賢者の石を手に入れた在宅ワーカーだけど、神様って呼ばれてるっぽい   作:パラレル・ゲーマー

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第125話

 その日、東京・渋谷のダンジョンゲート前は、普段とは異なる種類の熱狂と畏敬の念に包まれていた。

 これまでの「お祭り騒ぎ」や「ゴールドラッシュ」の喧騒とは違う。

 本物の「プロフェッショナル」だけが放つ、冷たく、そして鋭い空気が、秋晴れの渋谷の空気を引き締めていた。

 

 ゲートから現れたのは、一隊の騎士たちだった。

 リリアン王国最強の精鋭『白銀の牙(シルバー・ファング)』騎士団。

 セリオン王が約束した「出稼ぎ」兼「文化交流」のための派遣部隊、その第一陣である三十名だ。

 

 彼らが身に纏うのは、地球の量産品(ドロップ装備)ではない。

 アステルガルドの職人がミスリル銀を鍛え上げ、宮廷魔導師が何重ものエンチャントを施した、正真正銘の「ファンタジー装備」。

 白銀に輝くプレートアーマーは渋谷の広告ビジョンの光を反射して眩いばかりの輝きを放ち、腰に佩いた剣からは、鞘に収まっていてもなお、肌を刺すような魔力の余波が漂っている。

 

「……あれが異世界の騎士か」

「空気が違うな。本職の殺し屋の目だ」

「コスプレじゃ出せない迫力だよな……」

 

 並んでいた日本人探索者たちが、道を空ける。

 彼らはまるでモーゼが海を割るように人混みの中を進み、ゲートの前で整列した。

 先頭に立つ騎士団長ガレス卿が、出迎えの自衛隊指揮官に重々しく敬礼する。

 

「――リリアン王国騎士団、到着した。これより貴国の『ダンジョン』とやらの実力を拝見する」

 

 その言葉と共に、彼らは漆黒の渦の中へと踏み込んでいった。

 それは地球人類が初めて目にする「魔法文明の戦争」の幕開けだった。

 

 ***

 

 ダンジョン内部。F級・渋谷『最初の隘路』第5層。

 ここは初心者の探索者たちが苦戦するエリアだ。

 ゴブリンの数が増え、連携を取り始め、時折「ゴブリン・リーダー」などの強化個体が混ざる。多くの学生探索者たちが、ここで初めて「撤退」の苦汁を味わう場所。

 

 だが今日、そこは蹂躙の場と化していた。

 

「――散開。殲滅せよ」

 

 ガレス団長の短い号令。

 それだけで三十名の騎士が、流れるような動作で展開した。

 彼らの動きには無駄が一切ない。言葉による指示さえ必要としない、長年の戦場で培われた阿吽の呼吸。

 

「ギャギャッ!」

 暗がりからゴブリンの群れが飛び出してくる。数にして五十体。通常ならパニックに陥る数だ。

 だが騎士たちは動じない。

 

「遅い」

 

 一人の若き騎士が、突っ込んできたゴブリンの棍棒を盾で受け止めることさえしなかった。

 ただ半歩、最小限の動きで躱す。

 そして、すれ違いざま銀閃が走る。

 

 ザンッ。

 

 音もなくゴブリンの首が宙を舞った。

 F級の魔石で強化されたはずのゴブリンの皮膚が、まるで濡れた紙のように切り裂かれる。

 

「……弱いな」

 騎士は剣を振るい、光の粒子となって消えゆく敵を一瞥もしない。

「我が国の森に棲む野生のゴブリンの方が、まだ殺意がある」

 

 別の場所では、魔法剣士が暴れていた。

 彼が剣を振るうたび、刀身から真紅の炎が迸る。

 スキルジェム? 違う。

 彼はシステム的なスキルなど発動していない。

 ただ自らの体内のマナを剣に流し込み、意志の力で「炎よ纏え」と命じているだけだ。

 

