ソードアート・オンライン 〜槍剣使いの能力共有〜   作:カエサル

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24.それぞれの思い

 

 

涙を流す少女へと手を伸ばした。しかし、それは届くことなく。目の前で消えた少女の光の残滓を空を切った右手に触れるだけだった。

アルヴヘイムで右も左も解らなかったシュウやキリトを何度も助けてくれたリーファという少女こそ───直葉だった。

自分の犯した罪に押しつぶされそうになった時に集也に優しい言葉をかけ、助けてくれたのは直葉だった。

キリトの死を目の当たりにしてただ、守護騎士たちを殺すためだけに動いていたシュウの心に動かしてくれたのはリーファだった。

シュウ/集也は仮想と現実どちらでも彼女に助けられた。

───それなのに俺は……

 

左手を振ってメニューウインドウを展開。出現したウインドウの左端に触れかけた指が直前で止まる。

まるで何かが邪魔をしているようにその先に触れようとすることができない。

いや、そうじゃない。本当はそんなものなどないということはわかっていた。無意識でシュウ/集也は恐れているんだ。今の自分が直葉にあって何ができるのか、どんな言葉をかければいいのかがわからない。

そんな躊躇いが表示されたウインドウのボタンを押すという簡単な行為さえ行えなくさせる。

たった数センチ指を動かすだけなのにだ。

それができれば、シュウは集也へとなり彼女の元へと向かうことができるはずだ。

だが、直葉/リーファを傷つけた理由さえ理解していないシュウ/集也に彼女に会って何か言葉をかける権利などあるのだろうか。

それにわかっているはずだ。集也はシュウのようにはなれないと……。

(シュウ)のように目の前で誰かが襲われていても助けに行くような力もなければ度胸もない。大軍勢の前で法螺を吹き、軍師の右腕を押し返すことも、絶対に不可能とわかっている邪神に挑むようなこともできない。何もできずにただ見ているだけしかできないのが、集也だった。

偽りの世界で築き上げてきた偽りの自分。

仮想世界で集也はシュウという人物を演じ続けてきた。

二年間もの幽閉された鉄の城……ソードアート・オンライン。その世界では、集也は違った。ゲームオーバー=現実の死という世界では、シュウのように誰かの味方であり続けることなどできなかった。

死を恐れずに誰かを助けるシュウと死を恐れて自分のことを大切にしようとする集也……二つの相対する感情がどちらもの精神を侵食していった。

 

───戦わなければ生き残れない現実。

───誰かを見捨てられない偽った正義。

───生と死の恐怖。

 

相反し、それでいて同質なそんな感情はいつしか獣とかしていた。獣は獣でも醜い化けた獣。

一切の感情を捨て、無情に無慈悲にただ目の前の害をなす存在を世界から消し去る獣こそあの頃のシュウだった。

そして暴走の果てにキリトたちに救われたシュウはようやく一つの答えにたどり着いたのだった。

現実世界も、仮想世界も真の意味では違いなどない。

仮想世界を生きるシュウと現実世界を生きる集也。その両方に住まう獣は全て自分自身だった。

それは理解している。しかし、まだ受け入れられていない自分もどこかにいるのも事実だった。そんな感情たちがログアウトさせることを躊躇わせる。

動こうとしない指を必死で動かそうとした時だった。

 

「……俺が行ってくる」

 

隣にいた黒衣の少年がメニューウインドウを開きながら口にした。

 

「……悪い」

 

何もできずに動けない自分が情けなかった。

 

「必ず、直葉は連れて戻ってくる」

 

そう言い残してキリトは眩い光に包まれて和人へと戻って行った。

そんな光景をただ見てることしかできなかった集也がどうしようもなく嫌いだった。

 

 

────────────────────

 

 

自室のベットで覚醒した直葉はのろのろとアミュスフィアを外し、目の前にかざした。

 

「つ……ぅ……」

 

喉奥から嗚咽が漏れた。円環状の機械を握る手に力が入る。リングは軋み、悲鳴をあげる。

このままアミュスフィアを壊してあちらの世界へと繋がる道を永遠に閉ざしてしまいたい。しかし、そんなことはできなかった。

機械をベッドの上に置いて、上半身を起こす。もう何も考えたくなかった。

静寂を破ったのは控え目なノックの音だった。次いでドアの向こうから、キリトとは違う、同じ抑揚を持つ声。

 

「───スグ、いいか?」

 

「やめて!! 開けないで!!」

 

反射的に叫んでいた。

 

「一人に……しておいて……」

 

「───どうしたんだよ、スグ」

 

戸惑いをはらんだ和人の言葉が続く。

 

「……何があったか話してくれないか?」

 

不意に、感情の本流が全身を貫いた。床を蹴るように立ち上がり、ドアの方へ向かう。

ノブを回し、勢いよく引きあけた。そこには和人の姿があった。

 

「あたし……あたし……」

 

気持ちが勝手に涙と言葉になって溢れ出てくる。

 

「あたし───自分の心を裏切った。集也君を好きだって気持ちを裏切った」

 

