星渡りの魔女特急便。あと猫。   作:穴熊拾弐

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第11話 惑星カドミラ⑤/星龍商会

 

 

 

 ティハンさんに告げられたのは、まさかの輸送の依頼だった。

 どうして私に……ううん、そんなことより!

 

「あの、怪物ってなんですか……!?」

「ふふん、気になるだろう?」

「勿論!」

 

 さっきのヴァルさんのこともある。

 まさか、本当にいるの? 宇宙怪獣……!!

 

「これを見ろ」

 

 ティハンさんが指を鳴らすと、机の天板が開いてそこから映像が浮かび上がった。

 ヴァルさんの家でも見た、カドミラの全体図だ。

 

「実はな、氷と岩しかないこの惑星にも生きているものはおるのだ」

『あの氷の谷に生物が?』

「うむ。まあ、元々は我々開拓民が持ち込んだものなのだがな……」

「?」

 

 惑星の映像が地表部分に拡大され、この融天(ユウル)から西に進んだ先で止まる。

 巨大な渓谷が浮かび上がり、真横に別の図――生物が映された。

 それは、長い紐のような姿をしている。幾重にも重なった鱗に覆われ、ただ頭部や尾は冷たく硬そうな金属の身体をしている。

 生き物のような、機械のような……不思議な姿だ。

 

「なんですか、これ?」

氷蛇(サーペント)だ。元々はテラプラントの連中が開発した、氷床や岩盤を掘り進んで鉱脈を探す改造生命体だったんじゃが……事故で野生化してしまっての。今ではこの一帯を住処にして、近づいた者に襲い掛かって来るのよ」

「それは……大変ですね」

 

 魔女の家でいうと、自動人形たちが勝手に街をつくって暮らしてる、みたいなことかな?

 近づいたら襲い掛かって来るなんて、とっても恐ろしい状況に……。

 

「うむ。しかも厄介なのが、今言ったこの蛇どもの性質なのよ」

『性質。鉱脈を探すというものですか?』

「そうじゃ。こいつらは鉱脈に反応するようにできている。つまり、こいつらの一大コロニーができているこの谷は、とんでもない規模の鉱脈が眠っておるということじゃの」

「なるほどー」

 

 野生化しても元々の機能は変わらないんだね。

 鉱石が欲しくて星を開拓する企業にとっては、とっても大事な場所に違いない。

 

「それを手に入れたくて、テラプラントと協力してなんとか駆除を進めてるんじゃが……その前哨基地で問題が起きておる」

 

 融天(ユウル)の西、ルステルより離れた場所に前哨基地の光点が灯る。

 そこから僅かに西に進んだ先が赤く塗られる。どうやらここに蛇の巣があるようだった。

 

 が、今はその手前――前哨基地と融天(ユウル)の間も赤く塗られてしまっている。

 これって……。

 

「もしかして囲まれちゃったんですか?」

 

 問いかけに、ティハンが煙とともに大きく息を吐き出した。

 

「そうなのよ。どうも奴らはこちらの基地を認識しておるようでな。恐らく鉱脈の周辺にある邪魔な異物を排除する機能が反応したのだろうが……基地を囲んで破壊するつもりの様じゃ」

「大変じゃないですか! 直ぐにいかないと……」

「ああ、そこは問題ない」

 

 立ち上がろうとした私を、ティハンさんが手を挙げて押しとどめた。

 

「奴らが入り込めない様、基地は堅牢に造っておる。外に出なければ安全よ」

「あ、そうなんですね……」

 

 そうだよね、そんなに大変な事態だったらとっくに動いてるよね。

 

「今、こちらからの討伐隊も編成中じゃ。時間はかかるが基地の連中も助かる……が、それだとちと基地の物資が足りなくなりそうでな」

「なるほど、そこで私たちの出番ってわけですね!」

「うむ。奴らは金属に敏感でな。我々の輸送艇では堕とされる可能性が高い。なにせ基地があるのは地下――氷と岩に囲まれた奥。空中から近づくのは不可能な場所にあるんじゃ」

「……!!」

 

 この星に来てからずっと見てきた、氷と岩の渓谷。

 そこにはいくつも穴が空いていて、深く奥まで続く地下道が沢山あるようだった。

 元々存在したり、掘り進められたりしてできたその道が無数に張り巡らされた地下空間は、何も知らずに迷い込めば二度と出てこられないくらい複雑なんだろう。

 

 ルステル氷下街は谷間にあるから外と繋がっているけど……そうか、氷下街によってはそれこそ地中に埋まってる場合もあるんだ。

 その前哨基地もそうみたい。

 

 ……それが、地中を掘り進める半機械生物に囲まれている?

