みんなが幸せなら、それでいいよね」
コロニーの空は淡い青で、雲一つなかった。
しかし、静けさの奥にわずかな緊張の糸が漂っていることに、誰もまだ気づいていなかった。
その頃、外縁軌道上では。
巡回中のザフト艦が、ミラージュ・コロイドの波紋の中に異常な反応を検知していた
───次の瞬間。
レーダーに、複数の敵影が浮かび上がった。
◇◇◇
――静寂の中、ひとつの光が芽吹いた。
終わりだと思われた運命は、そっと新たな始まりへと変わる。
優しさと痛みを抱きしめながら、少年は再び歩き出す。
その瞳に映るのは、まだ見ぬ希望の空。
これは、“再生”という名の未来へ続く物語。
機動戦士ガンダムSEED DESTINY REBIRTH 運命の再生
第一章『静寂の楽園』
迫りくる闇を切り裂けインパルス!!