「――焔閃(フレイム・スラッシュ)」

 

 横薙ぎの一閃。

 扇状に広がった炎が、十数体のゴブリンを一度に飲み込む。

 断末魔の悲鳴さえ上げられず、モンスターたちは炭化し、そして光となって消滅した。

 

 圧倒的だった。

 地球の探索者たちが、システムという「補助輪」を使ってようやく繰り出せる技を、彼らは呼吸をするように自然に行っている。

 F級ダンジョンという初心者向けのチュートリアルエリアに、歴戦の勇者たちが解き放たれたようなものだった。

 

 ***

 

 官邸地下、ダンジョン庁ウォールーム。

 その一方的な蹂躙劇を、巨大なモニター越しに見守る者たちがいた。

 

 麻生ダンジョン大臣は手元の玉露を一口すすると、感嘆のため息をついた。

「……いやー、強いですね。次元が違う」

 

 画面の中では、騎士団がゴブリンの巣窟をものの数分で壊滅させ、山のような魔石とドロップ品を回収している。

 彼らの行軍速度は自衛隊の精鋭部隊の倍以上。

 休憩も取らず、息一つ乱さず、ただ淡々と「作業」として殺戮を続けている。

 

「F級ゴブリンとはいえ、瞬殺ですよ」

 九条の分身が分析データを読み上げる。

「バイタルデータ正常。心拍数の上昇すら見られません。彼らにとっては、散歩のついでに雑草を刈っている程度の感覚なのでしょう」

 

 その様子を、ソファの上で寝転がりながら眺めていた KAMI が、ポテトチップスをかじりながら口を開いた。

 

「そりゃそうよ。強いわね」

 

 彼女は画面の中の騎士の一人を指さした。

「見て、あの剣の振り方。システムのアシスト(補正)に頼ってないわ。

 地球の探索者は『スキルを発動する』と念じて、システムに体を動かしてもらってる。

 でも彼らは違う。自分の筋肉と自分の魔力で、物理法則をねじ曲げてるの」

 

 KAMI は空中にステータスウィンドウのようなものを投影した。

 そこには騎士たちの「推定能力値」が表示されている。

 

「ダンジョンの仕様的に換算して言えば……そうね。

 彼らは素の状態で『全属性耐性+30%』と『物理・魔法攻撃力+50%』のパッシブスキルを持ってるようなものよ」

 

「+30%と+50%……!?」

 麻生が絶句した。

 今の地球のトップ層が、必死に装備をかき集め、スキルポイントをやりくりして、ようやく耐性20%に届くかどうかという段階だ。

 それを彼らは裸の状態(ベース)で持っているというのか。

 

「素で因果律改変をしてるんでしょうね」

 KAMI は解説を続けた。

「アステルガルドはマナが濃い世界だから、そこで生まれた彼らは無意識のうちに体内にマナを取り込み、身体を強化することに慣れてるの。

 呼吸するように魔力を練り、皮膚を硬化させ、筋力を増幅させる。

 彼らにとって『魔法』は特別な奇跡じゃなくて、走ったり跳んだりするのと同じ、ただの身体機能の一部なのよ」

 

「なるほど……。まさに『生まれながらの超人』ですか」

 九条が唸った。

「これでは地球の探索者が束になっても、敵いませんな」

 

「まあね」

 KAMI は肩をすくめた。

「でも、上には上がいるわよ?」

 

 彼女は別のモニターウィンドウを開いた。

 そこには雪深いロシアの演習場で、上半身裸でヒグマ(あるいはモンスター化した熊)を素手で殴り倒している一人の男の姿があった。

 ウラジーミル大統領。

 

「ロシア大統領も、向こうのダンジョンで無双してるらしいけど……」

 KAMI は比較した。

「純粋な戦闘技術と装備の質では、騎士団が上。

 でも因果律改変の『出力』と『強制力』だけで言えば、ウラジーミルの方が上かもね。

 あの人、自分の意志(エゴ)だけで現実をねじ曲げてるから。魔法というより、もはや『呪い』に近いわ」

 