 ティハンさんは平気そうに言ってるけど、想像より大変な状況じゃない?

 

「故に道中は上下左右、あらゆるところから蛇が襲い掛かって来る。避けて進むのは非常に難しいのだ。……そこで、お主に頼みたい。どうか、必須の物資だけでも届けてもらいたい」

「そういうことならお任せください!」

 

 小惑星帯の次は、沢山の蛇が襲ってくる氷と岩の地下道の突破。

 宇宙と違って速度は控えめだけれど、その分複雑怪奇な地下を飛び回るのは楽しそうだ。

 ……あ、そうだ。それなら――。

 

「ティハンさん、この仕事の報酬なんですけど」

「ん? なんじゃ、欲しいものでもあるのか?」

 

 あれ? なんだかティハンさんの身体が震えた気がしたけど……まあいいか。

 

「実は、教えて欲しいことがあって」

「……? なんじゃ、遠慮なく聞いてみろ」

「あ、いえ! ここじゃなくて……戻った時に聞いてもいいですか?」

 

 聞きたいのは、ヴァルさんたちのために私ができることだ。

 だから本当は直ぐに聞きたいんだけど……今はヴァルさんがいるから、戻ってきてからにしよう。

 

「ふむ、了解した。ではそうしよう」

「ありがとうございます!」

 

 よし決まった、と手を叩くと、ティハンさんが立ち上がって机に戻る。

 そこにあった機械を手に取って――誰かに何かを告げていた。

 

「のう、ユミル。もし良ければこのまま運んでくれるかの。(ぼん)は儂らの方で送り届けておく故」

「え? ……はい。勿論大丈夫ですけど」

「なら頼む」

 

 今からか。

 随分急だけど……私としても早めにこれから何ができるか聞けるのは助かるしありがたい。

 基地の人たちも大変そうだし、急いでお届けするとしよう。

 それで話が終わったということでヴァルさんも私も立ち上がる。

 

「ユミル、大丈夫か? 疲れてないか?」

「いえ、全然大丈夫です! まだ起きたばかりですし、お菓子も食べて元気いっぱいです」

「……そうか。なら平気だな」

「はい!」

 

 ティハンさんのお話も面白かったし、なによりお菓子が美味しかった。

 それぞれどんなお菓子なのか聞き取りも完璧。星龍商会なら大抵どこでも買えるみたいだから、色んな星で味わえるだろう。

 ふふ、ここに来られて良かった。

 

魔女(ウィッチ)ユミル、格納をお願いいたします』

「あ、了解ー!」

 

 ビビちゃんを鞄に入れていると、ヴァルさんが声をかけてきた。

 

「ユミル、昨日言った通り、その仕事を終えたらこの星を出て、他の星を見てくるといい。ビビに近くの星について教えておいたから」

「そうなんですか? シシルさんたちともまだお話したかったのに……」

 

 この仕事を終えたらまた工房に行ったり、この融天(ユウル)も見て回るつもりだった。

 昨日来たばかりで今日そのまま旅立つなんて、少し早すぎる気がするけれど……。

 

「なに、そんなに急ぐ旅でもないんだろう? 俺たちはしばらくエンジンづくりに集中するから、それが終わるころにまたおいで」

「……あ、そうでした!」

 

 ヴァルさんたちはこれからが忙しいんだった。

 なら邪魔しちゃいけないね。言われた通り、色んな星を見て、また後で戻ってこよう。

 

「依頼、気を付けてな」

「ありがとうございます。ヴァルさんもお気を付けて」

 