言葉にしたそれは刃のように直葉の心を貫いた。焼け付くような痛みを感じながらも掠れる声で言葉を募る。

 

「全部忘れて、諦めて、シュウ君を好きになろうと思った。ううん、もうなってたよ。───なのに……それなのに……」

 

一瞬詰まる。しかし、抑えていた気持ちを止めることはできず、言葉となった。

 

「集也君は……アスナさんのことが好きだった……」

 

「え……?」

 

和人が絶句する。そこから数秒遅れて考え込んだ表情をしたかと思うと囁くように言った。

 

「……なぁ、スグ」

 

和人は数瞬の間のあと問いかけるように呟いた。

 

「それって、シュウの口から聞いたのか?」

 

「そうじゃなくてもわかるもん!! あんな目で……あんな表情で……」

 

いけない、と思った。和人にどれだけ激情したって意味などない。これではただの八つ当たりだ。それでも漏れていく涙と言葉が止まることはなかった。

和人はそんな直葉に対して優しい兄の表情になると頭に手を置いた。そしてゆっくりと動かす。

 

「───やめて!! 」

 

優しくしてくれた手を振り払うと直葉は逃げるようにドアを閉める。ドアを背に膝を抱えて体を丸める。こみ上げてくる嗚咽が肩を震わせる。涙が床へと溢れていく。

力強いノック音と振動が背中を伝って直葉の体を震わせる。

開けないで、と再び叫ぼうとしたが、喉は掠れるだけでうまく声が出ない。しかし和人はノブを回さずに、ドアの向こうで言った。

 

「スグ……、アルンの北側のテラス……そこにシュウを呼び出しとく。だから、そこでちゃんと話し合ってみてくれないか」

 

穏やか声だった。

直葉は、瞼を固く閉じ、抱え込む膝をより強く、体を縮こまらせた。

何も悪くない、むしろ直葉の事を慰めてくれている和人に八つ当たりをしてしまっているのに優しくしてくれているのが痛かった。

 

「ちゃんと話し合って……それでもあいつがアスナの事を好きだって言ったら俺が容赦しないからさ」

 

ドアの向こうから聞こえる和人の……いや、今はキリトの声が直葉の心に染み渡っていく。

 

「……待ってるから」

 

ドアの向こうから小さくなっていく足音が聞こえる。廊下の向こうで開閉の音がして、静寂が訪れた。

 

───優しいんだね、お兄ちゃんは。

 

心の中で呟いてから、ふと数日前のことを思い出した。

ベッドの上で幼子のように体を丸めて泣いていた和人。それでも和人/キリトは眠るあの人がアルヴヘイムに───世界樹の上にいると知って、再び立ち上がり、涙を振り払い、剣を握った。

そんな兄のように強くはなれないかもしれない。

だけど、前を向かなければいけない。あのとき、和人に……集也にがんばれと、諦めちゃダメだと言ったのは自分自身だ。

直葉はゆっくりと目を開けて、立ち上がるとベッドへと向かう。

そして輝く円環に手を伸ばすと、一度息を整えてから深く頭に被せた。

 

 

リーファが目を開くとログイン地点には、キリトがそこにはいた。

 

「よっ、スグ!」

 

先ほどのことなどまるで何もなかったかのように笑顔でこちらに手をあげる。

 

「……お兄ちゃん」

 

思わず視線を逸らした。

 

「ご、ごめんなさい」

 

リーファは深々と頭を下げる。優しくしてくれた和人に対して酷い言葉を浴びせてしまった。

 

「いいよ……それよりも早く行って来い」

 

頭をあげると同時にキリトはリーファの頭に手を置いて優しく撫でる。いつもなら恥ずかしさがあるが今は心を落ち着けてくれる。

すると意外な人物がリーファの名を呼んだ。

 

「んも〜〜〜〜、探したよリーファちゃ……え? ……えっ!!」

 

馴染み深い、頼りないくせに元気一杯な声が響く。そちらを向くと黄緑色の髪のシルフの少年が驚愕の表情を浮かべて固まっていた。

 

「……れ、レコン!?」

 

思いがけない登場に唖然としているリーファに対してレコンは数秒固まった後にとてつもない速度でこちらに走ってくる。そしてキリトとの間に割って入る。

 

「ななな、何してるんですか!? 」

 

凄まじい形相で睨みつけている。

 

「り、リーファちゃんのあ、頭を撫でるなんて僕だってしたことないの……ぐほェ!!」

 

レコンが何か良からぬことを口にするような気がし、全力のショートブローを脇腹に叩き込む。

一メートルほど横に吹き飛ばされると地面に悶えた。

 

「うぐぐぐぐうううぅぅ……ひ、酷いよリーファちゃん……」

 

「あんたが訳のわからないこと言うからよこのアホチン!」

 

追撃であと数発お見舞いしてやろうと右の袖を捲り上げるような仕草をする。キリトがまぁまぁ、と言いながらリーファの肩を掴む。

倒れるレコンが這いずりながらリーファと距離をとっていた。

 

