超成長スキルを持って転生したけど、生まれる場所を間違えた 作:ニクニク
「だからそもそも、封魔師にとっては成仏させるって行為自体が異常なのよ!」
「そりゃまたなんで。幽霊ってのは、なんかこう、満足したら成仏するものじゃないのか?」
「満足したらね。でも、封魔師は悪霊や妖魔にとって敵。敵に攻撃されて満足する奴なんていないし、そもそも霊力が妖魔達にとって最も”忌み嫌う力”である以上、封魔師は妖魔達を成仏させられない」
あのあと、俺は正座をさせられてヒツギから説教を受けていた。
いや、事前に報告せずやったことは謝るけど、別に成仏させる分には問題ないだろ? と思わなくもない。
ちなみに、コノリ達半魔組は未だに顔を赤らめて内股でもじもじしていた。
コノリの視線が痛い。
「だから”封魔”するの。それ故に私達は封魔師を名乗ってる」
「封魔っていうのは、要するに妖魔を封印するってことだよな」
「そう。そして封印した妖魔は、封印の中で力を削がれていくの」
ヒツギは、封魔師の成り立ちをコンコンと俺に語ってくれた。
どれだけ俺が封魔師にとってあり得ない存在なのか、わからせるために。
ちなみに、半魔組はそれはもう顔真っ赤でお互い視線を向けあってもじもじしていた。
コノリは俺だけをみているが。
「そして、一定以上力が削がれた妖魔は、人に転生する。――そうして生まれてくるのが、半魔なのよ」
「なるほどなぁ。結構半魔ってのは危うい存在なんだな、全然そんな感じしないけど」
「基本的には、転生時に記憶は持たずに生まれ変わるもの。極稀に、特級の妖魔が転生した時はまた話が別だけど」
転生。
俺もまたそれを経験した身の上だが、この世界の転生はこの世界の中で完結しているから別物だろう。
でも、転生という言葉自体は被っているわけで、関係ないこともないのだろうか。
ところで、さっきからもじもじしている半魔の女子二人の距離が近いんだけど。
そしてコノリは、どうして「特級」の言葉が出たときにビクッと震えたんだ?
「そして、転生した人間が無事に一生を終えて悪霊化せず成仏することで初めて、妖魔はこの世界から消え去るの」
「俺みたいに、強制的に悪霊を成仏させるのはこう、自然の摂理に反する?」
「それは……なんというか……満足して納得はしてる以上、そこまでは言わないけど……なんか、アレでしょ」
「アレか」
――そんな会話を繰り広げる俺達の後ろで、二人の半魔女子が見つめ合っている。
手を取り合って、絡め合い。
最終的に――あ、抱き合った。
なんか、こう、カップルが成立してないか?
「と、に、か、く! これからはちゃんと、行動を起こす前に報告……というか説明すること! いい!?」
「わ、わかってる。今回は危険がないと思ったからやったけど、絵面が酷かったわけだしな」
「危険がなくても報告してよね! 最終的に私が説明するときに困るんだから!」
というあたりで一旦お説教が終わり、次は俺が何をするつもりだったかの説明だ。
ちなみに抱き合った女子二人は人目につかない方へと消えていった。
「ええと、それじゃあ俺が何をするつもりかっていうと、だな」
「……すぅーーーーー……はぁーーーーーー……来なさい」
「そんなに覚悟を決めなくても……ええと」
俺は少し考えを整理してから、話し始める。
「まず、霊脈って妖魔が生み出す異界とつながってるんだろ?」
「……そうね。妖魔の本拠地である地獄から、霊脈につなげるのよ。方法は妖魔の派閥によって異なるけど、妖力を使うことは変わらない」
妖力は、以前聞いたことが在る。
妖魔が扱うエネルギーで、魔力とは違うもの。
霊力と何が違うのかと言えば、霊力が生命力にプラスのエネルギーをかけ合わせて作るのに対し、こちらはマイナスエネルギーを掛け合わせるのだとか。
生命力を元にしていることには変わりないそうだ。
「そして妖魔が妖力を霊脈に注ぎ込み、汚染された部分が少しずつ膨れ上がっていき――破裂すると、その破裂した部分が異界になるのよ」
「なんか……虫歯を治療する歯科医みたいだな、封魔師って」