 ヴァルさんと別れて、地下にある格納庫へと案内された。

 そこには昨日運んだ様な金属のコンテナが置かれていた。

 その横に立っていたスタッフさんが、こちらへと近づいてくる。

 

「道中の坑道図、氷蛇の性質や生態情報に関してはこちらの記憶装置(メディア)に纏めております。そして、こちらが基地に届ける物資になります。基地についたら、この目録を渡していただけますか?」

「わかりました」

魔女(ウィッチ)ユミル、差し込みを頼みます』

「はーい」

 

 ビビちゃん本体がぱかりと開いたので、そこに記憶装置(メディア)を差し込む。

 これでビビちゃんが地下道の案内が可能になる。

 本当に、ビビちゃんさまさまだなあ……。

 

「後はこちら。約束の報酬金です。ご確認を」

 

 次いで受け取った箱には、沢山の硬貨が入っていた。

 箱自体もずっしり重い。これ、いくら入ってるの……?

 

「わ……」

「旅の途中と伺いましたので、通商連盟内の主要通貨で8割。残りは帝国金貨と、貴石にしてあります。詳細な内訳は先の記憶装置(メディア)に入っていますので、ご確認を」

「……ありがとうございます!」

 

 よくわかんないから、後で調べておこう!

 目録だという薄い板(タブレット)とお金を箒の荷物入れにしまう。

 後は昨日と同じ様に結界で箒の後ろにコンテナを固定すれば……準備完了。

 

「どうかお気をつけて」

「はい、じゃあ行ってきますね」

 

 なんだかあっという間の出来事だけれど。

 ヴァルさんたちを助ける方法を知るためにも、今度は氷蛇に襲われているという前哨基地へ向けて出発するのであった。

 

 

***

 

 

「……行ったようじゃの」

「ええ、そうですね」

 

 窓の向こう、空を飛んでいく青い光をティハンと2人で眺める。

 ほんの少し前までこの部屋にいたのに、あっという間に飛び立ってしまえるのは彼女の身軽さ――箒1つで空を飛べてしまえる利点なのだろう。

 

 ……本当にあっという間に去っていった。

 途端に部屋を包む静寂は、今までの出来事が夢だったかと錯覚するほど。

 嵐のような子だったなあ……。

 

「はぁ……疲れた……」

 

 しみじみとそう思っていると、隣にいたティハンが唐突に崩れ落ちた。

 

「え、ちょ……ティハンさん!?」

「お前……なんて奴を連れてきたんじゃ! あいつは一体なんなんじゃ!?」

「は……?」

 

 なんで怒られてるんだ、俺……?

 手を貸せと伸ばされた手を掴んで引き起こすと、荒れた息のティハンがこちらを睨む。

 

「お主には見えんだろうが、あのユミルの全身から凄まじいエネルギーが溢れ出ておった。その気になれば儂らなんぞ軽くひねりつぶせる程の……それが部屋に満ちた恐怖がわかるか!?」

「……ああ、そうか。鬼眼ですね」

 

 彼女たち星龍商会の一部の源人には、強力なエネルギーを知覚する事ができるという。

 それで商品や人材の良し悪しを見分け、彼女たちは宇宙でのし上がったと聞くが……人からそんなエネルギーが溢れているものなのか?

 

「そんなに凄かったんですか、ユミルは」

「凄かったなんてもんじゃない! 砲門を向けられているのと変わらん。いつ殺されるか、ひやひやしたぞ……」

「ええ……?」

 

 身体を抱えて震えるティハン。

 その姿は、どう見てもユミルと同じくらいの少女にしか見えない。

 庇護欲が湧いてくるが、これで4倍は年上だ。種が違うんだから仕方ないが、理不尽だよなあ……。

 

「まさか、ユミルはそんなことしませんよ」

「……そうじゃろうな。あんな力を持っていながら、驚くほどに純粋無垢であった。あんな物を知らぬ怪物、一体どこから出てきたのか……」

 

 ぼそりと呟かれた言葉は、俺としても気になるところだ。

 あんな力を持ちながら、あれほどに純粋でいられるなんて――一体どんなところで生まれ、どのように育ったのだろうか。

 

