賢者の石を手に入れた在宅ワーカーだけど、神様って呼ばれてるっぽい   作:パラレル・ゲーマー

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第175話

 C級ダンジョンの詳細仕様と、新たなシステム『オーラ』の実装が発表されたその瞬間、日本の、いや世界の探索者コミュニティは、蜂の巣をつついたような騒ぎになった。

 

 これまで「攻撃力」と「防御力(耐性)」というシンプルな指標で測られていたダンジョン攻略に、「命中率」と「リソース管理(マナ予約)」という、より複雑でゲーマー的な要素が加わったからだ。

 

 大手匿名掲示板『ダンジョンちゃんねる』の攻略スレは、発表から数分でパート100を超える勢いで消費されていた。

 

【C級】攻略情報交換スレ Part.108【命中・オーラ】

 

1: 名無し探索者

 

公式発表見たか?

 

「C級からは攻撃が当たらなくなります」ってマジかよ

 

俺のSTR極振りビルド、完全に死んだんだが

 

2: 名無し探索者

 

命中(Accuracy)ステータスなんて今まで死にステだったのに

 

急に必須とか言われても困るわ

 

装備全部買い換えろってことか?

 

3: 名無し探索者

 

>>1

 

DEX(器用さ)上げとけってあれほど言ったのに

 

脳筋ざまぁwww

 

4: 名無し探索者

 

いやいや、落ち着けよ

 

KAMI様が言ってたろ

 

「オーラで解決できる」って

 

『プレシジョン(Precision)』貼れば命中盛れるらしいぞ

 

5: 名無し探索者

 

プレシジョンってマナ予約どれくらいだ?

 

固定値予約らしいけど、レベル上げると消費重くなるタイプか?

 

6: 名無し探索者

 

リーク情報だと、レベル1で20くらい、レベル20で180くらいリザーブするっぽい

 

戦士職ならマナ余ってるし余裕じゃね?

 

問題は魔法職と組む時だよな

 

魔法使いはマナカツカツだし

 

7: 名無し探索者

 

魔法は必中だからプレシジョンいらねーよ

 

魔法職大勝利!

 

物理職は命中装備集めるか、オーラ枠一つ潰すか選べってことだな

 

8: 名無し探索者

 

命中装備が高騰するワンチャンある?

 

買い占めとくべき?

 

9: 名無し探索者

 

>>8

 

微妙じゃね?

 

オーラで解決できるなら、わざわざ高い金出して装備で補う必要性が薄い

 

それより重要なのは防具の構成だろ

 

10: 名無し探索者

 

防具はもう結論出てる

 

『ライフ+』『耐性+』『ライフ自動回復+』

 

この三種盛りが神器

 

D級でこれがないと死ぬって分かったからな

 

C級はもっと敵の攻撃痛いだろうし、リジェネないとジリ貧で死ぬぞ

 

11: 名無し探索者

 

そこに『マナ回復』も重要になってくるな

 

オーラでマナの最大値が減る(予約される)わけだから

 

残った少ないマナでスキル回さなきゃいけない

 

ガス欠したらスキル撃てなくて死ぬ

 

12: 名無し探索者

 

マナポガブ飲みすればいいじゃん

 

13: 名無し探索者

 

ガブ飲みも限界あるだろ

 

戦闘中にポーション飲む隙があるとは限らんし

 

自動回復(リジェネ)か、撃破時回復(On Kill)か、攻撃時回復(Leech)か

 

何らかのサステイン(維持能力)確保しないとC級はキツそう

 

14: 名無し探索者

 

やっぱり『霧払いの手甲』持ってる奴が勝ち組かよ……

 

撃破時マナ回復ついてるもんなアレ

 

欲しいわぁ……今からでも買えねえかな

 

15: 名無し探索者

 

>>14

 

25億用意できれば買えるぞ^^

 

まあ誰も売らねえけどな

 

 ***

 

 議論の中心は、やはり新システム「オーラ」だった。

 

 特に、今回実装されるオーラの中でも、最も強力で、そして最もコストが重いとされる一つのジェムに注目が集まっていた。

 

 『元素の純度(Purity of Elements)』。

 

16: 名無し探索者

 

おい、新オーラ『元素の純度』の効果見たか?

 

これぶっ壊れだろ

 

 

 

【元素の純度】

 

マナ予約:50%

 

効果:プレイヤーおよび近くの味方の全ての元素耐性 +20%

 

プレイヤーおよび近くの味方は全ての元素系状態異常に対して完全無効化を得る

 

 

 

状態異常無効化ってヤバすぎだろwww

 

凍結も感電も発火も全部無効かよ

 

17: 名無し探索者

 

耐性+20%もデカいな

 

装備で稼ぐのしんどいから、これ貼るだけでかなり楽になる

 

ただ50%予約は重すぎる……

 

半分持ってかれるのかよ

 

18: 名無し探索者

 

半分払ってでも貼る価値はある

 

D級のスケルトンメイジの氷結でハメ殺されかけた俺が言うんだから間違いない

 

「凍らない」ってだけで生存率が段違いだ

 

19: 名無し探索者

 

耐性計算してみた

 

C級のモンスターの攻撃に耐えるには、実数値で『耐性60%』くらい必要らしい

 

装備で40%稼いで、このオーラで20%足せば合計60%

 

さらにダメージカット率で言えば……えーと、80%カットくらいになるのか?

