賢者の石を手に入れた在宅ワーカーだけど、神様って呼ばれてるっぽい   作:パラレル・ゲーマー

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第212話

 東京、ワシントン、北京、モスクワ。

 世界の運命を司る四つの首都を繋ぐ、最高機密のバーチャル会議室。

 そこにはいつものメンバー――日本の沢村総理、九条官房長官、アメリカのトンプソン大統領、中国の王将軍、そしてロシアのヴォルコフ将軍が顔を揃えていた。

 

 だが今日の空気は、これまでのどの会議とも異質だった。

 それは、これから開かれようとしている扉の向こう側にある「深淵」に対する本能的な恐怖と、避けられない運命を前にした緊張感だった。

 

 C級ダンジョンの攻略が安定し、世界経済が魔石の恩恵で回り始めてから数カ月。

 ついに、その時が来たのだ。

 

「――では、定刻となりました」

 

 議長役の九条官房長官が、重々しく口を開いた。

 彼の四つの身体は、それぞれが世界中のダンジョンゲートのステータスモニターと、探索者たちの装備データ、そして予測される被害シミュレーションの結果を凝視している。

 

「KAMI様より緊急の招集がかかっております。

 議題は……申し上げるまでもなく、次なる階層の開放についてです」

 

 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、円卓の中央で空間が歪んだ。

 重厚な低音と共に現れたのは、いつものゴシック・ロリータ姿の少女、KAMI。

 

 今日の彼女は、手には何も持っていない。

 お菓子も、ゲーム機もない。

 ただ、その深紅の瞳だけが楽しげに、そして残酷に輝いていた。

 

「――ついに来たわよ。明日、B級ダンジョン解禁」

 

 その第一声は、死刑執行の宣告のように静かに響いた。

 

「KAMI様……!」

 

 沢村総理が身を乗り出す。

 

「B級……。あの、全耐性がマイナスされるという、死の領域ですか?」

 

「そうよ」

 

 KAMIは悪戯っぽく笑った。

 

「ただし、いきなり全部開けるわけじゃないわ。

 B級はね、広すぎるし危険すぎるから。

 『下位(ロウアー)』『中位(ミドル)』『上位(アッパー)』の三段階に分けて、開放することにしたの。

 明日の正午に開放するのは、その入り口……『B級下位ダンジョン』よ」

 

「三段階……ですか」

 

 トンプソン大統領が、葉巻を握りしめる手に力を込めた。

 

「下位とはいえ、腐ってもB級だ。

 例のデバフ(弱体化)は、適用されるのかね?」

 

「もちろん」

 

 KAMIは指を鳴らした。

 空中に、真っ赤な文字で警告文が表示される。

 

【環境ペナルティ:B級領域】

 ・全属性耐性(火・氷・雷): -20%

 ・混沌耐性(カオス): -20%

 

「ダンジョンに入った瞬間、あなたたちの身体を守る耐性が強制的に剥ぎ取られるわ。

 これは永続効果。装備を外そうが何をしようが解除不能。

 特に『混沌耐性』マイナスは痛いわよ?

 対策してない人間がカオスダメージを受けたら、エナジーシールドを貫通して即死するから」

 

 彼女は四人の指導者たちを見渡した。

 

「さあ、どうする?

 C級でイキってた探索者たちが、この理不尽な仕様の前でどう踊るか。

 初日に死人が出るかしらねー?

 楽しみだわ」

 

 その言葉に、会議室の空気が凍りついた。

 死人。

 これまで「死者ゼロ」を維持してきた日本の、そして世界のダンジョン運営にとって、それは絶対に越えてはならない一線だった。

 

「……KAMI様」

 

 九条が冷や汗を拭いながら発言した。

 

「流石に、無策で突入させるわけにはいきません。

 死者が出れば、社会的なパニックは避けられない。

 我々としては、ゲートでの入場制限……いわゆる『足切り』を行いたいと考えております」

 

「足切り?」

 

