超成長スキルを持って転生したけど、生まれる場所を間違えた 作:ニクニク
俺は学校が終わると、その足で別の学校へとやってきていた。
そこは俺の通う学校から俺が走って三十分ほどにある学校だ。
全力を出せば数分で着くのだが、そんなことをしたら街に相応の被害が出るのであくまで身長二メートル近いゴリラが出していてもおかしくない速度で走ってきている。
服装は、走っているのをランニングだと思わせるため、ジャージ。
俺の高校がジャージ登校可だから、ってのもあるけどな。
楽なんだ、色々と。
んで、学校の入口でそろそろ下校するつもりらしい女子生徒に声を掛ける。
「すまん、ちょっといいか?」
「あ、もしかしてコノリちゃんのお兄ちゃんで、ヒツギちゃんの彼氏さん!?」
その少女は
そして、何やら好奇心旺盛そうな瞳で、俺をしげしげと観察する。
「彼氏……ではないが、コノリとヒツギを探してるんだ。ここで待ってれば会えるか?」
「ふたりともまだ校舎にいると思いますよぉ」
「なら、ここで待ってることにするよ」
「いつもお迎えお疲れ様です。ではまたー」
色々と突っ込むべき状況なのだろうが、俺にとってもこの少女にとっても日常的な光景なので突っ込みが発生することはない。
それからしばらく、俺は校門前で二人を待つことにした。
しばらく待っていると、何人かの生徒が校門から出てくる。
時たま知り合いがいるので軽く挨拶をしていると、中には特徴的な人間の姿も多い。
例えば犬耳の生えている女子や、角の生えている男子などだ。
それらが、普通の生徒と一緒に歩いて下校している。
ここでしか見れない光景だなぁ、と思いながら時間を潰していると――
「にいさまー、コノリがヒツギちゃんを引き連れてきましったよー!」
二人の少女が歩み寄ってくる。
ひとりはヒツギで「引き連れられてないわよ」とか突っ込んでる。
もうひとりは、銀髪の少女。
背丈はヒツギより小さいくらいなので、かなり小柄。
ニコニコと俺に手を振ってくれている――名を曽田コノリ。
俺の妹だ。
「おつかれ、コノリ、ヒツギもいつもありがとな」
「コノリ、ただいま到着いたしましたー! それにしても相変わらず速いですねぇ、にいさま」
「ここまでかっ飛ばしてきたはずなのに、汗一つ掻いてないのはどういう身体してるのよ……」
コノリはとある理由から、ヒツギが通うこの学校に通っていた。
理由ってのは、コノリの銀髪とこれまで見たことでなんとなく説明がつくかも知れない。
「それじゃあ、旧校舎に行くわよ」
「ヒツギちゃん、コノリはこっちの言い方が個人的にすきですわ!」
この学校、鬼之木学園は県内有数の私立校だ。
金持ちの学校に通うからって、口調を若干お嬢様っぽくしつつ俺をにいさまと呼ぶようになったコノリが、その名前を口にする。
旧校舎のもう一つの名前。
「封魔寮鬼之木支部!」
そしてそこは、俺にとっても用事のある場所だった。
◇
日本各地には、封魔寮の支部がある。
それは表向き、学校だったり会社だったり病院だったりして、鬼之木支部は学校を母体にしていた。
だからコノリやヒツギは特待生としてこの学校に通うのだ。
んで、支部には二つの目的がある。
一つは妖魔と戦う封魔師のための拠点。
これはまあ、説明不要。
そしてもう一つは、支部によって目的が異なっていた。
病院を母体にしていたら、そこは妖魔との戦いで傷ついた封魔師の治療施設だし、この鬼之木支部は、まあ中に入れば一発で理由がわかるだろう。
「それじゃあ、次はアタシから行く
俺たちがやってきたのは、運動場。
そこでは先ほど俺と言葉を交わした猫耳少女が、別の
ここは、学生として鬼之木学園に通う生徒達が封魔師としての訓練を送る場所であり、ああいった特殊な外見を持つ生徒が集められた場所でもある。
「ああやって、妖魔の特性を身体に有してる人たちを“半魔”っていうんだっけ」
