お風呂上がり。
窓の外には外観を照らす月と星が瞬いていて、照らされた雪はまるでダイヤモンドのように煌めく。
一面に敷かれたダイヤモンドの光はキラキラと反射し、夜の物静けさがよりいっそうの雰囲気を醸し出す。
冷たい廊下に長居していると、折角温まった身体が冷えてしまいそうだ。
私は洗面所から持ち出したドライヤーを部屋まで運び、窓を鏡替わりに髪を乾かした。
長い髪を丁寧に手櫛でほぐしながらベットに座る。
いつものように十文字先生の小説を読もうと手を伸ばすと、同時に扉からコンコンと調子の良い音が鳴った。
「おーい。ドライヤー貸してくれー」
「あ、すいません。部屋に置きっ放しでしたね」
湿った髪をタオルで拭きながら、先輩はドライヤーを受け取った。
パジャマ姿で濡れた髪の先輩の姿はどこか庇護欲を唆らせる。
「そうだ!ちょっとドライヤー返してください!」
「あ?ほいよ」
「へへー、はい、先輩。ここ座ってください」
「……何言ってんだ?」
私はベットの真ん中辺りに座りながら先輩を手招いた。
生憎イスなんてない部屋だから、先輩にもベットに座ってもらうしかない。
「髪の毛乾かしてあげます!私の前に座ってください」
「……。髪くらい自分で乾かせるわ。早よドライヤー返せ」
「おっと。このドライヤーは私の右手に寄生しましたよ」
「そしたらぶった切ってやる」
「もー!素直に座ってくださいよ!明日も早いのにうだうだうだうだ!ちょっとは私の身にもなってください」
「俺が悪いの?俺も明日早いけど…。もう何でもいいから早く乾かしてくれ」
少し乱暴にベットへ座ると先輩は私に背中を向けた。
先輩から香るボディソープの匂い。
いつものコーヒーの匂いも好きだけど、この匂いも好きだなぁ。
私は熱風を出すドライヤーで先輩の髪を乾かし始めた。
細く柔らかい髪が風に煽られ四方八方に散らばる。
気づくと毛先が少しカールしていた。
「へぇ、先輩って天然なんですね」
「ちょっとだけな。毛先がクルってなるんだよ」
「いいですねぇ天然パーマ」
「鬱陶しいだけだがな。…ストレートなおまえが羨ましいよ」
「えぇー、パーマの方が良くないですか?」
「ならかけりゃいいだろ。パーマくらい2.3時間で出来ちゃうんだろ?」
私は自分の髪を触りながら考える。
確かに何かの起点に髪型をばっさり変えるのもいいかもしれない。
今がその時かも…。
「変えてみようかな…。先輩はストレートとパーマどっちが好きですか?」
「俺はストレートが羨ましいよ」
「……聞き方を変えます。私はストレートとパーマ、どっちが似合うと思いますか?」
「……。まぁ、どっちでもいいんじゃないか?」
「うわぁー、男として最悪な回答ですね。なら柔らかくしましょうか。ストレートな私とパーマな私、どっちが好きですか?」
「柔らかくなってねぇじゃん。……、見慣れた分、ストレートの方がいいかもな」
「ほう。ストレートの私が好きですと。なるほどなるほど」
「えらい誘導尋問だな。ほれ、もう乾いただろ。俺は部屋に戻るわ」
「……はい。おやすみなさい」
私は立ち上がろうとした先輩の背中に抱きついた。
「……うん。これじゃぁ戻れないよね。おまえが離してくれないと戻れないよね」
「ならここに居ればいいじゃないですか」
「新手の一休さんかよ」
「その髪型のままでとても可愛いよ。って言ってくれないと離れません」
「かーいーよー。そのゆるふわな髪型」
「……バカにしてます?」
「うん」
私は先輩の背中越しに窓の外を眺める。
失われることのない月光が弱々しくなったと思うと、分厚い雲から小さな雪がちらちらと降り始めていた。
今夜も寒くなりそうだと思いながら、腕の力を強める。
「さて、寒くなってきましたしもう寝ましょうか」
「……だから離せよ」
19/42days
fate zeroってやつ見ようと思ってTSUTAY行ったんだけど見つからなかった笑
だれか内容教えて笑
次話、悪魔降臨。
10-20-30-40daysで重要人物出演。