「はい。

 ダンジョンに入る前のセキュリティチェックで、探索者のステータスを確認します。

 具体的には、マイナス20%のデバフを受けた状態でも、属性耐性の上限値である『75%』を維持できるかどうか。

 つまり、装備とスキルオーラの合計値で『95%以上』の耐性を確保している者のみに入場を許可する。

 ……これを行ってもよろしいでしょうか?」

 

 それは国家による過保護とも言える介入だった。

 だが、そうでもしなければ明日のニュースは訃報で埋め尽くされることになる。

 

「ふーん」

 

 KAMIは少しつまらなそうに頬を膨らませた。

 

「過保護ねぇ。

 まあ、いいわよ。即死して終わるゲームなんてクソゲーだしね。

 入場制限、認めましょう。

 装備が足りない奴は門前払い。……それもまた一つの『選別』だわ」

 

「ありがとうございます」

 

 沢村が安堵の息をついた。

 

「しかし……」

 

 ヴォルコフ将軍が低い声で尋ねた。

 

「耐性さえあれば、生き残れるのか?

 敵の強さはどうなのだ?

 C級とは比較にならんのだろう?」

 

「ええ、全然違うわよ」

 

 KAMIはニヤリと笑った。

 

「C級は『回避』がウザいだけだったけど。

 B級は『殺意』が違うわ。

 連携(パーティプレイ)をしてくるし、瀕死になれば発狂(エンレイジ)もする。

 ただ突っ込んで殴るだけの脳筋プレイは、もう通用しないと思っていいわね」

 

 彼女はモニターに一つの影を投影した。

 それは全身を重厚な鎧で覆い、巨大な槍と盾を構えた竜人の騎士の姿だった。

 

「今回のメインモンスターはこれ。

 『竜騎兵(ドラグーン)』。

 硬い、痛い、そして賢い。

 ……まあ、頑張って生き残りなさいな」

 

 KAMIは手を振って姿を消した。

 残されたのは、明日という日に向けて覚悟を決めるしかない四人の男たちだけだった。

 

「……やるしかないな」

 

 トンプソンが立ち上がった。

 

「アークエンジェル全部隊に告ぐ。

 明日は戦争だ。装備の最終チェックを怠るな。

 耐性95%未満の者は、ゲートに近づくことさえ許さん」

 

「了解した」

 

 王将軍も頷く。

 

「青龍ギルドも総力を挙げる。

 初日で攻略の足がかりを掴まねば、国家の威信に関わる」

 

 そして日本。

 沢村は九条に向き直った。

 

「……九条君。

 国内のトップランカー、そして企業勢に通達を。

 『死人は出すな』と。

 ライフ半分で撤退。このルールを徹底させろ。

 命あっての物種だ」

 

「御意」

 

 決戦の時は迫っていた。

 

 ***

 

 翌日。正午。

 東京・渋谷、ダンジョンゲート前。

 

 そこには、これまでの「お祭り騒ぎ」とは全く異なる、重苦しい緊張感が漂っていた。

 集まった探索者の数は少ない。

 数万人いた群衆は消え、そこにいるのは選び抜かれた数百人の「本物」だけだった。

 

 彼らの装備は異様だった。

 全身を隙間なく覆う重厚なプレートメイル、あるいは幾重にも結界が刻まれたローブ。

 指には耐性リングを嵌め、背中には何本ものフラスコ(ポーション)を吊るしている。

 その姿は冒険者というよりは、放射能汚染地帯に赴く処理班か、宇宙飛行士のようにさえ見えた。

 

「……耐性チェック、オールグリーン。

 火炎96%、氷結95%、雷撃98%。カオス76%。

 入場を許可します」

 

 ゲート前の検問所でギルド職員が端末を読み上げ、ゲートを開く。

 通過したのは五菱商事の攻略部隊第一班だ。

 リーダーの佐山専務(自ら現場に出る武闘派だ)は、緊張に強張る部下たちを鼓舞した。

 

「いいか、野郎ども!

 今日、我々が挑むのは未知の領域だ!