「あんた、それ何度も教えたんだからわざわざ聞き直さないでよ」
「そもそもにいさま、
そして、コノリもまた半魔の一人……らしい。
俺が封魔師に関わった前後で、いきなり髪が銀髪になり、ヒツギからコノリは半魔である
そう、可能性だ。
本来ならコノリは猫耳や犬耳みたいに身体的特徴を発現していないといけない。
しかも、普通半魔は生まれつき半魔なのだそうだ。
いきなり覚醒する例というのは、ヒツギも聞いたことがないという。
「まあ、俺としてはなんでもいいんだよ。コノリがこうして学校生活を満喫して、ちゃんと友達まで作ってるんだから」
「にいさま! うふふ、コノリもそう思います……わ!」
ちょっとお嬢様口調を忘れかけるコノリの頭を撫でて「子供扱い禁止ー!」と文句を言われていると、不意に周囲の視線が俺に向いたことに気がつく。
ざわ、ざわ……とにわかに周囲が騒がしくなってきた。
「ナリヒト先輩だ……」
「今日もナリヒト先輩が来てくださったんですね……」
だんだんと、周囲に人だかりが出来ていく。
その様子は、端から見ると随分異様な雰囲気である。
まず、俺に対する害意があるわけではない。
むしろ、一部の生徒は俺が来たことを歓迎するような発言をしている。
ちなみにこれは、俺の聴覚が良すぎるために聞こえてきているだけで、実際にはひそひそ話だ。
ともあれ、そんな風に歓迎の様子を見せているにも関わらず、彼等は剣呑なのである。
「俺がまず先に出るから……」
「アタシは援護に徹します……」
ジリジリと、そんな相談をしながら皆は俺に歩み寄ってくる。
さながらそれは、火蓋を切る瞬間を待っているかのような。
ゆっくりと緊張が高まりつつある中、彼等は一様に――自身の得物を俺に向けた。
あとは、何か一つアレばこの膨れ上がった風船が爆発するという状況。
そこに最初の一石を投じたのは――
「あ、にいさま早速稽古ですか! がんばってくださいま――」
「回収――!」
不用意に叫んだコノリと、それを慌てて回収しつつ空中に飛び上がって輪の中から逃れたヒツギだった。
直後――
――周囲の生徒達が、一斉に俺へ襲いかかってくる。
「ナリヒトさん、覚悟!」
「先輩、今日こそ勝たせていただきます!」
無数の生徒が、勢い良く俺に迫る。
これがなにかといえば、模擬戦だ。
この鬼之木学園に在籍する半魔達は、全員が封魔師を兼ねている。
少なくとも、ここにいる者たちは全員がそうだ。
だからこそ、強くなるために放課後は鍛錬しているわけで。
んで、そんな彼等にとって超成長によってスーパーパワーを手に入れた俺は、ちょうどいい訓練相手というわけ。
同格の相手なら周囲にたくさんいるけど、気軽に模擬戦をしてくれる格上は俺しか居ない、ということらしい。
で、俺としても正直それはありがたい話なのだ。
まず、俺はすでに強くなりすぎた、表社会で鍛錬を行おうとしても、絶対にバレる。
山奥でひっそりと鍛錬をしていても、その音が街にまで届いてしまい何事かと思われるのだ。
その点、封魔師の人払いの結界は素晴らしい。
どれだけ激しい音を出しても、周囲に音が漏れないのである。
科学が発展した現在、封魔師は一般人に見つからないよう必死だ。
その努力によって生み出された技術は、俺を大いに助けてくれているというわけ。
他にも、コノリの銀髪とかここにいる半魔達の人外の特徴も、封魔師の認識阻害はどうにかしてくれる。
そんな封魔師の技術に感謝しながら、俺は今日も鬼之木学園を間借りして鍛錬を行うのだ。
かくして俺は、姿勢を少し落として拳を構えた後――
「かかってくるといい!」
勢い良く叫んだのち、拳を前に突き出し――
その拳の風圧で迫りくる生徒たちを全滅させた。
うーむ、ちょっと拳に力を込めすぎたか。
ひとり残らず地面に転がる生徒達を眺めながら、遠くでドン引きしているヒツギと、目を輝かせるコノリに俺は手を振るのだった。
全員ヤムチャみたいになったらしい。