汚いガキに餌付けしてたら懐かれたんだが 作:ピンク髪大好きニキ
そんなモチベあるって訳じゃないけど、サボってる間に2部は始まるわデカグラマトンも終わるわで下手すれば軌道修正が大変なことになるのでは……? と危機感を覚えて書きました、クオリティには目を瞑って、どうぞ
「珍しい、と言うより驚いたよ。 ずっと連絡してこなかった貴方から急に連絡が来たんだから」
「……これまでずっと連絡しなかったのは、その、悪いとは思ってる」
「別にいいよ、何があったのかは知ってるし」
或る日の昼下がり、俺の姿は自宅……ではなく、街中の喫茶店の中にあった。 声から推測できるとは思うが、そこには俺だけではなく一人の女性の姿もある。
別に恋仲だった、とかそう言う訳じゃない。 小学生からずっと一緒の学校に通っていた腐れ縁、とでも言えばいいのだろうか? 要はそう言う事だ。
「それで、急に連絡してきたのには何か理由があっての事? それとも単に近況が知りたかっただけ?」
「どちらかと言えば後者、だろうな。 まあこれまでの態度に関して謝罪の意味もあるだろうけど」
「……」
「俺の顔に何かついてるか?」
「いや、そうじゃないよ。 思ったよりいい顔をしてるなって思って」
「良い顔?」
「そう。 ……付き物が落ちた、って感じかな?」
「……それは、まあ」
付き物が落ちた、と言う意味合いではそうかもしれない。 相も変わらず別れが寂しいという気持ちがないわけではないが、以前よりは前を向いているという自覚はある。 それもアツコ達のお陰なのだろう。 ……面と向かって口に出すつもりは毛頭ないけれども。
俺の表情を見て何かを感じたのか、コーヒーを飲んでいた彼女は目を丸くして口を開く。
「……もしかしなくても、彼女とかできた?」
「な訳があるか、生涯独身を貫く決意を固めてるくらいだぞ」
「それはそれでどうかと思うけど」
あまりにも自信ありげに口にしたからか、彼女の視線が驚愕の色から呆れの混じったものに変わる。 俺にそんな出会いがある訳がない、そも買い物以外で外出しない身でどうやって出会いを……と言う奴だ。
アツコ達の顔が頭を過るが、アレは異性としてではなく教え子と言う側面が強い。 家にやってくる人数も増えて笑顔も一緒に増えて行く、その様子が自分の事のように嬉しく感じられるから……だと、思う。
「少しだけしか聞いてないけど、私塾みたいなことしてるんだって?」
「あくまでも真似事だ。 専門的な事を教えているわけじゃないからな」
「それでも十分でしょ、深くは聞かないけどその子たちの環境にとっては貴方のやっていることはとてもいい事でしょ?」
「そう、だといいが」
「……そう、そうね」
「その煮え切らない感じなのは何なんだよ」
「いや、それはね」と彼女は言葉を濁す。 コーヒーで唇を湿らせつつ視線を左右に向けたりソワソワした態度をとっていたが……やがて覚悟を決めたように俺の目を真っ直ぐ見つめて口を開いた。
「正直、不安だった」
「不安?」
「そう、不安。 連絡まで絶った時点で、もしかしたらもう二度と会えないんじゃないかって思った」
「……」
要は、俺が自殺でもするんじゃないかと不安に思っていたと言う事だろう。 その懸念は強ち間違っていなかったのかもしれない。 資産運用をしようとか考えてはいたが、一人孤独にあの家にいて気が狂ってしまわなかったかと言われれば……ない、とは断言できない。
アツコ達と会っていなかったら、そう遠くない未来にそうなっていた可能性もある。
「でもその目を見たら安心したよ。 少なくともその子たちがいる限りは馬鹿な真似はしないでしょ?」
「まあ、ある程度出来るようになるまでは面倒を見るつもりではあるけども」
「それで十分、その言葉が聞けただけで私は満足だよ」
彼女はそう言ってにっこりと笑う。 それからはこれまでのお互いの事について話が盛り上がり、気が付けば数時間が経っていた。
