ガンダムビルドダイバーズ外伝 Re:LOADED_DESTINY 作:A-Kye[アキ]
[ミッションスタート]の音声と共に、夜の森林地帯でガイキは愛機イフリートを駆る。
前方からNPCの機体が2機。
イフリートは携えた2本のヒートサーベルを構えると、月の祝福を受けたような眩い蒼白い軌跡が、瞬く間にNPCを静かに斬り裂く。
『増援を確認』
「よし、想定通りだな。移動する」
『フェイズ2に移行、狙撃支援要請』
コンソールから響く女性の声―サポートAIであるF.I.O.から、後方で待機していた相棒に指示が飛ぶ。
その間に、ガイキは増援を誘い出し、草原地帯へと移動する。
「1機、足の速い奴がいるな」
マップに表示された敵性反応のうち、先頭の一つだけ後続の3倍ほどの速度で追撃してきていた。
『インフェルノモードにおける高ステータスエネミーと推測』
ミッションには難易度が上がるとパターンが変わるものがある。制限時間が短かったり、敵の増援が増えたり、護衛対象の耐久値が少なかったりと多岐にわたる。
今回はNPC1機のステータスが高くなるパターンのようだ。
「そいつは後回しにしよう。マディル!」
『あいよ、準備はできてるぜ』
森を抜けた先、月明かりに照らされた花畑で相対する。
先行してきた1機はイフリートにまっすぐ狙いを定め、ビームライフルを撃ちながら接近してくる。
「手数、それに耐久値はやはり高いな。が、所詮はNPC」
振り下ろされたビームサーベルを回避し、そのまま残りの2機に向かう。
その無防備な背中を見逃すほどNPCもバカではないが、彼は一人ではない。
構えたビームライフルを一筋の閃光が貫く。
認識範囲外からの攻撃に怯むNPC。その間にガイキは遅れてやってきた2機を斬り伏せる。
残った1機は雄叫びのような動きを見せると、突如さらに動きが速くなった。
「おっと…なるほど、最後の1機になるとさらに性能が上がるか」
一瞬で間合いを詰められ斬りかかられたが、ヒートサーベルで何とか受け止める。
「が、速いだけでは!」
鍔迫り合いの最中、NPCの頭部に向かって腕部グレネードを放つ。ダメージは期待できないが、隙を作るのには十分だった。
NPCは思わず後退りし、大きくのけぞる。
『おまけだ、もってけ!』
援護射撃がNPCの右脚を吹き飛ばす。ガイキはそのまま大きく倒れる機体を一刀両断する。
満月の夜、花弁が舞う中に[ミッションコンプリート]と共にクリアタイムが表示された。
『お疲れ様でした。マスター』
「ああ」
納刀しイフリートを降りると、後方支援していた相棒の機体―ヴォルフガンダム Mk.RS9が合流する。
そして降りてきた男性ダイバーのマディルと共にリザルトを確認する。
「あれくらいだったら直接撃ち抜いてもよかったかもな」
「だな。その分もう少しタイムを縮められそうだ」
ガイキ達はフォース「ラストカナヴン」を率いて、日夜ミッション攻略に明け暮れている。
簡単攻略法からRTAまで、幅広く行っており、知り合いの G-TUBERを介して情報発信している。
「どうする?もう一度やってからカルパッチョに報告するか?」
「そうだな…まぁ誤差の範囲内になりそうだし、このまま行こう」
「分かった」
マディルがデータを整理している間に、ガイキは少し近くを散策する。
仮想空間というのを忘れてしまう程に、精巧に再現されたフィールド。この現実と非現実が入り混じった世界は、人を感傷的にするには十分だった。
「勝ちに拘らなくていい世界。お前は…こんな世界をどう思う?」
月の光に照らされて佇むイフリートに語り掛ける。
かつてGPデュエルという、実際にガンプラを動かしてバトルする競技が盛んに行われていた。
実際に戦っては壊れ、直しては戦い、また壊れる。この繰り返しは間違いなく青春そのものであった。
時代がGBNへ変わろうともガンプラバトルは存在し、実際この世界にもチャンピオンと呼ばれる最強の人物はいる。
しかしガイキ達にとって、新天地に来てまで同じことをする事に意味を見出せずにいた。
それが、ガイキ達が、「ラストカナヴン」がミッションを専門として活動している所以なのだ。
「…らしくないな」
ガイキは、自分の顔を一発叩き気合を入れる。
そろそろ終わっている頃だろうと、マディルの元へ戻ろうとした矢先…
ドゴォオオオオン!!!