「本当に箒で空を飛ぶし……どうなっとるんじゃあれは」

「あの子について、ティハンさんでも知らないですか……」

「知らん! 空を飛ぶだけなら可能かもしれんが、単体で宇宙など……聞いたことないわ」

 

 ……そうか。

 人としても商人としても経験豊富なこの人ならあるいは、と思ったのだが……。

 やはりあの子たちはとっても希少な存在で、何かしらの庇護が必要だろう。

 

「良ければ、彼女たちのことも面倒見てやってください。危うさは、良く分かったでしょう」

「……そうするよ。こちらの頼みもあっさり請けおった。あの気軽さで敵対されたらかなわん」

「そんなこと……ないでしょう」

「どうだか。あいつ、多分美味い甘味を用意すればコロッと騙せるぞ」

「はは……」

 

 大量に用意されたお菓子、全部食べてたもんな……。

 カドポポの肉にすら感動してたから、かなり食の乏しい場所にいたのかもしれない。

 

「あの力はあらゆる勢力に目を付けられるだろうな。色々と叩き込んでやらねばな」

「頼みます。彼女もまた、俺の恩人なので」

「儂の次に、の?」

「……ええ、だからあなたに頼みます」

「ふん。問題ばかり持ってくる孫じゃな」

 

 口では不満げだが、表情はまんざらでもなさそうだ。

 良かった。これでユミルへの義理は果たせそうだ。

 ……さあ、後は俺の問題だ。

 

「で、なんで彼女に依頼を? まさか本当に基地が危険なわけではないでしょう?」

「物資は不足しておるよ。そこに嘘はない。ただ……」

 

 深くため息を吐いてから、彼女が再びこちらを見る。

 その目は、深い悲しみの感情が揺らいでいる。

 

「ラヴァテクスが動いた。お主らの鉱山と氷下街、両方を武力制圧する気だ」

「……やはり、そうですか」

 

 先ほど来たシファさんが伝えたのはそのことだろう。

 つまりティハンはユミルたちを逃がしたのだ。

 

 恐らく向こうの基地の人間に誘導させ、そのまま他の星へ旅立たせる手筈。

 優しい人だ。

 だから事実を告げようとする彼女は、とても苦しそうな表情を浮かべる。

 

「残念ながら儂らには手が出せん。抵抗しなければ殺しはしないだろうが……輝石は全て持ってかれるだろうな」

「……そんなに不足してるんですか?」

「先の戦いで多くの機兵を失ったと聞く。なりふり構っておれんのだろう。そもそも、儂らは望んでない戦じゃがな」

 

 帝国との戦。最近向こうに現れたとんでもない怪物の活躍で通商連盟は大打撃を受けたという。

 ただ、そのために俺らの工房や鉱脈が奪われるのは……納得はできない。

 

「兵は出せんが、船を用意した。お主らのエンジンと、それなりの兵装は積んである。全員は無理だが、収容人数は多い筈だ」

「救えるだけ救って脱出……それしかなさそうですね」

 

 近づけば間違いなく撃墜される。それでもやるしかない。

 上から行くのは自殺行為だろうから……地下道を行くか。

 その分操船は困難になるが、なに、あの小惑星帯より難しいなんてことはない筈だ。

 俺は『星渡り』の孫だ。やってみせるさ。

 

「死ぬなよ、坊」

「……大丈夫です。彼女に救ってもらった命、無駄にはしません」

 

 今度は俺が皆の命を救う番だ。

 意を決して立ち上がり、格納庫へと走るのだった。

 

 その時――ふと、視界の端で緑の光が明滅したような気がした。

 

 

***

 

 

『――なるほど、そういう事ですか』

「……? どうしたの、ビビちゃん」

 

 飛行を開始して少しした時。

 ふと、ビビちゃんがそう言ったのだ。

 目の前で丸まるぶみゃ――ではなく、背負った鞄に移設した端末から声が響く。

 

『あのティハンという商人が何故我らにこの依頼をしてきたのか、その理由が不明でしたが――それが判明しました』

「え? 困ってたからじゃないの?」

『出会ったばかりの、得体の知れない我らに託すような仕事には思えません』

「……でも、私の腕を見込んでって……」

『もちろんそれは事実でしょう。ただ、目的は別にあったということです』

 

 人を助ける以外の目的って、一体……?