 

20: 名無し探索者

 

装備だけで全耐性60%積むのは激重だからなぁ

 

『元素の純度』は必須級になるかもしれん

 

特にパーティプレイなら、誰か一人がこれ貼っとけば全員幸せになれる

 

21: 名無し探索者

 

これC級は選ばれしエリートしか行けないって感じがするわ

 

一般層は装備のハードル高すぎて無理だろ

 

オーラジェムも最初は高騰するだろうし

 

22: 名無し探索者

 

ガチ勢は行けるが……

 

俺らパンピーは、ガチ勢がC級で装備ドロップして、お古を市場に流してくれるのを待つしかないな

 

トリクルダウン待ちですよ

 

23: 名無し探索者

 

まあ生活するだけならD級周回でも十分稼げるしな

 

日給150万あれば僥倖よ

 

24: 名無し探索者

 

>>23

 

そうなんだけどさぁ……

 

もっと上目指してぇよ……

 

男なら深層に潜りたいじゃん……

 

未知のモンスター見たいじゃん……

 

25: 名無し探索者

 

>>24

 

分かる

 

稼ぐために潜ってるはずが、いつの間にか「ダンジョンで勝つため」に稼ぐようになってるよな俺ら

 

 ***

 

 東京・新橋。

 

 仕事帰りの探索者たち(兼業組も専業組も入り乱れている)で賑わう居酒屋『冒険者の酒場(通称)』では、ジョッキを片手に熱い議論が交わされていた。

 

 かつては上司の悪口やゴルフの話で盛り上がっていたサラリーマンたちが、今は真剣な顔で「ビルド構築」について語り合っている。

 

「いやー、C級はキツそうだなあ」

 

 中年の戦士職が、焼き鳥を頬張りながら嘆いた。

 

「俺の装備、火耐性はそこそこあるけど、雷と氷がスカスカなんだよ。

 

 これじゃあ瞬殺される」

 

「そこでオーラですよ、課長」

 

 部下の魔法使い職の若者が、スマホの画面を見せながら言った。

 

「この『元素の純度』、絶対取ったほうがいいっすよ。

 

 これがあれば耐性パズルがだいぶ楽になります」

 

「でもお前、マナ50%も取られたら魔法撃てなくなるだろ?」

 

「そこは装備とパッシブで『マナ予約効率』を上げるんすよ。

 

 あと、俺が攻撃魔法を捨ててサポートに徹すれば……」

 

「お前が攻撃しなかったら誰が火力を出すんだよ!

 

 俺の剣じゃ硬い敵は削れねえぞ!」

 

「あー、そこなんすよねぇ……」

 

 彼らの会話には、悲壮感よりも楽しさが勝っていた。

 

 攻略法を考える。装備を更新する。強くなる。

 

 そのプロセスそのものが、彼らにとっての最大の娯楽になっていた。

 

「しかし変わったよな、俺たちも」

 

 課長がビールを煽って笑った。

 

「先月、ボーナスで高級時計買おうと思ってたんだけどさ。

 

 気づいたらオークションで『E級・耐性リング』買ってたわ。300万で」

 

「わかりますー!」

 

 隣のテーブルのOL風の女性探索者が割り込んできた。

 

「私なんか、ブランドバッグ買うつもりだったのに、気づいたら『魔法使いの杖』買ってましたもん。

 

 時計もバッグも、ダンジョンの中じゃ役に立たないですもんね」

 

「そうそう! 命を守ってくれるのは装備だけ!」

 

「強い装備を手に入れた時のあのテンション、何物にも代えがたいよな!」

 

「分かるー。戦ってる時が一番『生きてる』感があるよね」

 

「アドレナリンが出るっていうか、ヒリヒリする感じがたまらない」

 

 彼らの価値観は変質していた。

 

 社会的地位やブランド品といった「地上のステータス」よりも、ダンジョン内での生存能力と強さという「地下のステータス」が、彼らにとってのアイデンティティになりつつあった。

 

 ***

 

 一方、本気でC級攻略を目指す「ガチ勢」たちは、より具体的で、そして組織的な対策に動いていた。

 

 東京・六本木。月読ギルド本部。

 

 ギルドマスター・月島蓮は、幹部たちと作戦会議を開いていた。

 

「……方針は決まったな」

 

 月島がホワイトボードを叩いた。

 

「C級攻略の鍵は『オーラ』だ。

 

 個人の装備で耐性と命中を確保するのは限界がある。コストもかかりすぎる。

 

 ならば、パーティ単位で解決するしかない」

 

