神の舌? いいえ、贅沢舌です 作:斗鬼派金成
初期も初期ですので、導入しやすいように掲示板形式で書いていましたが、内容が匂わせ程度で普通に導入として書けば分かりやすいじゃん……と、今更ながら思いました。
その関係で、本文も細部の書き直しを行っていくため次の投稿は来月あたりになるかもしれません。
失踪する気はないのでご安心ください、此処で失踪したら何のために書き始めたんだよってなりますし。
【神ノ舌が認めし両ノ腕に、無謀な喧嘩を売ってはならない。努々、忘れる事勿れ】
何代か前の神の舌の持ち主が書き記した手帳の記載内容に、強く戒める文言が残っていた。
その
傍目では優し気な雰囲気を纏っていたらしく、それが蒙昧共を付け上がらせる要因の一つだったらしい。複数人で寄って集って排除せんと企み、その動きの余波で神の両腕が愛していた番の女を傷つけた。
眠れる獅子の尾を踏み躙り、竜の逆鱗を引き剝がさんとした衆愚共に対し、神の両腕は一切の容赦をしなかった。挑みに来る身の程知らず共を徹底して叩き潰し、時には襲ってきた者共の手足を引き千切らんばかりに暴れ倒した。血涙を流し、歯を噛み締めながら。
神の両腕は原因となった分家筋の愚者の尊厳を再起不能に至るまで消し潰し、当時の神の舌の
そうして時は流れ、嘗て流れた流血への畏れと悔恨からか。複数人での揉め事への取り決めとして、
但し。後世で神の両腕の存在は眉唾物として隠蔽され、神の舌の持ち主が愛する番を失い、原因となった友人と袂を分かつ悲恋物語に改竄される事となる。
見縊っていた、あまりにも規格外が過ぎた。
まだ学び舎にも通っていない幼子だからと言い訳出来ない程の成果が目の前のテーブルに広がっていた。どれも
空想の中に出てくるような料理はおろか、現実に存在する自然現象まで実体化させる程の料理まで実在していた。
「まさか、こんな事が……!」
審査員席に着いていた薊もまた圧倒され、えりなもまた呆気にとられている。唯一この結果を想定していたであろう真凪は面白げに料理を一瞥すると、リードを持っていない手で手招きしていた。
料理を作り終えた当人は顔を顰めつつも、行かなかった場合の反応を嫌ったのか渋々と近づいてくる。
「それで? これほどの料理を作り終えて、私を満足させられると思う一品はどれか?」
「お好きな物をお好きなように」
「まだ躾が足りなかったのか、そうかそうか」
「勘弁して……!」
先程までの人間離れした調理を行っていた余韻が消え失せ、真凪に怯える子供の姿に戻る。
本来なら作り上げた一皿を味わう筈だった予定が、どれを味わったらいいか迷う程の量と種類が所狭しと並んでいた。
だからこその問答だったのだろう、逃げる素振りを見せるものの結局は諦めたのか最後に仕上げた、特徴的なスープを注いだ皿を運び出した。
「はい、
「先日の一品とは違うな、これは何という
「センチュリースープ」
「ハキハキ喋れ、それとも何か話せぬことでもあるのか? んん?」
「アッアッアッアッアッ」
「真凪、止すんだ。気の毒だからもう揶揄うのは止めてあげてくれ」
あまりにも気の毒な姿に、薊が助け舟を出す。真凪も揶揄うよりスープの味の方が気になるのか、あっさりと矛を収めた。
えりなもスープから立ち上るオーロラの美しい揺らめきに見惚れていて、先程まで少年に向けていた敵愾心をあっさりと放り捨てていた。
「兎も角、実食を」
「お、お待ちください! 総帥!!」
「毒が入っている可能性があります、せめて毒見を!」
「要らぬ。これは儂とこの少年との食戟、無粋な真似は許さん」
そも、涎をダラダラ流しながら言われては説得力がないわ。目もぎらついており、飢えた獣の如き醜態を晒している。
本能を理性で押し止められぬようでは、人間とは呼べぬ。
数十、或いは数百もの具材が織りなす濃厚な香りが鼻腔を擽る、何処までも透明で透き通ったスープの上品な音色がスプーンを通して伝わってくるようだ。
一目では何も乗っていないように見える、しかし決して消えぬ存在感のスープを口に入れて。
もぐっ
