パエトーンになりたくて!   作:名無しのゼンゼロプレイヤー

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 最近ゼンゼロを始めたので、記念に書きました。
 まだまだ知識が浅いので、口調間違えてたらすいません。


プロローグ
キヴォトスのパエトーン


 数日前のこと。便利屋68に、一つの依頼が舞い込んできた。

 依頼内容は、ライバル企業のビルに忍び込んで、不正の証拠を盗んできて欲しいというもの。

 

 その企業はキヴォトスでも名をよく聞く、それなりに大きい企業。当然だが、ビルの警備も相当金がかかっていた。

 なのでアルは、万全を期すためにとある『ナビゲーター』に依頼をしたのだ。侵入経路及び、脱出経路を案内してくれ、と。

 ナビゲーターはアルの依頼を受けた。

 

 そして今日、アルたちはナビゲーターの言う通りにビルの内部へと侵入し、誰にも気づかれることなく不正の証拠を手に入れることに成功。

 後はそのまま脱出するだけ⋯⋯だったのだが、便利屋68のいつもの流れで、警備システムを起動させてしまったのだ。

 そして、その結果。

 

「本当にいいのね!?上がっていくわよ!?」

『あぁ、問題ない。僕を信じてくれ』

 

 アルたち便利屋68の面々は、ナビゲーターの指示に従ってビルを駆け上っていた。

 

「アルちゃーん、どっちにしろ信じるしかないよ?」

「まぁ、後ろがあの様子だしね⋯⋯」

 

 ムツキとカヨコに言われてアルが後ろを見れば、そこには自分たちを追いかけてきている多数の兵士たちの姿。

 

「これで逃げ切れなかったから恨むわよ⋯⋯!」

『そもそも、アルの失敗だろうに』

「や、やっぱり私が囮に⋯⋯!」

「却下よ!そんな事、させるわけないでしょう!」

『僕も反対だ。依頼内容は便利屋68全員の脱出だからね。欠員が出るのは困る』

 

 囮になろうとしたハルカだったが、アルとナビゲーターに止められる。こんなやり取りをしながらも足を止めていないのは、流石と言ったところか。

 

 そんなこんなで彼女たちがたどり着いたのは、ビルの屋上。何もない殺風景なそこが、ナビゲーターが指示した場所だった。

 

「⋯⋯ねぇ、本当に大丈夫なのよね!?」

『しつこいな。僕を信じられないのか?』

「だって、何もないじゃない!最善の避難経路って言うから上がってきたのに!」

 

 屋上の出入り口は一つだけ。逃げ場を失ったアルたちの今の状況はまさに、袋の鼠と言ったところだ。

 若干涙目になりながら叫ぶアルだが、インカムの声は至って冷静だ。

 

『最善だとも。それに、下に行けば間違いなく捕まっていたよ』

「上に来ても捕まりそうだから言ってるんでしょう!?」

 

 インカムの声の主とは今まで何度も共に仕事をこなしてきたが、こんなにもピンチと言える状況になったのは初めてだった。

 故にアルは声の主の実力を知っていてもなお、不安なのだ。

 

「せめて、カヨコたちだけでも⋯⋯!」

 

 アルが『最悪』を考え始めた、その時だった。

 

「ようやく追い詰めたぞ、侵入者共め!」

 

 屋上の出入り口の扉が開き、兵士たちが流れ込んできた。

 四方は行き止まり。唯一の出入り口も兵士たちの後ろ。アルたちは、完全に逃げ場を失った。

 

「フッフッフッ⋯⋯!うまく逃げ回っていたようだが、所詮は侵入者だったな」

 

 勝ち誇ったセリフを言いながら現れたのは、その企業の社長だった。

 太ったお腹は、まさに悪徳企業の社長といった風貌である。

 

「さぁ、我が社から奪ったものを返してもらおうか?」

「⋯⋯ふふっ、誰に言っているのかしら?私は便利屋68の社長、陸八魔アル。この書類は、依頼の達成に必要なものなの。渡すわけにはいかないわ」

 

 そう言って、アルは不敵な笑みを浮かべた。

 こんなに追い詰められた状況にあっても変わらぬ自信に満ち溢れた態度に、社長や兵士たちの間に緊張が走った。まぁ、実際のところは⋯⋯。

 

(こんな自信満々に言ったけど、本当に大丈夫なのよね?)

 

 こんな感じで、余裕など微塵もないわけだが。

 

「⋯⋯何を隠しているか分からん。ちょっとずつ距離を詰めていけ」

 

 兵士たちがジワリジワリとアルたちに近づき、少しずつ追い詰められていく。

 そんな時、ナビゲーターから再び連絡が入る。

 

『さぁ、脱出といこう。今から3カウント後、全力でビルから飛び降りるんだ』

「⋯⋯え?」

 

 その指示は、とんでもないものだった。

 このビルの高さは相当なもの。飛び降りれば間違いなく死ぬ。

 

 なのにこのナビゲーターはハッキリと言った。3カウント後に飛び降りろ、と。

 そんなとんでもない指示でありながら、ナビゲーターは問いかける暇も与えてくれない。すぐさまカウントダウンが始まる。

 

『カウントダウンだ。3⋯⋯』

「ほ、本当に大丈夫なのよね?」

『2⋯⋯1⋯⋯』

「あーもう!信じるわよ、パエトーン!」

『ゼロ!』

 

 パエトーンの指示と同時に、アルたちはビルから飛び降りた。

 

「し、侵入者が飛び降りました!」

「血迷ったのか、!?」

 

