機動戦士ガンダムSEED DESTINY REBIRTH 運命の再生――運命に抗う少年と、崩れゆく世界――   作:屠龍

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第百二十七話 運命の受領――少年は、次の戦場へ踏み出す――

 第百二十七話 運命の受領――少年は、次の戦場へ踏み出す――

 

 ジブラルタル基地に到着したミネルバを待っていたのは、港を埋め尽くすほどの地球連合の艦船とMSだった。

 ギルバート・デュランダルの演説を聞いて、反ロゴスの名のもとに集結した艦隊。

 ザフトの海上艦隊と地球連合の艦隊の威容にシンは目を輝かせる。

 

 「すごいな、こんなに議長に賛同してる人たちがいるんだ」

 

 シンは無邪気に喜びつつ、展望デッキから身を乗り出して見入っていた。

 デッキからは青い海に浮かぶ何隻もの艦船と青い空。

 空を飛ぶカモメがこれからの未来が希望に溢れているとシンには思えた。

 昨日まで敵だった人々が味方になる。

 反ロゴスで人々が団結している。

 純粋に喜んでいた。

 

 「そうだ。議長の呼びかけにこれだけの人々が応えてくれた。みんな戦争はうんざりだと言う事だ」

 

 レイの口調は相変わらずだったが、内面の喜びは隠しきれない。

 ギルバート・デュランダルの言葉にこれだけの賛同が集まったのだから当然だろう。 

 シン達がデッキで喜んでいると、タリア艦長からシンとレイはデュランダル議長が待っているので降りるよう指示が来る。

 シンとレイは急いでデッキを後にした。

 

 「遅いわよ二人とも」

 

 ミネルバを下船したシンとレイは、ルナマリア、アグネス、ニコルの乗る車に乗り込む。

 ニコルが運転しながら告げた。

 

 「これから新しいMSを受領に向かいます」

 

 ニコルの言葉にシンがよくわからないという疑問の顔をした。

 

 「なんでだ?俺のインパルスはまだ戦えるぜ」

 

 「あれで戦えるって言い張れるシンは大物だね」

 

 ニコルはハンドルを握りながら苦笑する。

 ベルリン戦で、シンのインパルスは片腕が吹き飛びスラスターも大幅な修理が必要な状態だった。

 ルナマリアのセイバー、レイのカオス、ニコルのアビス、アグネスのガイアも損傷がひどく、修理には時間がかかる。

 

 「丁度本国でも新型機がロールアウトしてきてね。これからはザクだけでなくグフも実戦配備されていくんだ」

 

 そう告げながらニコルの内心は晴れなかった。

 対ロゴス戦はロゴスに与する連合の部隊との戦いだ。

 今味方に付いた連合軍とはレベルが違うだろう。

 生き残れるだろうか。

 

 ◇◇◇

 

 ジブラルタル基地の地下に案内されたシン達は、デュランダル議長の出迎えを受けた。

 全員の敬礼に微笑んで答えた後、デュランダル議長は先頭に立って基地内を進む。

 ひんやりとした張り詰めた空気のなか、立ち止まって振り向いた。

 

 「ロゴスとの戦いには人類の存亡がかかっている。ザフトのトップエースの君たちに、この機体を贈りたい」

 

 そう言って照明がつくとそこには五機のMSが並んでいた。

 どれも従来のガンダムタイプだが、センサーや武装が従来とは段違いに多い。

 鋭利な印象を持ち最新型という威厳があった。

 

 「シン君にはデスティニー、レイにはレジェンド、ルナマリア君にはヴァルキュリア、アグネス君にはエグゼキューター。そしてニコル君にはリジェネレイトMarkⅡ」

 

 そう言ってニコルの目の前に、かつての愛機が映し出された。

 従来のMSの倍の大きさを持つ、先の大戦でニコルが搭乗したリジェネレイトの流れをくむ巨大MSだ。

 

 「デスティニーはシン君に合わせて設計してある。無論各々の戦闘に特化してある。シン君の格闘戦に特化したデスティニー」

 

 背部のスラスター配置。

 大型の対艦刀。

 一目で分かる、近接戦闘仕様の機体だった。

 

 シンの瞳が、子供のように輝く。

 

 「エグゼキューターはガイアの流れをくむ後継機で、射撃性能が得意だが接近戦も可能だ。手数の多いアグネス君にぴったりだろう」

 

 機体各部に配置されたスラスター。

 手にした長射程ライフル。

 そして――可変機構。

 

 アグネスの口元が、わずかに上がった。

 

 「ヴァルキュリアはルナマリア君の高い反射神経に適して設計された」

 

 鋭く伸びた主翼。

 機体各部に配置された推進器。

 そして――戦闘機形態への可変機構。

 

 一目で分かる、高速機動型。

 

