機動戦士ガンダムSEED DESTINY REBIRTH 運命の再生――運命に抗う少年と、崩れゆく世界――   作:屠龍

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第五話 再び戦場へ

 第五話 再び戦場へ

 

 ハーバーコロニーは崩壊の危機にあった。

 いくつもの外壁が破壊され激しく揺れている。

 このままではメインシャフトが折れ、コロニーは爆散するだろう。

 病院の廊下には負傷者が溢れ、トリアージの赤いタグがいくつもぶら下がっている。

 それでも助けようと医師と看護師達が努力していた。

 シンはステラの運び込まれた手術室の前で、怯えるマユを抱きしめながらステラの無事を祈っていた。

 今頃ニコルはコロニーを守るため戦っているだろう。

 マユは怯えながらニコルの無事を祈っている。

 

 このまま震えていていいのか?

 ただ死ぬのを待っていていいのか?

 良い筈がない。

 ステラとマユをこのまま死なせる訳にはいかない。

 

 (俺には戦う力がある!!)

 

 そう心に決めてシンは立ち上がる。

 

 「シンお兄ちゃん?」

 

 立ち上がったシンを不思議そうに見つめるマユ。

 その時、外から再び轟音が響いた。

 外壁が砲撃を受け、メインシャフトが軋む。

 負傷者が叫び声を上げ、子供たちが泣き出す。

 

 「俺はステラが愛したここを守る」

 

 シンは走り出し普段働いている整備区画へと向かった。

 そこにはシンがいつも使っているジャンク屋の民間用MSに改造された工事用アストレイがあった。

 民間用を示すオレンジ色の機体は、かつてアストレイに乗っていたシンには馴染み深いものだ。

 機体のオレンジ色は半分焼け焦げている。

 整備員も避難していた。

 シンはパイロットスーツを着込むとコクピットに飛び込み、点検を省略して起動コードを叩き込む。

 

 「アストレイ、起動……!動けよ、頼む!」

 

 スラスターが唸り、巨体がゆっくりと立ち上がった。

 戦闘用ではないが、守るための力にはなれる。

 

 「何か武器、武器はないのか」

 

 焦るシンは近くの工事ボックスにあった工事用ハンマーを手に取った。

 ビームサーベルとはいかないが、無いよりマシだ。

 

 「ステラが祈った平和の歌を消させたりしない!!シン・アスカ!!工事用アストレイ行きます!!」

 

 外に通じる格納庫からコロニー外周へ飛び出す。

 シンに気が付いた地球連合のストライクダガーが二機こちらに向かってくる。

 ストライクダガーがビームライフルを放つが、シンは卓越した操縦技術でかわす。

 そのままスラスターを全開にして突っ込んだ。

 

 「うおおおおお!!」

 

 シンの気迫に気圧されたストライクダガーのメインカメラに、工事用アストレイがハンマーを叩きこんだ。

 巨大な質量兵器になった巨大ハンマーが、ストライクダガーのメインカメラごと胴体を叩き割る。

 激しい火花を散らせながら宇宙を漂うストライクダガーを一瞥したシンは、もう一機に回し蹴りを入れた。

 バランスを崩したストライクダガーにハンマーを打ち込んで二機目の残骸を作ると戦闘空域へ向かう。

 

 ───その頃緑色のゲイツに乗ったルナマリアは必死に戦っていた。

 初めての実戦に戸惑ったのはルナマリアだけではなく、訓練生でまともに戦えているのはレイだけだ。

 回避行動を取りながら必死に射撃を続けるが当たらない。

 既に三機のストライクダガーを撃ち落としたルナマリアだが、冷静に判断できる状態じゃなかった。

 激しい銃撃戦でメインスラスターを破壊され、機体バランスを崩したルナマリアのゲイツが、スピンしながら漂流する。

 ゲイツのセンサーが警告音を発し、ルナマリアの混乱に拍車をかけた。

 

 「メインスラスターがやられた!!うそこっち来ないで!!きゃああああ!!」

 

