Challenger【特殊戦闘大隊】 作:NIGHTMARE⭐︎
自らの死に関わった元大隊長の『ポーン』を前にし、理性を失った『明滅』。その怒りが炎として『ポーン』を焼き尽くす寸前、駆けつけたカレット小隊が彼女を止めた。
ミアーシャが『明滅』の球状の知能体を覆う翼を押さえ込むように掴んだ。
「『潮風』…!邪魔をするな…!」
『明滅』が震える声で言った。それは怒りからか恐れからか…。
「落ち着いてください…!何があったのかは知りませんけど、手を汚してはダメです!」
ミアーシャが必死に『明滅』に抱きつくようにして押さえ込もうとする。『明滅』は大量の銃火器を『ポーン』に向けたまま抗うように翼を激しく動かす。
「私にとって必要なことなんだ…!お前たちが関わる必要はない!」
『ポーン』は銃を構えたまま時が止まったかのように立ち尽くしている。その目は油断なく光っている。
「人間としての私はこの男の命令のせいで死ぬこととなった!そしてその命令は保身のためだとこのクズは抜かす!」
『明滅』がオーバーヒート寸前のように大量に排熱しながら機械音声を響かせる。その感情はもはやAIとしてのものではなく、その知能の元となった『明星』から引き継いだ記憶の怒りだった。ミアーシャは前の戦闘で傷ついたままの体で必死に抑え込み続ける。
「なら尚更隊長が自ら手を汚す必要はありません!私はそんな人のために隊長に罪を負わせたくないんです!」
ミアーシャが叫んだ。深く考えるよりも先に言葉が飛び出した。『明滅』の知能体がひっきりなしに排熱し、熱い蒸気がミアーシャの身体に吹き付けられる。
「私の生きる意味を…否定すると言うのか?」
『明滅』が少し落ち着いた口調で言った。ミアーシャは手を少し緩めて彼女を見つめた。当然浮遊装置のため顔などはなく、無機質な外観だ。
「復讐が生きる意味なら…それが終わってしまったら、それこそ生きる意味がなくなりますよ…」
ミアーシャの青い目が真っ直ぐ『明滅』を見つめる。純粋ながら強い正義感が隠す気もないように溢れ出ている。『明滅』はため息をつくようにプシュンと大きく蒸気を吹き出した。それは諦めと、自らに対する呆れだった。
ミアーシャは無言で『明滅』から手を離した。ミアーシャは彼女を期待するような、信じているような目で見つめている。
やめろ、そんな目で見るな…。他者の干渉でこうもあっさりこの復讐心が消えるはずがない…。
誰も口を開かない。『スナイパー』は崖の上から油断なく様子を伺い、『晴姫』はいつになく真剣な表情で立ち、『カザリ』は改造日本刀に手をかけたまま硬直し、『感電』は双剣を持ったまま『ポーン』を軽蔑するような目で見つめている。
永遠に感じるような思い沈黙がしばらく続いたが、やがて「この期待を裏切るわけにはいかない」、とでも言うように『明滅』は銃火器を翼に収納した。
「…すまなかった。私には復讐なんかより重要なものがあったと言うのに…」
『明滅』が黄色い光をギラつかせながら言った。ミアーシャはそれを聞いて安心したように自然に微笑んだ。
「信じてましたよ、隊長…」
パァン。
衝撃音と共に、『明滅』は火花を散らした。ミアーシャは突然の出来事に目を見開いた。視界の端に写る『ポーン』が持つ銃口から、灰色の煙が立ち上っていた。浮遊装置の隊長は砂浜に落下し、ガシャンと重い音を立てた。