超成長スキルを持って転生したけど、生まれる場所を間違えた 作:ニクニク
「というわけで、今日は封魔師の普段の業務を見てもらうわよ」
「おー、ですわー」
「おー……っていうかこれ、俺いるか? もう複数回見せられてるよな?」
その日は土曜の昼下がり。
俺とコノリはヒツギに呼び出され、鬼之木学園の前に集められていた。
目的はヒツギの言った通り。
封魔師は妖魔と戦うのが仕事だが、常に妖魔と戦っているわけではない。
以前、俺はヒツギにそう教えられたことがある。
「むしろこれは、あんたのためにやってるのよ! 何度教えても毎度毎度やらかすあ、ん、た、の、た、め、に!」
「まぁ、にいさまったら素敵です!」
「や、やらかしてないし……あとコノリは今の発言のどこに素敵要素があったんだ?」
「にいさま素敵です!」
コノリはbotか何かなのか?
あと、俺は常にやらかしてるわけじゃない。
「悪霊の成仏だってとんでもない要素なのよ! 毎度毎度、アンタのために新しく作られた悪霊成仏用のフォーマットにちまちま報告を打ち込んでるアタシの苦労を考えて!」
「俺を食べたすぎる悪霊が悪いと思う」
なんかこう、エクセルにちまちまと打ち込んでるらしい。
封魔師って思った以上に現代化進んでるな……
「それと、別にタダ働きってわけじゃない。今回の研修もちゃんと業務のうちだから、報酬が出るわ」
「封魔師ってなんでこう、ちゃんとしたところは普通の企業みたいになってるんだ? ちなみにどれくらいもらえるんだ?」
「――時給二千円」
「やりまァす!」
「やらせてくださいまし!」
俺とコノリはヒツギ様に頭を垂れた。
俺は各種筋トレグッズと漫画やゲーム、コノリはソシャゲの廃課金ユーザーなのでお互い常に金欠なのだ。
というわけで、早速俺達の封魔師研修が始まった。
◇
「まず、封魔師っていっても常に異界で妖魔と戦ってるわけじゃないわ。そもそも”核”を持つ異界が発生することは割と稀よ」
「そうなのか? 月一くらいで見かけるけど」
「その月一が平均ペースで、毎回巻き込まれてるのがアンタなのよ……! 普通は常に同じ封魔師が発生した異界を担当することはないの!」
封魔師は、先程のやり取りも見て分かる通り、結構ちゃんとした企業倫理に則って動いているらしい。
シフトは存在するし、異界が発生していても全員が強制的に招集されることはほとんどない。
子どもは平気で働かせるし、殉職も定期的に発生するけど、その分給料はべらぼうにいい。
今回の業務だって、人死にが発生する可能性はほぼゼロだけど時給は二千円だ。
「今回私達がやるのは、見回りよ。異界がどこで発生しかけてるか、”漏れてる”妖魔がいないか見回るの」
まず、そもそも異界ってのはこの国の各地で常に発生し続けているわけだが、一つの地域で異界が発生する頻度は月に一回程度。
この異界発生に向けて、封魔師は一ヶ月準備をする。
そして、実際に異界が発生したら出動が決まっている封魔師が対処に当たり、ダメそうなら他の退魔師も招集されるといった感じ。
「それを確認するために必要なのが、霊脈の様子を視ること」
「霊脈ってアレですか? ゲームでよくある、霊力の集まる場所」
「そんな感じみたいだな。鬼之木学園みたいに、特に霊力が集まる場所は霊地って呼ばれるらしい」
「ゲームってのが良くわかんないんだけど」
両親から姉、そして俺達に至るまでどっぷりとオタクコンテンツにハマっている俺達と比べて、ヒツギは非オタだ。
どっちかというとパリピでうぇーいな部類に入る。
いつか洗脳したい、とコノリは真顔で語っていた。
「ただまぁ、鬼之木学園がこの辺りで真っ先に確認するべき大霊地であることに変わりはない。アンタ達にここへ集まってもらったのも、見回りのためよ」
「そして、封魔師のコスチュームに身をまとってお仕事、ってわけですね!」
いいながら、くるくるとコノリは回ってみせた。
現在、コノリとヒツギは制服姿、俺はジャージ姿である。
その上に、一枚の羽織みたいなものを羽織っていた。
袖が長く紋様がキレイで、これを羽織るだけでなんとなく神職っぽく見えるのだ。
簡単な認識阻害の効果もあるらしく、外で着ていても不思議に思われることはない。
「旧校舎のグラウンドが、かなりの大霊地になってるわ」
「そこを最初に調査して、異常があったら現場に向かうんだよな」
「にいさま、詳しいですわ!」
「そりゃ何度もやってるから、そうだろ」
で、俺達はそのグラウンドにやってきていた。
今日は土日なので、人気はない。
若干名、自主トレをしている半魔の生徒も見受けられるが、大多数ではないのだ。
