賢者の石を手に入れた在宅ワーカーだけど、神様って呼ばれてるっぽい   作:パラレル・ゲーマー

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第228話

 東京、ワシントン、北京、モスクワ。

 世界の覇権を握る四つの首都を繋ぐ、最高機密のバーチャル会議室。

 その円卓の上に投影されたホログラム・モニターは、これまでに見たこともないような、あまりにも極端で、そして暴力的な「右肩上がり」のグラフを描き出していた。

 

 それは、インドにおけるダンジョン開放から一週間が経過した時点での、全世界の『F級魔石』の流通量推移を示すデータだった。

 

「――ご覧の通りです。言葉を失うほどの物量、と言うほかありません」

 

 議長役の九条官房長官が、淡々とした口調ながらも、その声音に隠しきれない畏怖を滲ませて報告した。

 彼の四つの身体(本体と分身)は、それぞれの端末でインドから送られてくる膨大なデータストリームを処理し続けているが、その処理速度をもってしても追いつかないほどの情報量が、ニューデリーのサーバーから溢れ出していた。

 

「インド国内に設置された10箇所のF級ダンジョン。

 そこになだれ込んだ延べ数千万人……いや、億に迫る探索者たちによって回収された魔石の総数は、昨日一日だけで、日米中露四カ国の月間産出量の合計を上回りました」

 

 モニターには、インド各地のギルド支部に山積みになった黒い石の山――文字通りの「山」の映像が映し出されている。

 トラックの荷台から、ざらざらと流し込まれる魔石。

 それをスコップでかき分け、巨大なコンテナへと放り込んでいく作業員たち。

 それは、もはや「希少資源の採掘」という光景ではない。

 砂利や石炭の採石場のような、圧倒的な「量」の暴力だった。

 

「……凄まじいな」

 

 アメリカのトンプソン大統領が、葉巻をくゆらせながら呻いた。

 その表情には、同盟国の成功を喜ぶ色と、そのあまりの爆発力に対する根源的な恐怖が同居していた。

 

「人口ボーナスとは聞いていたが、これほどとは。

 14億人が本気で石を拾い始めると、世界が変わる音がするようだ」

 

「ええ。まさに人海戦術の極致です」

 

 中国の王将軍も、苦々しげに、しかし認めざるを得ないといった様子で頷いた。

 これまで「数の暴力」は中国の専売特許だった。

 だがインドのそれは質が違う。

 共産党による統制された動員ではなく、貧困からの脱出を夢見る個々人の制御不能なほどの熱狂と飢餓感が原動力となっているのだ。

 そのエネルギー密度は計り知れない。

 

「しかし……」

 

 ロシアのヴォルコフ将軍が、冷徹な視点を投げかけた。

 彼は手元のウォッカを揺らしながら、市場の懸念を口にした。

 

「これだけの量が一度に市場に放出されれば、当然、価格破壊が起きるのではないか?

 『供給過多』だ。

 F級魔石の国際公定価格は、現在1個1万円(約70ドル)で固定されている。

 だがインドから、これだけの量が湧いて出れば、その価値は暴落し、デフレを引き起こす。

 ……市場はパニックになっていないのか?」

 

 経済の基本原則。

 物は多すぎれば価値を失う。

 石ころが道端に転がっているなら、誰も金を払って買おうとはしない。

 

 だが。

 その懸念に対し、日本の麻生ダンジョン大臣(オブザーバー)は不敵な笑みを浮かべて首を横に振った。

 

「いえいえ、将軍。ご心配には及びません」

 

 麻生は、手元の電卓を弾くような仕草をした。

 

「確かに通常の市場原理で言えば、これは明らかな供給過剰(オーバーサプライ)。

 価格は10分の1、いや100分の1になってもおかしくはない。

 ……ですが、こと『魔石』に関しては、その常識は通用しませんのですよ」

 

 彼は九条に目配せをした。

 九条が新たなデータをモニターに投影する。

 それは、魔石の「消費」に関するシミュレーションデータだった。

 

「結論から申し上げますと、いくらあっても足りません。

 いえ、むしろこれでもまだ『少なすぎる』くらいです」

 

