機動戦士ガンダムSEED DESTINY REBIRTH 運命の再生――運命に抗う少年と、崩れゆく世界――   作:屠龍

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第十六話 旅立ちの日

第十六話 旅立ちの日

 

 翌朝、ハーバーコロニーは薄い朝の光に包まれていた。

 整備ドックでは輸送船の準備が進み、ザフトの制服を着た整備士たちが行き交っている。

 

 シンは深呼吸をして、艦長室のドアを叩いた。

 

 「シン・アスカ、参りました」

 

 「入りなさい」

 

 ドアが開くと、タリア・グラディス艦長が静かに立ち上がった。

 彼女の表情には、昨夜の迷いの影がまだ残っている。

 

 「……決めたのね」

 

 シンはまっすぐに答えた。

 

 「はい。俺は、ザフトに入ります。このコロニーを、みんなを守るために」

 

 タリアの唇がわずかに震えた。

 それでも微笑みを返す。

 

 「そう。……あなたのような人に、私は助けられてばかりね」

 

 彼女は席に戻り、書類を取り上げる。

 

 「入隊には一年の訓練期間があるわ。本来は二年だけど、情勢が許さない。

  だから特別に、あなた専用の指導チームを組むことにしたの」

 

 その言葉に、シンは少し驚いたように眉を上げた。

 タリアは艦長室の通信端末を操作し、三人の名前を呼ぶ。

 

 「ニコル・アマルフィ、ルナマリア・ホーク、レイ・ザ・バレル――入室して」

 

 扉が開き、三人の姿が現れた。

 ニコルは落ち着いた笑みを浮かべ、ルナマリアは少し照れたように立っている。

 金髪の青年レイは、無表情のままシンを見据えた。

 

 「ニコルは座学と戦術指導。ルナマリアは体力と格闘。

  レイはMS操縦と射撃の担当よ」

 

 「……レイ・ザ・バレルです」

 

 短く名乗ったその声は冷ややかだった。

 けれど、瞳の奥には妙な静けさがあった。

 レイの視線は穏やかだったが、どこか計っているようでもあった。

 

 「よろしくお願いします」

 

 シンは頭を下げた。

 ニコルが柔らかく笑う。

 

 「教官って言っても、僕も同じパイロットさ。

  だから定期的に模擬戦もするよ。

  一緒に頑張ろう、シン。

  ……僕たちは仲間だから」

 

 「仲間……」

 

 その言葉を口の中で反芻しながら、シンは少しだけ肩の力を抜いた。

 タリアは三人に視線を送り、静かに言った。

 

 「一年後。修了を認められたら、正式にザフトの一員になるわ。

  その時、あなたは“ミネルバ”に配属されることになる」

 

 シンの瞳が揺れる。

 

 「ミネルバ……?」

 

 「今開発中の新型MSシリーズの母艦となる新造艦よ。……あなたの居場所になるかもしれないわ」

 

 新型MSシリーズの母艦。

 なぜそんな物を作るんだ。

 どうして俺がそんな艦に乗るんだ。

 その言葉の裏に何かを感じながらも、シンは黙ってうなずいた。

 

 ───出発の日。

 

 ハーバーコロニー宇宙港には、ジャンク屋仲間や子供たちが集まっていた。

 ステラとマユは泣きそうな顔でシンの腕を握っている。

 

 「シン……もう迷ってない。いいかお…してる」

 

 「お兄ちゃん絶対に帰ってきてね。マユ達待ってるから」

 

 「すぐ戻るさ。……一年なんて、すぐだよ」

 

 嘘かもしれない。

 けれど、それでも言わずにはいられなかった。

 

 ルナマリアがステラの肩に手を置く。

 

 「ステラ、そんな顔しないで。

  シンのこと、ちゃんと私が見てるから」

 

 「ルナマリア……シンのこと、お願い……」

 

 「約束する。……ほら、行って。

  キスのひとつくらい、してあげなさい」

 

 ステラは涙をぬぐい、シンの胸に飛び込んだ。

 唇が頬に触れる。

 その一瞬に、すべての想いを込めた。

 

 「必ず、帰ってきて」

 

 「――ああ、約束する」

 

 シャトルがゆっくりと浮上する。

 シャトルの外殻が光を反射し、港全体が一瞬だけ白く染まった。

 その光の中で、ステラの姿が霞んで見えた。

 透明な窓の外で、ハーバーコロニーが小さくなっていく。

 その光景を見つめながら、シンは小さく呟いた。

 

 「みんな……待っててくれ。俺は、必ず帰る」

 

 胸の奥に、確かな熱があった。

 恐怖でも後悔でもない。

 

 ――覚悟。

 

 それが少年の中で静かに燃えはじめる。

 そして、その炎は、まだ誰も知らない未来へと続いていく。

 

 シンの運命(DESTINY)が、ゆっくりと動き出していた。




第一章「静寂の楽園」を読んでいただいてありがとうございました。
第一章は前作で平和な生活を得たシンが平和の楽園から出ていく話でした。
第二章はザフトでの生活とルナマリアのパート多めです。
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