スイーパー・メランコリア   作:太市

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昔から変身ヒーローが好きです。
うだうだと悩みを抱えながらも覚悟が決まり切ってるヒーローが好みです。


綺麗な手からは程遠く

20XX年、世界各地の上空に巨大な穴が空いた、異世界へと続く大穴が。

そこからやって来た様々なモノは世界に大きな影響を与えた、良くも悪くも。

 

異世界からやって来た妖精は人に対しとても友好的で多くの魔法技術を人類にもたらした、だが当然と言うべきか敵対者も異世界からやって来ていた。

 

魔族、妖精と敵対していた彼らは人類に対して攻撃を始めた。直接危害を加えるのはもちろん様々な方法を用いて。

 

そんな魔族に対抗するため作られたのが魔法少女だ、妖精と契約を交わして融合し強大な魔法の力を得る存在。少女限定なのは技術的な問題ゆえではなく妖精の性癖の問題、種族全体の共通認識としてキラキラした女の子以外と一つになりたくないらしい。微妙に納得出来てしまうのが実に嫌だ。

 

魔法少女は魔族と戦い人を守る仕事、けれども、残念ながら、そんなのは建前でしかない。

魔法の力を悪用する魔法少女がいて、それを狩る魔法少女が必要、その事実はどう取り繕っても変えられないのだ。

 

 

 

 

 

「どうして犯罪者は夜中にコソコソ動くんだろうね、どう隠れた所で末路は大体一緒なのに」

 

草木も眠る丑三つ時、表通りの繁華街も静かになり始めた頃合いに人もほとんどやって来ない奥まった裏路地には血の匂いが漂っていた。

残念ながら世の中は綺麗事だけでは進んでいかない、どうしたって汚れ役が必要な時がある。

それは魔法少女なんてファンタジーな存在が現れた今でも変わらない世の無情さだ。

いやむしろ人の手に超常の力が転がり込んでしまったからこそ、世の中の汚さや闇はより酷くなってしまったのかもしれない。

 

「救いなんて無いよ。君が選んだ結果の果てだ、君は受け入れなければならない」

 

目の前をぼんやりと見ながら魔法少女へ私は告げた。彼女の罪状は簡単に言ってしまえば魔法の力の悪用、タチの悪い犯罪組織に目をつけられて手を貸してしまった訳だ。

病気に侵された家族を助ける為に彼女には金が必要だった、彼女への支援をしないと魔法省は決めた。

彼女にはそこまでの価値がなかった、それだけのこと。

何なら余計な重荷がなくなればもっと精力的に働いてくれるだろうくらいは考えていたかもしれない、理由はどうあれ人の心が無いのは間違い無いが。

手を差し伸べたのは悪人だった、その手を彼女は取ってしまった、それを許すほど魔法省は甘くない。

 

「ふざ…けるな、それしかなかったんだ。お前達が…見捨てたせいだろうが!!」

 

そして私も彼女を可哀想だと思ってはいるがそれを理由に容赦したりなんかしない、ぶっちゃけこの程度であればよくある話だ。

今まで似たような子達を仕事だからとしっかり殺ってきたのだ、残念ながら例外にするだけの何かを彼女は持っていない。

 

 

怒りと憎しみを滾らせながらこちらへ向かってくる、魔法でしっかりと強化をした上で得意の接近戦で私を殺そうというのだろう。

自己強化が得意な魔法少女は素で頑丈な上にそれを盛れるからとにかくタフだ、長期戦になりやすく相手をするのがとてもめんどくさい。

けれど残念ながら面倒止まりでしかない、私と彼女の間にある実力差はそれはもう大きい。才能の差はどんなところでも残酷だ。

 

連続で繰り出される槍の刺突を余裕をもって避ける、直撃したところでダメージにはならなさそうだ。痛いのはヤだから避けるが。

彼女の顔色はどんどん悪くなっていく、ボロボロの体を魔法で無理やり動かしているのだから当然だ、戦闘の時間が長引くほどに勝ち目が無くなる。

 

「諦めないことを選んだのは君自身だろう、諦めればこうはならなかった」

「オマエェエエエエエエエ!!!!」

 

その怒りとは裏腹に槍の動きは少しづつ精彩を欠いてゆく、穂先を掴んで止めてしまえる程に。振り払う力も無いようだ。

それは明らかな隙だった。

 

空気弾(エア・ガン)貫穿(ピアッシング)

属性魔法は私が得意とするところ、風属性の弾丸を放つ魔法にアレンジを加えて貫通力を上げる。

人を殺すのに過剰な火力は必要ない、頭蓋を貫いて脳に風穴を空けるだけの威力があれば十分だ。

あっさりと彼女は崩れ落ちた。

 

「ろくな仕事じゃないよ、本当に」

 

焼却(バーン・アウト)

念の為に死体をしっかりと燃やす、形も残らない程に。

昔、時限式の蘇生魔法を仕込んでいた人がいて仕損じたことがある。同じ失敗はしない、死体の損壊が酷くなれば蘇生の成功確率は下がる。

死体はただの焦げ跡になった、ここまでやれば終わりだろう。

彼女が蘇生魔法なんて使える訳ないから間違いなく無駄な行為だ、なのだが一回のやらかしが大問題になったせいで死体はその場で処理する決まりになった。

…ここまでされなきゃいけない程、彼女は罪深いのだろうか?

 

「終わったかブラン」

「はい、つつがなく上官」

少しぼんやりとしていたところにやって来たのは私の上司、真っ黒なスーツを着込んでフルフェイスのヘルメットを被り不気味に佇んでいる。ボイスチェンジャーの設定を変えたのかまた声が変わっている。そんなに自分の身バレが怖いなら様子を見になんてこなければ良いのに。

 

「よろしい…お前の仕事は早くて助かる。後の事はやっておくから帰ってよろしい」

「了解しました、お疲れ様です」

 

業務終了の指示が出たのでそのまま帰ることにする、今日も今日とて心が重い。

私の名前は白銀透子、魔法少女レイジィ・ブランとして活動する17歳女性。

表沙汰に出来ない黒いお仕事を専門にしている悪い魔法少女だ。

 




簡単解説

魔法
現状では魔族と妖精、魔法少女だけが使える技術。
ただ魔法少女に関しては妖精から与えられている力のため本来の魔法とは大分仕様が違う。
努力次第で誰でも覚えられる汎用魔法と先天的な資質が必須な固有魔法の二種類に分けられる。
地球の生物には魔力を扱う器官が無いので絶対に使えない。
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