「あれ〜〜〜〜……。おっかしいなあ……。結構活躍したから好感度がだいぶ上がってると思ったんだけどなあ……」

 

「何が好感度よ! と言うかなんであんたがここにいるのよ」

 

砂埃を払いながらレコンは立ち上がる。

 

「いやー、地下水路からシグルドがいなくなったんで隙見て麻痺解除してサラマンダー二人毒殺して、いざ旦那にも毒食わせてやろうと思ったらなんかシルフ領にいないし、仕方ないんで僕もアルンを目指そうかと思って、アクティブなモンスターをトレインしては他人に擦りつけてトレインしては擦りつけでようやく山脈を越えて、ここについたのが今日の昼前だよ。一晩かかったよ、マジで!」

 

「……アンタそれはMPKなんじゃあ……」

 

「細かいことはいいじゃんこの際!……って、あれ? あのインプはどうしたの?」

 

レコンが今更ながら辺りをキョロキョロ見回し、シュウがいないことを指摘した。

 

「ええと……」

 

リーファの胸の奥の疼きが答えを口に出すのを拒む。

代わりに隣にいたキリトが口を開いた。

 

「あいつならもうすぐ戻ってくるよ。ほら、リーファ迎えに行って来い」

 

軽く背中を押されて反射的に前に一歩出た。

その足取りは不思議と軽く一歩、また一歩と動くことができた。

 

───ありがとう、お兄ちゃん。

 

心の中でそう呟くと翅を広げて空へと浮き上がる。

 

「あ、待ってよ、リーファちゃ〜ん〜〜……んがぁぁ!」

 

追いかけて来ようとしたレコンの服の襟を掴んでキリトが掴み再び、地面に転倒。

 

「着いてきたら今度はあんなんじゃ済まさないからね!」

 

ひらひらと手を振って、リーファは体を反転させた。そのまま世界樹の幹目指して高く舞い上がった。

 

 

巨大な幹を回り込むと広大なテラスが見えてきた。ギルドのイベントなどに時折利用されるスペースは、閑散としていた。

がらんとした石畳の中央に、小柄な黒い人影がポツンと立っていた。

リーファは大きく一回深呼吸をしてから、彼の前に舞い降りた。

 

「……やあ」

 

シュウは、リーファを見ると、不器用な笑みを浮かべ短く言った。

 

「お待たせ」

 

リーファも笑みとともに言葉を返す。しばしの沈黙の後に大きく深呼吸をしてからシュウの瞳を見つめて言葉を発した。

 

「集也君、本気で試合しよ」

 

言いながら腰の長刀に手をかけると、シュウは軽く動揺を見せるがすぐに真剣な瞳で返してくる。

数秒後、大きく頷くと翅を広げて、距離を取る。

互いに抜剣する。リーファは馴染んだ愛刀をいつものように中段で構え、まっすぐシュウを見つめる。シュウはわずかに腰を落とし、左手に月光のように輝く槍、右手には装飾がほとんどない片手剣を持って構える。今までで何度も見てきた変則的な構え方。

風が二人の間を吹き抜けた。それと同時に二人は地を蹴った。

高く振りかぶった剣を、リーファは一直線に斬り下ろす。それを難なく躱すと同時に片手剣が振り上げられる。引き戻した長刀で受け流そうとするが、その間に槍が割り込んでくる。衝撃が両腕に伝う。

振り上げられた刃がリーファの胸を掠める。

明らかに直撃させれたはずなのにわざと軌道を逸らされたリーファは苛立っていた。

 

「やっぱりあたしじゃ本気になれないってこと!」

 

力任せに横振りした長刀をシュウは片手剣で受け止める。金属がぶつかり合う音とエフェクトが弾けるとシュウの体がわずかに後退する。

リーファは手を抜くことなく力任せに長刀を振り抜いた。

 

「集也君はいっつもそうだよ! 口では本気でやるとか言っといて実際はいっつもあたし相手だと手抜いてさ!!」

 

それに……、と勢い任せに秘めていた想いを口にしていく。

 

「アスナさんのことが好きなのに昔みたいにあたしに優しくしたりするところがイライラするんだよ!!」

 

「はっ!? 俺がアスナのことが好き? なんの話してんだよ」

 

今までで静かだったシュウが声を荒げる。その瞬間、振り上げられたリーファの長刀がシュウの片手剣の芯を捉え、快音を立てて吹き飛ばした。

それでも手を緩める気などない。振りかぶったた長刀をありったけの力を込めて斬り下ろした。両手で持ち変えた槍で受け止める。

 

「だってそうなんでしょ! あの夜にあんな表情でアスナさんの名前呼ぶくらいなんだから!」

 

「違うっつうの! こっちにも色々とあったんだよ。それに俺が好きなのはス……っ!?」

 

何かを言いかけたシュウは吐き出しかけた言葉に急ブレーキをかける。

すると鍔迫り合い状態をシュウが下から凄まじい力で押し上げられ、リーファは上へと吹き飛ばされた。翅を広げて体勢を立て直してる最中に、黒衣の妖精が翅を広げて追撃。

 

「どんな勘違いしてんだよ! 俺がアスナのこと好きなわけねぇだろうが! もしもそんなこと言ったらキリトに斬られるつうの!」

 

勘違い?

