カイザー?こちとらフューラーぞ。   作:ベーコンエッグトースト

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一件とはいえ続きを希望する声があったので執筆してきました。


主人公のイメージ画像
※AI絵が苦手な方はご注意ください。

【挿絵表示】


ヘイローのデザインは各々好きなものを当てはめてください()


第2話 ずぃーいすとおーねえーれ

息がこもる。麻袋の繊維が鼻に張りつき、吸うたびに粉の味が喉を刺した。腕は後ろ手に縛られ、もたつくと容赦なく罵声を浴びせられる。靴の底がコンクリートを叩いて、乾いた足音が反響する。

(ずた袋スタートって神様、難易度設定バグってるよな?せめてチュートリアルとパン一個ぐらいは欲しいんだが)

 

やぁみんな。オレだ。

偉大なる魂さんに習って非暴力を選択したら物の見事に拉致られたよ。チクショーメ

 

鉄のシャッターが軋む音がする。大きな空間の冷気が袋越しに肌を刺す。油と錆と湿気の匂い。引きずられるように進み、肩を押されて椅子に落とされた。縄が締まり、錆びたパイプ椅子が''ギシ''と鳴く。

 

「外せ」

 

女の子の声だが平坦で刺がある。ずるりと麻袋が剥がされ、光が針みたいに目に刺さった。

 

天井の高い廃工場。裸電球がいくつも垂れ、梁に絡む配線は蜘蛛の巣と埃まみれ。テーブル、古いロッカー、壊れたフォークリフト。まわりは制服を着崩した少女たち。案の定、銃火器で完全武装。髪色はばらばら、表情の奥は同じ疲れと焦燥の影。

(うん、完全にアウトローの巣だな。オレ、今から入社面接?どう考えても圧迫面接だし職種は身代金材料か?)

 

黒髪を後ろで束ねたリーダー格と思わしき少女が一歩前へと出てきた。

 

「その制服、帽子、コート。アンタ...、どこの誰?服装的にゲヘナっぽいけど、そんな制服見たことない」

 

いや、ゲヘナってなんだよ。この制服もコートもどう見ても美大落ちのコスプレだろうに。

 

「ゲヘナとはなんだ...?言っていることが分からないな」

 

(やっぱりか...)

 

喉が勝手に鳴る。嫌な切り替わりの感覚がある。この身体はどうにも伝えたいことのおおよその意味は変わらないが、頭から口へ言葉が移る過程で口調が変化するらしい。

 

「ゲヘナの使いかって訊いてる。違うなら、もっとマシな言い訳があるだろ。ハイかいいえで答えたらどうだ」

 

リーダーちゃん(仮)が詰めてくるが知らないものは知らない。というかこの世界に産まれ落ちて生後一日も経ってない相手に対してちと厳しすぎんか?

 

「リーダー、コイツマトモに受け答えする気ありませんよ?やっぱり適当に2、3発ぶち込んでその辺にぶん投げとくのが一番なんじゃ...」

 

切実に願う。

 

やめてくれ

 

さっき一回死んでわかったことだが、君達の軽いノリで鉛玉をぶち込まれようものならか弱いオレはあっという間に昇天しちまう。

 

いい加減わかってくれ、命は命程度に重いんだ()

とはいえ察しの悪いオレでも流石に気がつく。先程オレを撃った後の彼女たちの慌てようを見るに、おそらくこの世界では銃による攻撃で致命傷を負うことは''普通は''ないのだろう。

 

しかしだ、もう一度言う。何度だって言う。

 

オレはその軽いノリの銃撃で簡単に致命傷を負う

 

さっきはよく分からない原理でコンティニューできたが、それが何回できるか分からない上に痛いものは痛い。

 

とはいえ、いくら考えたところで現状を打開する策は浮かんでこない。

 

であれば...。非常に、非常に気が進まないがさっきのアレを頼る他ないだろう。

 

(頼む起死回生の一手!!もう一度、オレに選択肢を与えてくれ!!)

 

ブゥン...

 

聞き覚えのある起動音とともにオレの眼前に立ち上がるウィンドウ。不良生徒たちには見えていないオレだけのテキスト。

 

(来っっつつたぁッ!!選択肢!!これで勝つる...。る?)

 

(①口汚く罵る)
(②朝食を聞く)
(③力を示す)

 

...、なにこれぇ......。

 

今回の選択肢は前回以上に酷いのではないだろうか?

