Challenger【特殊戦闘大隊】   作:NIGHTMARE⭐︎

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10 再出発

『ポーン』が発射した銃弾は、真っ直ぐに『明滅』に命中した。砂浜に墜落した『明滅』は、黄色い光が切れかかった電灯のようにバチバチと、その名の通りに明滅している。

「貴様…初めから隙を狙っていた…というのか…?!」

『明滅』が途切れ途切れの機械音声で果てのない恨みを込めて言う。『ポーン』は冷たい目つきで銃をミアーシャに向け直す。

「小隊長失格だな。戦闘中に気を抜くとは」

『ポーン』はわずかに足を引き摺るようにして戦闘体制に入った。小隊全員を相手に勝てるはずもないとはわかっている。どうせ死ぬのなら、できるだけ大きい被害を出してやる。

ところが、小隊員は誰も『ポーン』には目もくれなかった。

「『明滅』隊長!!」

全員が撃ち落とされた浮遊装置に駆け寄った。『ポーン』にとっては想定外だった。

「まだ走行と発光体が破壊されただけっぽい。治療はできると思うよ…」

『感電』が『明滅』を慎重に観察しながら言った。『明滅』は人間でいうところの気絶をしたかのように無言になっている。

「助かるんですね…!?」

ミアーシャが『感電』に再確認すると、『感電』は頷いた。

 

『ポーン』はその様子を放心したように見つめている。どういうことだ。なぜ誰も私に怒りを示さないんだ。お前たちが立派だと思い込んでいる隊長を破壊した私が憎くないのか?

小隊員は全員が無防備そのものな様子で『明滅』の損傷を確認している。本当に軍か…?そのまま全滅するぞ?

『ポーン』は我に帰ったように銃口を構え、『カザリ』に向けて発砲した。

しかしその銃弾はいとも簡単に『カザリ』の刀に弾かれただけだった。

「関わらないでください」

『カザリ』が一言冷たく言い放った。『ポーン』はついに身動きが取れなくなっていた。

そうしている間にも『感電』が漏電を止める処置を施したらしく、『明滅』の黄色い発光機は光を取り戻していた。

 

「…BLUELINEに通報を入れてくれ」

やがて『明滅』が口を開いた。

「隊長…ほんとに大丈夫なんですね…よかった」

ミアーシャがわずかに目に涙を浮かべて呟くように言った。『明滅』がそれに気づいたのか、照れ隠しの咳払いのような排熱音を立てた。

 

「BLUELINEに通報入れました。偶然近くを巡回している隊員がいたそうなので、3分ほどで来るそうです」

ミアーシャが多目的連絡機器をしまいながら言った。墜落した『明滅』の声を聞き逃さないようにしゃがみながら、その発光機を見つめる。

「ああ…流石はお前を推薦した組織だ、有能だな」

『明滅』が言った。ミアーシャは驚いたが、無言でその場に立ち上がった。ただ顔には出ていたらしく、崖から降りてきた『スナイパー』が少し微笑んだ。

 

やがて、3分も経たないうちに赤と黒の髪のBLUELINE隊員と、銀髪のツインテールの少女が砂浜にやってきた。『ポーン』は諦めたような放心したような顔でその2人を見つめている。

「BLUELINE捜査隊長、紅真です。危険人物の確保へのご協力、感謝します」

「え、ええ…どういたしまして…?」

『カザリ』が引き攣った顔で答えた。本当は彼を見つけたのは隊長で、その動機が復讐なのだ、とは口が裂けても言えなかったらしい。紅真は銀髪の少女と共に『ポーン』の元へ歩いて行った。

「どうもどうも。“構成員裁定委員会”のドレッシュと申します〜。あなたの5年前の行動は喜帝軍構成員として許容される範囲を大幅に超えておりましたので、できるだけ早く確保したかったんですよ〜!会えて嬉しいです!」

銀髪の少女が場違いな明るい笑顔で『ポーン』に詰め寄った。

 

「構成員裁定委員会…あらゆる組織の構成員が限度を超えた行動を起こした場合に取り締まる組織ですね。あと一歩で隊長もお世話になるところでしたよ?」

『感電』が小声で『明滅』に囁いた。

「フン…お前たちのおかげで間に合ったからセーフだ…!バレてなさそうだしな」

『明滅』がさらに小声で答えた。その間に紅真隊長は慣れた手つきで『ポーン』に手錠をかけて崖の上に停車しているBLUELINEの車両へ連行して行った。

 

『晴姫』は砂浜に立って、夜の色に染まりつつある海を眺めていた。ミアーシャがその隣に歩いて行き、微笑みかけた。

「『潮風』ちゃん無理しすぎだよ〜。結果は良かったけどもっと計画的に動かなきゃだめだよ〜」

『晴姫』が珍しく論理的なことを言い、ミアーシャは何も反論できない。

「でもそれは関係なく、みんな『潮風』ちゃんに感謝してるはずだよ。」

『晴姫』が少し慰めるような口調でミアーシャに言った。ミアーシャは笑顔で頷いた。

 

「私、この小隊で良かったと思ってるんだよね。BLUELINE時代はあんまり人との関わりがなかったから。でも今は、1人じゃないって強く思えるんだ!」

ミアーシャが満面の笑顔で言った。『晴姫』も嬉しそうに頷く。

「良かったぁ。これからもよろしくね〜。」

『晴姫』のゆるっとした声が心地いい。そして心地よさ以外真逆とも言える『明滅』の声が奥から聞こえてきた。

「『潮風』、『晴姫』、基地に戻るぞ。この忌々しい体をさっさと修理しなければ不自由で憤死しそうだ!」

ミアーシャは『晴姫』と顔を見合わせて声の元へ向かって行った。夜の闇が砂浜を黒く染め上げていっても、小隊の周囲は『明滅』の黄色い光に照らされ、暖かい空気が漂っていた。

カレット小隊、作戦完了。

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