直葉/リーファが間違いだったってこと?

その言葉を聞いて少しだけ嬉しかったと同時に申し訳ないとも思った。しかし、そんな申し訳ない気持ちよりも今は、目の前の少年に自分の思っていることを全部ぶつけてやりたい気分だった。

 

「そんな勘違いさせたのは、集也君でしょ!」

 

「知るか! どうせ、また勝手に自分の中で答え出して決めつけたんだろ。そういう性格は昔から変わってねぇんだな!」

 

目にも止まらぬ速さの突きがリーファに襲う。今度は先ほどのように手を抜いていないのが伝わってくる。

完全に避けきれないと悟ったリーファは逆にシュウとの間合いを詰める。デュエル申請を行っての戦いではなく圏内ということでHPの減少はない。

翅による加速をつけた突進がシュウの脇腹を掠める。

 

「そういう集也君こそ、言葉が少ないからこういうことになるんだよ!」

 

「俺のせいだってのかよ!」

 

「半分以上はそうでしょ!」

 

「なんだと!?」

 

「なによ!?」

 

空中で睨み合うリーファとシュウ。どちらも息が荒く怒りの表情を浮かべている。

仲直りするどころかむしろ悪化しているように周りからは見えるだろう。

しかし……

 

「「ぶっ……はははは」」

 

先ほどまでの言い争いが嘘のように二人は笑い合う。リーファの眼には同時に涙が溢れてくる。零れ落ちそうになるのを必死でこらえながら、声をあげて笑う。

 

「こんな風にスグと言い争いしたのってあのとき、以来じゃないか」

 

シュウがいうあのとき、とはもう三年近く前になる。中学の剣道部の時に集也が態度にイライラした直葉が試合を申し込んだことがあった。

最初は今回同様手を抜いていたが、こちらが集也へと怒りを全部ぶつけていくと向こうも負けじとぶつけてきたんだ。

途中で顧問が止めに入ったせいで結局決着はつかなかったが、その頃からだった。

直葉が集也のことを気になり出していたのが。

 

「そうだね」

 

懐かしい初恋の気持ちと改めて集也のことが好きなんだという気持ちがこみ上げてくる。

互いに剣を背中に戻すと見つめ合う。

黒い髪に瞳。わずかに紅潮する頬。照れを隠すように不器用に笑みを浮かべる口元。

姿は違っても目の前にいるのはまぎれもない集也なんだ。サラマンダーに襲われてるところを助けてくれたのも、シグルドから守ってくれたのも、シルフとケットシーたちのために戦ってくれたのも、友達のために戦ってくれたのも全部が集也だったんだ。

胸が高鳴っていく。今近づいたら多分、聞こえてしまう。顔が熱くなる。

 

───やっぱり、そうなんだ。

───あたし、集也君のことが……

 

優しい笑みを浮かべながらゆっくりと近づいてくる集也にリーファは恥ずかしさで視線を逸らしてしまう。

すると頭にポンと手を置かれて、ゆっくりと撫でてくる。この時間が永遠に続いて欲しいと思った。

シュウは静かな声で話し始める。

 

「俺もキリトも……まだ本当の意味であの世界から帰ってこれたわけじゃないんだ。眠り姫が起きてようやく……俺たちの現実が始まる気がするんだ。……だから、もう少しだけ待っててくれないか」

 

リーファは小さく頷く。

 

「うん、あたし待ってる。集也君とお兄ちゃんがちゃんと帰ってくる、その時を。……だから、あたしも手伝う。説明して、アスナさんに何があったのか」

 

 

────────────────────

 

 

「えーと……ど、どうなってるの?」

 

ゲートの前でおとなしく待っていたレコンがリーファとシュウを交互に見ながら首を捻る。

 

「世界樹を攻略するのよ。この人と、この人と、アンタと、あたしの四人で」

 

「そ、そう……って……ええ!?」

 

顔面蒼白になって後退るレコン。そうなるのも無理はない。正直言えば、リーファ自身も勝算があるわけではない。目の前でキリトが無残に倒され、シュウも倒される寸前だった。二人増えたところでどうにかなるとは思えなかった。

 

「ユイ、いるか?」

 

キリトの呼びかけにお馴染みの小さなピクシーが姿を現した。

 

「どうしました、パパ?」

 

「あのガーディアンとの戦闘でわかったことはあるか?」

 

「はい」

 

ユイが真剣な表情で頷く。

 

「あのガーディアンのステータス的にはさほど強くはありませんが、出現数が異常です。あれでは……攻略不可能な難易度に設定されているとしか……」

 

「つまり、総体的には絶対無敵の巨大ボスと一緒だってことだな」

 

「確かにあの数は、今思い出してもゾッとする」

 

