ガンダムビルドダイバーズ外伝 Re:LOADED_DESTINY 作:A-Kye[アキ]
ガンダムビルドダイバーズ外伝 Re:LOADED_DESTINY
第三話
GBN総合受付のあるエリアから少し離れた郊外にケレスは着陸した。
直接寄港することもできるが、なにせ2つと無いフォースネスト故、変に目立つのは避けたい。
修理の終わったバーザムを搬出し、ユイリィとのあいさつをする。
「なんかいろいろお世話になりました」
「またお話しましょ」
「はい!」
そうして別れの挨拶をするが、ユイリィは何やら少しモジモジしていた。
「あの。ガイキさん!」
「ん?」
ガイキは突然名前を呼ばれて、少し身じろぐ。
「あの、改めて助けていただいてありがとうございました!それで…なんですけど…」
徐々に言葉に詰まる彼女に、少し困惑する。その様子を見てリテシアが助け舟を出す。
「ここに来る間、私たちの戦闘映像を見せてあげたんだけど、ガイキくんの背中を見て憧れちゃったのよね」
「そ、そうなんです!それで…」
一度深呼吸をする。ちゃんと自分で言うんだ。リテシアお姉様との約束でもあるこのことを。
「私、これから一生懸命頑張って強くなって、ランクを上げてきます!だからその時は…」
ガイキの目をまっすぐ見る。
「私をラストカナヴンに入れてください!」
ユイリィの決死の告白に、ガイキは一つため息をつく。
「なんだ、そんなことか」
ガイキは優しくユイリィの肩に手を置く。
「もちろん、構わないさ。それに。もう俺たちは仲間だ。ランク上げた後と言わず、いつでも遊びに来い」
「あ、ありがとうございます!」
「そうだ。それならフレンド登録しておかないとな。俺らは定住しないから、このままじゃケレスに来るのが大変だ」
「確かにその方がいいですわね。ちなみに私はもうしてますわ」
どうやら意気投合している間にさっさと済ませていたらしい。マディルもあの様子だと同じくもうしてあるのだろう。抜かりの無い奴らである。
ユイリィは律儀に一人ひとり回って登録しようとしていたが、後でゆっくり承認するだけでいいだろうか、F.I.O.にメンバー全員の申請を送ってもらった。
空欄だったフレンド一覧が一気に埋まって、ユイリィはご満悦な様子だ。
「ありがとうございました!」
「ああ、またな」
最後にもう一度だけお礼を言うと、彼女は颯爽と去っていった。展開されたホバーユニットが景気のいい音を響かせる。
「いいねぇ、余裕の音だ」
「マディル。呆けてないで行くぞ」
「あいよ」
見えなくなるまで見送ったのち、ケレスは新しいミッションを受領すべく発進した。
次のミッションは最近試験的に実装されたレイド形式で、二人一組の合計20人がボスへ挑むというものだ。中規模なミッションだが報酬が中々おいしい為、ひそかに倍率が上がり始めていたのだが、カルパッチョが配信者優先枠を勝ち取り、今回参加することができたのだ。
「お、きたきた」
開始地点には先にカルパッチョが待機していた。
ケレスはカルパッチョの機体、ガンダムドローレスのそばに着陸した後、1機のMSを発進させるとそのままミラージュコロイドを展開した。
「相変わらずね。まだ人目を避けてるの?」
カルパッチョは、発進してきたMS、GセイバーFFの操縦者―リードに尋ねる。
「俺たちは平穏な余生が送りたいだけだよ」
ラストカナヴンは、身を削るような激しいバトルが無い穏やかなGBNライフを送ることをモットーにしている。そして何よりも、リーダーのガイキが目立つことを嫌っている。
「じじくさーい」
「もうジジィだよ、ある意味」
そんな冗談を言い合ってると、ミッションの開始時刻になった。
「ニシシシシ!それじゃあ 行くよ!」
ドローレスがその場で変形し、その背にGセイバーが騎乗する。GセイバーFFは今回砲撃戦仕様でかなりの重装備だが、それをもろともせずドローレスはフィールドを突き進む。