思った以上に話が弾んで有難い限りではあるが、アツコ達の事を考えるとこれ以上長話をしているわけにはいかないと思い、俺はキリのいい所で話を切り上げることにする。
「思ったより話し込んだけど、一先ず今日はこの辺りで終わろう」
「え? ……ホントだ、もうこんな時間」
「お互い積もる話があった、って事だろう」
「そうだね、残りは今度……と言いたいところだけど」
「ああ、転勤だったな」
残念そうな表情をする彼女を見て、俺は先程までの会話を思い出す。 何でも彼女はこれまで勤めていた学校から、遠くへと転勤することになったらしい。
概要をまだ詳しく聞いていないらしいが、どうやら複数の学校で先生を兼任する可能性があるんだとか。 ……俺が辞めてから教育関係で何か変化があったのだろうか? 普通に考えて一クラスの担任になるだけでも負担があるというのに、学校すら跨いで先生をやるとか普通にブラックだと思うんだが。
「直接会うことは出来なくても、メールやらで近況報告くらいならできるんだし問題ないだろ」
「それはそうなんだけどね、やっぱりこういうのって直接会って話す方がそれっぽいと思わない?」
「思わなくもないが、都合が合わないんなら仕方ないという奴だろ」
「相変わらず変なところでドライだね」
「悪かったな、変わって無くて」
「いいや、変わって無い所もあるってわかって安心したよ」
そこは安心して良い所なのだろうかとは思うが、むきになっているとも思われたくないので無言で肯定することにする。 「ここは君の奢りね」とサラッと言って来たことには少しムッと来たが、恐らく彼女の生涯賃金は軽く所有しているであろう俺にはここの支払いくらいどうと言う事はない。 特に文句も言わずに支払いを済ませることにする。
二人そろって店を出ると、通りの端まで歩いていく。 彼女は右で、俺は左に曲がるのでここで彼女とはお別れになるのだが……
「ねえ、■■」
「どうした?」
「私がいなくなるからって無茶なことはしないようにね」
「お前は俺の何なんだ」
「いや、こうでも言っておかないと変なところで馬鹿やりそうだから」
「する訳ないだろ、投げやりなこと出来るような状況じゃないんだから」
「そっか、それもそうだね」
「……お前も、馬鹿なことしないようにな」
俺の言葉が意外だったのか、彼女は目を丸くして動きを止めた。 俺が身を案じたのが意外だったのか、はたまた他に理由があったのかは分からない。 だが少しすると彼女はクスリと微笑み────
”分かってる、そんなことはしないよ”
────そう言った彼女の顔は、実にいい顔だったと記録しておく。
────────────────
「おかえり、お兄さん。 ちゃんと話をしてきたの?」
「ああ、久し振りにな」
「あ、おかえりなさいお兄さん! ねね、今日もアレ見てもいい?」
「いや俺に断りいれずに見たければ見れば良いと思うけど」
アツコの後にやって来た彼女の言葉に、俺は何とも言えない顔で答える。 別に制限をしているわけでもないので俺に断りなんて入れなくても良いのだが。
いや、そうじゃないか。 彼女は立ち位置を考えてそう言ったのだろう。 血の繋がりがあるわけではないが、彼女はアツコ達の姉のような立ち位置を自称しているわけだし、要は彼女達の手本のような行動を心がけているのだろう。 恐らく、社会に出た時の事を話したから彼女なりの心変わり……そう考えておこう。
俺の言葉に嬉しそうに頷いた彼女はそのままリビングへと向かい……動画配信サイトから一つの作品を選んで流し始める。
「……」
「お兄さん、何でそんな微妙な表情をしてるの?」
「いや、別に、そんな顔してるつもりはないが」
「嘘、してるよ?」
「……そうか?」
アツコの言葉に俺は自分の頬を触る。 引き攣った表情でもしていたのか?