シュウが顎に手を当てながら思い出す。

 

「ですが、パパとシュウさんのスキル熟練度なら瞬間的な突破なら可能かもしれません」

 

キリトはしばらく思考すると、やがて顔を上げ、リーファたちを見た。

 

「……すまない。もう一度だけ、俺の我儘に付き合ってくれないか。……なんだか嫌な感じがするんだ」

 

リーファは一瞬だけ、サクヤたちシルフへメッセージを飛ばして協力を依頼しようと思ったがすぐにその考えは振り払った。

友人であるサクヤであっても彼女はシルフの領主。リーファ一人の我儘に付き合わせて全滅覚悟の可能性がある作戦に乗ってくれるとは思えない。いや、彼女なら助けようとするかもしれない。しかし、それでは今後のシルフに関わる問題になってしまう。

短い沈黙の後に顔を上げ、リーファははっきりした口調で言った。

 

「あたしにできることなら何でもする……それと、こいつもね」

 

「え、ええ〜……」

 

 

 

再び、この中に戻ってくるとは思いもしなかった。

リーファは軽く翅を震わせた。先ほどシュウとキリトを助けるために飛び込んで無我夢中だったが改めて見るとすごい圧迫感だ。

キリトに続き、シュウ、リーファ、レコンと剣を抜く。

 

「……行くぞ!!」

 

キリトの声を合図に地を蹴り、一気にドームの中核へと突入。

キリトとシュウが猛烈な加速で天蓋の中央ゲート目指して急上昇。リーファとレコンが底面付近でヒールスペルの詠唱に入る。

天蓋の発光部分から、次々と白い巨人が姿を現わすと不気味な雄叫びとともに二人に殺到していく。

複数の巨人が迫りくるがそんなこともろともせずに一撃で、見えないほどの高速の攻撃で白い炎へと変えていく。

 

「……すげぇ」

 

隣のレコンが低く呻いた。

確かに恐ろしいほどに強い。しかしそれよりも徐々に数を増やしていく白い巨人に全身が震える。

守護騎士は個から群へと戦術を変え、更に二人を分断するように押し寄せる。それでもなお、手を緩めることのない二人は鬼の如く剣を振るう。

ゲートの半分まで上り詰めたところで、二人のHPが一割ほど減少。それに合わせて待機状態だったヒールをかける。

───だが。

スペルが届くと同時に、予期せぬことが起きた。

守護騎士たちの中の一番低いところにいた一群が、短い奇声とともにリーファたちの方へ顔を向けた。

 

「うぁ……」

 

レコンが思わず引き攣ったような声を上げた。

ターゲットにされている。通常のモンスターのアルゴリズムなら反応圏内に侵入するか遠距離攻撃系の弓やスペルを使わない限りは襲ってくることはない。

しかし、どうやら守護騎士たちは悪意のアルゴリズムが与えられているようだ。圏内全てに反応する。それは、前衛のアタッカー、後衛にヒーラーというオーソドックスな配置は無意味となる。

五、六匹の騎士の一群が急降下を始める。

リーファは咄嗟にレコンに向かって叫んだ。

 

「奴らはあたしが引きつけるから、あんたはこのままヒールを続けて!」

 

返事を待たずに上昇しようとしたリーファの右手を、待って、と掴んだ。

 

「リーファちゃん……、僕、よくわからないんだけど、これ、大事なことなんだよね?」

 

「───そうだよ。多分、ゲームじゃないんのよ、今だけは」

 

緊張で震えた声で、いつになく真剣な表情を浮かべるレコン。

 

「ぼ、僕がなんとかしてみる」

 

言うやいなや、レコンは飛行補助コントローラを握ると守護騎士軍に突入していく。

 

「ば、ばかっ……」

 

レコンでは歯が立つ相手ではない。しかし、そう思った時には追いつけないほどの距離ができていた。視界の彼方のキリトとシュウのHPバーは再び減少を始めている。リーファは回復スペルの詠唱に入った。

レコンは降下してくる一群のタゲを自分へと集中させる。ふらふらとした危ない飛行をしながらも巨人たちの剣を回避していく。

リーファの詠唱が終わり、キリトとシュウが回復すると再び数匹が下降を始める。その一団の前をわざと通り過ぎてレコンはタゲを集中させる。

空中戦闘が得意ではないレコンだが、ギリギリのところで回避を繰り返している。時折かすめる剣先がじわじわとHPを削っていく。

 

「……レコン……」

 

あまりにも懸命な飛行。だが、それがいつまでも続かないことはわかる。リーファが二人を回復させるたびに下降してくる守護騎士を引き連れていたらいつかは限界がくる。

ついに守護騎士の一体の剣がレコンの背中を捉え、大きく体を跳ね飛ばした。

 

「レコン! もういいよ。外に逃げて!」

 

