ガンダムビルドダイバーズ外伝 Re:LOADED_DESTINY   作:A-Kye[アキ]

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第二話

 ヒートサーベルを振り上げたドムのプレイヤーは、さぞかし勝ちを確信していたことだろう。

 

 だが、慢心は人を盲目にする。

 

 倒れ込んでいるバーザムの右手に装備されていたビームライフルにグレネードランチャーが付いていたことに気が付かなかったのだ。

 

 そうして放たれた一発が、両腕ごとヒートサーベルを吹き飛ばし、ドムはとっさに後退した。

 

「ば、バカな!俺の腕がぁ!」

 

「嘘だろ…こっちはステータス弄ってんだぞ。向こうもチートしてんのか?」

 

 そんな会話が聞こえてくる。堂々と不正行為を自白したうえでそれを棚上げとは、心外である。

 

「チートですって!そんなことするわけないでしょ!」

 

 破損したホバーユニットを切り離し、何とか立ち上がる。この脚ではこれ以上逃げることはできない。ダメージが通るなら、立ち向かう方が賢明だろう。

 

 バーザムはビームサーベルを携え、臨戦態勢を取る。

 

「ビギナーのくせに…。こんなのまぐれに決まってる!同時攻撃だ」

 

「了解!」

 

 腕を吹き飛ばされた1機を下がらせ、残りの2機がヒートサーベルを構え、スラロームで接近してくる。

 

「確かにGBNは始めたばかりだけど…」

 

 グレネードの弾種を切り替え、ドムの進路上に放つ。それは数歩手前に着弾し、たちまち火の手が上がった。焼夷弾だ。

 

「メカアクションゲームはそれなりにやってきてるのよね!」

 

 焼夷弾の炎を前に急停止した隙を突いて一気に間合いを詰めると、戦闘の一機を斬りつける。

 

「そ、そんな……」

 

 格下と見下してた相手にやられた絶望感に抱かれながら爆散する。

 

 もう1機が爆炎もろともヒートサーベルで斬りつけるが、バーザムはすでにその間合いにいなかった。

 

「バトルに関しては、あんたたちの方が素人ね」

 

 バーザムの姿を確認した時には、すでにその身体は貫かれていた。

 

「ドノーマルの低ランク風情に…やられる…?」

 

「チートだか何だか知らないけど、そんなんで強くなった気でいる相手に、負けるわけないわ」

 

 なにやら恨みつらみを叫んでいたようだが、爆発恩にかき消されデータの塵となっていった。

 

 あとは手負いの1機だけ。放っておいても大丈夫だろうと帰路に着こうとした瞬間。

 

「調子になるなよクソガキィ!」

 

「なっ…!」

 

 その1機が目の前に現れ、今まさにヒートロッドを振り下ろしていた。

 

 両腕は確かに破壊した。それがなぜ修復しているのか、その疑問を浮かべる暇もなく、凶刃が迫る。

 

 その時だった。

 

「悪いが、ここでエンドマークだ」

 

 真っ二つになったのはドムの方であり、その後ろには紅いイフリートがその蒼白い刀身を振り下ろしていた。

 

 一瞬何が起きたのか理解できぬまま、ユイリィは唖然と立ち尽くす。

 

『大丈夫か?』

 

 イフリートからの通信で我に返る。こちらに向けられている青い眼光に少し警戒しながら、ユイリィは答える。

 

「はい…。でも、どうして…」

 

『近くで仲間とミッションをしていて偶々見かけたんだが、怪しい雰囲気だったから様子を見に来たんだ。最近何かと物騒な話が多かったし』

 

 そういいながら、イフリートは周りを見渡す。

 

『見かけた時、反応はあと2つあったはずだが…』

 

「それなら私が倒しました…」

 

『倒した?それはすごいな。とんだルーキーを敵にして、連中も運が無かったか』

 

「この子の性能のおかげです」

 

「(謙遜…とは言うまいな。それにしても、あの脚のダメージで良く戦えたものだ)」

 

「あの…」

 

『あぁすまん。このまま立ち話もなんだ、ロビーまで送っていこう』

 

「ありがとうございます。えっと…」

 

『あ、まだ自己紹介してなかったな。俺はガイキ』

 

「私はユイリィって言います」

 

『よろしくな、ユイリィ。んじゃ、行くか』

 

 そういってガイキはバーザムに肩を貸すとそのまま何もない空中へとジャンプした。

 

