機動戦士ガンダムSEED DESTINY REBIRTH 運命の再生――運命に抗う少年と、崩れゆく世界―― 作:屠龍
第二十九話 昼下がりの喫茶店
昼下がりの喫茶店。
カップの触れ合う音と、小さな笑い声。磨かれた木のテーブルに陽が落ちて、空気が柔らかく揺れていた。
戦争の話なんて、ここでは場違いに思えるほどに、穏やかな午後だった。
「それで、最初に声をかけたのはどっちですか?」
ルナマリアが興味津々に身を乗り出す。
「え、私たちか?」カガリが眉を上げる。「……たしか、お前だったよな、アスラン」
「いや、あれは“助けた”っていうより、“撃ち合ってた”って言うのが正しいかな」
アスランがグラスの水を見つめながら呟く。
「それが今は婚約者、か」カガリが苦笑し、頬を赤く染める。
「運命って、すごいですね」ルナマリアの声が弾んだ。
テーブルの上に、ふと静けさが戻る。
ニコルがスプーンを置いて、少し照れくさそうに言った。
「ルナマリア。僕と君は同い年だし、そろそろ“ニコルさん”はやめて“ニコル”でいいよ」
「そうだよルナ、俺だって“シン”“ニコル”呼びだし」
シンが頷く。
「そう言われても……ニコルさんはヤキン・ドゥーエの英雄ですし、赤服ですから。それに、最近まで教官でしたし」
「ルナマリアだって赤服だろう? 壁を作ってると、いざって時に動きが遅れるんだ」
ニコルの声は穏やかだったが、その奥にどこか人間らしい寂しさが滲んでいた。
ルナマリアは少し俯いた。
名を呼ぶ距離なんて、簡単なことのはずなのに。
戦うより難しい。
膝の上で、両手をそっと握る。礼儀も憧れも、どれも本音だった。
同い年なのに、彼らはもう何度も死線を越えてきた。
自分とは違う時間を生きてきた人たち。
見上げる光と、踏み越えてきた闇の深さが違う。
「……検討、しておきます。ニコルさ……ニコル」
声に少し笑いが混じる。
「うん、今の感じで十分」
ニコルも笑った。
テーブルの空気がやわらかく揺れる。カガリが肩を揺らして笑い、アスランは目を細めた。
シンが一番嬉しそうに、皆を見ていた。
その笑顔は、飾り気がなくて。だからこそ、誰もが信頼してしまう。
◇
やがて時間が来て、ニコルは席を立った。
「後は艦で合流しよう。二人の外出申請は夜まで取ってあるから、ゆっくりしておいで」
優しい声だった。
軍艦に乗っていると、こういう時間は貴重だ。
ニコルの気遣いが、胸に沁みる。
「了解。気をつけて」
シンが答え、ルナマリアも立ち上がる。
「ありがとうございます、ニコル」
自然に名前が出た。
ニコルは目を丸くして、それから嬉しそうに頷いた。
◇
街に出ると、空の色が明るすぎて、少し眩しかった。
舗道の石の継ぎ目、ショーウィンドウに映る二人の影、風に混じる焼き菓子の匂い――。
戦艦の金属臭とは違う、柔らかい匂いがした。
「ルナ、あれ、似合いそうだぞ」
シンが指した先には、淡いクリーム色のスカーフ。
「ふふん、見る目あるじゃない。……ほんとに似合う?」
「うん。なんか、強そうで優しそう」
「どっちよ、それ」
二人して笑った。
鏡越しに見た自分の笑顔が、少しだけ柔らかく見えた。
独占したいわけじゃない。ただ、隣で笑っていてほしい。
それだけなのに、胸が少し痛い。
ステラの名前は出さない。今は――この時間を壊したくなかった。
「最近、アグネスとよく話してるよな。ルナ、すごいよ。俺、あいつうまく掴めなくて」
「……社交性っていうより、観察眼ね。あの子は――」
言いかけて、やめた。
彼女の孤独に触れると、こっちまで冷えてしまう気がした。
距離を誤れば、どちらかが傷つく。だから“友達みたい”でいるのが、精一杯。
「ルナは優しいよな」
「優しいって、便利な言葉ね。時々、逃げにもなるわ」
シンがこちらを見た。まっすぐに。
嘘のない瞳は、時々残酷だ。
「俺、逃げてるのかな」
「違うわよ。シンは――まっすぐなだけ」
風が吹いた。髪が揺れて、二人の間に沈黙が落ちる。
「……そうか」
短い言葉なのに、不思議とあたたかかった。
その声の奥に、シンの不器用な優しさがあった。
思い出す。さっきの喫茶店での会話。
難しい理想や政治の話じゃなくて、ただ“守るために戦う”っていうこと。
それだけで十分だった。
たぶん、それでいい。そうやって笑い合える人が増えれば、この世界はきっと少し優しくなる。
「ルナ、アイス食べる?」
「食べる。二口ちょうだい」
「ケチだなぁ」
「節約は軍人の嗜みよ」
笑いながら、アイスを分け合う。
冷たさが舌に沁みて、少しだけ胸が甘くなる。
こんな時間が、ずっと続けばいい――そう思った。
◇
その時だった。
街の奥から、地面を殴るような重い音。
ガラスが震え、店先のベルが狂ったように鳴る。
空気がひきつり、空が一瞬白く光った。
「――ッ!」
シンの顔から笑みが消える。軍人の目になっていた。
「爆発音……中央区画の方だ!」
「アーモリーワンが、やられてる……!」
人々の悲鳴が重なり、子どもを呼ぶ声、金属音、逃げ惑う足音。
白い鳩が群れになって飛び立ち、風が焦げた匂いを運んできた。
ほんの数分前までの穏やかさが、夢みたいに遠い。
ルナマリアの心の奥で、さっきまでの小さな灯が、かすかに揺れた。
息を吸い、吐く。
胸の奥に、もう一度力を戻す。
「シン、走るわよ。戻って装備!」
「了解!」
私服の裾が翻り、靴底が石畳を叩いた。
喫茶店で交わした笑い声も、焼き菓子の甘さも、いったん置いていく。
守るために、いまは前へ。
あの“平和の形”を――もう一度掴み取るために。
シンルナいいわあ。ルナマリアは可愛い。
うんうん平和平和。好きな男の子とデート幸せやね、初々しいやねうんうん(頷き)
俺たちのCEに平和なんてねーよ!!
という事でお待たせしました。
派手にドンパチいきましょうか。