リーファは叫びながらレコンの元へと駆け寄ろうとする。

しかし、その直後、彼は何かの決意に満ちた笑みを浮かべてこちらを見ていた。

立て続けに剣を受けながらも、レコンがスペルの詠唱を始めた。深い紫のエフェクトが体を包む。

それが闇属性魔法のエフェクトだとわかり息を呑む。複雑な立体魔法陣が展開される。かなりの高位呪文だと思われる。

魔法陣はみるみる巨大化し、辺りの騎士たちを巻き込んでいく。そして恐ろしいほどの閃光を放った。

 

「あっ……」

 

眩い光に思わずリーファは眼を逸らした。数瞬遅れてドーム内全体を震わすほどの爆音が響いた。

白く飛んだ視界が晴れていく。

爆発の起点となった位置を見上げると先ほどまで群がっていた守護騎士たちが綺麗に消え去り、一角だけ蠢く雲の向こう側のゲートが見えた。

そしてその中央に緑色の炎が揺らめいているのが見えてリーファは息を呑んだ。

 

「───自爆魔法……」

 

闇魔法の中でも禁呪だと聞いたことがある。広範囲の威力と引き換えの自らのHPをなくす。その上、通常のデスペナルティーの数倍が課せられる。

それはレコンが必死になって積み上げてきた経験値……つまり努力や熱意を犠牲にしての一撃。

リーファは上空を凝視して、足の力が抜けていく。

一人の少年を犠牲にして生み出された空間が蠢く雲によって再び閉ざされていく。

シュウとキリトは騎士たちを次々と倒していくがあまりにも数が多過ぎて行く手を阻む肉の壁はビクともしない。

 

「……無理だよ、集也君……お兄ちゃん……こんな、こんなの……」

 

削られたHPに反射的にヒールを掛けようと両手を掲げた。

不意に上空を蠢いていた数体が詠唱を始めていた。あれは光の矢の呪文。あれが直撃すれば短時間のスタンに見舞われ、続く攻撃を全て食らってしまう。

キリトとシュウが無数の刃に串刺しになる光景を予期し、リーファは全身を凍らせた。

その時だった。

 

「っ……!?」

 

振り向いたリーファが目にしたのは、開け放たれた大扉から編隊を組んで突入してくる、新緑の色に輝く鎧を着込んだシルフの戦士だった。

その数、五十は下るまい。

彼らだけではなかった。シルフの後ろから突入してきた新たな一団。

 

「飛竜……!」

 

その数は、およそ十といったところだが、その大きさはプレイヤーの数倍はあろうドラゴンの集団だった。

間違いなくあれはケットシー族の最終戦力、竜騎士(ドラグーン)隊である。

 

「すまない、遅くなった」

 

不意に背後からリーファに誰かが声をかけた。

振り向くとそこに立っていたのは、シルフ領主サクヤと隣に寄り添うケットシー領主アリシャ・ルーが耳をパタパタと動かしながら言った。

 

「ごめんネー、装備揃えるのに時間がかかっちゃって」

 

領主の地位を失うかもしれない危険を顧みずにこれほど早く来てくれた。本来、奪い合いを本質としたこの世界で、リスクなど数えるだけでも多く二種族合同部隊はクエスト達成条件上、ありえないと思われていた。しかし、ゲームマスターの思惑を超えて助けに来てくれた。

 

「……ありがとう……ありがとう、二人とも」

 

震える声でリーファはどうにかそれだけを口にした。偽りの世界でも、ルールやマナーといった常識よりも大切なものがやはりあったんだ。

力強く頷きあい、三人同時にドームの中央部まで急上昇。

 

「ドラグーン隊! ブレス攻撃用───意!」

 

アリシャが右手を高く上げ叫ぶ。

次いで、サクヤが扇子を掲げた。

 

「シルフ隊、エクストラアタック用意!」

 

密集方形陣に固まったシルフ隊のが長剣を頭上にかざすと刀身がエメラルド色の雷光が包む。

攻撃に反応した騎士たちが奇声をあげて降下してくる。それを限界まで引きつけてからアリシャ・ルーが右手を下ろして、高々と声をあげた。

 

「ファイアブレス撃て───ッ!!」

 

直後、十騎の飛竜の溜め込まれた紅蓮の業火が守護騎士たちへと突き刺さった。十本の巨大な火柱は炎の壁となって守護騎士たちを無残な残骸へと変えて行く。

だが、無限とも思えるガーディアンの肉の壁は群を伸ばすとキリトとシュウを呑み込む勢いで増え続けている。

白い塊が殺到する寸前にサクヤが扇子を振り下ろした。

 

「フェンリルストーム、放て!!」

 

シルフ部隊の五十の剣が突き出されると眩い雷光がジグザグに走り、守護騎士の群れへと深々と突き刺さる。

大量の白い炎が吹き荒れる。

二度に渡る大群攻撃に肉の壁の中央が大きく窪む。再び、元の形に戻ろうと中央に集合して行く騎士たち。

今しかない。リーファは地を蹴る。そう判断したのは領主たちも同じだった。

 

「全員、突撃!!」

 

 