 

まず③、お前は論外だ。さっきこれを選んだ時は3人相手に完膚なきまでにボコボコにされたのに、今は2桁人以上の不良生徒が目の前にいる。

 

次に①、お前もダメだ。この状況で相手をバカにするとかどう考えても③へ至るプロセスをより過酷なものへとするようにしか思えない。

 

そこで消去法的に残るのは②なんだが...。なんというかこう...、スターターパックか何かかな?今日の朝食はなんですかって、今日の天気デッキに多少毛が生えた程度だろうに。前世においてコミュ障を自称していたこのオレでももう少しマシな会話が...、できると思いたい。

 

気が進まない。非常に気が進まないがこれしかない。

 

 

█ █ █ █ █

 

 

 

「君は今朝、何を食べた?」

 

空気が少しだけ揺れた。オレを連れてきた赤ジャンが「はぁ?」とキレ気味に聞き返してくる。

 

(本っ当にごめんなさい!!)

そりゃそうだ。誰だって話の最中にいきなりそんな話題を振られたらそういう反応になる。

 

だが、この選択肢というものは実行されている間自分の意思では指一本動かすことすら出来ないらしく、オレの焦燥を他所に話はズンズン進んでいく。

 

食って掛かろうとする赤ジャンを窘めつつリーダーちゃんは(仮)は言葉を返してくる。

 

「あいにく何も。うちは朝抜きが普通、食事は一日二回あればいい方。切り詰めてる」

 

「リーダー?!こんなヤツの言うこと真に受ける必要は...」

 

「君は?」

 

「クラッカーひと袋...」

 

「パンの切れ端と水」

 

「半分に割ったカップ麺」

 

リーダーちゃん(仮)が口火を切ると他の不良生徒たちもポツポツと話し始める。

 

(だから、年頃の女の子にしては肌ツヤがあんまし良くなかったのか)

オレが一人納得している間にもオレの口は勝手に会話を進めていく。

 

「では、なぜ切り詰めねばならない?君たちはキチンと働いているのだろう?それとも職が見つからないのか?」

 

ホントそれな。まだ若いならバイトの一つや二つだって簡単に見つかるだろうに。あんまり考えたくないけど、さっきオレにしたみたいに脅しをかけてカツアゲなんかもやってるだろうし。

 

「仕事が少ないからじゃないの。安いからよ」

別の少女が吐き捨てる。

 

「裏の依頼は危ない。でも報酬は踏み倒される。『学生だから』『いい勉強になっただろ』って、財布閉められておしまい」

 

「払うべき相手は払わない。後ろ盾の無い私たちは踏み倒されて終わり」

 

「休学中ならまだしも、学生証のない私たちを雇ってくれるところなんて限られてる」

 

うわぁ、なんというかこの世界。思ってたよりずっと闇が深そうなんだけど()労基に馬乗りになってKOかけにいってるレベルだろコレ...。

 

「搾取だ。しかし何故搾取を受けるのか?決して君たちが弱いからではない。君たちは強い、生き抜く力を持っている。しかし君たちと、そして似た境遇の者達は皆バラバラとなっている。団結することができていない。それが搾取を助長させるのだ」

 

確かに。いくら不良生徒とはいえ、元は多感な時期の子供だろうし道を踏み外すこともあるだろう。問題は一度踏み外すと簡単には抜け出せない今の社会構造にあるんだろうなぁ...。

 

とはいえ、なんの力も持たないちっぽけな存在たるオレにはどうしてやることも出来ないg「取引をしないか。私は知恵と言葉を出す。そして君たちは意志と力を出して欲しい。そうすれば搾取を助長する真の敵である''悪い大人''をこの地から一掃することもできる」

 

何言ってんの...?オレ、手伝うなんて一言も言ってないんだけど?!確かに同情はするけどさ?!それはそうとして危険に巻き込まれたくないし、知恵を出すって言ってもオレの頭を叩いたところで塵カス程度しか出てこないよ?

 

それに、そんなこと実際に生活して身をもって体験している彼女達の方がよく分かってるだろうし...。ん?

 

「「「「......。」」」」

 

君たちなんでそんな唖然とした表情で固まってんの?

まさか誰一人として状況を客観視できてなかったの?