 だが恐れることはない! 会社は君たちに最高の装備を与えた!

 君たちの体は数億円の投資の結晶だ!

 絶対に死ぬな! ライフが50%を切ったら即座にポータルで離脱しろ!

 これは業務命令だ!」

 

「「「イエッサー!!!」」」

 

 彼らはゲートをくぐった。

 続いて月読ギルドの精鋭パーティ。

 “剣聖”ケンタ率いるソロランカー連合。

 日本の、いや人類の最精鋭たちが、死の領域へと足を踏み入れていく。

 

 ***

 

 転移した先。

 B級下位ダンジョン『竜のあぎと』。

 

 そこは熱気と硫黄化合物の臭いが立ち込める、巨大な地下渓谷だった。

 壁面からはマグマが滝のように流れ落ち、地面は赤熱している。

 環境ダメージ。

 ただ立っているだけで、耐性のない者は焼き殺される地獄の釜。

 

「……熱いな」

 

 ケンタが額の汗を拭った。

 装備の冷却機能がフル稼働しているが、それでも熱気が肌を刺す。

『元素の純度』オーラが展開され、彼らの周囲に不可視の結界を作り出しているおかげで、スリップダメージは無効化されている。

 

「耐性は機能している。進むぞ」

 

 ケンタが剣を構え、慎重に歩を進める。

 角を曲がったその先。

 広大な広間に、それらは待ち構えていた。

 

 ザッ、ザッ、ザッ。

 

 整然とした足音。

 現れたのはKAMIが予告した通りの怪物たちだった。

 身長2メートルを超える、竜の頭と鱗を持つ人型の戦士。

『竜騎兵(ドラグーン)』。

 その数、およそ20体。

 

 だが驚くべきは、その数ではない。

 彼らの「陣形」だった。

 

「……おい、嘘だろ」

 

 パーティの盾役(タンク)が呻いた。

 

「あいつら……パーティ組んでやがる」

 

 最前列には巨大なタワーシールドを構えた重装の竜騎兵。

 その背後には長い槍を持った攻撃役。

 さらに後方には杖を持った竜魔法使い(メイジ)と、そして……白いローブのような鱗を持つ、明らかに「回復役」と思われる個体。

 

 タンク、アタッカー、ヒーラー、キャスター。

 完璧な布陣。

 それはモンスターの群れではない。軍隊だった。

 

「――来るぞッ!!」

 

 先頭の重装竜騎兵が咆哮を上げた。

「ギャオオオオオオッ!!」

 それは突撃の合図だった。

 

 ドゴォォォォン!!

 

 地面を揺らして重装兵が突っ込んでくる。

 ケンタたちのタンクがスキル『不屈の叫び』を使ってヘイトを集め、攻撃を受け止める。

 

 ガギィンッ!!

 

 激しい金属音。

「ぐっ……! 重いッ!」

 タンクが膝をつく。

 F級やC級とは桁違いの衝撃。

 HPバーが一撃で2割消し飛ぶ。

 

「回復! ヒールを厚くしろ!」

「攻撃集中! まず前のタンクを溶かせ!」

 

 ケンタが叫び、側面から切り込む。

 愛剣が竜騎兵の鱗を切り裂く。

 ダメージが入る。

 だが――。

 

 ヒュンッ。

 

 後方の竜魔法使いから緑色の光弾が飛んできた。

 それが傷ついた重装兵に着弾した瞬間。

 傷が塞がり、HPバーが全快する。

 

「なっ……回復された!?」

「あいつら、ヒール使いやがった!」

「クソッ! これじゃジリ貧だ!」

 

 敵のタンクが攻撃を受け止め、後ろから回復される。

 その隙に敵の槍兵がこちらの隙を突いて鋭い突きを繰り出してくる。

 さらに魔法使いからは火炎弾と雷撃の雨。

 耐性75%でダメージは軽減しているが、それでも「削り」が痛い。

 ポーションの消費が激しい。

 

「……硬い! 硬すぎる!」

 

 五菱商事の部隊からも悲鳴が上がる。

 

「こちらの攻撃が通らないわけじゃない! だが回復量が上回っている!」

「ヒーラーを狙え! 奥の奴だ!」

「無理です! 槍兵がガードして近づけません!」

 

 完璧な連携。

 知性あるモンスターの恐ろしさ。

 C級までの「ただの的」とは次元が違う。

 

「……出し惜しみはなしだ!」

 

 佐山専務が指揮車両(後方で待機している)から無線で叫んだ。

「大技を使え! リソースを吐き出してもいい!

