Challenger【特殊戦闘大隊】   作:NIGHTMARE⭐︎

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6 超新星爆発

『晴姫』とミアーシャは死霊に向かって駆け出した。

「情などいりません!皆が救いを受け入れて団結すれば情けをかける必要すらありません!」

「黙った方がいいよー。お口チャック」

『晴姫』が後ろに飛んで逃げる死霊に言った。ミアーシャが槍に渦潮を収束して死霊に突きを繰り出す。死霊は導力の流れを作り出してその軌道を捻じ曲げて回避した。

「どうですか?救いを受け入れて楽になりたくなってきました?情や感情なんかさっさと捨てて一つになるのです…」

「うるさい!」

『晴姫』が珍しく大きく声を張り上げ、死霊に向かって青い導力刃を複数枚放った。死霊は防ぎきれずに、体にいくつもそれを喰らって壁に叩きつけられた。

「『潮風』ちゃん!」

「ありがと『晴姫』さん!」

ミアーシャが『晴姫』をすばやく追い抜き、死霊に槍を突き立てて壁に磔にした。

「ギャッ…!」

死霊は大きくもがくがミアーシャは槍に力を込めて飛行し続ける。押し切れ…!

その瞬間、死霊の仮面の下から奇妙な光が漏れ出す。

「『潮風』ちゃん、離れて!」

『晴姫』が高速で飛行し、ミアーシャを掴んで死霊から引き剥がす。

「!? 『晴姫』さ…」

ドカァァァァァン!

ミアーシャの槍で壁に磔にされていた死霊が大爆発した。導力を含んだ爆風と衝撃波が、ミアーシャと『晴姫』を吹き飛ばす。

「うっ!」

『晴姫』がミアーシャを守るように強く抱きしめた。ミアーシャはその腕の隙間から死霊の方をチラリと見るが、そこにはもうすでに濃密な導力が漂っているだけで、爆散した死霊の肉体はすでに消滅していた。

『晴姫』とミアーシャは地面に叩きつけられた。地面には死霊がばら撒いた赤い液体が大量に広がっている。

「『晴姫』さん…!大丈夫…?」

「へーきへーき…傀儡だもん」

『晴姫』はミアーシャを抱いていた手を広げる。ミアーシャは疲労からその場に倒れ込んだ。施設の不気味に赤く照らされたライトと銀色の無機質な天井、そして自分を心配そうに見下ろす『晴姫』の姿が目に映る。

「…やりましたね、『晴姫』さん…」

「…うん。討伐成功〜」

『晴姫』とミアーシャはその場に倒れ込んだままコツンと握りしめた手を横から打ち合わせた。それは軍内部で使われる、「信頼と労り」の意思表示…要するに、「お疲れ様」の意味だった。

ミアーシャはそれを最後に眠りにつくように意識を失った。

 

同時刻、隣の部屋では『カザリ』、『明滅』、『感電』、『スナイパー』がかなり減ってきた信者たちと応戦していた。信者たちは仲間や司教、教祖がやられようと諦めることを知らないらしい。

「ったく、抵抗しなければ痛い目は見ないというのに…信仰に脳を毒されているんだろうな」

『明滅』が吐き捨てるように言った。その言葉には人間の深淵に対する嫌悪感と恨みのようなものが詰まっている。

 

8年前、誅暦991年。18歳の女性が1人、チャレンジャー大隊へ入隊した。

彼女のコードネームは『明星』。昔から好きな言葉だ。美しく強く輝く星、それはまさに彼女の理想像だった。

彼女が所属することになったのは、“カズーロ小隊”だった。

 

のちに協会の裏切りにより壊滅したことで広く知られることになる小隊である。

 

「…はぁ?」

『明星』は耳を疑った。3年後、ある自然操作性上位死霊の侵攻を止めるため、カズーロ小隊は出撃となった。しかし、上位死霊は周囲の地形を改築して結界のような繭を作り出しており、『明星』にはとても小隊1つががどうにかできるものとは思えなかった。

「大隊長…何かの間違いですよね?カズーロ小隊単独であの死霊の繭の拡大を防げと言うのですか?」

『明星』は電話に向かって言う。

当時の大隊長はさも当たり前かのようなトーンでこう言った。

「違う、拡大を『遅らせろ』と言っているのだ。繭はもうすぐに市街地にまで侵攻していく。市民が逃げる時間を確保するのだよ。それに単独でもない。のちに宇宙平和協会の援軍が来る」

『明星』は金髪をギュッと結びながら不機嫌な表情で考えた。我々の命を軽視しすぎている。いや、それが軍というものか…。残酷だな。どんな選択をしても隊員か市民どちらかの命が危険にさらされることになるなんて。

 

カズーロ小隊は死霊の白い半球の形状をした繭の前にたどり着いた。すでに街の目の前にまでそれは広がり、街に巨大な影を落としている。そして繭の中からは、例の死霊が生み出したであろう人間大の下級死霊が悍ましいほどの数で街へ押し寄せてくる。

「く…やるしかないのか」

『明星』は歯を食いしばって連射式導力銃を下級死霊の群れに撃ち込んだ。

 

同刻、当時の宇宙平和協会会長とチャレンジャー大隊長が街の最奥に位置する高層建築で緊急会議を開いていた。

「…いかがいたしましょうか、隊長」

会長が尋ねる。チャレンジャー大隊の隊長はカズーロ小隊の姿を街中に設置されたカメラを通して生中継で見ていた。勢いの衰えない死霊の群れを見て、隊長は口を開いた。

「無理だ。勝ち目がない」

会長は息を呑む。

「ここは我々は引き上げよう。あのまま戦い続けていてもキリがない。少しずつ押されていくだけだ」

隊長は中継を切断し、会長に伝える。

「協会員の援軍は送るな。無駄死にをさせるわけにはいかん」

協会長は困惑しきって隊長を見つめる。

「か、カズーロ小隊の方々はどういった対応を…」

「…やむを得ないのだ。あれだけの死霊に襲撃されれば、カズーロ小隊でも勝ち目はない。必要な犠牲はさておき、我々の犠牲は完全に無駄だ。引き上げるぞ」

 

隊長はさっさと準備をして街を出て行った。カズーロ小隊員は全員死亡、市民は半数に相当する4230人の死傷者を出した。

 

数日後、小隊員の遺体が本部へ運び込まれた。胸元を大きく切り裂かれた『明星』もその1人だった。そして、彼女はそんな自分の姿を外から見ていた…いや、自分の姿と言っては語弊があるかもしれない。

彼女の思考パターン、知能、知識量をもとに開発されたAI、『明滅』は本部に設置されたコンピュータを通してその様子を見ていた。あるはずもない胸が焼けるように苦しい。

隊長は小隊員だけでなく市民すらも捨てた。協会も協会だ、援軍はどこへ行ったクズどもが…!

彼女はそう思った。AIながら、涙が止まらないような感覚に陥った。怒りと絶望、そして深い悲しみが心を蝕み覆い尽くした。

 

 

現代。ドローンという肉体を手に入れた『明滅』が大量の銃火器で信者たちを吹き飛ばしていく。

「全滅、だな。」

『スナイパー』が静かに頷く。

「奥の部屋が静かになっているな…『晴姫』と『潮風』の安否が心配だ、行くぞ」

カレット小隊は彼女の居場所として最適解だったらしく、本人にそのつもりがなくとも彼女は再び人間を信頼し始めていたようだ。

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