Challenger【特殊戦闘大隊】 作:NIGHTMARE⭐︎
「『潮風』と申します…!」
ミアーシャが個性的な5人に自己紹介をした。
喜帝軍、チャレンジャー大隊、カレット小隊。ここではコードネームで呼び合うことが暗黙のルールになっているのだ。
「悪いが全員が自己紹介をしているだけの暇はない。気になる者がいれば個人的に話せ」
小隊長の浮遊装置、『明滅』が刺々しい声で言う。ミアーシャはすでに気になることだらけだった。ただそれを今聞くと、『明滅』隊長に叱られそうなので何も言わなかった。
「さて、昨日に引き続き今日も“カミヅカ第3観測体”と連携して奴らの動向を掴む。いいな」
『明滅』隊長が淡々と全員に告げる。ミアーシャは彼の言葉から推理する。どうやらカレット小隊は何者かを探しているらしい。危険組織だろうか。BLUELINEに所属していた時にもよく聞いた危険組織がいくつかある…その中でもここ最近逃走する理由がある団体は…。
「迷宮会ですか?」
ミアーシャが『明滅』に質問する。最近になってBLUELINEに幹部の1人が捕縛された危険団体、迷宮会。目的は定かではないがあらゆる街に現れて住民を攫っているのだとか。
『明滅』は言葉を区切った。
「よくわかったな?推察力は多少なりとも使えそうだ」
『明滅』隊長が抑揚のない声で言った。ミアーシャは少し微笑んだ。隊長に褒められた(ような気がする)。
「…以上だ。では行動開始」
『明滅』が言うと、全員が動き始めた。今回は2人1チームで行動をするらしく、ミアーシャは黒いゴーグルで目元を覆った女性と組まされた。
「よろしくお願いします…!」
ミアーシャが女性に声をかける。女性は身長差からミアーシャを少し見下ろすようにして少し微笑んだ。
「よろしくお願いします『潮風』さん。私は『スナイパー』と申します。先輩として頼ってもらえるように頑張りますね」
ミアーシャは思った。コードネームそのまんまァ…。『スナイパー』は黄色と黒の照準器を外したスナイパーライフルのようなものを持ってテントを出た。ミアーシャも愛用の槍を持って彼女の後を追った。
「迷宮会を探してるんですよね?なんか目処とかはついてるんですか…?」
基地のすぐ横の山に作られた道路でミアーシャが『スナイパー』に尋ねた。山の斜面を切り開いて作られたような道路らしく、下には先ほどまで自分たちがいたチャレンジャー大隊の基地が一望できる。『スナイパー』は少し困ったように口元を歪める。
「実際のところ目処はほとんど立っていません。そこで最近になって各地を観測機で記録している“カミヅカ観測隊”との共同任務へ移行したわけです」
「なるほど…」
ミアーシャは『スナイパー』に聞きたいことがたくさんあったが、任務中に関係のないことを話したら軍人としての神経を疑われるかもしれない。そうなれば友好的な関係性の維持ができなくなってしまう。そう思うととても話すことができなかった。
「こういう道にも、観測隊に記録機を設置していただいているので、地道に一つずつ記録された映像を見ていくしかないんですよね…」
『スナイパー』が言った。ゴーグルのせいで感情が読み取りにくい。
「迷宮会はこの辺りを通るんですか…?」
ミアーシャの質問に『スナイパー』は頷いた。
「彼らはそこにチャレンジャー大隊の基地があるなんてことは知りません。そうなれば人気のなくアクセスも悪いこの山は身を隠すのに最適ですから」
「なるほど…」
『スナイパー』はすぐそばに設置された観測用のカメラの映像を確認している。導力を感知すると自動で撮影する仕組みらしい。
「何も無しです。奥へ進みましょう」
『スナイパー』がミアーシャへ手招きのような動きをした。ミアーシャは彼女の後へ続き、さらに深く山の奥の道へ進んでいった。
「暗いですね…」
ミアーシャが『スナイパー』に声をかける。
「そうですね。でもその方が彼らにとっては好都合でしょう」
『スナイパー』が静かに言った。確かに危険組織が身を隠すにはもってこいの場所だろう。人が来ないため人間から生まれる死霊も現れず、極秘活動をするには完璧な場所かもしれない。
瞬間、『スナイパー』が右側の山の上の方を見てスナイパーライフルを構える。
「何か見つけたんで…」
パシャン!
地面に煙幕のような者が投げつけられ、灰色のガスがあたりに充満した。ミアーシャは場所がわからなくなり取り乱すが、『スナイパー』は冷静に山の上に向けてパァンと狙撃した。5秒間の静寂、そして…
ドサッ。
ミアーシャのすぐ隣のあたりから何か重いものが落ちてくる音が響いた。ミアーシャはそれを見て驚いた。それは右脚を撃ち抜かれた赤い服装の男だった。男は痛みに呻き声をあげている。
「!?」
「急所は外してます。聞き出さなければいけないので」
『スナイパー』がガスの奥からこちらに向かって歩きながら言った。ミアーシャは、彼女がガスで視界を奪われている状態にも関わらず山の上にいる敵の脚を血管を避けて撃ち抜いたのだと理解した。
「凄すぎます…!!」
ミアーシャが思わず思ったことを口走った。『スナイパー』は軽く微笑むと、地面で丸くなっている男に目線をやる。
「さて、話してもらいましょうか」