球技大会。
ここでもE組の差別待遇は変わらない。トーナメント表にE組は入っておらず、代わりにエキシビジョンマッチで男子は野球部、女子はバスケ部と戦うというのが恒例行事。いわば見せしめだった。
だが忘れてはいけない。何と言っても朝陽はミラクルアンラッキーなのだ。そんな彼女が球技をやるとどうなるか?
「あでっ」
ピーッ!
必ず転び、必ずシュートする。
殺せんせーの暗殺しかり、こういう時に発生する不運はある意味好運を招く。周りは唖然。B組の生徒は「流石渡辺ちゃん!!」と何故か褒め讃えている。いいのかそれで。見せしめにするはずが勝っているという状況。本校舎の生徒なら不満に思うはずだが、朝陽が関わるとB組生徒はそれでも構わないようだ。相変わらずどうなっているんだか。
結果、バスケはE組が勝利を飾った。
「朝陽ちゃんの不運体質ってホントに不思議だよね……今回めちゃめちゃ助けられた気がする」
「いやいや、皆が頑張ったから勝てたんだよ!私は転んでばっかだったし!でもそれが少しでも力になってたなら良かった!」
当の本人は能天気にそう言うが、得点の半分以上を彼女が取っている。朝陽がいなかったら惜しいところまではいってもギリギリで敗戦していたかもしれない。
「さて、男子野球はどーなってるかな」
E組が戦う野球部といえば、主将は朝陽の元クラスメイト。B組の進藤一考だ。勿論現クラスメイトも応援しているが、進藤の事も応援している。是非皆頑張って欲しいものである。
紆余曲折あったものの、何とかE組の勝利に終わった。本校舎生徒はつまらなそうに悪態づいている。
敗退してしまった事で絶望したように地面に座り込む進藤に、杉野は目線を合わせて「ゴメンな。ハチャメチャな野球やっちまって」と声をかけていた。朝陽は物陰から成り行きを見守る。
「でも、わかってるよ。野球選手としてお前は俺より全然強ぇ。これでお前に勝ったなんて思ってねーよ」
「……。だったら…なんでここまでして勝ちに来た。結果を出して俺より強いと言いたかったんじゃないのか」
「……。んー…渚は俺の変化球練習にいつも付き合ってくれたし、カルマや磯貝の反射神経とか皆のバントの上達とか凄かったろ。でも、結果出さなきゃ上手く伝わらない。…まぁ、要はさ。ちょっと自慢したかったんだ。昔の仲間に、今の俺の
杉野の言葉を聞いた進藤は憑き物がとれたように笑みを浮かべた。
「覚えとけよ杉野。次やる時は高校だ」
クラスが違えども、同じチームから外れようとも。2人は今、確かに心の通じあった友人だった。美しき友情かな。
「よかったねぇ。カズくん、トモトモ!」
話がまとまったようなので、朝陽は物陰から飛び出て2人の元へ駆け寄った。
「渡辺」
「お前皆と戻ったんじゃなかったのかよ」と杉野が苦笑する。
「っ、わ、渡辺。…俺は。その…」
朝陽の姿を視界に入れた進藤は、何故か言葉を詰まらせていた。おや、と杉野は思う。いつも堂々としている進藤が珍しい。
「……情けねーとこ、見せちまったな」
眉と目尻を下げ、気まずそうにそう口にした。
「いやいや、カッコよかったって!!負けちゃったのは残念かもしれないけどさ、それでも一生懸命やったんでしょ?ならそれでいいじゃん!!人生これからこれから!!気持ちアゲてこ!!」
バシバシと進藤の背中を叩く朝陽と、「カッコいい…そ、そうか…」と頬を染めている進藤。これはもしかして、もしかしなくても。
「…なぁ進藤。ちょっと」
「何だよ、まだ何か用があるのか?」
杉野は進藤を連れて朝陽から離れ、こそっと耳打ちした。
「お前、もしかして渡辺の事好きなのか?」
その瞬間、進藤が耳までぶわっと赤く染めて「な、何でもいいだろ」と答えになっていない答えを出した。だが、答えを知るにはそれだけで充分だった。
「そうかそうか…」
うんうん、と頷く。杉野も神崎という一人の女子生徒に片想い中の身である為、何となく気持ちが分かるのだ。
「わ、渡辺には言うんじゃねーぞ」
「分かってる分かってる」
ライバルとして、友人として。そして同じく片想いするものとして。杉野は進藤を応援する事を決めたのであった。