世界征服を企みたくて!   作:バクテリオファージ卍

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映画が待ち切れないので投稿


プロローグ

 世界の全てを手に入れたいと思った。

 

 人も、物も、自然さえも自らの前に傅かせ、万象を赴くままに支配したいと――そう思った。

 

 だけれど現実というのは厳しいもので、個人の力でそんな欲求が叶うはずもなく。有史以来最高の金持ち、イー□ンマスクでさえ世界の全てを手に出来ていないわけで……武力でも政治でも世界征服を成し遂げた人間などいやしないことからも、それは自明という奴だった。

 それでも私の中にある抑えの利かない“征服欲”は、現実を無視して歳を重ねるごとに増大し――ある日突然、はじけた。

 

 社会人一年目の私は、世界征服を掲げて秘密結社を組織した。

 

 何を馬鹿な、と思うかもしれない。

 しかし私は実際に世界征服を目指したし、それに続く同志たちも続々と集まったわけで、この集団を表すとするならば秘密結社と言う他ないだろう。

 最終的に秘密結社の構成員は100人を超え、ちょっとした新興宗教ぐらいの規模感まで膨れ上がった。

 その活動内容は正に悪の秘密結社と言うべき所業で、拉致監禁拷問各種人体実験に兵器製造のフルコース!我ながらちょっと悪の秘密結社すぎるなと思ったが、ガチガチの法規社会である現代日本において、正攻法では世界征服など夢のまた夢。仕方のないことだった。

 

 しかしいくら仕方のないこととは言え、流石に悪の秘密結社すぎたらしい。

 

 私たちの結社の情報はたちまち噂として世間に広がり、警察と公安と、それからもう一人厄介な者を呼び寄せることとなってしまった。

 

 まあ、全ては過ぎたことだ。

 

 つわものどもが夢の跡……私の大事な仲間たちは血だまりの中に沈み、ピクリとも動かない。みんなで頑張って作った地下秘密基地には、もう私と“もう一人”の他に生きている者はいなかった。

 

 ――もっとも、近く私も逝くだろう。

 

 脳天をバールのようなもので叩き砕かれた私に、残された時間は限りなく少ない。

 

 かすむ視界は、眼前に立つ黒ずくめの少年を捉えて離さない。突然襲撃してきたかと思えば、見境なく全てを殴り殺した狂人……“もう一人”とは、彼のことだ。

 

「巷を騒がせる悪の秘密結社、その蛮行は裏社会にも伝わり、ついには陰の実力者が動く! ……いやー、なかなか良い感じに陰の実力者ロールできたんじゃない?

 

 何よりシチュエーションが最高だった。やっぱり本物の秘密結社は一味違うね! まさか人体実験で生物兵器を作ってるなんてさ! 悪の秘密結社過ぎてテンション上がったな~。流石の僕も生物兵器相手はちょっと危なかったよ。

 

 うん、これからももっと精進しよう。具体的には魔力とか探してみよう。I need more power……なんちゃって」

 

 少年は目の前の惨状のことなど意にも介さず、そんな気の抜けた独り言を漏らすばかり。狂人め。

 まあ、私も人のことを云えた口ではないが。

 なんせ21世紀の世において、本気で世界征服を企んだのだから。

 その結末が同じ狂人に殺されるというというのなら、それもまた本望だ。

 

「つまり僕が何を言いたいのかって、『ありがとう、楽しかった』ってことなんだけど……あれ、もう聞こえてない感じ? 僕が誰かに心から感謝を伝えるなんて滅多にないのに、ちょっとガッカリだ。

 

 なら、もう一思いに殺してあげるよ。

 

 本当は殺しは警察に目を付けられそうで嫌なんだけど、でも悪の秘密結社ならその統領は殺しとかないとね。そして出来れば改造手術を受けてサイボーグとなって蘇り、再び世界征服を志してほしい。だって僕はそういうベタな展開が好きだから。

 

 そしたらまた僕が阻もう。

 

 陰の実力者として。

 

 その時はきっと、もっと強くなっていて欲しい。主にフィジカル面で。ごめんだけど、肉弾戦出来ない悪の秘密結社はちょっと予想外だった。生物兵器は手強かったけどね」

 

 そして再び振り下ろされたバールは、私の頭蓋を完全に粉砕した。

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