暗殺教室短編集   作:クリオネf。t

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不運体質オリ主のお話。



不運少女(アンラッキーガール)と五英傑(約1名除く)

 6月。

 雨の多いこの時期も、朝陽の不運体質は遺憾なく発揮される。まず高確率で傘を持って来ていない日に雨が降る。かと言って折り畳み傘を常備していても高確率で破壊する。だが本校舎にいた頃はクラスメイトの誰かが一緒に傘に入れてくれたので割と困った事はなかった。ありがたい話である。しかし車道側を歩くと必ずと言っていいほどタイヤで巻き上げられた水が朝陽を襲うので、結局ずぶ濡れになる。友達が車道側を歩くと何も起こらない。何とも不可思議だ。

 E組に来てからも助けてくれるクラスメイトはちらほらいるが、一人で帰る事も多い。

 今日も今日とて下校途中に不運に見舞われた。まず通り過ぎた車に水をかけられ。その拍子に鞄を落とし、それを避けきれなかった自転車が横転しそうになったので自らその身を差し出して下敷きになった。

 

「きゃー!!大丈夫ですか!?すみません!!」

 

 自転車を運転していた他校の制服を来た女子が青ざめて朝陽に声をかけてくる。

 

「心配いらないぜお嬢さん……寧ろ巻き込んじゃって申し訳ない。怪我は無いかな?」

「い、いえお陰様で……というか本当に大丈夫ですか!?全身ずぶ濡れだし汚れてるし……」

 

 不注意で巻き込んでしまったのはこっちであって彼女に非は無いのに心配してくれるだなんて、なんて良い子なんだ……と内心感動する。

 

「大丈夫大丈夫、無問題!!いつもの事!!」

「いつもの事!?」

 

 これがいつもの事であって堪まるかという感情を滲ませたツッコミを入れられるが、残念ながらいつもの事はいつもの事である。自転車との接触事故は久しぶりだが。

 

「君達、大丈夫かい?」

 

 何とも爽やかな声が聞こえて来てそちらを見やれば、朝陽と同じ制服を来た男子生徒が4名。声の主はトサカのようなツーブロックに端正な顔立ちをした背の高い男子。あとの3人は唇の分厚い男子に全体的に丸っこい眼鏡男子、頭がワカメみたいな眼鏡男子だった。全員見覚えがないのでB組でもE組でも無さそうだ。

 

「何があったの?」

 

 端正な顔立ちの男子生徒が声をかければ、他校女子は薄らと頬を赤く染めて「い、いえ…大した事はなくて…」と言っている。

 

「私がうっかり鞄落としちゃって、自転車で走ってたこの子がそれに躓いちゃったの。咄嗟に下敷きになったからこの子と自転車は無事だよ」

 

 事の経緯を簡潔に説明する。確かに朝陽の制服はずぶ濡れな上に異様に汚れているので、彼等も真実なのだと納得したのだろう。

 

「それは災難だったね…よいしょ」

 

 美形男子が他校女子の自転車を起こす。他校女子は「あ、ありがとうございます。その、わ、私はこれで…!」と言って自転車に乗り直し、物凄い勢いで去って行った。

 その場に残されたのは朝陽と、男子生徒4名。朝陽は去って行く他校女子を暫し見詰める。「ねぇ君」と声をかけられ振り向くと、落とした鞄を手渡された。

 

「ありがとう!」

 

 それにしても、何かお詫びすべきだったのに脱兎の如く走り去って行ってしまったので結局何も出来ずじまいだった。

 

「なぁオイ、こいつ渡辺朝陽じゃね?」

 

 唇男子が朝陽の名を口にする。

 

「本当だ。もしかして他校の女子にイチャモンつけるところだったとか?」

 

 中々に失礼な事を言い出す丸眼鏡男子。はて、全く身に覚えが無い。イチャモンをつけるつもりは毛頭無かったし、これまで誰かにイチャモンをつけた事も無い。朝陽は小首をかしげた。

 

「まぁまぁ荒木。根拠も無いのにそんな事を言うものじゃないよ」

 

 美形男子はそう言うと、自分が濡れるかもしれない事すら気にせず片腕を朝陽の肩に回し自身の傘の中へと入れる。

 

「彼女中々可愛らしいじゃないか。君…渡辺さんだっけ。良かったら僕が傘に入れてあげよう」

 

 初対面で随分と物理的距離の近い男子だなと思いつつ、厚意はありがたいと思った。

 

「でも私既にずぶ濡れだから今更傘さしても手遅れだよ!あ、あと汚れも酷いしそんなにくっついたらキミも汚れると思う!」

 

 バッサリとそう言い切った朝陽に美形男子が目をぱちくりと瞬きさせる。

 

「でも気持ちは凄く嬉しい!ありがとう!」

 

 何とも元気いっぱいな朝陽に全員面食らう。面食らっていた理由はそれだけでは無いのだが。

 

「あと申し訳ないんだけどキミ達誰?」

「はぁ?お前俺達の事知らねーの?」

「いやー、面目無い。人の顔と名前憶えるの苦手なんだよ〜」

「E組は記憶力もE組だな!」

 

 記憶がE組とは、随分なパワーワードだ。

 

「誰にでも得手不得手はあるものさ、小山。渡辺さん、僕は榊原蓮。そっちの丸っこい眼鏡が荒木鉄平、モジャモジャの眼鏡が小山夏彦、唇が分厚いのが瀬尾智也」

「唇分厚い言うな!」

「僕等は特進クラスA組の生徒であり、定期試験でもトップ5を独占する"五英傑"と呼ばれるグループさ」

 

 何だかよく分からないが、四天王のようなものだろうと考える。五英傑と言うならあと1人いるはずだが。

 

「4人しかいないよ?」

「1人は今不在なのさ。彼は用があって今日は一緒には帰れなかったから」

 

 トップも大変なんだな〜と他人事のように考えている朝陽だが、彼女も毎回トップ10に入る実力を持つ秀才である。この能天気さと不運体質も相まって皆忘れがちなだけで。

 

「そーなんだね!ありがと、とりあえず私帰るから!」

「えっ」

 

 ひゅるりと榊原の腕から抜け出した朝陽は、「それじゃ!」と手のひらを顔の横に上げて颯爽と去って行った。……かに思えたが。何もないところでずべしゃっと転ぶわ、再び車に水をかけられるわ、植木鉢が足元に落ちてくるわ、見るからに散々な目に遭っていた。

 

「……え、何あれ」

「……わからん」

「そういやB組の奴等、あいつは不運なだけだって言ってたがあの感じマジなのか」

「よく生きてんなあいつ……」

 

 流石の五英傑も理解が追いついていない。自分の預かり知らぬところで同情されている事など露知らず、今日も元気な渡辺朝陽なのであった。




後に呼ばれるこの4名の愛称
荒木鉄平→ヒロヒコ
小山夏彦→ナツくん
榊原蓮→レンレン
瀬尾智也→セオトモ
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