本日より停学明けで復帰した生徒、赤羽業。
彼の席は朝陽の右隣にあった空席だ。カルマとはクラスも違うし関わったことがない。何故かはわからないが『女版赤羽業』と噂されていた事もあって、これが本家か~と興味深く眺める。
「ん?何か用?ってか君、全身傷だらけじゃん」
隣なので当然視線をひしひしと感じたのだろう、食えない笑顔で朝陽に話しかけて来るカルマ。中々整った顔立ちだ。髪も綺麗な赤色で、金の瞳も美しい。こりゃ引く手数多だろうな、うんうんと心の中で頷きつつ、朝陽は元気よく返す。
「私、渡辺朝陽!呼び方は好きにしちゃって!」
「へー、君、噂の。噂では俺と同類扱いされてるみたいだけど、想像してたのと印象違うね~」
「私も本家本元見るの初めてだよ~。いや~、なんか喧嘩っ早いって噂流れてるっぽいけど、私喧嘩なんて一回もしたことないんだよねぇ。不思議だよね~」
「うん、なんか話してるだけでもそういうのとは無縁なんだろうなってのは伝わって来る。怪我もなんかこう、喧嘩で出来るモンじゃなさそうだし。噂の原因は十中八九その傷だらけの見た目と遅刻常習犯って部分のせいじゃね?」
朝陽の不運体質は、実際に目の当たりにしないと信じられない程嘘みたいな体質だ。それが災いして流れた噂である。
「噂からして落とされたのも俺と同じクチかと思ってちょっと楽しみにしてたけど……この感じだと全然違う感じだね」
何となく、自分と似た境遇の子なら意気投合するかもしれない、話が合うかもしれないと期待していた部分があった。だから、聞いていた人物像とは違う事に、朝陽には本当に申し訳ないが、ほんの少し落胆してしまっている。
「私がE組に来た理由って特殊っぽいよ~。ルマルマがここに来た理由が何なのかはよく分からんけど、まぁ明るく行こうぜ!」
特殊過ぎる、今まで呼ばれたことのない呼び方に、カルマは面食らう。が、やがてくつくつと笑いが込み上げる。
カルマと絡もうとする人間は、これまでほとんどいなかった。喧嘩っ早い性格だから、皆遠巻きにするのだ。なまじ顔と頭がいい為、そういう感情を抱いた女子から声をかけられる事はあるにはあったけれど、こうやって愛称をつけて接してくる女子はそうそういない。
面白い、と単純に思った。
「っはは、ルマルマって……いいね。想像とは違うけど、渡辺ちゃん面白いキャラしてるわ」
「マジ?やったぜ。んじゃ、お隣さんとしてこれからよろしく~」
「うん、よろしく、渡辺ちゃん」
友達一人ゲットだぜ!!と思いながらカルマと握手を交わす朝陽であった。
朝陽ちゃんは距離感が近いので、すぐに相手を愛称で呼ぶ。