 一見何をしているのか分からず混乱するユイリィだったが、そのまま見えない何かの上に着地した。その瞬間何もない空間が、巨大な揚陸艦へと姿を変えていった。光学迷彩だ。

 

『ようこそ、工廠揚陸艦ケレスへ』

 

 

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「すごい……」

 

 ユイリィは自分の愛機が、格納庫に収まっている様子を見て、この艦の作り込み驚嘆していた。

 

 実力をつけてランクを上げれば自分の拠点をもてるとは聞いたことはあったが、ここまでオリジナルの拠点、それも揚陸艦クラスの移動拠点を手に入れるのに、いったいどれだけのビルドコインがかかったのだろうか。

 

「そんなに驚いてくれるとはな」

 

 バーザムの修理を手配していたガイキが戻ってきた。

 

「ガイキさん。いいんでしょうか…ここまでよくしてもらって。なんだか申し訳ないです…」

 

「これも何かの縁だ、気にするな。それに…」

 

 ふとガイキがユイリィの背後に視線をやる。

 

「?」

 

 不思議そうにユイリィも後ろを振り返ると、そこには、嬉々としてユイリィのバーザムを見上げている2人組がいた。

 

「リテシア!バーザムだぞ!しかも RE-BOOT版、レジオン鹵獲機仕様と来た!」

 

「ええ!みなまで言わなくても分かるわ!この機体を選ぶとは、センスしかない!」

 

 と、大盛り上がりである。

 

「あれはいったい…」

 

「うちのフォースラストカナヴンの仲間だよ。ごつい傭兵風なのはマディル。その隣がリテシアだ。二人共TRシリーズ大好き人間でな。運んできた途端あーやって語り合ってるわけだ」

 

「えぇ…」

 

 自分もTRシリーズは大好きだし、それで愛機にバーザムを選んだわけだが、熱量が圧倒的比では無く、ユイリィは少し引いてしまっていた。

 

「あはは…初めて見るとその反応も当然だな。だがTRシリーズの使い手って割と少数派でな、同士を見つけて嬉しいのさ」

 

「そうなんですね」

 

 確かに、先ほど襲ってきた連中も、バーザムであることは分かっていたみたいだが、ホバーユニット付きなのは知らなかった。

 

「ほれ、あれ見えるか?あの二人の機体だよ」

 

「え…あれって!」

 

 ガイキが指さした方、そこに鎮座していた機体を見た瞬間、ユイリィの目が輝く。

 

「リーベン・ヴォルフに、フライルー!」

 

 その感嘆の声に、マディルたちがこちらに気づく。

 

「あなたがあのバーザムちゃんの主人ね。お名前は?」

 

「ユイリィです」

 

 リテシアは「ユイリィちゃん!」とユイリィに思わず抱きつく。突然の抱擁に思わず顔を赤らめるユイリィ。その後ろでマディルは大笑いしていた。

 

「お、おい…お手柔らかにな」

 

「おっと、これは失礼。つい気持ちが高ぶってしまいましたわ」

 

「…大人の弾力…」

 

「大丈夫か?」

 

「え、あ、ハイ大丈夫です」

 

「というわけで、ガイキ。彼女ちょっとお借りしていきますわ」

 

「え?」

 

「あ、ちょっと…」

 

 ガイキどころか当人の了承も得ぬまま、リテシアはユイリィを連れ去っていった。マディルも「俺に任しておけ」みたいな顔で一緒について行ってしまった。まぁ、そう悪いようにはならないと思うから大丈夫だろう。

 

「やれやれ…。さて、F.I.O.」

 

『ここに』

 

 目の前にコンソールが開き、同時に先ほどの戦闘データが表示された。

 

「お前はどう見る?」

 

 ユイリィを襲ったドム3機。F.I.O.のスキャンしたデータには、明らかに異常なステータスが出ていた。GBNには機体性能を一時的に上げるスキルやアイテムは存在する。だが、それでは説明できないほどの数値になっているのが気がかりだった。

 

『勝手ながら、彼女のバーザムに記録されていた音声データを解析し、その結果彼ら自身が不正を自白している旨の発言を確認しました』

 

「いつの間に…まぁいいや。これはさすがに言い逃れできない程真っ黒だな。アカウントデータは取ってるな?」

 

『抜かり無く』

 

「よし。そのデータをマギーさん経由で運営に報告しといてくれ」

 

『分かりました』

 

「それにしても…最近ほんと増えてきたな」

 

