機動戦士ガンダムSEED DESTINY REBIRTH 運命の再生――運命に抗う少年と、崩れゆく世界―― 作:屠龍
【第三章開幕】第二十六話 再会
第二十六話 再会
プラントL4コロニー群にあるアーモリーワン。
戦後に建造されたこの新しいコロニーは、今や軍需の中心地として賑わいを見せていた。
その宇宙港に、赤と灰の装甲をまとった新型戦艦――ザフトの誇る“ミネルバ”が静かに停泊している。
艦体は流線形。翼のような巨大なフレームに、まるで宇宙を翔ける女神の姿。
単独での大気圏突入能力、可変翼による飛行制御、垂直離着陸用の推進機関。
――明らかに、地球で戦うために生まれた船だった。
「もう戦争はしないはずじゃなかったのか?」
そんな声が幾度となく議会にあがった。
だが、誰も完全には否定できなかった。“次の戦争”の可能性を。
なぜこんな船が必要なのか。
その問いに、プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルは静かに答えた。
――「争いが無くならぬからこそ、力が必要なのです。」
その言葉は穏やかでありながら、どこか冷ややかな響きを持っていた。
◇ ◇ ◇
ミネルバのMS格納庫では、シン・アスカが整備服姿で汗を流していた。
インパルスガンダムの胸部――チェストフライヤーとコアスプレンダーの接合調整をしている。
側ではルナマリア・ホークが、愛機セイバーガンダムを点検していた。
「ヴィーノ、そっちのケーブル頼む!」
「了解、ヨウラン、電力遮断!」
「はいよ!」
仲間たちの声が飛び交う。
油と金属の匂いに包まれたこの空間こそ、彼らの“日常”だった。
インパルスの構造は複雑だ。コアスプレンダーを中心に分離合体する三機構成。
シンはその調整の難しさに苦戦していたが、それでも表情は明るい。
「……よし、あとは再起動チェックだけだな」
そう呟いた時だった。
格納庫の入り口に数名の影が現れる。
黒いスーツに身を包んだ青年――アスラン・ザラ。その隣に、オーブの代表カガリ・ユラ・アスハ。
そして、その後方にはギルバート・デュランダルの姿があった。
カガリがシンに気が付いて歩みを止める。
「お知り合いですか?」
デュランダルが静かに問いかける。
カガリが嬉しそうに笑った。
「大切な戦友なんだ。シン、久しぶりだな!」
工具を置いて振り返ったシンは、一瞬目を見開き、そして弾かれるように立ち上がった。
「カガリさん! アスラン!」
笑顔が弾ける。懐かしい顔。共に戦い、共に生き延びた人たち。
駆け寄るシンの姿を、ルナマリアは少し驚いたように見つめていた。
「シン、今は公式の場だぞ」
アスランが苦笑しながら注意する。
慌てて姿勢を正したシンは、ぴしりと敬礼した。
「失礼しました! アスハ代表、ザラ二佐!」
その必死さに、カガリが吹き出す。
「敬礼なんてやめてくれ。元気そうでよかったよ。……オーブ市民のお前がザフトに入ったって聞いて驚いたけどな。……ハーバーコロニーの救援が出来なくてすまなかった」
「いえ。オーブが争いに介入できないのはわかってます。……でも、俺はオーブが好きです。」
その言葉は真っ直ぐで、静かな強さを持っていた。
だが胸の奥には、忘れられない光景が今も焼きついている。
――ハーバーコロニーで、無垢な子供たちを救えなかった日のこと。
“あんな悲劇を、もう二度と起こさない。”
それが、彼がザフトに入った理由だった。
勤務が終われば、またハーバーコロニーに戻り、防衛部隊へ転属する。
そうすれば、ステラやマユと穏やかに暮らせるはずだ。
――きっと、もう失うことなんてない。そう信じたかった。
カガリとアスランにとっても、シンとの再会は心からの喜びだった。
あの戦争で、彼らはあまりに多くのものを失った。
だからこそ、再び火種を残すような兵器が作られていると聞いて、二人は急ぎプラントを訪れたのだ。
だが、遅かった。
ミネルバも、セカンドステージMSも、すでに完成していた。
「なあ、シン。インパルスの調子はどうだ?」
アスランの問いに、シンは顔を上げた。
「チェストとレッグの同期がまだ安定しないけど……ヴィーノとヨウランが頑張ってくれてるから、何とかなりそうです」
笑って答えるシン。
だがアスランの視線は、どこか複雑だった。
――インパルス。ザフト版ストライク。
かつて自分が戦い、同時に守った機体の系譜。
「MSは所詮、兵器だ。使い手次第で性能を生かしも殺しもする」
その言葉に、シンは少しむっとして振り返った。
「そんなの、わかってますよ」
その時、後方から柔らかな声が割って入った。
「シン。アスランは『MSは所詮兵器だ(だが兵器で救える命がある事を俺は知った。だからシンには只の兵器を扱う兵士にはなって欲しくない)使い手次第で(人々を)生かしも殺しもする(だから俺みたいに感情に駆られて道を誤らないでくれ)って言いたいんですよ。だから、シンにはただの兵士にはなってほしくないって。ね、アスラン?」
振り向けば、赤服姿のニコル・アマルフィ。
穏やかな微笑みで二人を見ている。
「あ、ああ……そうだな」
不器用に頷くアスラン。
その様子に、カガリの口元が緩み吹き出した。
シンは小さく息を吐いた。
アスランの言葉の真意が、ようやく胸に落ちていく。
――ああ、やっぱりこの人は優しい。
ぶつかることもあるけど、それでも嫌いにはなれない。
デュランダルはそんなやり取りを、静かな笑みで見守っていた。
シンとアスラン、カガリ、ニコル――四人の間に漂う空気を観察するように。
その瞳は、何かを計算するように細められていた。
「若い力がこうして集うのは、実に喜ばしいことです」
その声音は穏やかだが、どこか冷ややかだった。
再会の温もりの裏に、火種の匂いが確かにあった。
この時、誰もまだ気づいてはいなかった。
アーモリーワンの上空で、次の“焔”が胎動を始めていることに。
◇◇◇
――憎しみは、やがて炎となり。
理想は、刃に変わって人を傷つける。
世界は再び、戦火の胎動に包まれようとしていた。
それでも、人は信じたいと願う。
この焔の向こうに、希望があると。
次回。機動戦士ガンダムSEED DESTINY REBIRTH 運命の再生
第三章『焔の胎動』
世界の闇、撃ち抜けカオス!!
第三章は第26~第38話です。