「……何?」

 

 ヴォルコフが眉をひそめる。

 

「これだけの山があっても、足りんと言うのか?」

 

「はい。その理由は二つあります」

 

 九条が解説を始めた。

 彼はまず一枚の図解を表示した。

 ピラミッド状に積み上げられた魔石の概念図だ。

 底辺には膨大な数のF級魔石があり、頂点には輝くA級魔石が鎮座している。

 

「理由の第一は、『圧縮合成(コンプレッション)』の需要です。

 皆様もご存知の通り、現在、世界中の企業と軍部が血眼になって求めているのは、空間拡張技術や転送ゲートの動力源となる『A級魔石』です。

 ですがA級ダンジョンは存在しない。ドロップでは手に入らない。

 ゆえに下位の魔石を圧縮して生成するしかないわけですが……」

 

 九条は、その絶望的な変換レート(係数)を提示した。

 

「現在の技術レベルでは、エネルギーロスを考慮すると……。

 A級魔石を1個生成するために必要なB級魔石は、約40個。

 そしてB級魔石1個を作るにはC級が約30個。

 C級にはD級が20個。

 D級にはE級が15個。

 E級にはF級が10個……」

 

 掛け算。

 ネズミ算式に増えていく、必要素材の数。

 

「つまり、論理的に逆算すれば……。

 たった1個のA級魔石を生成するために必要なF級魔石の数は、

 40 × 30 × 20 × 15 × 10 = 3,600,000個。

 ……三百六十万個です」

 

 会議室が、しんと静まり返った。

 360万個。

 F級魔石1個が1万円だとしても、原価だけで360億円。

 

「インドの探索者が一日で数千万個の魔石を産出したとしても、それを全て圧縮しても、出来上がるA級魔石はわずか数個から十数個。

 世界中のビルのエレベーターを転送ゲートに変え、トラックの荷台を空間拡張しようとするならば、A級魔石は数万個単位で必要になります。

 ……分かりますか?

 需要は事実上『無限』なのです」

 

 圧倒的な数字の暴力。

 上位素材への変換という錬金術のプロセスにおいて、下位素材は文字通り「溶けて消える」燃料に過ぎない。

 どれだけ大量にあっても、圧縮機(コンプレッサー)の中へ放り込めば一瞬で消滅し、わずかな高純度結晶へと姿を変える。

 

「なるほど……」

 

 トンプソン大統領が、乾いた笑いを漏らした。

 

「塵も積もれば山となるが、山を圧縮すれば宝石になるか。

 その宝石を作るためには、地球上の全ての砂利を集めても足りん、というわけだな」

 

「その通りです」

 

 麻生が頷いた。

 

「だからこそ、インドの物量作戦は頼もしいのです。

 彼らが掘り出す膨大なF級魔石は、市場でダブつくゴミではありません。

 我々の文明を次のステージへ引き上げるための貴重な『原材料』なのです。

 いくら買い取っても、すぐに圧縮されて消えていく。

 在庫リスクなど存在しませんよ」

 

 そして九条は、第二の理由を提示した。

 

「理由の第二は、『エネルギー代替』としての需要です」

 

 画面が切り替わり、火力発電所や巨大な工場の映像が映し出される。

 その炉心には、石炭や石油の代わりに魔石が投入されている。

 

「F級魔石は、圧縮せずともそのまま燃料として利用可能です。

 1個1万円。

 この価格は、同等の熱量を生み出す原油や天然ガスと比較しても十分に競争力があります。

 しかもCO2排出ゼロ。輸送コストも、保管コストも、化石燃料に比べて圧倒的に低い」

 

 九条は世界地図上の発電所や産業地帯を指し示した。

 

「現在、世界中の電力会社や重工業メーカーが、エネルギー源を化石燃料から魔石へと転換する『マナ・シフト』を進めています。

 彼らにとってF級魔石は、『燃やして使う消耗品』です。

 電力を生み、鉄を溶かし、機械を動かすために、毎日、毎秒、膨大な量が消費されていきます」

 

「特にインド国内での消費が見込めます」

 

 王将軍が、経済的な視点で補足した。

 