「……比較対象がバケモノすぎます」

 麻生が苦笑した。

「まあどちらにせよ、今の F級ダンジョンなら、彼らにはオーバースペックね。

 赤子の手をひねるようなものよ。これじゃあ訓練にもならないし、彼らも退屈しちゃうんじゃないかしら」

 

 KAMI は退屈そうに、ポテトチップスの最後の一枚を口に放り込んだ。

 

 ***

 

 だが KAMI の懸念は杞憂だった。

 騎士たちはダンジョン攻略そのものには退屈していたかもしれないが、その後の「時間」を、これ以上ないほど満喫していたからだ。

 

 夜の帳が下りた東京・新橋。

 サラリーマンたちの聖地であるガード下の飲み屋街に、異様な、しかしどこか微笑ましい集団の姿があった。

 私服(といっても用意された大きめのパーカーやジーンズだが、鍛え抜かれた体躯のせいでピチピチだ)に着替えた騎士団の一行である。

 

「――ガレス団長! ここの『焼き鳥』という料理、絶品ですぞ!」

「うむ! この『タレ』という黒いソース……甘辛くて酒が進むわ!」

 

 赤提灯の下、ビールケースを椅子代わりにして、彼らは日本の居酒屋文化にどっぷりと浸かっていた。

 テーブルの上には山のような串の残骸と、空になったジョッキが並んでいる。

 

「おい店主! 『生(ナマ)』をもう十杯だ! キンキンに冷えたやつを頼む!」

「へい、喜んでー!」

 

 日本のビール。

 アステルガルドのエール(常温でぬるく、酸味が強い)しか知らなかった彼らにとって、現代日本の冷却技術と醸造技術が生み出した「冷えたラガービール」は、衝撃的なまでの「神の酒」だった。

 

「くぅぅぅぅッ! この喉越し! キレ! たまりませんな!」

「ダンジョンで汗をかいた後のこの一杯……。これぞ戦士の休息よ!」

 

 彼らは地球の「食」に完全に胃袋を掴まれていた。

 リリアン王国にも地球の食材は輸出されているが、それはあくまで保存の利く穀物や缶詰が中心だ。

 新鮮な鶏肉を炭火で焼き上げ、秘伝のタレにくぐらせた焼き鳥。

 出汁の染み込んだおでん。

 カリッと揚がった唐揚げ。

 それらは彼らの想像を遥かに超える「魔法の料理」だった。

 

「騎士団はこちらの世界を楽しんでるみたいだよ」

 官邸のモニターでその様子を監視カメラ越しに見ながら、九条が報告した。

「毎夜、都内の繁華街を飲み歩きしているようです。新橋、新宿、上野……。彼らの健啖ぶりには、店主たちも嬉しい悲鳴を上げているとか」

 

「日本は食べ物が美味いですからな」

 麻生が我が意を得たりとばかりに頷いた。

「彼らの給料は、ダンジョンで稼いだ魔石を換金した日本円で支払われている。

 その金が、こうして日本の飲食業界に還流される。これぞ理想的な経済循環だ。

 ……酔って暴れるようなことはしてないみたいだから、良いですが」

 

「ええ、その点は流石に騎士です」

 九条が補足した。

「規律は保たれています。どんなに酔っても一般市民に手を出したり、装備を見せびらかしたりすることはない。

 むしろ、酔っ払いに絡まれた女性を助けたり、飲み潰れたサラリーマンを駅まで運んであげたりと、妙に紳士的な振る舞いが目撃されており、SNS では『イケメン騎士団』として、ちょっとしたファンクラブまで出来ているようです」

 

「食べ歩きねぇ……」

 KAMI が面白そうにモニターを覗き込んだ。

「文化交流ってこと? 飲みにケーションってヤツ?」

 

