君の隣に俺は……   作:腐ったメガネ

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6話 秘密

脱いだ制服をしまい、真莉や数人の友達と一緒に更衣室を出る。彼女たちの会話を聞きながら今朝のことを思い出す。前からはるちゃんに聞きたいことがあったが、今朝の廊下で時間が無くてはるちゃんに聞きそびれてしまった。

 

 何も言ってくれないはるちゃんも悪いけど、さっきのはちょっといじわるだったかな。

 

 ホームルームが終わった後、私ははるちゃんたちの会話を盗み聞きしていた。鈴宮君が勉強会を提案した瞬間ーー

 

 チャンスだ

 

 ーーと思った。そしてはるちゃんが勉強会に参加すると言うまで待った。

 

『……わかったよ。やろう』

 

 来た。

 

 すかさず私は真莉を連れて彼らのもとに向かった。これならここから私が参加しようとしてもはるちゃんは勉強会の参加を取り消すことはない。私ははるちゃんを見つけた。逃がさない、と思いながら。

 

 はるちゃんとゆっくり話せる絶交の機会ができたことに少し口元が緩む。私は勉強会ではるちゃんと話すことを改めて決意した。

 

「もう! 天ちゃん聞いてる?」

「! ごめん何の話?」

「今日の天ちゃんなんか変だよ?心ここにあらずって感じ」

 

 考え事をし、全く話を聞いてなかった私に真莉が怒る。今日ははるちゃんについて考えてばかりでほとんど真莉の話を聞いていない。

 

 いかんいかん。このままだと真莉たちとも距離ができてしまう。勉強会の日程が決まるまでは、目の前のことを優先しよう。

 

「ごめん。ちょっと考え事してて」

「許さん!」

「お詫びとして今度スイーツおごるから」

「ゆるす~」

 

 なんて話していると体育館に着いていた。すでに先生とほとんどの生徒は集まっている。

 

「お前たち走れ~。もう始めるぞ~」

 

 先生の言葉を聞き、私たちは急いで走り出した。

 

 今日の体育はバトミントンをするので体育館にはいくつものネットが張ってあった。

 

「じゃあバトミントンするからペア作って」

 

 準備体操をした後、先生が二人組を作るよう指示を出す。指示を受けた生徒は続々とペアが作っていく。私も真莉にペアを組もうと呼ぼうするとーー

 

「月見さん。よかったら私と組みませんか」

 

 ーー横から白石さんが話しかけてきた。白石さんとは中学が同じであったがあまり話したことはない。彼女から話しかけてくるもないため彼女は同じ中学の同級生と思っている。そんな彼女が私にペアになろうと提案してくる。

 

「うん。いいよ」

「ありがとうございます」

 

 私は少し驚いたが彼女の提案を承諾した。白石さんは微笑み、感謝の言葉を言いながら頭を下げる。

 

 そのあとはしばらく私たちは羽を打ち合った。とはいっても、二人とも運動が得意というわけでもないので軽くラリーをする程度だ。

 

 体育館暑いなあ。

 

 運動しているのもあるが、体育館の蒸し暑さに汗が止まらない。

 

「ハァ……ハァ……、ちょっと休憩しよう」

「ハァ……、そう……です……ね」

 

 十数分ラリーをした後、お互い体力の限界を感じ一旦休むことにした。私はラケットの代わりにタオルを持ち、体育館を出た。近くの蛇口に向かい、冷たい水で顔を洗う。

 

「はぁ~気持ちいい~」

 

 冷たい水のおかげで気分がさわやかな気持ちになる。私は持ってきたタオルで顔を拭く。すると、誰かの足音が近づいてくるのが聞こえた。振り返ると白石さんが立っていた。

 

「お疲れ様です、月見さん」

「おつかれ白石さん。白石さんも水浴びに来たの?」

 

 私はそんなことを聞いたがすぐに彼女が何も持っていないことに気が付いた。白石さんは私に聞いてきた。

 

「いえ、少し月見さんとお話がしたくて」

 

 その言葉に私は少しうれしくなる。

 

「そうなの? 何を話す? なんでも答えるよ! あっ、でも恥ずかしい質問はやめてね」

 

 これまであまり接点がなく話してこなかったがこれを機に仲良くなれるのではないか。そんなことを考えていた。

 

「では、お構いなく……」

 

 白石さんは私の目を見て尋ねる。

 

「どうしてあんな強引なことをしたのですか?」

 