彼女が、■■が見ていたのはとあるアニメ。 母親を生き返らせようとして失敗し、弟の体と自身の手足を持って行かれた主人公が……と言う始まり方をするあの有名なアニメだ。 恐らく俺の表情が微妙なのは途中のとある描写のせいだろうか? あの表現を地上波で流して良いものかと作者的にも思う所があった……みたいなエピソードを聞いたことがある。
等価交換や難しい内容が多いながらも、このアニメの本質は兄弟愛だと個人的には思っている。
「あっ……」
とか思っていたら丁度あのシーンだった。 弟が自身を触媒として兄の腕を錬成したあのシーンだ。 最初から見ていたからだろう、そのシーンを見た彼女達は驚愕に目を見開いて食い入るように画面に齧り付いている。 何なら既に涙を流している子だっていた。
「例え勝ったとしても、弟がいないんじゃ嬉しくないよ……」
「それでも、だろう」
「?」
「他に方法があったんならそんな方法とらなかった。 でもあの弟は、兄なら絶対に何とかしてくれるって信じてたんだろう。 だからそうした、それだけだ」
「……」
それに最後にはハッピーエンドが待っている、それも雑な終わらせ方なんかじゃなくきちんとこれまで歩んできたが故の、納得のできる終わり方だ。
エンディングまで見終わり、興奮が落ち着いてきた彼女達はそれぞれ思い思いに感想を述べあっている。 あそこが良かった、あそこはこう思った、それぞれの意見を述べあって他者の思った事を聞いて自分では思いつかなかった考えへと辿り着く。
他者を通じて理解を深めていく、それは人ならではの行為であり一人で生きていくことのできない人間が行うことのできる大切な事だろう。
「はぁ、面白かった!」
「それは何よりだ」
「私はお姉ちゃんだから、何かあった時は私が守ってあげないと!」
「普通それが無いのが一番なんだが」
「未来がどうなるかなんてわからないでしょ? だから今からその心構えを取っておかないと」
「その心意気は賞賛に値するが、それ以前にお前は勉強の方を何とかしろ。 妹分に勉強を教えてもらうのは姉的にどうなんだって話だ」
「うぐっ……そ、そこはほら、出来のいい妹がいるから安心ってことで!」
痛い所を突かれた、とでも言うような表情で俺の言葉に反応する■■。 そんな■■を見てアツコはクスクスと笑っているが……
「まあ、なんだ」
「うん?」
「お前らが本当に仲が良くて、お互いを信じあってるのは見てて良く分かってる」
「でしょ? 私達すっごい仲良しなんだから」
「ああ、そうだな。 でもな? さっき言った何かが無いのが一番なんだよ」
「……?」
俺が何を言いたいのか良く分かってない■■。 それに対しアツコは何かを感じ取ったのか姿勢を整えてこちらを見つめてくる。 何時の間にか近くに来ていたミサキやサオリもそんなアツコの後ろに立って俺の話を聞き逃さないようにか静かに佇んでいる。
若干の居心地の悪さを感じるが、それを悟られまいと咳払いをして話を続ける。
「お前らは仲がいい、それこそ本当の姉妹のように」
「だからこそ、その姉に何かあったら彼女達は本当に後悔する。 ……仲はそれなりに良かったと思ってる、俺がずっと引き摺ってるんだからな」
「……」
「心構えをとるのは簡単だ、でもな……それを実行に移さないように最後まで考えるのを止めないようにしろよ。 俺だって、その、まあ、絶対に悲しむだろうから」
「お兄さん……」
俺の真剣な言葉を聞いて、■■は目を閉じる。 俺の言葉を自分なりに咀嚼して理解しているのだろう。 やがて目を開いた彼女は満面の笑みになって、サムズアップをしてきた。
「任せてよ、私約束はしっかり守る子だから!」
