Challenger【特殊戦闘大隊】 作:NIGHTMARE⭐︎
誅暦999年、喜帝軍チャレンジャー大隊前線基地。1人の17歳の少女がやってきた。
宇宙平和協会に並ぶ軍事力と指揮能力を持った戦闘組織、喜帝軍。そこに所属する大隊の一つであるチャレンジャー大隊は他の大隊と比べて圧倒的な軍事力と勢力を誇り、民衆からはもはや喜帝軍から独立して、チャレンジャーという一つの団体かのような扱いを受けていた。
「よろしくお願いします…ミアーシャと申します…」
少女が控えめな声で受付に言う。受付は全身を黄色いラインが入った黒い鎧で覆い、長めな髪を後ろで結んだ男性だ。
彼の後ろに広がる基地の建造物は黒く塗装が施され、こちらも黄色いラインが一本入っている。目の前の門の奥には、巨大な司令塔や大勢が入れそうな寮のようなものもある。
「あなたが入隊希望者の方ですね。こちらへ」
門についた踏切のようなゲートがさっと素早く開いた。少女はそこを通った。受付はクリップボードに固定した少女に関する資料を眺めている。少女は思わずその場で立ち止まった。
「ほう…元BLUELINE所属ですか…よく喜帝軍への入隊を決意しましたね」
「ええ…まあ、そんな立派なものじゃなくて…研修みたいな感じでしたから…」
少女が自身なさげに言う。反射的に彼女の紺色の小さな翼がわずかに動いた。それを受付が見る。
「クロソイドですか。それも竜の…」
「えっ。まあ…」
ミアーシャは半竜と呼ばれる人間だった。正式にはクロソイドというもので、人間以外の遺伝子を持つ人間。ミアーシャは飛竜のクロソイドであるため、翼を持ち飛行が可能なのだ。
「立派ですね」
受付が少し明るいトーンでミアーシャに声をかけた。ミアーシャは、彼が自分を元気付けようとしているのだと気づいた。
「それでは、さっそくにはなりますがあなたが振り分けられた小隊の拠点へ案内しましょう」
受付が門を通ってミアーシャを先導する。右側は山、左側には海が広がっている。山を越えなければ辿り着くことができないこの場所は、何も知らない者が偶然辿り着く可能性は限りなく低いように思える。小隊ごとの活動拠点となる小さなテントのような布が貼られた簡易的な建物が左右にいくつも設置されている。もちろん全て黒い布だ。
「こちらです」
受付があるテントの前で立ち止まった。横幅は7m、高さは4mほどだろうか。拠点にしてはかなり小型だ。入り口のように開いた部分の横には「カレット小隊」の札が付いている。
「ありがとうございます…!」
ミアーシャは受付に深く礼をしてテントの入り口から少し中をのぞいてみた。
「7分の遅刻だ、遅いぞ新人」
攻撃的な声が背後から響いた。まるで機械のような合成された大きな声に、ミアーシャは驚いて飛び上がる。
「す、すみません…!」
ミアーシャが振り返ると、そこには想像と全く違う姿の声の主が立っていた…いや、浮いていた。
それは四枚の円形の翼が球体の本体を囲むように造形された浮遊装置だった。横幅は70cmほどだろう。球体の部分にはぐるりと取り巻く黄色いライトがあり、それが音を発するたびにキラキラと光っている。
「これ…えっと…何ですか?」
ミアーシャが反応に困って立ち尽くす。浮遊装置は激昂した声でミアーシャに怒鳴る。
「私がカレット小隊の隊長である人工知能『明滅』だ!遅刻した上その態度は軍人として問題だぞ」
『明滅』が黄色いライトを光らせて叫ぶ。ミアーシャは腰を抜かした。これが隊長!?
「新人を理由にある程度のミスは許されると思うなよ。早く入れ」
明滅がブーンとエンジン音を響かせながらミアーシャの横をすり抜けてテントへ入っていった。ミアーシャは慌ててその後を追う。
中にはすでに『明滅』以外にも4人の隊員がいた。青いバイザーをつけた黒髪の少女、ミアーシャよりも年下に見える金髪をポニーテールに縛った真面目そうな少女、黒いゴーグルを付けていて目元がほぼ見えない女性、黄色い双剣を持った黒髪の男性。ちょっと個性が強すぎる。
「初めまして、本日からカレット小隊として活動させていただきます、ミアー…」
『明滅』が咳払いのような排熱音を響かせて遮る。そうだった。チャレンジャー大隊ではコードネームで名乗るんだった。
「改めまして…『潮風』と申します…!」