「彼らは深刻な電力不足に悩んでいた。

 だが自国で産出される魔石を使えば、エネルギーの完全自給が可能になる。

 14億人の生活を支える電力。

 その全てを魔石で賄おうとすれば……。

 輸出に回す分すら残らないかもしれない」

 

「ええ。内需だけでも巨大すぎますからね」

 

 麻生が満足げに葉巻(チョコ)を噛んだ。

 

「つまり、1万円で買い取っても加工して売れば数倍の利益になり、そのまま燃やしても黒字になる。

 これほど安定した商材はありませんよ。

 インド政府が全量買い上げ保証をしたところで、財政破綻などしません。

 むしろ右から左へ流すだけで国庫が潤う『魔法の石』です」

 

 結論は出た。

 インドのダンジョン開放は、世界経済にとって脅威ではなく、待ち望まれた「供給源」の確立だった。

 バブル崩壊の懸念はない。

 あるのは旺盛すぎる需要と、それを満たすための更なる採掘競争だけだ。

 

「……結構」

 

 ヴォルコフ将軍が頷いた。

 

「ならば我々も遠慮なく、インドから買い付けを行おう。

 我が国のA級魔石生成プラント、材料不足で稼働率が落ちていたところだ。

 インドの石を燃料にしてロシアの技術を磨く。悪くない」

 

「アメリカもだ」

 

 トンプソンも同意した。

 

「魔石エネルギーへの転換を加速させる。

 中東の石油に依存しない社会。

 それが実現できるなら、インドにドルを支払う価値はある」

 

 四カ国は、インドという新たな「巨大な鉱山」を自らの経済圏に組み込むことを再確認した。

 搾取ではなく共存。

 あるいは相互依存という名の鎖による結合。

 

 世界はまた一つ、ダンジョンというシステムを中心に、より強固に、そして複雑に結びついていく。

 

「――しかし、こうなると……」

 

 沢村総理が、ふと遠くを見るような目をした。

 

「F級だけで、これほどのインパクトがあるのです。

 今後、インドの探索者たちが成長し、E級、D級、そしてC級へと進出した時……。

 そのエネルギー総量は、一体どれほどになるのか」

 

「想像もつきませんな」

 

 九条が苦笑した。

 

「14億人がレベルアップし、高ランクの魔石を持ち帰るようになる。

 その時こそ、本当の意味での『エネルギー革命』が完成するのでしょう。

 ……我々の仕事も、まだまだ増えそうです」

 

「ああ、待ち遠しいな」

 

 沢村は、モニターの中の泥だらけになって魔石を掘るインドの若者たちの姿に、人類の力強さを見た。

 彼らの汗が世界の未来を作るのだ。

 

 その時だった。

 

 フォン。

 

 突如として会議室の空気が変わった。

 重厚な議論の場に場違いなほど軽やかな電子音と、甘い香りが漂う。

 

 円卓の中央、ホログラムの地球儀の上に、彼女が現れた。

 ゴシック・ロリータ姿の管理者KAMI。

 

 今日の彼女は、インドの民族衣装であるサリーをゴスロリ風にアレンジした奇抜なドレスを纏っていた。

 手にはマンゴーラッシーのタピオカ入りドリンク。

 そして頭には、なぜか探検隊のヘルメットのようなものを被っている。

 

「――ナマステ〜! みんな元気?」

 

 KAMIはラッシーをズズッと吸い上げながら、満面の笑みで手を振った。

 

「KAMI様……!」

 

 四人の指導者たちが一斉に居住まいを正す。

 神の降臨。

 それは常に、新たなトラブルか、あるいは重大な仕様変更の合図だ。

 

「聞いてたわよー。魔石の話。

 順調みたいで、何よりだわ」

 

 彼女は、空中に浮かぶグラフをペチペチと叩いた。

 

「インドの子たち、頑張ってるわねぇ。

 私が設置したダンジョンのモンスターリポップが追いつかないくらいの勢いで狩り尽くしてるもの。

 おかげで私の『対価』ポイントも、ものすごい勢いで溜まってるわ。

 感謝感謝」

 

「ははは……それは何よりです」

 

 麻生が愛想笑いを浮かべる。

 

「で? 今日はどのようなご用件で?