突如爆発音が鳴り響き、少し先のあたりでいくつもの土煙が上がっていた。
「なんだ?」
すぐにF.I.O.を呼び出す。
『付近で戦闘が起こったようです。ガンプラと思しき反応が4つ。いずれもダイバー反応があります』
「この辺りのフォース戦の予定は?」
『本日の予定はありません』
「野良か……」
GBN、その正式名称である「ガンプラバトル・ネクサスオンライン」が示す通り、このゲームはガンプラバトルが主力のコンテンツだ。
ちゃんと枠組みのある公式戦のようなものもあれば、その辺にいるダイバーに喧嘩を吹っ掛けることもできる。
状況からして、この場合は後者だろう。
ガイキはイフリートに乗り込み、マディルに通信を繋ぐ。
『どうする?』
「ただの野良試合ならいいが、ここら辺のミッションは通常難易度が低いものが多いエリアだ。少し嫌な予感がする」
『最近物騒な噂をよく聞くしな』
「F.I.O.、反応の動きは取れるか?」
『先ほどエリア一帯のスキャンが終了しました。リアルタイム情報、共有します』
F.I.O.はコンソールにマップを開き、ガイキとマディル、そしてマーカーを4つ表示させる。
マーカーは、1つを3つが追う形で、少し先の渓谷エリアを移動していた。
『渓谷エリアは初心者用ミッションが一番多いエリアなことから、高確率で初心者狩りと推定します』
「だよなぁ…」
初心者狩り。その行為自体は古くから存在するマナー違反の代名詞だが、最近GBN内でも問題視されるようになっていた。
それに加えて、何やら正体不明なガンプラを使う連中までいるとか。
「このままにしておくのも後味悪いし、行くか」
『了解した』
「F.I.O.、念の為ケレスを呼んでおいてくれ」
『分かりました』
「よし、行くぞ」
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広く長い一本道が続く渓谷エリア。
そこを1機の赤い機体が、3機のドムに追われていた。
「どうしてこんなことに…」
赤い機体―バーザムを駆る少女ユイリィは、必死に機体を走らせていた。
今から少し前、このエリアで機体調整も兼ねて低ランクミッションをこなしていた。
最初のうちは順調にクリアしていっていたが、レアアイテムらしきものをドロップした時、どこからともなく乱入してきたあのドム3機がアイテムを寄こせと襲ってきたのだ。
噂に聞く初心者狩りかとしみじみ実感している。
「くそ!あのバーザム、なんて速さだ。こっちは陸上最速のドムだぞ!」
「このバーザムをご存じでない!?」
相手の発言に思わず反応してしまった。
ユイリィの駆るバーザムはいわゆるRE-BOOT版、その中でもレジオン鹵獲機と呼ばれるものだ。オリジナルのバーザムとの違いは、今現在進行形でその性能を発揮している脚部のホバーユニットだろう。
その走破性能は目を見張るものがあるが、それでもユイリィのバーザムは素組である。じりじりと差を詰められていく。
「きゃぁあああ!」
脚部に攻撃が直撃し、大きく吹き飛ばされてしまう
「ようやく追い詰めたぜ、このアマ!」
1機がヒートサーベルを構え近づいてくる。
「最後だ、今すぐアイテムを寄こせ」
「く……」
ここで素直に渡せば楽になる。だけど、どうも難儀な性格だ。今、とてつもなくこう言いたい。いってやりたい。
「……断る!」
「なっ!てめぇ、状況分ってんのか?」
「分かっています。あなたたちのような下劣な連中に屈してはいけないということが!」
「なら望み通り消してやる!」
眼前にまで迫ったドムは、バーザムへ向けてヒートサーベルを振りかぶった。
しかし、それが振り下ろされることは無かった。
どうも、A-Keyです
悲運なことに、創作関係のデータが吹き飛んでしまい、続きを書くことができず失踪しておりましたが、何とか復帰することが出来ました。
0からのスタートになり、まだ本調子ではないですが気ままにお待ちいただけると幸いです