 一点突破で陣形を崩すんだ!」

 

「了解! 『メテオ・ストライク』準備!」

「『ブレード・ストーム』起動!」

 

 探索者たちがMPを大量に消費する必殺のスキル(アルティメット)を一斉に解放する。

 巨大な隕石が降り注ぎ、刃の嵐が吹き荒れる。

 さすがの竜騎兵たちも、この火力の飽和攻撃には耐えきれなかった。

 

 前衛の盾が砕け、槍兵が吹き飛び、ついに後衛のヒーラーが露わになる。

 

「やったか!?」

 

 土煙の向こうで竜騎兵たちのHPバーが赤色(瀕死)に変わっているのが見えた。

 勝った。

 誰もがそう思った。

 

 だが、その時。

 竜騎兵たちの目が、どす黒い赤色に染まった。

 彼らの身体から湯気のような赤いオーラが噴き出す。

 

「ヴォオオオオオオオオオッ!!!」

 

 おぞましい咆哮。

 KAMIが言っていた「発狂(エンレイジ)」――バーサーカーモードの発動だった。

 

「――速いッ!?」

 

 瀕死のはずの竜騎兵が、残像を残すほどの速度で動いた。

 攻撃速度倍増。攻撃力倍増。

 防御を捨てた捨て身の特攻。

 

 ドガガガガガガガッ!!

 

 嵐のような連撃が探索者たちを襲う。

 HPバーが一気にレッドゾーンに突入する。

 75%の耐性の上から、物理的な質量で叩き潰しに来ているのだ。

 

「うわあああっ! ライフが! ライフが溶ける!」

「ポーションが間に合わない!」

「耐えろ! 耐えろォッ!」

 

 地獄絵図。

 C級までの「余裕」など微塵もない。

 一瞬の判断ミスが死に直結する、ギリギリの攻防。

 

「撤退だ!! ダメだ、これ以上は死人が出る!」

「ポータル開け! 緊急離脱!」

 

 いくつかのパーティが光に包まれて逃げ帰っていく。

 だが五菱商事のエリートたちと、月読ギルドの精鋭たちは踏みとどまった。

 

「引くな! あと少しだ!」

 

 ケンタが叫ぶ。

 

「奴らのHPも残りわずかだ!

 攻撃こそ最大の防御! 殺られる前に殺り切れッ!」

 

 彼は『霧渡りの長靴』のスキルを発動させ、敵の猛攻をすり抜けながら懐に飛び込んだ。

 そして至近距離からの全力の一撃。

 

 ズドンッ!!

 

 最後の一体が光となって砕け散った。

 静寂が戻る。

 

「……はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 全員がその場にへたり込む。

 ポーションの残量はゼロ。

 HPもギリギリ。

 だが、生き残った。

 

「……勝った……のか?」

「ああ……勝ったぞ……!」

 

 歓喜よりも、生存の実感が先に湧き上がる。

 そして彼らは震える手でドロップ品を確認した。

 

 そこには苦労に見合うだけの「輝き」があった。

 

「……おい、見ろよ、これ」

 

 盗賊役の男が黒く、そして重厚な輝きを放つ石を拾い上げた。

 F級の小石とは違う。

 握り拳ほどの大きさがある、高密度の結晶。

 

【アイテム名:B級魔石】

【エネルギー含有量:特大】

 

「B級魔石……! 一個出たぞ!」

 

「こっちはC級魔石だ! 4個もある!」

「装備も落ちてる! 『竜鱗の鎧(ドラゴン・スケイル)』だ! レアだぞ!」

 