「その通りです、KAMI 様」

 沢村総理が言った。

「同じ釜の飯を食い、同じ酒を飲む。これ以上の外交はありません。

 彼らが日本を好きになってくれれば、リリアン王国との同盟関係も、より強固なものになるでしょう」

 

「ふーん。まあどうでも良いけど」

 KAMI は興味なさそうに言ったが、その口元は少し緩んでいた。

 人間たちが異なる世界の住人と、こうして平和的に(そして欲望に忠実に)交わっている姿は、彼女にとっても悪い気はしなかったのだ。

 

 ***

 

「さて」

 KAMI は表情を引き締めた。

「彼らが F級で退屈してるのも事実だし、日本の探索者たちも、あの『ピュア・エレメント(2億5000万の首輪)』騒動以来、耐性装備を整えるのに必死になってるわね」

 

 彼女は手元のコンソールを操作し、プレイヤーたちのステータス分布図を表示させた。

 そこには明らかな変化が見て取れた。

 一週間前までは「攻撃力」に極振りされていたグラフが、今は「耐性(RES)」や「防御力(DEF)」へとシフトしている。

 パッシブスキル『ダイヤモンド・スキン』の取得率は、いまや 80%を超えていた。

 

「……よし」

 KAMI は頷いた。

「これなら瞬殺されることはないわね。E級は『ダイヤモンド・スキン』と、あとクラフトで作った防具の耐性があれば、今なら解禁しても大丈夫かもね……」

 

「おお!」

 麻生が身を乗り出した。

「ついに次のステージですか!」

 

「ええ。そろそろ頃合いよ。

 F級の素材も値崩れし始めてるし、新しい刺激が必要な時期だわ。

 来週あたり、E級ダンジョン『腐敗した聖堂』へのゲートを開放するわよ。準備しておきなさい」

 

「承知いたしました!」

 九条が頭を下げる。

「騎士団にとっても良い腕試しの場になるでしょう。彼らなら E級でも、先導役として十分な働きができるはずです」

 

 ***

 

 会議が順調に進む中、沢村総理が一つの懸案事項を思い出したように切り出した。

 

「……そういえば、KAMI 様。

 以前、リリアン王国のセリオン王から小此木を通じて正式な要請が来ていた件ですが……」

 

「ん? 何?」

 

「リリアン王国から『向こう(アステルガルド)にもダンジョンを設置してほしい』と頼まれてるみたいですが?

 どうされますか? 彼らも自国の戦力強化のために、効率的な訓練場を欲しているようですが」

 

 その問いに KAMI の動きがピタリと止まった。

 彼女は手に持っていたクッションを置き、少しだけ困ったような、そして面倒くさそうな顔をした。

 

「あー、それね……」

 

 彼女は天井を仰いだ。

「流石に判断つかないから無理」

 

「無理ですか?」

 麻生が食い下がった。

「技術的には可能なのでは? 地球にこれだけ作れたのですから、向こうに一つ二つ作るくらい KAMI 様なら造作もないことでしょう?」

 

「技術的な問題じゃないのよ」

 KAMI はため息をついた。

「政治的な問題よ。

 いや無理じゃないけど……向こうの勢力からの反発、考えるとやっぱり無理ね」

 

 彼女は指先でアステルガルドの勢力図を空中に描いた。

 リリアン王国、北の軍事帝国、西の商業連合、南の獣人部族連合。

 そして中央に広がる広大な不可侵領域――『エルフの森』。

 

「こっち(地球)では 4 カ国(日米中露)の承認があったから出来たけど。

 あなたたちは良くも悪くも『力』と『利益』で動くから話が早かったわ。

『ダンジョン=資源=国益』っていう図式で、多少の反対は押し切って強行できた」

 

 彼女はリリアン王国の地図を指さした。

「でも向こうは 1 カ国でしょ? リリアン王国だけが賛成しても、他の国はどう思う?