後方からの飛竜のブレス。シルフ部隊の編隊による攻撃は、蠢く雲の一点へと集中していく。

無限とも思われた壁がじわじわとその厚みをなくしていく。

その中央で白い炎を散らしながら戦う二人の黒衣の剣士。

リーファはシルフ部隊が切り開いた隙間を縫って二人の下まで上昇。キリトの後方から襲いかかろうとしていた守護騎士の剣を長剣で弾き、顔面に刀身を深く抉りこんだ。全身を振り回すように剣を振り抜き、騎士が白く燃え上がった。

炎を掻き分けてリーファの元へと襲いかかってくる守護騎士。回避体勢をとる前にその必要はないとわかった。

迫り来る守護騎士めがけて凄まじい速度で飛来した黒い影。激突する瞬間、守護騎士を白く炎上させた。

槍で炎を薙ぎ払うシュウだ。ちらりと振り返り、唇だけで言った。

 

「行くぞ、スグ、キリト───後ろは頼む!」

 

「任せて!!」

 

「ああ!」

 

三人は背中合わせになり、ぐるぐると回転しながら次々と敵を倒していく。

背中を預けている二人の動きになる同調しているように体が軽い。守護騎士たちが遅くなっていくのがわかる。

騎士の数がどれだけ多かろうといつかその時はくる。

 

「セラァァァ!!」

 

リーファが気合を込めて縦に騎士を分断した。

その向こうに一瞬ではあったがドームの天頂が見えた。

 

「行くぞ、シュウ!!」

 

「ああ、キリト!!」

 

互いの名を叫びあった二人の剣士は同時にリーファの背中を離れ、肉の壁のめがけて突進する。それを阻止しようと最後の騎士たちが上下左右に群がる。

 

「キリト君!!」

 

リーファは自分の剣をキリトの左手めがけて投げた。

回転しながら飛翔した剣はキリトの左手に収まる。

 

「う……おおおおお────ッ!!」

 

咆哮とともにキリトの右手の大剣と左手の長刀が交互の撃ち出される。

連続して繰り出される超高速の斬撃。それは騎士たちは一瞬にして炎へと散って行く。

行かせないと最後の悪あがきで群がる騎士たち。そこめがけてキリトの後方にぴったりとついていたシュウは飛行速度を落とすことなく槍を体に捻りを加える。まるで弓矢を番えるような構え。

 

「そこを……どけぇぇぇ───ッ!!」

 

咆哮のような叫びとともに放たれた一矢は、キリトが高速で振るう剣の間隙を縫い守護騎士を貫く。一体、また一体と硬い武装を貫くが速度を落とすことなく突き進む槍。周りの騎士たちも放たれた風圧に巻き込まれて白い炎へと散っていく。

そして槍はドームの天蓋の中央。世界樹の幹を貫く最後の門へと突き刺さった。

黒衣の剣士は、槍によって生み出された空間を二本の剣を振るい突き進む。

そして二人は抜ける。

だが、次の瞬間には、道は守護騎士たちの群れによって閉ざされた。キリトたちが防衛線を突破したのを見てサクヤが後方からの叫んだ。

 

「全員反転、後退!!」

 

シルフ隊と一緒に身を翻し、ケットシーの支援を受けながら出口へと向かう。ガーディアンの壁に拒まれて二人の姿は見えない。しかし、リーファには誰も到達したことのない場所目指して舞い上がる彼らの姿が見えた気がした。

 

 

────────────────────

 

 

「……開かない……!?」

 

「どうなってるんだ?」

 

守護騎士たちの壁を突き破ってついに到達した巨大な円形のゲート。四分割された石板の十字に中央が閉ざしている。

直前まで接近すれば、重々しいゲートが開くはずだが、ピタリと閉ざされた十字の溝はビクともしない。

キリトが石板へと剣尖を突き立てるがやはり開くことはない。

 

「ユイ───どういうことだ!?」

 

混乱したキリトが叫ぶ。まだ、何かが足りないということなのだろうか。石扉を開けるためのアイテムか何かを見落としているということか?

ユイが飛び出し、小さな手でゲートに触れる。

 

「パパ、シュウさん」

 

さっと振り向き、早口で言った。

 

「この扉は、クエストフラグによってロックされているのではありません! 単なる、システム管理者権限によるものです」

 

「ど───どういうことだ!?」

 

「つまり……この扉は、プレイヤーには絶対に開けられないということです!」

 

「な……」

 

「……ッ!」

 

絶句した。

つまりグランドクエストは絶対に攻略不可能なクエスト。高みにたどり着くことなど不可能なシステムという絶対なる壁によって閉ざされている。

全身から力が抜けていく。背後から押し寄せてくる守護騎士たちの叫びが聞こえる。

リーファ、レコンやシルフ、ケットシーの皆が切り開いてくれた道の先に待ち受けていた現実に力が抜けていく。

 

「ユイ───これを使え!」

 

キリトが声を上げてシルバーのカードを胸ポケットから引きづり出してユイの前に差し伸べた。

それは、世界樹の上から落下してきたカード。システムアクセス・コードだとユイが言っていた。

そうか。確かにそれならばこの扉を開けることができるかもしれない。

小さな手でカードの表面を撫でる。光の筋がいくつか、カードからユイへと流れ込む。

 