 二機のストライクダガーに追い詰められ撃ち落とされるか、このままコロニー外壁へ直撃するか。

 ルナマリアは叫びながら機体を立て直そうとするが上手くいかない。

 ストライクダガーの放ったビームでルナマリアの機体が破壊されていく。

 わざと撃ち落とさないのは、なぶり殺しにするつもりなのだろう。

 ブルーコスモスにとってコーディネイターのルナマリアは同じ人間ではないのだから。

 手足がちぎれスラスターが吹き飛ぶ。

 制御不能になった機体が回転し、恐怖でルナマリアは泣き叫んだ。

 

 「誰か!!誰か助けて!!お願い、動いてよ!!」

 

 だが破壊されたゲイツは動かない。

 死を覚悟した瞬間。

 

 「掴まれぇぇぇ!!」

 

 シンの工事用アストレイがルナマリア機の腰を掴み、コロニーへの衝突を防いだ。

 衝撃でコクピットが震え、死の恐怖で心臓が止まりそうな恐怖に見舞われていたルナマリアに通信が入る。

 その声は聞き覚えがある声だった。

 

 「動けるか!?返事をしろ!!」

 

 「あなた誰!?その声はシン!?」

 

 「ルナ!?ルナマリアじゃないか!!」

 

 シン・アスカとルナマリア・ホークは以前ニコルの紹介で出会い、ブルーコスモスのテロと戦った間柄だった。

 よく見るとシンの乗っているアストレイは、民間機のオレンジカラーをしていた。

 

 「民間人が何してるのよ!!死ぬ気なの!?」

 

 「そっちこそ死にかけてただろ!!戦いに来たに決まってるだろ!!」

 

 ルナマリアは息を呑む。

 戦いに来た?こんな民間機で?

 スラスターが爆ぜ、光が視界を照らす。

 シンのアストレイが前に出た。

 爆炎からルナマリアを守る為に。

 

 「戦うって民間機で無茶よ!!」

 

 「それでも守りたい人たちがいるんだ!!」

 

 ルナマリア機に止めを刺そうとしたストライクダガーに向かって、ハンマーを投げつけるシンのアストレイ。

 ハンマーの直撃を受けたストライクダガーが沈黙したが、背後から別のストライクダガーが迫る。

 

 「後ろにもう一機!!シン!!これ使って!!」

 

 ルナマリアがゲイツのビームライフルを手渡すと、シンはブランクを感じさせない素早さと正確さでビームを放つ。

 ビームの閃光がストライクダガーを貫通し爆発した。

 再び人を殺したシンの胸が痛む。

 だがステラを守る為ならこの痛みにも耐えられる。

 

 「…無茶しすぎ……死ぬ気なの?」

 

 「違う。生きる為に戦うんだ。俺には守りたい人がいるんだ」

 

 「……シン」

 

 シンの言葉が胸に刺さった。

 守りたい人───恋人だろうか?

 心が震えた。

 

 テロの時一緒に戦ってくれたシン。

 とても勇気があって頼もしくて、そしてどこかで意識していた。

 ルナマリアは自分でもわからない感情に顔を赤らめた。

 ───こんな時に何を思っているのだろう。

 

 「ルナ、その機体はもう動かない。こっちに乗れ」

 

 そう言って戦場の真っただ中だというのに、工事用アストレイのコクピットハッチを開くシン。

 ルナマリアは自分のゲイツがもうすぐ爆発すると判断してシンの胸に飛び込む。

 シンが工事用アストレイのハッチを閉める。

 狭いが動けない程じゃない。

 間近に感じるシン。

 胸の奥が締め付けられる。

 

 「馬鹿……でも、かっこいいじゃない」

 

 「ルナ、何か言ったか?」

 

 「何も言ってないわよ」

 

 数か月ぶりに再会したシンは大人びて見えた。

 ルナマリアは恥ずかしさを隠すように俯く。

 ルナマリアがシンを意識したのはこの時からだった。




前作外伝でちょっとだけ出会ったシンとルナマリアの再会話です。
シンの主人公度があがって少し熱血モード。
愛を知った少年は強い。
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