「んうっ!?」
あまりの味の濃厚さ、芳醇な香りが鼻から抜け出て驚嘆する。一瞬ハンバーグステーキを口に入れたのではないかと錯覚する程に絶大な
旨味の種類・数が尋常でない程に精密に、且つ潤沢に揃っている。積み重なった美味しさの分厚い層が口の中でだんだん解けて隙間なく広がるような感触。
何処か懐かしく、けれど全く新しい味覚の地平線が広がり続けていた。
「これが神の両腕の実力、真凪が認め執着する才能の一端……!!」
理解と同時に恐ろしくもある、あまりにも完成しすぎている力量に。
下手に手を加えようとすると一気に瓦解しかねない完成度と、周囲を食い潰しかねない輝きの強さに。
神の両腕の存在を史実集から消そうとした原因の一角が、垣間見えた気がした。
其処まで考えて、周囲の異常さに気付いた。
「んなッ、馬鹿な!?」
迷子防止用ハーネスが無造作に捨てられ、神の両腕を持つ少年の姿は何処にもなかった。
「はっ、はっ……ははは、は」
心臓のない空洞から、どうにか押し止めていた鮮血が顔を出し始める。いよいよ以て、限界が近いらしい。
必要ないのにその場のノリとテンションで行動していた
ただ命を繋げるだけでも擦り減っていた生命力を、惜しみなく調理に注ぎ込めばこうなるという教訓。
行動そのものへの後悔は一切ない、あくまで考えなしに馬鹿をやった自分への怒りだけが強引に生を繋げていたのだから。
「ノッキング……ッ!?」
激痛が身体中を這い回る、全身の筋が悲鳴を上げる。
失血は止まるものの、生命が孔から出ていく嫌な感覚は止まってくれない。
かといって別の代替物を探そうにも、無駄に強靭な肉体を維持するには強度や融通が利かなかった。
この状態を回復、或いは凌駕するにはどうしても必要な食材がある。
「センター……せめて、療水があれば、なぁ」
此処で問題が発生した、どう調理しても再現が不可能だったのだ。
一度食べた物しか変換させられないのか、別に条件を充たす必要があるのか。
元の心臓を取り戻せば、或いは――そう考えが至って即、空洞に拳を叩き付けた。
「ぐぅッ……かっ、は」
巫山戯るな。
一度自分で決めて、その上で実行した事だろう。都合が悪くなったら返せなど、恥知らずも甚だしい。
そうした人間の醜さを嫌ったからこそ、独りで在り続けた。身勝手ではあっても、それ以下の屑に堕ちる気など更々ない。
だからこそ、薙切 真凪の執着を一度は受け入れようとした。夫である薊への罪悪感や羞恥に身も心も焼き尽くされそうになっても逃げずに、ただ受け入れていた。
「後悔なんて、する気はなかった」
「どれだけ弱くなっても、どれだけ惨めになろうと」
「意志だけは、意地だけは……曲げたく、なかった、のに」
限界は近い。何処までも無様で醜い、自分が最も嫌った人間の最期が迫ってくる。
せめて一目でも、自分が自分の意志で決断した結果が間違っていなかったと確認したかった。
ああ、こんな未練がましい後悔もまた、嫌だった。
誰もいない路地裏で独り、意識が途切れるまで己の惰弱さを責め苛むしかなかった。
パキン、と。何かが砕ける音がした。
Q.最初の導入は何だよ。
A.神の両腕に本気で喧嘩を売ったらどうなるか、という見せしめ。
後世で隠蔽された理由? 神の両腕に出会えなかった神の舌が、ですね。
Q.ポンコツ転生者くんトラウマになってない?
A.性癖が壊れそうになってるだけだからヘーキヘーキ、寧ろこれからガンガン壊していく。
ちなみにレオノーラさんがいたらこの時点で完全に壊れて性癖が人妻巨乳美人で固定されてました、草。
Q.何で逃げたの?
A.調子に乗って全開で調理したら限界が来たから、急いで心臓をどうにかしようとして体が勝手に飛び出した感じ。当人は逃げる気なかったけど、肉体は生きる気満々だったから。
ちなみに仙左衛門殿は気付いてないけど、おさずけ+おはじけ+おにやけ等全開でした。この辺も後で書き足します、赦して下さい。
Q.主人公死んだの?
A.そこに残機があるじゃろ?
一話から順に書き直します、次の更新は少々お待ちください。