「こ、これは!?」

 

「どうしたんだ、ユイ」

 

「このコードに先ほどまではなかったアクセス制限が追加されています!」

 

「それはなんだ!」

 

ユイが躊躇うように間を空けてから小さな口を開いた。

 

「───この、クエスト内にプレイヤーの存在が確認できない場合のこのカードの権限がなくなる、というものです。……同様にこのカードを使用したプレイヤーもです」

 

「……な……」

 

グランドクエストに挑んでいるプレイヤーがいない限り、アクセスコードは無効化される。

つまりは不正な方法で開かれた扉の向こう側にたどり着いても誰かがこのクエストをやり続けなければ強制帰還させられてしまうということだ。

多分、リーファやシルフ、ケットシーたちはすでにこのクエストから離脱しているはずだ。

もう一度援軍に来ようにも内部で戦闘が行われている限りもう扉を潜ることはできない。

つまり誰かが残っている限り、援軍は来れず、誰かが残っていなければアスナへと続く道が消える。

《システムの悪意》───幾度となくシュウは痛感されてきた。

だが、その度に抗ってきたのもまた事実だった。

ならば、今やらなくてはいけないことは、考えるまでもなかった。

 

「アスナの方は、お前に任せるぞ」

 

大きく伸びをしながらシュウは軽く言う。

 

「まさか、あの大群相手に一人で挑み続ける気か!?」

 

キリトが叫ぶ。ユイも驚いた表情をしている。

それに比べてシュウはいつものような少し気の抜けた表情で返す。

 

「それしか方法がないなら仕方ねぇだろ」

 

背中の槍に手をかける。

 

「な〜に、心配らねぇよ。別に戦うわけじゃねぇしな。あいつらの攻撃から逃げるだけならさっきよりも簡単だ」

 

口ではそう言ってみたもののそれがどれだけ難易度の高いことかはシュウも理解できている。

一対数百で普通に考えればまともに逃げ切れわけがない。しかし、今のシュウは異常なほどのステータスを持っている。

可能性がゼロに近いのは確かだが、決してゼロではない。

それでもやるしかない。次のチャンスがいつ来るかなどわからないのだから。

槍を左手で握りしめる。震えそうになる体に力を込めて無理矢理抑え込む。

 

「わかった。……死ぬなよ」

 

キリトが拳を突き出す。

 

「当たり前だ。お前と違って俺はまだ無死亡記録更新中なんでな。そう簡単に死んでたまるかよ」

 

シュウも拳を突き出し、ぶつけ合う。

 

「あっ、そうだ。キリト、それ貸してもらっていいか?」

 

シュウはキリトの手の中に収まっていた長刀を指差す。リーファが持っていた刀だ。

 

「壊したら後でかなり怒られるからな」

 

「わかってるよ」

 

長刀を受け取り、軽く振るう。

そしてゲートに背を向けて、こちらへと迫り来る守護騎士たちの群れを睨みつける。

 

「眠り姫をきっちり助けて来いよな、英雄さん」

 

シュウは地を蹴り守護騎士の元へと急降下する。

 

「シュウさん、頑張ってください!」

 

「……死ぬなよ、シュウ」

 

二人の声を背に受けて前方に迫っていた二匹の白い巨人に刃を突き立てそのまま横に薙いだ。

もはや見慣れた白い炎が出現する。

後方から眩い光を感じる。キリトとユイの転移が始まったのだろう。

それを阻止せんと群がり、奇声をあげる白い巨人。迫り来る一群目掛けて、月光のごとき輝きを放つ槍を投げる。衝突と同時に一瞬にして一群は白い炎の塊となる。

落下している槍を高速飛行をし、左手で握りしめ、わずかに腰を落とし長刀を後ろに引く。

 

───スグ、ミサキ……悪いけどもう少しだけ付き合ってくれ

 

一度大きく息を吸い込んで吐く。そして蠢く肉の壁から迫り来る守護騎士たちを睨みつけて口の端で笑みを浮かべる。

 

「さぁ、かかって来いよ、……英雄の邪魔はさせねぇよ」

 

翅を大きく震わせてシュウは大群目掛けて地を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「システムコマンド……ペイン・アブソーバ、レベルゼロ」




いかがだったでしょうか?

直葉との和解の場面は、直葉と集也の本気の戦いという形にさせていただきました。
「ぶつからなきゃ伝わらない事だってあるよ」
彼女の言葉のようにすれ違い、間違い、傷ついた直葉と集也はぶつかり合うことで互いの気持ちを理解し合った。

そしてキリトはアスナの元へ向かい
シュウはその道を閉ざさぬために無謀な戦いに挑み続ける。

……最後に響く不穏な言葉


次回も頑張って書きますので楽しんでいただければ幸いです。

誤字脱字、気になり点、おかしな点、感想などありましたら気軽にお知らせください。
また読んでいただければ幸いです。
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