「……あのな、勉強をしっかりできてない時点でその言葉には矛盾が生じてるぞ」
「う゛っ」
最後まで締まらない奴である。 今度こそアツコが大声で笑い始め、それにつられて他の奴らも笑い始めてしまった。 ■■は恥ずかしそうに頬を赤らめて俯いてしまったが、そこに関しては自業自得なので俺は何も突っ込まない。
これも彼女の人望が故、だろうか。 決して優秀とは言えないが、彼女が中心にいると他の子に笑顔が広がっていく。 アニメなら主人公のような立ち位置に立っていてもおかしくはない、ある種のカリスマと言った所か。 やがて独り立ち、と言うか俺の下から巣立つときになったら彼女がアツコ達を引っ張っていけるリーダーになってくれるだろうと期待していた。
────────だからこそ、だ。
「可惜夜、明けるのが惜しい、儚さを表現するのでしたら実に名にあったものですね」
「彼女は既に処分しました。 最後の最後まで手古摺らせてくれた不快な存在でした」
「────────あ゛?」
……目の前に現れた異形の言葉に、俺の視界が真っ赤になるのは、仕方のない事なんだと思っている。
────────────────
(痛い……)
体が思うように動かない。 腕も足も、もう何度折れ曲がったのか数えていない。
言い分が気に食わないと言っていた〇〇ちゃんは最初に首の骨を折られた。 その子と仲の良かった〇〇ちゃんも、後を追うように頭蓋に銃口をねじ込まれて動かなくなった。
(痛い……)
アリウスの中で姉のような、年齢的に一番上になるだろう私達。 私達は下の子を逃がすために立ち止まっていた。 この女を彼女達の所へ行かせるわけにはいかない、その一心で踏ん張っていたけれど、それももう終わりに近いだろう。
数十人いた私達の内、生きているのは私一人。 周囲は真っ赤に染まって誰から流れ落ちた血なのか分からないくらいだった。 現在進行形で私からも流れ出ている辺り、私の限界も近いんだろう。
(でも、でも止まるわけにはいかない)
右腕を折られ、右手の指を一つ一つ見せつけるように折られ、逃げないように両足の骨を折られて、残った左腕も折られて、ゆっくりとあばらの骨も踏み砕かれて、変な呼吸しか出来なくなってもまだ生きてる、いや生かされている。
わざと見せつけているんだ、彼女は。 私の心を折って、あの子たちを恐怖で縛り付けるために。
「……強情ですね、まだそんな目をしますか」
「……」
「理解できないのですか? 貴女ごときで何かできるとでも? たかが子供が、大人に抗えると思っているのであれば改めなさい」
「おばさん、が、へんなこ、といって、るようにしか」
「まだそんな減らず口を……ッ」
「っぐ、ぎぃ……」
あばらの上に置かれた足に力が更に籠っていく。 既に折れてしまったそこに先程以上の圧力がかかり、口から血が零れる。
蹴られた衝撃で視界が揺れる、右目が真っ暗になった、口の中に感じるころころとした感触は歯だろうか? ころころと転がっていく丸いものは何だろう? それをマダムと呼ばせようとしてきたおばさんが踏みつぶす。 ぐちゃりとした音に、それが私から零れ落ちたものなんだと理解する。
先程からちかちかと視界が明滅する。 ああ、終わりが近いんだなって何となく理解してしまう。 ここで私は死んで、このおばさんは彼女達の所へ行って、きっと私達にしたように暴力と恐怖で支配して、アリウスを滅茶苦茶にしてしまうんだろう。
(それ、は、嫌だなぁ)
心の中でそう思うけど、もうなにも出来そうにない。 まともに動く部位がないんだ、これ以上頑張っても仕方ない……
(────────本当に?)
