A memory for 42days   作:ラコ
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前進と後退

 

 

救いの手を差し伸べてくれるのは決まって先輩だった。

 

華奢なのに力強く

 

冷めているのに暖かく

 

独りなのに慕われている。

 

大半の人間が身を守るために嘘をつく。

でも、先輩は誰かのために嘘をついた。

自分が傷つくことにも構わずに、彼は誰かのために必死になった。

 

私が先輩を頼ると、先輩は決まって

 

『自分でやれ』

 

と言う。

 

突き放すように言われた言葉は、彼の本心であって本質ではない。

 

『自分でやってもだめなら助けてやる』

 

私はそう解釈していた。

 

上辺だけを救ってくれる人達とは違った。

そんな先輩と奉仕部の皆さんに、私は憧れ、いつしか……。

 

 

「この喫茶店。先輩にとっては陽だまりのようなあの部室そのものなんですね」

 

「……、喫茶店は喫茶店。部室は部室だろ」

 

 

雨に雪が混じり、とても不快な雨音が窓を叩きつける。

今夜から明日の未明にかけて降り続けるそうだ。

閑散とした店内で、私は弱い光を放つ間接照明を見つめる。

先輩の顔を見ないようにするためだ。

 

 

「先輩は、この喫茶店であの頃と同じように3人で紅茶を飲む日を待っているんです」

 

「……」

 

「本当のことを……、教えてください」

 

「聞いてどうする?」

 

「……私も一歩、踏み出します。踏み出したいんです。だから聞かせてください」

 

 

先輩はため息を一つし、ティーカップを持ちながらカウンター席に座った。

 

 

………

……

.

 

 

 

ーーー3年前

 

 

34/42days - 968day

 

 

「へぇ、あなたがバイトをするなんて。平塚先生が聞いたらお泣きになるんじゃない?喫茶ガヤくん」

 

「それは罵倒なのか?」

 

「でもさー!素敵な喫茶店だよねー!!」

 

 

私と由比ヶ浜さんは、地図にも乗らないような小さな喫茶店を見つけた。

路地裏に位置しているにも関わらず、窓の外から入る日の光で店内は満ちていて、コーヒー豆の香りが鼻腔を擽る。

どこか、あの部室のような雰囲気に似ていなくもない。

 

ただ、この店を見つけたのは偶然ではない。

 

小町さんから店名と住所を聞いていた。

あの比企谷くんがバイトを始めたと言うから。

 

 

「ふむ。MAXコーヒーさえ置いていれば100点の喫茶店だな」

 

「あなた、まだあの甘いコーヒーを好んで飲んでいるの?」

 

 

比企谷くんの後ろで店長らしい方が暖かく微笑んでいる。

あの比企谷くんを雇うなんて、彼はどこかネジが外れているのだろうか。

 

 

「ふふ。比企谷くん、あとは頼んだよ。僕は妻のお見舞いに行ってくるから」

 

「うっす。……、奥さん、体調どうっすか?」

 

「なに、心配をすることはない。彼女はもともと身体が弱くてね。数日もすれば退院するさ」

 

 

そう言い残し、彼は前掛けだけカウンターに脱ぎおき店を出て行った。

どうやら奥様がご病気らしく、彼はよく店を空けるのだと。

 

 

「店長さん優しそうだねー」

 

「そうね。比企谷くんを雇ってくれるなんて神か仏か……」

 

「……、まぁ、親切な人だよ」

 

 

少し憂いを満ちた目。

彼は店長の出て行った扉を数秒眺めていた。

どこか昔、彼がこんな目をしていた時があったと、私は頼りない糸を引っ張るように記憶を探る。

 

 

「で?おまえらは帰らないの?」

 

「帰らせたいの!?ヒッキー!私、抹茶フラペチーノ!!」

 

「……。ふふ。私はドゥサールエ ショコラティー」

 

「……そんなのねぇよ」

 

 

 

糸が引き千切れるように。

千切れた糸が溶けるように。

私の頭から些細な疑問は綺麗に無くなった。

きっと、久し振りに揃った3人に舞い上がっていたせいだ。

 

 

 

 





fate早くやらないかなぁ。
あと3ヶ月かー。
長いなー。





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