機動戦士ガンダムSEED DESTINY REBIRTH 運命の再生――運命に抗う少年と、崩れゆく世界――   作:屠龍

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第八話 再生の灯

 第八話 再生の灯

 

 ハーバーコロニーは崩壊を免れた。

 だがその損害はあまりに大きい。

 防衛にあたっていたザフト艦隊は五割が死傷した。

 三割失えば戦闘不能とされるのが常識なので、ザフトは限界を超えた戦いを強いられたという事だ。

 相手が通常の軍隊なら降伏という判断が出来たが相手はブルーコスモス。

 コーディネーター相手に人道的な対応をするわけがない。

 特に奮戦したMS隊の生き残りは、ニコル、レイ、ルナマリアの三人だけだった。

 

 市民の犠牲者も多く、研究所から助け出された子供たちにも多数の死者が出た。

 同じ境遇で生き延びてきたオルガ、クロト、シャニの落ち込みようは激しく、誰もが無言で祈るしかなかった。

 コロニーの外壁には無数の穴が開き、居住区は壊滅。

 崩壊しなかったのが奇跡と呼べるほどの惨状だった。

 修理には膨大な時間と資材が必要だ。

 ジャンク屋のロウ・ギュールたちが昼夜を問わず復旧作業にあたっている。

 

 「これを見てくれよ」

 

 修理の最中、ロウがミラージュコロイド発生装置の制御パネルに不審な工作の痕を発見した。

 その報告を受け、マリューとアリスが駆けつける。

 

 「誰かが短時間だけミラージュコロイドを解除した形跡がある。

  そうでなきゃ、このコロニーの位置は誰にもわかりゃしない」

 

 ロウの報告に、マリューが眉をひそめる。

 元技術士官として、その改ざんが高度な専門知識を要することを理解していた。

 

 「……どうして、そんなことを?」

 

 アリスが静かに答えた。

 

 「きっと、このコロニーごと“研究所の秘密”を葬ろうとしたんだと思います」

 

 マリューとロウは黙って頷いた。

 内部にブルーコスモスへ情報を売り渡した内通者がいたのだろう。

 ミラージュコロイドが解除された直後に敵艦隊が襲来した以上、偶然ではない。

 技術を持つ者の中に裏切り者がいる――。

 マリューたちは、ロウと協力して犯人捜しを始めることを決意した。

 

 「許せません。……絶対に許せません」

 

 普段は冷静なアリスが、握った拳を震わせながら言った。

 オルガ、クロト、シャニはアリスにとって家族同然。

 そして彼らが守ろうとした子供たちは、アリスにとって弟や妹のような存在だった。

 祖父デュエイン・ハルバートンと同じく、彼女も“家族を守る者”の血を継いでいる。

 

 ───一方そのころ。

 

 シンは病院の廊下を駆けていた。

 ステラが目を覚ましたと聞き、息を切らして手術室に飛び込む。

 

 「ステラ!!」

 

 その叫びを待っていたように、病室のベッドでステラが微笑んだ。

 白い包帯に覆われた胸の奥から、かすれた声が漏れる。

 

 「シン……おかえりなさい」

 

 「……ただいま、ステラ……」

 

 「ハウメアの石と……シンの想いが、ステラを守ってくれたよ」

 

 「……よかった……本当に、よかった……」

 

 涙が止まらなかった。

 ステラの傷は深く、胸には手術痕が残っていた。

 いずれ整形して元通りになるが、今は術後なので後日再手術らしい。

 だが医師は言った――“命に別状はない”。

 それだけで十分だった。

 

 シンの隣で、マユがニコルに抱きついて泣いていた。

 

 「ニコルのばかぁ……っ! でも……よかった……生きてて、よかったぁ!」

 

 「ごめんね、マユ。何度も死にかけたけど……そのたび、君の顔が浮かんだんだ」

 

 涙と笑いが入り混じる病室。

 戦場の終わりに訪れた、束の間の安息。

 

 ───ザフト艦ウルージ・医務室。

 

 「……そんなことがあったのね」

 

 ルナマリアのベッドの傍で、妹のメイリンが報告を終える。

 顔色は悪く、化粧では隠しきれない疲労が滲んでいた。

 メイリンは戦闘後の通信管制報告で多くの戦死者の名を見た。

 涙をこらえきれず、見るに見かねたタリア艦長がメイリンに短い休暇を与えたのだ。

 

 「でもね、シンがいなかったら……私もお姉ちゃんも宇宙のデブリになってたんだから」

 

 冗談めかして笑う妹の声を聞きながら、ルナマリアの胸が熱くなる。

 思い出すたびに、胸の奥がざわめく。

 恐怖でも後悔でもない。

 ───あの瞬間、確かに自分の心は救われたのだ。

 

 手が無意識に胸へ伸びる。

 シンの手が触れたあの感触。

 恐怖よりも、温かかった。

 それが何の感情なのか、今のルナマリアにはわからない。

 ただひとつ確かなのは――

 シンがいないと、心が冷たくなるということだった。

 

 「……お礼、言いに行かなきゃね」

 

 メイリンを見送ったあと、ルナマリアはそっと呟く。

 シンに会う理由を作りたかった。

 だけど、彼にはきっと“好きな人”がいる。

 それでも、もう一度会いたい。

 その想いだけが、静かに胸を焦がしていた。

 

 ───その夜、アークエンジェルの艦橋。

 

 外壁修復灯の光が宇宙を照らす中、マリューとアリスは並んで立っていた。

 

 「……また、こんな形で人の罪が浮かび上がるなんてね」

 

 マリューの言葉に、アリスが小さく頷く。

 

 「でも、それでも立ち上がる人がいます。あの少年――シン・アスカがそうでした」

 

 「ええ。彼がいなければ、このコロニーは今ごろ存在していなかったでしょう」

 

 二人の視線が、報告書の一行に止まった。

 《民間人による英雄的行動――シン・アスカ》

 

 ───病院の屋上。

 シンは拳を握り、夜空を見上げていた。

 無数の修理灯が星のようにまたたく。

 

 「ステラを守れた。だけど……まだ終わってない」

 

 崩壊を免れたこの場所を、もう二度と戦場にしてはいけない。

 マユも、ニコルも、ルナマリアも、それぞれの想いを抱えて生きている。

 

 「誰も泣かせない。俺は……必ず、この手で未来を掴む」

 

 静かな風が頬を撫でた。

 暗闇の宇宙に、ひとつの灯が確かに燃えていた。

 それは再生の証――

 そして、少年の“新しい運命”の始まりだった。




変だ、なぜシンちゃんが主人公っぽいんだ。
熱血系になってしまうのはスパロボの影響とマユとステラが生存してるからです。
シン✕ステが止まらない!!
ルナマリアの出番増やさなきゃルナがただの負けヒロインになってしまう。
頑張ってルナマリアを持ち上げせねば。
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