それでいいの? お姉ちゃんである私が諦めたら、妹が悲惨な目に遭ってしまう。 それだけは、絶対に嫌だ。
ぐぐ、と体に力を込める。 でも体は踏みつけられているから起き上がらない。 逆に踏みぬかれて地面に押さえつけられる。
「無駄な足掻きは止めなさい。 もうこれ以上貴女のような子供に何かが出来るわけないでしょう」
「……」
「そんなことをしても無駄です、全ては虚しいもの。 諦めなさい」
「あきら、める?」
その一言に、どうしようもなく腹が立ってしまった。 彼女達の身に災難が降り注ぐのに諦める? それだけは、絶対にあっちゃいけないんだ。
あの人に、お兄さんに、慕った彼と一緒に過ごした日々を。 幸せになっても良いと思えた日常を、こんなおばさんに壊されて
「いいわけ、ないだろ……ッ!」
「だからいい加減に……ッ!?」
瞬間、違和感を感じたおばさんが私から距離を取る。 それもそうか、圧し折ったはずの腕で足を握り締めたんだから。
「何故? 丹念に折ったはずの腕で……?」
「折り方が雑だったんじゃないかな」
「減らず口を……!」
おばさんが怒りに震えている間、私は体のあちこちが嫌な音を立てて修復されていくのを待っていた。 やってみると意外と出来る物なんだね、アニメを見ていた甲斐があった。
これが終わった後どんな代償を支払うことになるか分からないけど、私一人の命でアイツを仕留められるのなら安いでしょ。 アツコちゃんやお兄さんには謝らないといけないけど、それは謝ることが出来たらにしよう。
「……あり得ない、あり得ないあり得ないあり得ない!! 潰したはずの目も! 突き刺さっていたはずの肋骨も! どうして塞がるのですか!?」
「分からないと思うよ、貴女みたいなのには」
これはきっと、前借りだ。 残り少ない命の、搾りかすみたいになった神秘の、最後の煌めき。
これが終わったら私は死ぬ。 多分、不相応な力を持った人間が、ハッピーエンドに向かえるなんて思ってない。 でもいい、それでいい。
「────────みんなを守れるんなら、私はここで死んでもいい!!」
「だからありったけを!! あの女に!! みんなの無念も込めて全部! ぶつけてやるッ!!!!」
「ッ調子に……乗るなァ!!」
……そこからは、あんまりよく覚えてない。
折れて、千切れて、治って、砕けて、捥げて、治って
折れて折れて折れて折れて折れて折れて折れて折れて折れて折れて折れて折れて千切れて千切れて千切れて千切れて千切れて千切れて千切れて千切れて千切れて砕けて砕けて砕けて砕けて砕けて砕けて砕けて捥げて捥げて捥げて捥げて捥げて捥げて捥げて捥げてそして治って、治って治って治って治って治って、噛みついて、嚙み千切って、抉られて抉って抉られて抉って抉られて抉って抉られて抉って抉られて抉って、圧し折って圧し折られて、そしてまた治って治して治って治して、潰れたと思ったら潰し返して、治したら治されて、磨り潰して磨り潰されて、吹き飛んで治して
何十回繰り返したか分からない、何百回かもしれない、そんな延々と続いた殺し合いも、私が首を締め上げられたことによって遂に中断された。
「はぁ……はぁ……手古摺らせてくれましたね」
「ぁ、が、ッ……」
「でもこれで終わりです。 もう抵抗する力も残ってないでしょう。 その証拠に……」
ぱきり、と嫌な音が聞こえる。 ああ、限界なんだ。 私のヘイローは。
徐々に意識が混濁していく、私が私でなくなってしまうような感覚に陥ってしまう。 結局このおばさんに一矢報いることが出来ずに、全て終わってしまう。
「貴方の首でも持って行けばあの子供たちも大人しくなるでしょうね。 抵抗すればこうなるという見せしめになるでしょう」
「……ッ!」
「ではさよならです。 最後に何か言いたいことはありますか?」
「……ぇ」
私はか細く言葉を発する。 もう視界は半分以上真っ暗で、おばさんの姿も視認し辛い。
だからこそ、近づいてもらわなければならないんだ。
「聞こえませんね、もっとはっきり……?」
「────────ぶち、抜け」
「がっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
とっておきの最後っ屁を、絶対にぶち当てるために。
(ざまぁ、みろ……)
ごめんね、アツコちゃん。 一緒に見ようって言ってたアニメ、見れそうにもないや。
ごめんね、ヒヨリちゃん。 収穫しようって言ってたトマト、食べられない。
ごめんね、ミサキちゃん。 今度読もうって言ってた漫画、もう読めないみたい。
ごめんね、サオリちゃん。 私お姉ちゃんなのに、サオリちゃん達の事守れなかった。
そして……
(ごめんね、お兄さん)
約束、守れそうにもないや。