Challenger【特殊戦闘大隊】 作:NIGHTMARE⭐︎
ミアーシャは死霊の偽物の救いに強い嫌悪感をあらわにし、宣戦布告した。
死霊は金色の仮面で隠された顔をミアーシャに向けている。まるで救われない人間を哀れむように。
「可哀想に!すぐに救ってあげますよ!」
死霊が不気味な声で言う。ミアーシャの言葉は全く聞いていないらしい。
死霊が血管のような翼をミアーシャに向ける。ミアーシャが何か来ると予測して駆け出した瞬間、翼から血のような赤い液体が勢いよく発射された。
パシャンッ。
ミアーシャはそれを間一髪で回避した。同時に『晴姫』が死霊に向かって飛び立つ。
「救いを受け入れないものに報いを!」
死霊が翼を『晴姫』に向けて、マシンガンのように赤い液体を連続で発射し始めた。『晴姫』は空中でくるくると回転してそれを回避し、死霊の上を素早く通り過ぎた。その瞬間に青い刃を構え、死霊の右の翼を斬り飛ばした。
死霊は言葉にならない悲鳴をあげる。
「あと一つだね〜」
『晴姫』が死霊の左の翼を見ながら言って、ミアーシャのとなりに降り立った。ミアーシャは小さく頷き、槍を構えて渦潮のように導力を収束する。
死霊が左の翼を上に向け、噴水のように赤い液体を大量に放った。液体は広範囲に広がっていく。ミアーシャが槍を上に上げて渦潮でそれを弾き飛ばした。『晴姫』はミアーシャの後ろで渦潮に隠れている。次の瞬間、死霊がミアーシャに向かって高速で近づいた。
「っ!」
ミアーシャは渦潮を展開するために手を上に上げていたため防ぐことができない。死霊がミアーシャの体に赤い肉の拳を叩き込んだ。
「あ“っ…!」
ミアーシャは死霊に殴り飛ばされ、『晴姫』ごと壁に叩きつけられた。
「ダイジョブ…?」
『晴姫』がミアーシャに声をかける。ミアーシャは腹を抑えて頷く。
「まだ大丈夫です…!」
死霊は足を組んだ姿勢のまま地上40cmほどの場所に浮遊している。その翼がミアーシャに向けられる。ミアーシャは無理に体を起こし、死霊が放った血のような液体をかわす。『晴姫』は宙返りして浮遊を開始していた。
ミアーシャは一気に死霊に距離を詰め、塩水の宿った槍で連撃を繰り出す。死霊は身体を一切動かさずに、黒い導力の流れを作り出してで防いでいく。死霊は少しずつ後退している。
「なぜ救いを受け入れないのです!?」
「救いじゃないから!」
ミアーシャが槍を素早く振り抜き、死霊を蹴り上げた。死霊は突然の下からの奇襲に体勢を崩す。ミアーシャは槍に渦潮を纏わせ、死霊の体目掛けて突き出す。
その瞬間、死霊が全身から大量の赤い棘を突き出した。棘はミアーシャの首元や胸元を貫く。
「がっ…」
ミアーシャは吐血してその場に前屈みに崩れ落ちた。
「『潮風』ちゃん!」
『晴姫』がミアーシャの元に高速で飛んでいく。死霊は祈るように手を合わせている。ミアーシャを展開に葬ろうとしているように。
「待って!」
『晴姫』が死霊に大量の青い刃を手裏剣のように撃ち出す。死霊はそのいくつかが刺さり、ミアーシャの前から引き剥がされた。
「『潮風』ちゃん、大丈夫…?」
「…意外に大丈夫です…うまく急所は外しました…」
ミアーシャは『晴姫』の肩を借りて立ち上がる。死霊はそれを信じられないと言うように見つめている。
「人間は情が厚いのですね」
『晴姫』はその言葉にピクッと反応した。
14年前の誅暦985年、生産組織オペレーターにより新たな戦闘特化傀儡が開発された。名前はBLUESKY:0号。それを購入したのは、チャレンジャー大隊隊長の『海氷』。
「見事な出来だ…人間と見分けがつかないレベルですね」
『海氷』がオペレーターの社員と話している。傀儡はぼーっと突っ立っている。社員は少し険しい顔で『海氷』を見ている。
「それが…この傀儡には少し欠陥が見つかっていまして…「情」と言うものがないように思えるのです…」
社員が言った。『海氷』は表情を変えることなく言う。
「いいじゃないですか。生まれたばかりの人間も、みな情など知りませんよ。我が隊で知って貰えばいいだけです」
傀儡が『海氷』を不思議そうに見つめている。
「ですがその前に…正式な隊員として活動するならコードネームが必要ですね」
『海氷』が傀儡をじっと見つめる。黒髪のショートヘアーに白く透き通るような肌。水色の宝石のような目。まだ完成直後のため服は纏っていないが、すでに隊服も用意している。
『海氷』は少し悩んだ末言った。
「BLUESKY、青空か。じゃあ『晴姫』ですね」
『晴姫』はチャレンジャー大隊で多くを見た。情など、知らず知らずのうちに湧いていた。
『晴姫』は隣に立つミアーシャを見る。彼女は自分にとって大切な仲間なのだ。『晴姫』は死霊に向き直り、静かに頷いた。
「その通りだよ〜。『人間』は情を持つ生き物〜!」
人間の感情を持つ戦闘傀儡は、ミアーシャと共に死霊に向かって駆け出した。