「ひいいい、む、虫歯の話はやめてください……ですわー!」
「まぁ実際、虫歯と同じで妖魔は根絶できないから、間違っては居ないのよね……」
さっきまでもじもじしていたコノリが、歯医者の一言で正気に戻った。
基本的に虫歯ができても一週間は放置しようとする往生際の悪い妹をなだめつつ、俺は話を続ける。
「霊脈にしろ、霊力にしろ、妖力にしろ、根底に在るのって生命力なんだよな」
「まぁ、それはそうね。妖魔の根底にあるのは”死”だけれど、死は生がなければ成り立たないし、霊脈は生命力を特殊な形に変換したものと考えれば大体同じものよ。……暴論すぎるでしょ!」
まぁ、そこは正直俺もそう思う。
ただ大事なのは、生命力があらゆる場面に関わっているということ。
ようするに――
「――
――ということ。
なお、案の定ヒツギの反応は「は?」だった。
コノリはなんか、とんでもなく目を輝かせている。
「さっすがにいさま、何言ってるかさっぱりわかりません! エンジンかかってきましたね!」
「おかしなことを言い出すのを”エンジンかかってきた”って表現しないでよ!?」
こほんこほん。
本題に入らせてくれ、コノリ。
「ええと……要するに、だな。例えばさ、拳を強く握りしめると手の中って熱くなるだろ?」
「なりますねぇ」
「それは言ってしまえば、意志の力を燃焼して拳に力を貯めてるようなものだ。そういった意志の力こそ、生命力の源みたいなところがある」
良くも悪くも、生命力とは燃え上がらせるものだ。
そうして生み出された生命力は、時には火事場の馬鹿力を発揮し、時には生き残りたいという気持ちが暴走してしまうかもしれない。
単純で、危険な代物。
だからこそ霊力という力は生まれたのかも知れないし、妖魔は妖力を操っているのかもしれん。
それでも俺にとってやるべきことは変わらない。
「だからそうやって、力を込めて生命力を
「……すごいわ、ここまで聞いて来て本当に何一つ理解できなかったわ」
「え、そうですか? にいさまはいつも通り生命力を使って、霊力とかそういうなんかこう、パワーって感じのものに接触しているだけではないですか?」
「それはそれで、すごいのよコノリ。……多分、封魔師に纏わる禁忌を知らないから、簡単に理解が及ぶのでしょうね」
それはまぁ実際、封魔師と関わり始めて一年程度の俺とコノリ。
馴染めってのが無茶な話だ。
「というか、仮に霊脈を”掴めた”として、一体何をするつもり?」
「それはもちろん、これから解るよ」
言いながら、俺は今度は手を霊脈にかざす形で構えた。
今度からは例の卑猥な方法ではなく、普通に手をかざしてそれっぽくポーズを取る方針に切り替えよう。
二回も連続で俺の正気が疑われては困るのだ。
というわけで、霊脈にかざした手から溢れんばかりの生命力を活性化させる。
そうしていると――
「あ、このあたり虫歯……じゃなくて異界が作られてる形跡が在るな」
「前回、アンタが単独で吹き飛ばしてからもう十日以上。そろそろ下っ端が霊脈を”準備”してると考えれば自然なことよ」
「じゃあさ――」
俺は、一気に腕に力を込める。
此処から先、鍵となるのは生命力ではなく――筋力。
「霊脈を通してその虫歯を
というわけで、早速俺は腕を引っ張った。
霊脈の奥にいる、妖魔の影を引きずり出すべく。
ヒツギは俺をとめなかった。
だから俺は、
どうやら、虫歯は一箇所に集まると合体するようなしくみになっていたらしい。
結果、合体して生まれるのは――異界だ。
ようするに、ここからはこれを破壊すれば良いんだな、単純な話である。
そう思って、ヒツギにあらためて声をかけようとしたその瞬間。
俺はあることに気付いた。
「――――ひ、ヒツギがショックのあまり気絶してる」
どうも、俺がやったことに対するキャパシティが足りず、意識が消失してしまったみたいだ。
結果として、俺はうっかり異界を鬼之木学園の校庭につくりあげてしまい――その対処に追われることとなるのだった。
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