 彼は新設された『支援小隊』の隊長を見た。

 

「オーラ専門職(オーラボット)。

 

 彼らの育成を最優先とする。

 

 攻撃を捨て、防御を捨て、全てのステータスと装備を『マナ予約効率』と『オーラ効果アップ』に捧げた特化ビルドだ」

 

「はい。候補者の選定は進んでいます」

 

 隊長が報告する。

 

「戦闘は苦手だが、マナの扱いが繊細で、状況判断に優れたメンバーを中心にスカウトしています。

 

 彼らに複数のオーラ――『元素の純度』『ディターミネーション』『グレース』などを同時に展開させれば、パーティの生存率は飛躍的に向上します」

 

「『元素の純度』で耐性+20%。さらにオーラ効果アップで+30%くらいまで引き上げられるか……」

 

 月島が計算する。

 

「それなら装備の耐性が30%程度でも、合計60%に届く。

 

 状態異常無効もつく。

 

 ……いけるな。これならC級でも安定して狩れる」

 

「問題は、オーラジェムの確保ですね」

 

 財務担当が懸念を示した。

 

「ドロップ解禁直後は、間違いなく争奪戦になります。

 

 特に『元素の純度』は、全プレイヤーが欲しがる人権アイテムになるでしょう。

 

 価格は……数百万、になる可能性も」

 

「金は惜しむな」

 

 月島は即断した。

 

「初期投資だ。

 

 オーラ体制を整えていち早くC級深層に到達すれば、そこで得られるドロップで十分に回収できる。

 

 先行者利益を逃すな」

 

 企業の動きも速かった。

 

 五菱商事は、社内の魔導師たちに「オーラ適性検査」を実施し、適性のある者を強制的に「オーラ課」へと配属転換させていた。

 

 「君の仕事は今後、歩くこととオーラを張ることだけだ」

 

 そんな辞令が飛び交っていた。

 

 ***

 

 掲示板の議論も、オーラ専門職の運用論へとシフトしていた。

 

26: 名無し探索者

 

対策はやっぱりオーラ専門職路線だよな……

 

オーラ貼れば+20%で、自前の装備で40%ぐらいならなんとか確保できるって感じだし

 

これなら一般探索者でも手が届く

 

27: 名無し探索者

 

問題は、誰がその「オーラ役」をやるかだよ

 

攻撃できない、守れない、ただついて歩くだけ

 

退屈すぎて死ぬぞ

 

28: 名無し探索者

 

いや、需要はあるって

 

「立ってるだけで報酬もらえる」ならやりたい奴はごまんといる

 

特に戦闘センスに自信がない層にとっては救済措置だろ

 

29: 名無し探索者

 

オーラ専門職稼働するのに何日かかると思う?

 

ジェムが出回って、ビルドが完成するまで

 

30: 名無し探索者

 

うーんドロップ自体はF級、E級、D級、全階層で出るってアナウンスあったし

 

供給量はそこそこあるはず

 

時間はかからないと思うが……数日って所だな

 

31: 名無し探索者

 

じゃあ数日でガチ勢以外も参入出来るかも?

 

オーラ役を雇って、パーティ組めばワンチャンある

 

32: 名無し探索者

 

傭兵ビジネスが加速するな

 

「オーラ持ちます。時給10万」

 

「全耐性オーラあり。参加費一人5万」

 

みたいな募集が増えそう

 

33: 名無し探索者

 

最悪、C級の美味しさがどれくらいかだよね

 

リスク冒して行くだけの価値があるのか

 

34: 名無し探索者

 

装備いくらつくよ?

 

C級ドロップ品なら、オークションで300万円くらいかもね

 

D級装備が50万~100万だから、その3倍と見て

 

35: 名無し探索者

 

300万か……。夢あるなぁ

 

一回潜って一個拾えば、借金返せるわ

 

36: 名無し探索者

 

まーD級を霧イベの『霧払いの手甲』で数日頑張れば行けるくらいでしょ

 

あれ持ってる奴は、爆発で雑魚散らして高速周回できるから

 

C級突入の資金作りも余裕だろ

 

37: 名無し探索者

 

出たよ手甲持ち

 

誰でも持ってるわけじゃないからなぁ

 

まあガチ勢は持ってるんだが

 

38: 名無し探索者

 

手甲持ちがC級で通用するかどうかも見ものだな

 

C級モンスターは体力多いから、爆発ダメージ(HPの5%)もデカくなる

 

逆に言えば、手甲の価値がさらに上がる可能性もある

 

39: 名無し探索者

 

25億で売らなくてよかったわー(棒)

 

 ***

 

 C級解禁前夜。

 

 世界は、新しいルールの下での戦いに備えていた。

 

 命中という壁。

 

 耐性という盾。

 

 そしてオーラという絆。

 

 それらを全て準備できた者だけが、次のステージへの扉を開くことができる。

 

 選別(スクリーニング)の時は近い。

 

 

 

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