 

「そんなこと、考えたこともなかった...」

 

「私たちよりアイツらの方が金も力もあるし」

 

えぇ...(困惑)

いや、まぁ普通はそうか。齢18にも満たない少女たちに現状を客観的に見て行動しろというほうが酷か。彼女たちより一回りは歳上のオレだって、自分の状況を客観視することなんて完璧にできるかといえば怪しいところだし。

 

「口ではなんとでも言える。口だけのヤツなんて大勢見てきた。アタシたちがアンタに命を預ける。その代償にアンタは何を差し出せる?」

 

「残念ながら何も持ってない。文字通りこの身一つだ。割に合わないと思えば切り捨ててくれても構わない。だからどうか、私を信じて欲しい

 

(んぐぉっ...?)

 

最後の一言を発した瞬間にオレの身体からなにかが一筋抜けていくのを感じた。感覚的にそこまで量は多くないし、時間が経てば何となく元の量に戻る気がする。

 

(それはそうとしても...)

 

いくらなんでもこんな雑な説得に乗るとは到底思えない。まぁ、特に危害を加えずにその辺に放逐してくれれば御の字ってことで...。

 

「その話、受けさせてもらう」

 

はい?

 

 

█ █ █ █ █

 

 

 

え?正気で言ってるの?マジモンのマジ?

 

自分で言うのもなんだけど住所不定無職の不審者の言葉をそんなにホイホイ信じていいの?

 

絶対に騙されてるよ君たち?

 

「本当に良いのか?」

 

「アンタが言い出したことだろ?終いまでしっかり面倒を見てくれよ?」

 

えぇ...?マジで?そのままリーダーちゃん(仮)から目線を外し、不良生徒をぐるりと見回してみるが...。さっきとは打って変わって皆真剣な表情でこちらのことを見つめている...。

 

(何がどうなってんの?というか自由に喋れるようになってる(口調変換機能付き)。選択肢ゾーンはもう終わったとみていいかもしれない)

 

今からやっぱり無しとか...。

 

「「「「......。」」」」

 

できないですよね(諦め)

 

はぁ...、やるしかないか...。

確かにオレは万年怠惰でグズではあるが、それなりの責任感というとのも一応は持ち合わせている。

 

やるからにはとことん付き合いますよ。最も途中で追い出されるのが関の山だろうけど。

 

「ところでアンタ、名前は?」

 

(...、名前?)

 

名前ってネーム?

 

 

え、名前ってどうすればいいの?

当然元の世界でのオレは男だ。名前だって女の子っぽいキラキラネームとかではなかった。つまり、今の身体で前世の名前を名乗るのはとんでもなく不自然極まりないということだ。

 

(やっべぇ、名前とかこれっぽっちも考えてなかった!!)

 

なにか、近くに使えそうなものはないのか?!

視線が彷徨い、廃材の山の隙間に転がる看板に目が止まる。

 

『黒澤商店』

『逸品堂』

『襟カラー刺繍無料』

 

(黒...、逸、エリ...、カ。いける!!オレ天才!!いや苦し紛れだけど...)

 

「黒逸エリカだ」

 

(ど、どうだ...?)

内心ドキドキとしながらリーダーちゃん(仮)の方をうかがう。

 

「黒逸エリカ...。わかったこれからよろしく。アタシのことはリーダーでいい。ここじゃ、役職かあだ名が呼び名だ。アンタのことはなんて呼べばいい?」

 

ふぅ...、何とか乗り切ったみたいだ。それはそれとして呼び名か。普通にエリカって呼んでくれればいいよ。硬っ苦しいのは嫌いだし。

 

しかしこの名前、いざ自分が呼ばれるとなると中々に違和感g「私のことは''総統''と呼んでくれ」

 

(...、は?)

 

オレの言葉に赤ジャンがたまらず吹き出した。

「ぷっ、総統!?」

 

「でも似合ってるのがムカつく」

 

ザワザワとした空気をリーダーちゃん(仮)が宥める。

「いいじゃん。じゃあ総統、契約成立。アタシたちはアンタをビジネスパートナーとして扱う。口だけならすぐ降ろすそれでいいか?」

 

何も良くない。

 

総統ってなんだよ?!どっから出てきた?

この格好で呼び名が総統とか完全にアウトじゃねぇか!!ふざけんな!!

 

(あーあ、もうどうとでもなれぇ...)

 

「構わない」

 

 




選択肢:
・主人公の能力のひとつ。3つの中からひとつ選べば勝手に喋ってくれるが、会話の始まりしか提示してくれないのでその先がどうなっているかは選んでみるまで分からない。
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