機動戦士ガンダムSEED DESTINY REBIRTH 運命の再生――運命に抗う少年と、崩れゆく世界――   作:屠龍

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第六話 オレンジ色の勇者

 第六話 オレンジ色の勇者。

 

 ハーバーコロニー外壁での戦闘は苛烈さを増していく。

 タリア艦長のローレシア級MS搭載艦の目の前で一機のゲイツが、戦闘で損傷したのか漂流し始めた。

 味方に信号弾を発射して救援要請をするがその前に敵が迫ってくる。

 そして目の前で撃墜され爆発した。

 その光景にタリア艦長は唇を噛む。

 

 「……これで味方は何機残ってるの?」

 

 「ローレシア級ネメス大破、グルーゼン中破。残存MSは四機……生存パイロットは五人です」

 

 メイリンの声が震えていた。

 通信席に涙が落ちる音が聞こえた気がした。

 

 「計算が合わないわね。一人漂流してるって事?」

 

 「いえ、お姉ちゃ……ルナマリア・ホーク練習生はMSに保護されてこちらに向かっています」

 

 タリア艦長とアーサーが不思議そうにモニターを見つめると、オレンジカラーの工事用アストレイがこちらに向かってくる。

 

 「こちらハーバーコロニー建設部所属MS。パイロット、シン・アスカ。そちらのパイロットを一人保護した。着艦の許可をくれ」

 

 シンの言葉にアーサーは怪訝な顔をした。

 なぜ戦場の真ん中にハーバーコロニーの民間機がいるのかわけがわからない。

 アーサーはタリアの決断を促す。

 

 「敵の謀略かもしれませんが、ルナマリア練習生を保護しているのは事実です。着艦を許可するべきではないでしょうか?」

 

 「───今更謀略も何もないわね。着艦を許可します。相手は素人よ、誘導は慎重に」

 

 タリアの発言を聞いてアーサーが格納庫に命令を伝える。

 格納庫ではヴィーノとヨウランが離着艦の作業に没頭されていた。

 ネメスとグルーゼンがMS搭載能力を失った今、MSの修理と武器の補充は、全てこの艦が受けざるをえない。

 さらにもう一機敵味方不明のMSが着艦しようとしている。

 オーバーワークにも程がある。

 

 「ルナマリアが帰ってくるってさ」

 

 「王子様の白馬に乗ってね」

 

 今はパイロットが一人でも欲しい。

 それに味方は八機も落された。

 ネメスとグルーゼンとこのウルージを合わせても、MSは四機しか残っていない。

 練習生はルナマリアとレイしか残っていなかった。

 軽口と悲痛さが戦況の厳しさを物語る。

 機体は全部なくなってもいい。

 二人ともこれ以上、友達の死を見たくなかった。

 

 「こちらウルージ着艦を許可します。第三ハンガーから着艦してください」

 

 アーサーの指示に従い、シンは工事用アストレイのスラスターを開いて着艦しようとする。

 だが度重なる戦闘で故障した工事用アストレイは姿勢制御を崩す。

 ヴィーノとヨウランが準備した着艦柵に体当たりする形で、着艦というか墜落した。

 コクピットで激しい衝動がしてルナマリアの身体がシンにぶつかる。

 その拍子にシンの手がルナマリアの胸にあたり、揉むように掴んだ。

 

 一瞬の静寂

 

 「ルナ、着艦したぞ。もう大丈夫だ」

 

 「───ッ大丈夫じゃないわよ!!もう少し優しく着艦できないの!?あといつまで胸揉んでるのよスケベ!!」

 

 「しょうがないだろ、この機体もうガタが来てるんだから」

 

 そう言って言い返すルナマリアを見てシンは絶句した。

 ルナマリアの顔は蒼白で、唇が震えていた。

 それでも必死に笑おうとするルナマリアを見て、シンの胸が締めつけられる。

 先ほどまで緊張の連続で死にかけたのだから仕方がない。

 シンは優しくルナマリアを抱きしめる。

 

 「シ、シン!?」

 

 「大丈夫。もう大丈夫だから」

 

 ステラの時も、こうして抱きしめて落ち着かせた。

 その感覚が、まだ身体に残っていた。

 シンの優しさにルナマリアは堪えていた涙があふれてくる。

 

 ───整備員たちが一斉に走り寄ってきた。

 コクピットハッチが開く。

 中から出てきたのはオレンジ色の民間パイロットスーツを着た少年と、抱きかかえられたルナマリアだ。

 

 「軍人じゃない!?民間人だぞ!!」

 