というのも、この自主トレには給料がでない。
放課後にトレーニングをすると業務の一環なので給料が出るが、土日は休みなのでそうではないのだ。
結構現金なものである。
なお、半魔の生徒はこちらに気付いて、チラチラと見ているが声を掛けることはしない。
俺達が業務中だと解っているからだろう。
俺がここへ土日にやってくる理由は業務しかないのも、土日に自主トレをしない生徒が多い要因だろうな。
「というわけで、霊脈を調査するわ。異界っていうのは妖魔が霊脈に”妖力”を流し込んで、乗っ取る形で発生するの。だから霊脈を調べれば妖魔がどこで異界を発生させるか解る」
「方法はどうやるんですか?」
「こうやるんだ、見ててくれコノリ」
「あ、ちょ――」
ここで早速、この研修における先輩である俺の出番だ。
コノリの質問を待ってましたとばかりに、俺はグラウンドへ大の字に寝そべる。
何やらヒツギが言いたげだが、早速俺は”生命力”を霊脈へ注ぎ込むことにした。
「な、何が起こってるんですのー!?」
「いいか、コノリ。霊力ってのはそもそも生命力に神の力みたいなものを混ぜ込んで作るんだ」
「もっと専門用語使って、ちゃんとした解説しなさいよ!? っていうか、いきなり始めるのやめなさいよ! 心臓に悪いから!」
神の力みたいなものにも、確か用語はあったと思うが、そこは一旦割愛でいいだろ。
わかりやすさは大事だろ、と思いつつ。
要するに、霊力も生命力の一種なのだ。
ただ俺が神の力をその身に宿せないため、霊力に一切変換できないというだけで。
コレ自体は、一般人であれば普通なので特段おかしなことはない。
「なので、生命力を活性化させることで霊脈自体を活性化させる」
「それが非常識って言ってるのよ!」
「はわわわわ」
そのまましばらく俺は生命力を注ぎ込み続け、霊脈の反応を見る。
といっても俺は霊脈がどうなってるかはわからなくて、そこを見るのはヒツギの仕事なのだが。
寝そべったまま、俺の腹部辺りを中心に、何かでかい血脈のようなものがどくどく震えていることだけは、解る。
「街のあちこちに悪霊が存在するな。
「は?」
んで、ここで新技発動。
俺は霊力に関するあれやこれやは感知できないが、悪霊の存在はなんとなく察知できる。
あいつら、なんというか執着みたいなものがとにかく強いんだ。
それは言ってしまえば、武術における”気”を垂れ流しているようなもの。
俺の鍛え上げられた肉体なら、その気配を特殊な直感で察知することも可能。
それを更に発展させて、こうやって悪霊を成仏する技を先日思いついたのだ。
「おらっ、逝けっ!」
「はわわわわーーーーっ!?」
そして生命力を霊脈を通して悪霊のいる場所へ過剰に発射することで、悪霊を成仏させていく。
なんというかこう、生命力で生の実感を得て、逝かせるのだ。
んで、それを終えると――
「にいさま、破廉恥すぎます!!」
顔を真っ赤にしたコノリに、怒られた。
なぜ?
「……あのさ」
「なんだ、ヒツギ」
「まずそもそもね、大霊脈にむかって寝そべって生命力を腹部から注ぎ込んでる時点で……絵面が卑猥なのよ」
「え?」
そうか? いや、普通に霊脈に接続するためには体全体の生命力を伝える必要があるから、これが一番効率のいい態勢なだけなんだが?
というか、初めて聞いたんだが?
「今までは、まぁなんかちょっと言いたいことは在るけど、必要なことだし指摘しないでおいたのよ」
「うん」
「けどさ、生命力を射出して悪霊を逝かせてる時点でこう……アレでしょ。あと言動最悪だったわよ、さっき」
「そこまで!?」
いやなんか、それっぽいこと言った気がするけどさ!
そして俺とヒツギのやり取りを見ているコノリと、遠巻きにしている半魔の生徒達はなにやら腹部を押さえてもじもじしていた。
「そして、半魔にとって生命力は言ってしまえば、こう、アレなのよ。それを過剰に発射したら……アレでしょ!」
「アレだけじゃわかんないって!」
「言わせないでよ!」
「ごめん!」
俺、半魔に関してはあんまり詳しくないんだよ。
そもそも封魔師と妖魔のことにしたって、覚えきれてないのにさ。
というわけで、なんか気まずい雰囲気になった霊脈調査の研修は――
「あ、ところで霊脈を駆使して、妖魔を引きずり出す方法を考えたんだけど」
「―――――――は?」
そんな俺の発言に対する、ヒツギのガチで理解できない、みたいな反応でコノリ達の視線がドン引きになることで一応マシになった。
マシになってるかなぁ……?
今度触れますが、コノリが廃課金ソシャゲプレイヤーなのはギャン中だからです。