 兵士たちや社長が驚き、最悪の光景を想像しながらビルの下をのぞき込む。

 しかし、そこに広がっていたのは社長たちが予想していない光景だった。

 

『どうだい、乗り心地は?』

「ええ、ものすごく揺れるわ⋯⋯」

『まぁ、そこは我慢してほしいかな』

 

 そこにあったのは既に遠く離れている一台のヘリ。そして、ヘリから吊リ下げられている大きな布の中にいる、便利屋68の姿だった。

 

 遠く離れていく便利屋68。当然ながら、彼女たちの手には不正の証拠が記載された書類があるわけで。

 

「⋯⋯クソおおおおっ!」

 

 次の日、キヴォトスにある一つの企業の不正の証拠がモモッターにて拡散された。

 

 

 

 

 

 

 ミレニアム自治区の辺境にあるレンタルビデオ店。僕の家でもあるそこのバックヤードに、空の旅を終えたアルたちがやって来た。

 疲弊した様子のアルに、ソファに座りながら問いかける。

 

「お疲れ様。空の旅は楽しかったかい?」

「最悪だったわよ!布は揺れるし、ほつれる音がするし!もうちょっと別の脱出方法があったでしょう!?」

「無茶を言うね。そもそも、僕の考えた逃走ルートを使えなくした原因はそっちのミスだろうに」

 

 責めるアルに、カウンターと言わんばかりに正論をぶつけてやる。

 ただ、それではアルの文句は止まらないだろう。なので、ちょっと趣向を変えてみる。

 

「それに、ああいうシチュエーションはアルの好みだろう?ピンチに見せかけて、颯爽と去るのはさ。まさにアウトローって感じだ」

「そ、それはそうだけど⋯⋯」

「カッコよかったよ、アル。アウトローって感じで」

「そ、そうかしら?⋯⋯そうよね!」

 

 チョロい、と思わざるを得ない。

 この子、冗談抜きでこの仕事が向いてないと思う。

 

「そうだ、喉が渇いただろう?冷蔵庫に冷やしておいたお茶があるよ」

「あら、そう?なら、遠慮なくいただくわ!」

 

 そう言って離れていくアルを見送った後、僕の左隣に座ってきたのはムツキだった。

 

「くふふ、店長さん、悪ーい」

「なんのことかな?僕はただ、正直な感想を言っただけだ」

「ええ〜、ホントかなぁ?」

「本当だとも。僕がウソをついたことがあったかい?」

「何度もあったよ?ね、カヨコちゃん」

 

 僕とムツキのやり取りに巻き込まれたのは、対面のソファに座って銃の整備を行っていたカヨコだ。

 彼女はため息をつくと、整備を終えたらしい銃を机に置いた。

 

「まぁ、普通にあったかな」

「そうだったかな」

「うん。まぁ、仕事中に嘘を言ったことはないけど」

「プロだからね。それに、この仕事では信用が命だ。仕事中に嘘はつかないさ」

 

 プライドを持ってこの仕事をしているんだ。嘘をつくなんてするはずがない。

 僕の発言に、カヨコは微笑んで立ち上がると。

 

「⋯⋯うん、知ってる」

 

 そう言って、空いていた僕の右隣に座った。

 

「存じてもらっているようで何よりだ」

「くふふ、私も知ってるよ!」

 

 左にムツキ、右にカヨコ。

 そんな光景が広がっていた時、僕のイヤホンに声が流れてきた。

 

『人誑しですね、マスター』

 

 否定したかったが、しなかった。いや、できなかったと言った方が正しい。

 彼女の声はイヤホンを通していても、僕にしか聞こえない。返事を返せば、変人扱いされてしまうのは目に見えている。

 僕はイヤホンから聞こえる声を無視して、入り口に立っているハルカを呼んだ。

 

「ハルカ、入り口に立ったままだとしんどいだろう?君もソファに座ると良いんじゃないかな?」

「い、いえ!私なんかがソファに座るわけには⋯⋯!」

「ハルカ、君はいつもアルたちの為に頑張っているじゃないか。たまには自分を甘やかしてもいいと思うよ」

 

 後、自分が座っているのに一人だけ立たせているのは申し訳なくなるので嫌だというのもある。

 僕の言葉に、ハルカは恐る恐る近寄ってきて。

 

「す、すいません!」

 

 そんな事を言いながら、ソファに腰掛けた。

 その後、お茶を五人分コップに入れて持ってきてくれたアルに今回の依頼料の話をして、その日は解散となった。

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯さて、今日の『パエトーン』と『アキラ』ムーブの自己採点だ」

 

 アルたちの帰宅後、一人になったレンタルビデオ店に僕の声が響いた。

 アキラといえばの無自覚天然人誑しムーブ。アレを真似するのは相当難しかったが、今日も上手くできていたと思う。

 

「しかし、やっぱりパエトーンの方が拙いな。アキラたちのパエトーンはもっとこう、スマートに解決するイメージだ。もっと精進しないと」

 

 本来のルート通りに行けたなら、もっとスマートだったのだが⋯⋯いや、イレギュラーが起きても咄嗟の機転で解決するのがパエトーンだ。

 やはり、まだまだだな。

 

「僕が完璧なパエトーンになれるのはいつになるか⋯⋯」

 

 転生者の僕が推しの『パエトーン』を汚さないためにも、全力でアキラになりきらなくては。




・アキラ(憑依)
キヴォトスに転生してパエトーンであるアキラになってしまった転生者。オタクとしてアキラのイメージを壊したくなくて、アキラムーブを完璧にできるように努力している。
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