 「ルナマリアを医務室に!!パイロットの手当てを急げ!!」

 

 ルナマリアがシンの腕に支えられて立つ。

 パイロットスーツ内の打撲でルナマリアは痛みに身体をこわばらせた。

 

 「ルナ、大丈夫か?」

 

 「このくらい平気よ。シンも手当しないと」

 

 そのうち救護班が到着し、シンは優しくルナマリアを救急用ストレッチャーに乗せた。

 ルナマリアのパイロットスーツは破けてはいないが、全身打撲しているようでひしゃげている。

 

 「……ありがとう」

 

 ルナマリアは微笑もうとしたが恐怖で手が震えている。

 シンは優しくルナマリアの手を握った。

 ステラにそうしたように、シンはルナマリアに優しく接した。

 

 「シンはどうするの?まさかその機体で戦うつもりじゃないでしょうね?」

 

 「まだ戦える。ハーバーコロニーには大切な人がいるんだ。……行くよ」

 

 その言葉にシンを止める事は不可能だと知った。

 ルナマリアは何も言えず、見送るしかできない自分の不甲斐なさが悔しかった。

 きっとシンには自分の命より大切な人がいるのだろう。

 それが女の子だと直感で分かり、ルナマリアの胸が痛んだ。

 

 「───必ず生き残ってね。会いに行くから」

 

 「ああ、ルナも死ぬなよ」

 

 そう言って別れた後、ルナマリアは救急ストレッチャーに乗せて運ばれていく。

 シンは戦場へ。

 ルナマリアは医務室へ。

 救急ストレッチャーに運ばれるルナマリアは、全身打撲に呻いたが、死地に戻ろうとするシンの事を想うと痛みなどどうでもよかった。

 

 (必ず会いに行く。だから死なないで)

 

 ルナマリアを見送った後、シンは工事用アストレイに戻る。

 激しい戦闘であちこちの部品が吹き飛び無残な機体。

 それに乗ろうとしたシンをヴィーノが止めた。

 

 「無理だよ!!その機体はもう動かないよ!!」

 

 「でも行かなきゃ。俺はみんなを守るんだ」

 

 「でもさ」

 

 少しの問答のあと、メイリンの声が格納庫に響く。

 

 「艦長からそのアストレイにジンの機銃を渡すように命令がありました。整備員は直ちに作業に入ってください。それとタリア艦長からアストレイのパイロットに伝言です。『貸すだけだから必ず返しなさい』です」

 

 タリア艦長がジンのMMI-M8A3 76㎜重突撃機銃をシンに貸してくれたのだ。

 貸すだけだから生き残って返しなさいと言っている。

 その言葉にシンは頷きヴィーノがシンに向き合う。

 

 「貸すだけだからな。ちゃんと返してくれよ。もうパイロットが死ぬのは見たくないんだ」

 

 「必ず返しに来るよ。約束する」

 

 「絶対だぞ!!絶対死なないでくれ!!」

 

 ───カタパルトハッチが開き、シンのアストレイがカタパルトに乗った。

 今度こそ死ぬかもしれない。

 怖い。

 でもステラが死ぬのはもっと怖い。

 ステラだって今瀕死の重傷と戦ってるんだ。

 ならやる事はひとつだ。

 

 「シン・アスカ!!工事用アストレイ行きます!!」

 

 そう叫んでシンは絶望の戦場へと戻っていった。

 

 ───ルナマリアは医務室の窓から発進するシンを見送る。

 体中に包帯が巻かれた。

 全身が痛い。

 でもシンの後ろ姿を見送った胸はもっと痛い。

 それが何の感情なのか、ルナマリアにはわからない。

 ただもう一度シンに会いたいと願っていた。

 

 「ホーク練習生。手当てが終わったから医務室で寝ててください」

 

 看護練習生の言葉にルナマリアは頷きベッドに戻る。

 コーディネイターでなければ、間違いなく死んでいた筈の重度の打撲だ。

 ルナマリアは飛び立っていくオレンジ色のアストレイの事を思い出す。

 

 「……必ず帰ってきて…シン」

 

 睡眠導入剤がきいたのか、ルナマリアは眠りについた。

 先ほどまで感じていた恐怖はシンが癒してくれた。

 戦場へ戻るシンの後ろ姿を思い出して。

 オレンジ色のアストレイの背中が忘れられない。

 ルナマリアの胸の奥で何かが熱く響いていた。




久しぶりに会った美形の男の子に命を助けられて恋に落ちてというベタ回です。
シンちゃん美形だし強くて優しくてかっこいいからね。
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