「出力上がってるな。改良したのか?」
「ちょっとね。うさぎちゃんの力を取り入れてみたのよ」
「なるほど。こいつは快適だ」
レイドボスの眠る最深部は少し距離がある。このミッションでは、その道中で他の参加者と当たるようになっており、レイドとは言いつつも半ばバトルロイヤルの様相を呈している。
砲撃戦装備を選択したのは、この形式が主な理由だ。
参加者全員が協力的とは限らない。最初からボスよりプレイヤーを狙いに来る場合もある。その為、リードが固定砲台のごとく砲撃していれば、少なくともカルパッチョはボスまでの移動に専念できるのである。
木々生い茂る森林地帯を見下ろしながら順調に進んでいると、一筋の閃光がGセイバーを掠める。
「来たか!」
敵の姿は見えないが、こちらの目的はあくまでボスただ一つ。攻撃が来た方向を中心に大きく迂回していく、
「当てるつもりだったんだがな……」
閃光を放った正体、スナイパーライフルを携えた迷彩色のサーペントが離れていくリード達を秘かに追撃する。
「なんだあれ。アビスが空飛んでやがる」
隣を追走する EWAC仕様のトーラスが補足したその珍妙な光景にトーラスのダイバーは思わず驚嘆の声が出る。
「元々アッシマーに似てるとか言われていたんだ。飛んでいても違和感はない」
「そうか?」
「撃墜すれば同じこと。さして問題ではあるまい」
トーラスと共有した位置情報を基にGセイバーをロックしたサーペントは、バックパックに大量に搭載したミサイルを一斉射する。
「目の良い奴がいるみたいだな」
リードは見えない敵からのロック警告と共に背後から迫りくるミサイルを迎撃する。
「やっぱり潰してから行った方が良くない?」
「メインの弾薬は節約したい。機体は固定してあるからこのまま速度は上げてくれ」
「りょーかい」
ドローレスは両肩シールドに増設したブースターを点火し加速する。
「対象が速度を上げた。逃げられる」
「こちらに気が付いているのか…」
サーペント達も併せて速度を上げるが、その差は開く一方であった。
「振り切れそうだが、念には念を。借りるぞ」
リードはドローレスのバックパックに装備されていたメガビーム砲を取り外し、先端に拡張バレルを取り付ける。
「ミサイルの方角からして…この辺か」
コンソールを操作して大まかな位置に目標設定する。
「速度合わせ、ロック固定、出力安定、偏差…ヨシ!」
Gセイバーがトリガーを引く。ひと時の静寂の後大出力のプラズマ収束ビームが射線上に生い茂る木々を焼き尽くす。
そして、発射の反動でドローレスはさらに加速。戦域を離脱し、目的地へ向かった。
「ば、化け物か……」
大きく一直線に抉れた跡の傍ら、サーペントが1機だけ鎮座していた。相方のトーラスは回避が間に合わずチリとなった。サーペント自身もほぼ半身を焼かれ、まともに動くことすらできない状態だ。リタイヤはやむ無しだろう。
「多くの公式戦やフォース戦を経験してきたが、未だあのような強者がいようとはな…」
サーペントのダイバーは満足げにミッションのリタイヤボタンを押そうとした。その瞬間、突如サーペントの機体が切り刻まれた。
「な…!?」
「あははは! リタイヤなんてもったいない。そのポイント、リリムがもらったげる」
狂気を無邪気で隠したような笑い声をあげながら、それは現れた。
「お前は…一体…」
消えゆく機体の中で必死で相手の正体を確認しようとしたが、その努力空しくミッションから追い出されてしまった。
「思ったよりおいしくないなぁ…。ま、あんな雑魚ビームに当たるくらいだから仕方ないか」
リリムはそそくさとその場を後にし、リード達の後を追った。
「ミッションの報酬もポイントも、ぜーんぶリリムのものなんだから♡」
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リード達がミッションを進めているのと同時刻。