『リリアンだけが神の力を独占して軍事力を強化しようとしている』って警戒するに決まってるわ。

 下手をすれば、それを口実に周辺諸国が連合して、リリアン王国に攻め込んでくるかもしれない。

 ダンジョンを作ることで、世界大戦の引き金を引くことになるのよ」

 

「……なるほど」

 沢村は青ざめた。

「バランス・オブ・パワーの問題ですか」

 

「それだけじゃないわ」

 KAMI は地図の中央、緑色の森を指さした。

「あと『エルフの森』とか言うのがいるらしいじゃない。

 あいつら、超保守的で自然崇拝の塊みたいな連中でしょ?

『ダンジョンなどという人工的な異物は自然の摂理に反する!』とか言って、絶対に反発してくるわよ」

 

 KAMI はうんざりした顔で続けた。

「ただでさえ地球の科学技術が流入してることにピリピリしてるのに、その上ダンジョンなんて作ったら完全にブチ切れるわね。

 反発されるのがオチ。

 最悪、エルフがリリアン王国に宣戦布告して魔法戦争が始まるわ。

 ……そんな面倒なこと、私の管轄外よ。無理ね」

 

 そのあまりにも冷静で、そして現実的な地政学的リスク分析。

 麻生は感心したように唸った。

「……KAMI 様は意外と政治がお分かりになる」

 

「伊達に何万年も生きてないわよ(設定上)」

 KAMI はふんぞり返った。

「とにかく、アステルガルドへのダンジョン設置は時期尚早。

 まずは三者会談――リリアン王国とエルフ、そして地球側が話し合って、ある程度の合意形成ができてからじゃないと話にならないわね」

 

「……分かりました」

 九条がメモを取った。

「ではセリオン王には丁重にお断りしておきます。『神慮により今はまだその時ではない』と」

 

「ええ、そう言っておいて。

 その代わり、騎士団の受け入れ枠は増やしてあげてもいいわよ。

 彼らが地球で稼いで、その技術を持ち帰る。

 今のところは、その『草の根レベル』の交流で我慢してもらうしかないわね」

 

 神の判断は下された。

 異世界へのダンジョン輸出は無期限延期。

 それはアステルガルドという不安定な火薬庫に、これ以上の火種を投げ込まないための、賢明な判断だった。

 

 ***

 

 その夜。新橋の居酒屋『和民』。

 騎士団長ガレスは、ジョッキに残ったビールを飲み干しながら、小此木からの報告を聞いていた。

 

「……そうか。KAMI 様は却下されたか」

 ガレスは少しだけ残念そうな、しかしどこか納得したような顔で言った。

「まあ王の焦りも分かるが、我々現場の人間からすれば、ありがたい話かもしれん」

 

 彼は、周囲で楽しそうに騒ぐ部下たちを見渡した。

「この国は……平和だ。魔物の脅威はあるが、国同士が血を流して争うような気配はない。

 もし我が国にダンジョンができれば、その利権を巡って必ず血が流れる。

 今の我が国には、まだその『毒』を飲み込むだけの体力はないのかもしれん」

 

 彼は新しく注文した唐揚げを口に放り込んだ。

「それに我々には、まだこの『カラアゲ』という未知の秘宝の研究が終わっておらんからな!

 ダンジョンなどより今はこっちの攻略が先決よ! ガハハハ!」

 

 騎士たちの豪快な笑い声が、夜の新橋に響き渡る。

 その喧騒のふとした切れ間、ガレスはジョッキを置き、真剣な眼差しで夜空を見上げた。

 

「……だが次は E級か」

 

 彼は無意識に、自らの帯剣の柄を撫でた。

 魔法攻撃。属性の理不尽。

 この世界の人間たちが、まだ本当の意味では理解していない「魔法の脅威」が、すぐそこまで迫っている。

 

「教えることは山ほどありそうだな」

 

 彼はニヤリと笑うと、再びジョッキを掲げた。

 嵐が来る前の、束の間の宴を楽しむように。

 

 

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