Challenger【特殊戦闘大隊】 作:NIGHTMARE⭐︎
捕縛された信者は『明滅』の過去、その死に関わっていた大隊長に関する情報を持っていると彼女に告げた。『明滅』は無言で椅子の上に浮遊している。機械的なブーンというエンジン音だけが響く。
「あの大隊長…『ポーン』と言ったか?やつは今ソテムの海岸で商人団として半竜やら導力結晶やら、貴重なものの違法な取引をしている。それくらいしか行き場がなかったんだろうなぁ。アンタ復讐したいんじゃないのか?」
信者が『明滅』に言う。『カザリ』が刀に手をかけて威嚇する。
「…そんなことを言って解放してもらえるとでも思ってるのか?無駄なことだな外道」
やがて『明滅』が吐き捨てるように排熱しながら言った。長い沈黙の後、信者は無言でBLUELINEの職員2人に部屋の外へ連行されていった。
『明滅』と『カザリ』はそのまま一言も話さずにBLUELINE本部を後にした。2人の間には話しかけようにも話せない微妙な空気が流れていた。
「『カザリ』、先に喜帝軍本部へ戻れ。私も後で戻る」
本部のすぐ付近、海沿いの道でようやく『明滅』が口を開いた。黄色いライトがギラギラと光り、自らの存在を主張するようにすら見える。
「…『ポーン』大隊長とやらの場所へ行くんですか」
『カザリ』がすぐに返答した。
「話の流れからの推測でしかないんですけど…動機が復讐なら私、止めますよ」
『カザリ』が明滅をまっすぐ見つめる。その目には覚悟と同時に、「違うと言ってほしい」という一種の期待が見える。『明滅』は無言でその場に浮遊している。
「…私を殺した相手に情けをかけろとでも言うのか」
『明滅』が沈黙の後機械音声で言った。
「お前はズタズタにされた自分の体を外から眺めたことなどないだろう!私はヤツに殺されたんだぞ!?」
「な…」
『カザリ』が何か言おうとする前に、『明滅』は素早くどこかに向かって飛んでいった。
「ッ!」
『カザリ』はすぐに素早く走って後を追うが、明滅の飛行速度には人間の足ではとても追いつけなかった。ついに浮遊装置の姿は、夕陽に照らされた山の奥へ見えなくなった。
『明滅』は具体的な策など何一つ考えずに凄まじい速度で空を裂いていく。その心にあるのは燃えるような怒りだけだ。
彼女は想定よりもずっと早く目的地に着いた。それはチャレンジャー大隊の基地から遠く離れたソテムの海岸。夕陽はすでに地平線の彼方に沈みかけ、海を深い紫色で染め上げている。少し離れた場所には切り立った崖があり、砂浜に影を落としている。
そんな風景の中、砂浜に一つの黒いテントがあった。テントの中は違法取引に使われるのであろう瓶が置かれた棚がある。瓶の中には半竜の鱗や導力結晶体、血液のようなものが入っていた。
そして、1人の男がいた。彼は黒いマントを羽織り、少しだけ顔を出して外の風景を見渡している。
不意にその視界に、真っ赤な炎が映り込んだ。
『明滅』が放った火炎があっという間にテントと、中のものを焼き払った。男は間一髪で逃れたが、その浮遊兵器に瞬時に見つかった。
「元 チャレンジャー大隊長、『ポーン』。貴様のことであってるな?」
『明滅』が赤い炎よりも強く燃え上がった復讐心の滲む声で問う。男は白髪混じりの黒髪を乱して砂浜に倒れ込んでいる。
「何者だ…!?私の所有物に…」
「カズーロ小隊、お前が出撃命令を出し壊滅させた小隊の名だ。忘れたとは言わせないぞ!?」
『明滅』が出した大声に圧倒されて顔を歪める『ポーン』。その脳内でようやく情報が完結したらしい。
「そういうことか…あの小隊の隊員どれかのバックアップAIか…。」
『ポーン』は迷うことなくマントの内側から小型の銃を取り出してゆっくりと立ち上がった。その目つきと立ち姿は現役時代から衰えていないらしい。『明滅』は大量に組み込まれたミサイルユニットを起動する。自分とその仲間を殺したコイツを、ついに消し炭にしてやれるのだ…!
「私を殺した後どうする気だ?」
『ポーン』が銃を構えながら聞いた。この男まだ交渉が成立すると思っているのか。
「もういっそ協会も焼いてやろうか。奴らが援軍を寄越せば我々は死なずに済んだかもしれないからな!」
『明滅』が苦々しげに吐き捨てる様子を見て、目の前の男は苦笑した。
「なんだ、知らなかったのか。協会は援軍を送らなかったんじゃない。送ろうとしていたのを私が止めたんだ。無駄死にになるだけだったからな。その件で復讐に来たんじゃないのか?」
『明滅』は思考が真っ赤に染まるような激しい憎悪を感じた。この男が協会の援軍を止めた、だと…!?
「それによって何が救われたのだ!!何を守ろうとした!?」
「…この際だから言うが…私の地位、かな。結局はお前たちが予想よりも早く壊滅したおかげで犠牲者が増え、私の立場も陥落したがね」
『明滅』の理性はもはや完全に奪われた。その自我は怒りに染まり、即座に大量の導力式火炎散弾銃が乱射された。そして…。
激しい衝撃音が響き、銃弾は『ポーン』に届く前に爆散した。『ポーン』は風圧で軽く吹き飛ばされたものの、砂浜に体を打ちつけるだけで済んだ。
『明滅』はすぐに理解した。彼らだ。
崖の上に、愛用の銃を構えたままの『スナイパー』が見えた。そして、次の瞬間には自分の身体を押さえ込むように掴みかかってきた『潮風』の感触も。
カレット小隊が現着した。