ガイキは単独で別のエリアを探索していた。
「この辺りか?」
『マスター、あれではないでしょうか』
F.I.O.が指示した先は一見何の変哲もない森林地帯であったが、不自然に空間にゆがみが出ていた。
ここは今進行しているミッションエリアの境目。
ミッション開始からしばらくしてF.I.O.がデータの流れに違和感を感じ、様子を見に来たのだ。
『無理やりこじ開けて侵入しているようですね』
「何か痕跡みたいなものは拾えそうか?」
『状況分析してデータを持ち帰ることはできますが、あまり期待できるものは…。このゆがみも、もうすぐ自然消滅します』
「そうか…」
全くの無駄足では無かったにしろ、良い成果があったとも言えない歯がゆい結果となった。
こうなっては、これ以上ここにいても意味はない。F.I.O.に取れるだけのデータを取らせ、ケレスに戻ろうとした矢先、耳に突き刺さるくらいの怒声が響き渡る。
「紅いイフリート!そこで何をしている!」
『敵性反応!緊急回避!』
声が響いた方へ機体を向けた瞬間、F.I.O.が咄嗟に機体制御を奪った。そして回避運動をする最中その頭部を一発の弾丸が掠めていく。
「おっと…すまんF.I.O.、助かった」
『いえ、これくらいは。それより…』
「ああ、いきなり撃ち込んでくるとは、礼儀知らずがすぎるだろう」
「悪党に礼儀など必要ない」
声の主はゆっくりと木々の陰からこちらへ歩み寄ってくる。
「悪党だ?いったい何を根拠に」
「先ほどミッションへの不正アクセスが検知された。そしてその現場にお前がいた。それが動かぬ証拠だ」
イフリートと相対するその機体。白と紺で塗装された明るい色をしているが、こちらを睨みつける紅い眼光がすべてを物語っている。
『敵性機体、ブルーディスティニーと推定。既に EXAMシステムが起動状態にあります』
「そりゃみりゃ分かるが、あのエンブレムは確か…」
ブルーの左肩に刻印されている左目が義眼の眼光を放つ王の顔のエンブレム。GBNをやっている人ならもはや知らない人はいない、”チャンピオン” クジョウ・キョウヤが率いるフォース「AVALON」の物だ。
「ランク1位のフォースがこんなことで動いているとは想定外だったな」
「言い訳はあとで聞く。おとなしくしてもらおう」
ブルーはビームサーベルを抜き、猛スピードで迫る。
「問答無用ってか。さすが、その傲慢さは折り紙付きだな」
「傲慢だと…!我らAVALONを侮辱するか、この極悪人が!」
ガイキの言葉に、ブルーのダイバーは激昂し攻撃が激しくなる。無茶苦茶に振り回しているように見えて中々隙が無い。最強のエンブレムを背負うだけのことはあるか。
しかし、ガイキにとってはまだまだ粗削りな青臭さの残るものだった。
かつて経験した連撃は悪魔のような苛烈さを誇り、決して無傷では捌ききれないものだった。今でも鮮明に思いだす。そういえばあいつもGBNを始めてたんだっけな。
『マスターの集中力低下を検知。余裕とはいえ、油断は禁物です』
「おっと、すまんすまん。あまり時間をかけてる暇はないし、相手をしてやるか」
「舐めるな!」
ブルーはビームサーベルを振り下ろすが、イフリートはホバーを吹かし踊るようにブルーの背後へと回り込むと、足元を少し小突き、体勢を崩させる。そしてその首元へヒートサーベルを突き付ける。
「このまま大人しく退いてくれれば楽なんだが」
「誇り高きAVALONは敵からの情けなどには屈しない!」
「言うと思ったよ。すまんが、討たせてもらう」
蒼白く輝く一閃が、ブルーの胸元を突き貫く。
「貴様の機体とエンブレム。覚えたからな!必ず制裁を下してやる!」
親の仇でも見たかのような恨みつらみを吐きながら、白いブルーはデータの塵となっていった。
ガイキは一息つくと、矛を収め、帰路に着く。この一戦が、より大きな戦いへの序章となるとも知らずに…。
主軸となる各陣営が出そろいました。いったいどうなっていくのやら。