 空を思うままに駆ける戦女神の姿に、ルナマリアの胸が高鳴った。

 

 「レジェンドはドラグーンを標準装備した高性能機だ。少々扱いづらいが、レイなら使いこなせるだろう」

 

 背部に円環状に展開されたドラグーンユニット。

 静かに佇んでいるだけなのに、空間そのものを制圧するような圧がある。

 

 レイの瞳が、わずかに細まった。

 

 ――期待には、応える。

 

 声には出さず、ただ胸の内でそう応じる。

 

 「リジェネレイトMarkⅡは、かつてのリジェネレイトにドラグーンシステムを搭載した機体だ」

 

 巨大な機体フレーム。

 両腕、両脚に内蔵されたビームサーベル。

 そして主兵装たる高出力ロングライフル。

 

 さらにMA形態への可変――

 

 見慣れているはずのシルエットなのに、確実に“次の段階”へ踏み込んでいる。

 

 ニコルは、静かに息を吐いた。

 

 再び――

 この機体に乗れる。

 

 胸の奥に、言葉にならない感慨が広がっていった。

 

 ───五機のガンダムが、整然と並んでいた。

 

 色も、輪郭も、戦い方も違う。

 それなのに――

 

 格納庫の空気そのものが、重く沈んでいる。

 

 ただ立っているだけだ。

 それだけで分かる。

 

 ここに並ぶのは、いずれも最前線を切り裂くための機体。

 

 誰一人、軽口を叩かなかった。

 

 シンは無意識に息を詰め、

 ルナマリアは唇を引き結び、

 レイは静かに目を細め、

 アグネスは挑むように機体を見上げ、

 そしてニコルは――わずかに目を伏せた。

 

 次の戦場は、もう始まっている。 

 静まり返った格納庫に、わずかな駆動音だけが低く響いていた。

 

 シンは視線を外せなかった。

 デスティニー。

 

 まだ動いてもいない機体なのに、胸の奥が妙にざわつく。

 インパルスに初めて乗った時とも違う、もっと直接的な――本能に触れてくるような感覚だった。

 

 (……速い)

 

 根拠はない。

 だが、あの機体は間違いなく戦場を駆ける。

 

 早く乗りたい。

 早く確かめたい。

 気づけば、拳を強く握りしめていた。

 

 その隣で、レイは一歩だけ前に出る。

 レジェンドのシルエットを、測るように静かに見上げた。

 ドラグーンユニットの配置。

 機体バランス。

 推進系の分散。

 

 どれもが、極めて合理的に組み上げられている。

 

 (……やはり、議長は)

 

 胸中で言葉を切る。

 期待されている。

 それは分かっていた。

 ならば――応えるだけだ。

 レイの表情に変化はない。

 だが、その瞳の奥だけが、わずかに鋭さを増していた。

 

 少し離れた位置で、ルナマリアは無意識に息を吐いた。

 ヴァルキュリアの流線型の機体ラインが、照明を受けて淡く光る。

 

 (これ……とても美しい。そしてすごく速い、これなら、誰よりも先に空を裂ける)

 

 胸の奥が高鳴る。

 同時に、ほんの少しだけ指先が強張った。

 期待と、緊張。

 その両方を噛み締めるように、ルナマリアは唇を結ぶ。

 

 アグネスは腕を組んだまま、エグゼキューターを見上げていた。

 可変機構。

 多軸スラスター。

 長射程ライフル。

 そして近接用に改良されたビーム薙刀。

 

 ――面白い。

 

 口元が、ほんのわずかに歪む。

 「使いこなせるか」ではない。

 どう使い倒すか、だ。

 その視線には、すでに実戦を見据えた色が宿っていた。

 

 そして。

 

 ニコルは、しばらく何も言わなかった。

 

 リジェネレイトMarkⅡ。

 

 見慣れているはずの輪郭。

 それでも、確かに別物だと分かる完成度。

 懐かしさと、僅かな不安と。

 いくつもの感情が胸の奥で静かに重なっていく。

 

 (また……君と戦うんだね)

 

 心の中だけで、そっと呟いた。

 

 格納庫の空気は、依然として重い。

 だがそれは、恐怖ではない。

 来るべき戦いの前に与えられた――

 新たな力の、確かな重みだった。

 

 次回予告

 

 ――穏やかな時間は、確かにそこにあった。

 

 笑い合い、言葉を交わし、同じ食卓を囲む。

 それは、戦場の外にある“日常”のかたち。

 

 けれど。

 人はそれぞれ、違う想いを胸に抱えている。

 

 近づく距離。

 すれ違う心。

 

 見えないまま積み重なる、わずかな違和感。

 

 ――その一歩は、どこへ向かうのか。

 

 次回。機動戦士ガンダムSEED DESTINY REBIRTH 運命の再生

 第百二十八話 揺れる距離――仲間と、そして未来と――

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