『プレイ人口の増加に伴う弊害かと』

 

 GBNはチャンピオンの存在が確立されてから益々の盛り上がりを見せていた。リアルが忙しいと、最初の誘いを断っていた友人もいつの間にか始めていた程だ。

 

 人気になり人が増えれば、良いことと比例して悪いことも増える物だ。

 

「なるべく見つけたら対処するようにするか。運営はあまり信用できないしな」

 

『GBN運営は放任的ですからね』

 

 「ちがいねぇ」と苦笑いする。ユイリィみたいに自分で対処ができるようなダイバーなら幾分かましだろうが、そうでないなら最悪GBNどころか二度とガンプラに触らなくなってしまう可能性が出てくる。それはGBNを楽しむ者として誰一人望まぬものである。

 

『……マスター、カルパッチョ様より通信が入ってます』

 

「タイミング良いな。繋いでくれ」

 

 コンソール画面が切り替わると、独特な笑い声と共に青いツインテールをなびかせた女性が映し出された。

 

『ニシシシシ!元気してる?リーダーさん』

 

 通信の相手はカルパッチョ。ガイキ達の攻略情報を世に発信しているG-TUBERであり、当人も高い実力を持つハイランカー。人気もそれなりに高く、発言力のある人物だ。

 

「お前からかけてくるなんて珍しいな」

 

『なぁに。最近会ってないから寂しがってるんじゃないかと思って、かけてあげたのよ』

 

「なるほど…で、用件は?」

 

 カルパッチョがこういうジョークを言ってくる時は大抵何かの頼みごとがある時だ。

 

『つれないねぇ。少しはノッてくれてもいいじゃん』

 

「俺はそういう柄じゃねぇよ」

 

『まぁいいわ、それじゃ本題。ある人を追って欲しいの』

 

「人探し…というより、追って欲しいとは穏やかじゃないな」

 

 カルパッチョの表情もいつになく真剣だった。

 

『実際、それなりに由々しき事態にはなってるかな』

 

 そう言って、コンソール画面に1枚の画像が表示される。そこには、大勢のダイバーに囲まれている一人の少女が映っていた。

 

「こいつか。一見特に追うような奴には見えないが…」

 

『ガイキは最近GBNで蔓延してるもの、知ってるでしょ?』

 

 その問いに、思わず眉間にしわを寄せる、ついさっき遭遇してきたばかりだ。

 

「…ああ」

 

『そいつはね、”それ”を堂々と配信でやっててG-TUBER界隈がめちゃくちゃ迷惑してるの。とっ捕まえてお灸を据えてやりたいのよ』

 

 需要は人の数だけある。内容はどうであれ、登録者数も再生数もかなりある時点で、それだけ多くの人の支持があるということだ。だが、同業者からしたら沽券にかかわる問題だ。最悪コンテンツの滅亡が待っている。それだけはなんとしても止めねばならない。

 

「お前の口からお灸なんて言葉が出てくるとはな」

 

『……今その話はいいでしょ。アタシはちゃんと足を洗ったわよ』

 

 カルパッチョが少し目をそらす。去るGPデュエル時代に、彼女もガンプラを不正改造して様々な店舗で暴れまわっていたことがあった。最終的にガイキ達に叩きのめされ、文字通りお灸を据えられていた。

 

「ああ、分かっているさ」

 

『はぁ…話を戻すわよ。とにかく、こいつを好き勝手野放しにしておけない。かといって運営に持ちかけても証拠不十分で突き返された。だからなるべく現行犯を押さえたい』

 

「現行犯ねぇ…」

 

 GBNは広大だ。似たような場所もある以上、配信を見ているだけでは活動場所の特定など不可能に近い。それこそ、フレンド登録でもしていない限り。

 

 ふと、ガイキの脳裏にアイデアが浮かぶ。これだけの人気者だ。彼女を慕うファンは大勢いるだろう。その中で、彼女とフレンドになっている奴が一人でもいれば、そいつから居場所を聞き出せる。

 

「まるでお使いミッションだな。それで、こいつはなんていうんだ?」

 

『そういえば言い忘れてた。彼女の名は……』

 

 

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「さて、今日もこの宇宙一可愛いリリムちゃんを楽しませて♡」




最後に登場した美少女はいったい誰なのか
気になる方は今すぐ真莉藻先生(ID:317249)の「ガンダムビルドダイバーズ 〜お狐メイド長のGBNライフ〜」をチェックだ!
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