 まさかインドのカレーストックが切れた、とか、そういう話ではありませんよね?」

 

「失礼ね。私はそんなに食いしん坊じゃないわよ」

 

 KAMIは口元のヨーグルトを拭いながら、少しだけ真面目な顔になった。

 

「ちょっと気になったことがあってね。

 あなたたち、インドの話ばっかりしてるけど……。

 忘れてない?」

 

「……忘れている? 何をです?」

 

 トンプソンが首を傾げる。

 

「『恐竜』よ」

 

 その一言に、会議室の空気が一瞬で凍りついた。

 

 恐竜。

 ムー大陸のジャングルエリア『セクター・デルタ』に生息する、太古の巨獣たち。

 かつて調査団が遭遇し、その圧倒的な生命力と魔力変異に戦慄した、あの存在。

 その後、国連管理下の「保護区」として指定され、各国の学者たちが調査に入っているはずだった。

 

「……ああ、恐竜ですか」

 

 沢村が、少し安堵したように言った。

 魔石の相場や国際政治に比べれば、生物学の研究など平和な話題に思えたからだ。

 

「そう言えば、どうなっているのですか?

 国連の多国籍特別調査団が現地で調査を継続しているはずですが……。

 最近はあまり大きなニュースも聞かないもので、順調にいっているものとばかり」

 

「順調……ねぇ」

 

 KAMIは意味深長に笑った。

 その瞳の奥に、悪戯な、そして少しだけ危険な光が宿る。

 

「まあ順調と言えば順調なんだけど。

 何しろ『国連』ですから」

 

 彼女は皮肉っぽく肩をすくめた。

 

「様々な国の学者が交代で入ってるでしょ?

 アメリカ、中国、ロシア、フランス、ドイツ……。

 みんな主張がバラバラで、縄張り争いばっかりしてるのよ。

 『T-レックスの羽毛サンプルは我が国が持ち帰る』とか、

 『トリケラトプスの糞の分析権は譲らない』とか」

 

 KAMIは呆れたように言った。

 

「会議ばっかりしてて、肝心の調査が全然進んでないの。

 見てて、じれったいわ」

 

「……耳が痛い話ですな」

 

 九条が苦笑した。

 国連の官僚主義と学者のエゴ。

 それが化学反応を起こせば、進捗がカタツムリより遅くなるのは目に見えている。

 

「まあ、安全第一でやっているのでしょう」

 

 ヴォルコフ将軍が擁護(?)した。

「相手は魔力を持った恐竜だ。下手に刺激して暴れられたら、調査団など、ひとたまりもない。

 慎重になるのも無理はない」

 

「そうね。慎重なのはいいことよ」

 

 KAMIは頷いた。

 だが、すぐにその表情を変えた。

 

「でもね……。

 彼ら、大事なことを忘れてるわ。

 あるいは、気づいてないふりをしてるのかしら」

 

「……大事なこと?」

 

「ムー大陸はね、まだまだ探索してないエリアだらけだってことよ」

 

 KAMIは空中にムー大陸の全図を投影した。

 オーストラリアほどの巨大な大陸。

 その中で現在調査が進んでいるのは、ピラミッド周辺の草原地帯と、恐竜がいるジャングルエリアのごく一部のみ。

 残りの90%以上は、未だ「未知の領域(テラ・インコグニタ)」として黒い霧に覆われていた。

 

「ピラミッドと恐竜だけで満足しちゃってるけど。

 この大陸には、まだまだ秘密が隠れてるのよ?」

 

 KAMIの声が誘うように低くなる。

 

「古代都市の廃墟。

 地下深くに伸びる巨大な迷宮。

 空に浮かぶ浮遊島群。

 ……そして、恐竜よりももっとヤバい、この大陸の『守護者』たち」

 

 彼女は地図上の黒い部分を指差した。

 

「特に大陸の北側に広がる山岳地帯。

 あそこにはね、恐竜時代の生き残りだけじゃない、もっとファンタジックで、もっとロマンのある生き物が巣食ってるわ。

 私のスキャンデータによれば……マナ濃度が異常に高い反応があるの」

 