 疑問には、ビビちゃんが直ぐに答えてくれた。

 

『我らを一時的に追いやりたかったのでしょう』

「……どういうこと?」

 

 今は氷の渓谷の真上をそれなりの速度で飛んでいる。

 しばらく前に山脈は見えないから、構わずに背中の方を見た。

 こちらへと伸びたカメラが、きらりと光る。

 

『――ラヴァテクスがルステル氷下街に武力介入を行うようです』

「ぶみゃ!?」

「え!? 大変じゃない!」

 

 ヴァルさんたちが恐れていたことだ。まさか、本当に直ぐにやって来るなんて……!!

 慌てて箒を止めて、ルステル氷下街の方向――北側へと箒を向ける。

 

「助けないと……!!」

『お待ちください、魔女(ウィッチ)ユミル。我らを遠ざけたということは、それをヴァリアノ様たちは望んでいないということです』

「……っ」

 

 そのまま発進しようとしたのを、止める。

 ヴァルさんたちの言葉をしっかりと思い出して、私はゆっくりと頷いた。

 

「そっか。だから私たちにこの依頼をしたんだね……巻き込まないために」

肯定(ヤー)。あのシファという女性が伝えたのがそれでしょう。ヴァリアノ様も、その際に気づいていたようです』

「……そっか」

 

 そう考えたら、さっきのビビちゃんの疑問にも納得ができる。

 ティハンさんは金属が……なんて言ってたけど、あの人たちは宇宙の万屋なんでしょ?

 なら、蛇に気づかれない移動手段なんてきっとあるよね。

 ヴァルさんが「他の星に行くといい」なんて言ったのも、きっとそれが理由。

 

 ぼうおうと、風の流れ込む音が周囲に鳴り響いてる。

 ほんの少しだけ冷たくなった箒の柄をぎゅっと握って、私は浮かんだ疑問を口にする。

 

「ねえ、ビビちゃん。ヴァルさんたち、勝てるの?」

否定(ナー)。戦いにすらならないようです。ヴァリアノ様は、飛空艇で単身ルステルへ向かい、街の人たちを救出するつもりです』

「……当然、ラヴァテクスは襲ってくるよね?」

肯定(ヤー)。そうなったら、勝ち目はありません』

「……っ」

 

 じゃあ、ヴァルさんは死ぬかもしれない状況で、私のことを案じてくれてたの?

 またおいで、気を付けて――そんな優しい言葉を投げかけてくれてたの?

 もしかしたら、二度と会えなくなるかもしれないのに……!!

 

『――どうされますか? 魔女(ウィッチ)ユミル』

「……」

『ヴァリアノ様たちが彼らの意志であなたを遠ざけたように、あなたが助けに行くのは、誰にも縛られないあなたの意志次第です』

「……うん、そうだよね」

 

 私は部外者だ。

 正直、この星のことには何の関りもない。

 首を突っ込んでいいことではないのかもしれない――なんて悩みは、昨日全部吹っ飛ばしたはずだ。

 シシルさんのため、ヴァルさんたちのため。

 私は、なんでもできることをすると決めたのだ!

 

「決めた。ヴァルさんたちを助けよう。でも、その前に基地の人たちも助けよう!」

「みゃ!」

 

 先に頼まれたことを放り出すのは、やってはいけないこと。

 だから……急いでどっちもやる。

 そのための速さを、私はちゃんと持ってる。

 

「ビビちゃん、両方の最短ルートをお願い!」

肯定(ヤー)。ナビゲート、開始します』

「うん! ……待っててね、皆!」

 

 全力で魔力を放って――生み出すエンジンは6門。

 多分大気圏内でできる最大速度で。

 私は、皆を助けるための作戦を開始する。

 

「発射角度、ヨーシ。障壁展開、ヨーシ。……エンジン点火、ヨーシ! 全速全力、ご安全に……!! 出発するよ!」

肯定(ヤー)

「ぶみゃ!」

 

 途端に、一気に箒は飛び出して空気の壁を突破する。

 全速前進。私は真っ白な氷の谷を進んでいくのだった。

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