 鑑定士が震える声で価格を弾き出す。

 

「……B級魔石、現在の想定レートで……一個500万円」

 

「ご、500万……!?」

 

「C級が30万円ですから、15倍以上……。

 それにC級魔石4個で120万。

 装備品は未鑑定ですが、素材価値だけでも数百万……。

 この一戦だけで、総額1000万円近い利益です……!」

 

 一戦30分。

 死闘の果ての1000万円。

 時給換算すれば2000万。

 

「……悪くない。いや、最高だ」

 

 佐山専務が汗を拭いながらニヤリと笑った。

 リスクは高い。消耗も激しい。

 だが、それに見合うだけのリターンがある。

 いや、それ以上だ。

 

「これなら……ペイできる。

 人件費も、全て賄ってお釣りが来る」

 

 彼は即座に本部に指示を飛ばした。

 

「――作戦変更だ。

 『周回』が可能であると判断する。

 ただし編成を見直せ。

 ヒーラーを倍に増やせ。タンクの装甲を厚くしろ。

 『火力』よりも『継戦能力』だ。

 バーサーカーモードを耐えきれる耐久力がなければ、事故が起きる」

 

「安全志向でいくぞ!

 時間はかかってもいい。確実に殺して、確実に回収するんだ!」

 

 月読ギルドもまた、同じ結論に達していた。

 月島が指示を出す。

 

「無理な連戦は禁止だ。一戦ごとにクールダウンを入れろ。

 ポーションが切れたら即帰還。

 命を金に換えるんじゃない。技術と準備で金を稼ぐんだ」

 

 さらに彼らへのご褒美は、これだけではなかった。

 雑魚敵の残骸の中から、見慣れた、しかし色が違うオーブが見つかったのだ。

 

「……これ『錬金術のオーブ』じゃありませんか?」

 

 黄色い輝きを放つオーブ。

 ノーマルアイテムをレアアイテムに昇格させる、あの貴重なオーブが、ボスドロップではなく通常の竜騎兵からコロリと落ちていた。

 

「ドロップレート……体感で1戦闘に1個ペースです!」

「マジか! C級じゃボスからしか出なかったのに!」

「これ、オーブだけで日当数百万円いくぞ!」

 

 B級ダンジョンの「旨味」が確定した瞬間だった。

 難易度は地獄。

 だがそこは、間違いなく黄金の鉱脈だった。

 

「よし、周回作業に入るぞ!」

「集中しろ! ミスったら死ぬぞ!」

「稼いで帰るぞ!」

 

 探索者たちは再び武器を取った。

 恐怖は消えない。

 だが欲望と自信が、それを上回っていた。

 

 彼らは適応したのだ。

 耐性マイナスという理不尽な環境にも、発狂するモンスターの暴力にも。

 人間という種が持つ、しぶといまでの適応力と、そして飽くなき探究心で。

 

 ***

 

 官邸地下。

 沢村と九条はモニターに映る「死者ゼロ」の報告と、積み上がる「成果」の山を見て深いため息をついた。

 

「……なんとかなったか」

 沢村が呟く。

「初日の全滅を覚悟していたが……。

 彼らは強くなったな」

 

「ええ」

 九条が頷く。

「KAMI様のスパルタ教育の賜物でしょう。

 装備を整え、対策を練り、連携する。

 当たり前のことを当たり前にやれば、神の試練も乗り越えられるということです」

 

「だが、これでまた市場が荒れるな」

 麻生大臣が嬉しそうに言った。

「500万円の魔石。錬金術のオーブの暴落と、それによるクラフト需要の爆発。

 税収計算をやり直さねばならん」

 

 B級ダンジョン。

 それは人類にとっての「死地」であると同時に、新たな「日常」の始まりでもあった。

 より深く、より危険な場所へ。

 彼らの歩みは止まらない。

 

 その先に待つのがA級という絶望であっても、彼らはきっとまた笑って乗り越えていくのだろう。

 

 

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