「ファンタジックな生き物……?」

 

 王将軍が、ごくりと喉を鳴らした。

 恐竜以上の生物。

 それは一体、何だ。

 

「ほほう」

 

 トンプソン大統領が身を乗り出した。

 彼の「冒険心」スイッチが入ったようだ。

 

「それは……期待したいですね。

 まさか、『ドラゴン』ですか?」

 

 ドラゴン。

 ファンタジーの頂点。最強の怪物。

 恐竜が生物としての最強なら、ドラゴンは魔法生物としての最強だ。

 

「さあね?」

 

 KAMIは、はぐらかすように笑った。

 

「行ってからのお楽しみよ。

 でも一つだけ言っておくわ。

 国連の学者先生たちみたいに、ビクビクして会議室に引きこもってたら、一生見つからないわよ」

 

 彼女は四カ国の指導者たちを挑発した。

 

「あなたたち、魔石で儲かって満足してる場合じゃないわよ。

 本当の『宝』は、まだ誰の手にも触れられずに、あの霧の向こうで眠ってるんだから」

 

 その言葉は、彼らの心に火をつけた。

 安定と繁栄に安住し始めていた彼らの魂に、再び「開拓者」としての野心を呼び覚ましたのだ。

 

「……なるほど」

 

 ヴォルコフ将軍が、獰猛な笑みを浮かべた。

 

「国連の及び腰な調査団任せでは、埒が明かんということか。

 ならば我々が動くべきかもしれんな。

 非公式に精鋭部隊を送り込んで……」

 

「我が国の『青龍』も、腕を撫して待っております」

 

 王将軍も即座に反応する。

 

「アメリカもだ」

 

 トンプソンが葉巻を噛み砕いた。

「アークエンジェルの新型パワードスーツの実戦テストが必要だと思っていたところだ。

 未知の領域への強行偵察……。悪くないミッションだ」

 

 四カ国の思惑が再び一致した。

 国連の枠組みとは別に、各国独自の「極秘調査隊」を編成し、ムー大陸の深部へと送り込む。

 表向きは共同調査を装いながら、裏では未知の資源と技術、そして「ドラゴン」の秘密を巡る熾烈な競争が始まるのだ。

 

「……やれやれ」

 

 沢村総理が苦笑しながら、頭をかいた。

 

「また忙しくなりそうですな。

 インドの調整が終わったかと思えば、今度はムー大陸の冒険ですか」

 

「退屈しなくていいでしょう?」

 

 KAMIはウィンクした。

 

「新しいおもちゃ(情報)はあげたわよ。

 あとはあなたたちがどう遊ぶか。

 ……期待してるわ」

 

 彼女はラッシーを飲み干すと、満足げに立ち上がった。

 

「じゃ、私は帰るわ。

 インドの神様たちと、今夜はカレーパーティの約束があるから。

 シヴァ神が踊りながらナンを焼いてくれるらしいのよ。楽しみだわ」

 

 神々の宴。

 そのあまりにも超次元な日常を垣間見せながら、KAMIは光の中に消えていった。

 

 残された四人の男たち。

 彼らの目は、もはやモニターの数字(経済データ)を見てはいなかった。

 その視線は、遥か太平洋の彼方、雲海に浮かぶ謎の大陸の、そのさらに奥地にある「闇」へと向けられていた。

 

「……準備にかかろう」

 

 九条が静かに言った。

 

「日本の『月読』にも声をかけます。

 彼らの探索能力は世界一だ。

 未知のエリアの地図を作るには、彼らの力が不可欠です」

 

「うむ」

 

 沢村が頷く。

 

「世界は広い。まだまだ我々の知らないことが山ほどある。

 ……休んでいる暇はないな」

 

 魔石による繁栄。

 その足元を固めつつ、人類は再び未知への一歩を踏み出そうとしていた。

 恐竜、ドラゴン、超古代文明の秘密。

 それらが待つ霧の向こう側へ。

 

 冒険の時代は終わらない。

 むしろ、ここからが本番だった。

 

 彼らの眠らない戦いは、地上から空へ、そして未知の領域へと、果てしなく広がっていくのだった。

 

 

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