 私は少し顔が強張ったがすぐに笑顔に戻し、とぼけたように白石さんに聞き返す。

 

「何のことかな?白石さん」

「今朝の勉強会のことです。月見さんの行動が少しらしくないと感じたので理由を聞きたいなと」

「私らしくないってどういうこと?」

 

 私は笑顔を保ったまま再び聞き返す。白石さんは表情を答える。

 

「あなたにしてはすこしやり方が回りくどいなと思いました。普段のあなたならもっとストレートに勉強会に参加していいか聞くはずです。特に、黒川君に対しては」

 

 白石さんからはるちゃんの名前が出た時、すこし眉をひそめたが笑顔のまま答える。

 

「それがさ、最近はるちゃん私たち幼馴染三人を避けるんだよね。理由を聞こうとしてもすぐ逃げるし。はるちゃんを逃がさず理由を聞くにはああするしかなかったんだよ」

「へぇーそうだったんですか」

 

 私の回答に白石さんは頷く。どうやら納得したようだ。

 

「さあ体育館に戻ってバトミントンやろうか。そろそろ戻らないと先生に怒られそうだし」

 

 そう言い、私は白石さんの横を通り過ぎ、体育館へ向かう。すると背後の白石さんから声が聞こえる。

 

「私はてっきり……」

 

 ほんの少しの間を置き、彼女は続けた。

 

「私が黒川君と一緒に過ごすのが嫌であんなことをしたのかと……」

 

 彼女の言葉に私は足を止め、振り返る。私は鋭い目で白石さんを見た。さっきまでの笑顔が嘘だったかのように。

 

「……何を言っているの?」

「ですから、私が黒川君と一緒に過ごすのが嫌であんなことをしたのかと」

「だから何を……」

「もっとわかるように言うなら、あなたは黒川君が好きで黒川君と仲良くしている私に嫉妬を」

「黙って!」

 

 白石さんの言葉を遮るように私は怒鳴った。これまで学校でこんなに大きな声を出したことはなかった。しかし白石さんは全く動じていなかった。

 

「そんな声を出すということは図星ですか」

「っ!」

 

 彼女の指摘に私は言葉が詰まる。白石さんは私の反応を確認するように見つめる。

 

「……どうしてそんな風に思うの?」

 

 私は彼女に尋ねる。彼女はその考えに至った経緯を語った。

 

「これまで私が黒川君と話しているとあなたの視線を感じることが多くありました。最初はただの偶然かなと思いました。しかし、学校で彼と話すたびにあなたの視線を感じた」

「……」

「そこから私はいろいろ仮説を立てました。幼馴染の黒川君が心配なのか、私が何かやってしまったのかと。でも、ある日、あなたが別の女の子と話す黒川君を見ていたとき気づきました。これは嫉妬であると」

「……どうしてわかったの?」

 

 白石さんは一度うつむいた後、顔を上げて答えた

 

「黒川君たちを見てる時の顔が、私と……同じだったから」

 

 私は驚いた顔で白石さんを見る。彼女は少し恥ずかしそうに微笑んでいる。私は何も言えなくなっていた。白石さんは続ける。

 

「さっきなぜ、あなたがあんなに怒ったのかは知りませんし、詮索する気もないです」

 

 私は彼女の言葉を黙って聞いていた。

 

「でもこのままだとあなたは……いえ、あなたたちは黒川君と離れ離れになる」

「! どういうこと!?」

「……もっと彼と自分たちを客観的に見た方がいいということです」

 

 白石さんが何を言っているのか、まるで分らなかった。私が戸惑っている姿を見た白石さんは歩き始めた。

 

「黒川君の”隣”にいたいのなら頑張ってください」

「待って!」

 

 体育館に戻る彼女を止める。

 

「私はあなたにとって敵だよ。どうしてこんなことしたの?」

 

 これをどうしても聞いておきたかった。白石さんは振り返り、微笑みながら答えた。

 

「黒川君のために決まっています」

 

 彼女は体育館に戻っていった。私はその場に突っ立ったまま動かなかった。白石さんに言われたことについて考える。

 

 はるちゃんと離れたくない。隣にいたい。

 

 私は必死に頭を回転させる。しかし、今は何も思いつかない。

 

 しばらくしてから私も体育館に戻った。水飲み場にタオルを忘れていたことに後で気づいた。




はじめて3000字超えた。主人公いないのに。
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