鬱病無職の私、スーパーロボットでヒーローになる ―デプレション・オペレーション― 作:さぐものK
さあ!ヘリがアカバチをひきつけている内に、誘導弾の発射準備だ!
脚をふんばり、腕をクロス!
誘導弾にエネルギーが注入されていくのが、機体内に響く音でわかる。
「イナバくん!準備完了だ!」
「オッケイ!!」
撮影ヘリが180度反転し、すみやかに離れていく。
と同時に、自律なんとか誘導弾が発射された!
今度は8発、MAXだ!!
「いっけぇーーー!!」
誘導弾の向かう先は、女王!
ただただ真っ直ぐに速く玉が飛ぶ!
玉を包む光は以前より強い。
テラス因子の増加が影響してる?
威力に期待が持てそうだ!!
それを見た兵隊アカバチ。
全員が、全速力で女王の元へと向かう。
女王の盾となるために。
ミタマがうなづいた。
「たしかに、こちらへの攻撃を中断して防御に行ったな」
「攻撃の時は女王が命令してからだったのに、女王をかばう時はそうじゃなかったよね」
「そう。つまり『女王の防衛は、女王自身の命令よりも優先事項』ってのが奴らの思考パターンだって思った」
兵隊アカバチの全速力。
誘導弾を追い越し、女王を囲うように集まった。
「なら、こうするとどうなるか……!」
なおも女王に向かう、自律誘導弾。
しかし。
「ここだっ!」
イナバくんが叫んだ。
誘導弾は軌道を変える。
女王を中心に、グルグルと衛生のように回り始めたのだ。
すると兵隊アカバチは、どうなるか?
自分らが離れれば、女王が危険だ、と判断する。
結果──動くに動けなくなってしまった!!
女王が、なにやらモゾモゾと動いて必死になにかをしている。
だが、兵隊は一向に動く様子は無い。
それを見てミタマはフウッと、安堵のような、ため息のような音を吐いた。
「タカマガモリへの対抗策として、飛行能力と群体化に注力した結果か」
「え?」
「その代償として、女王アカバチはともかく、兵隊は知能が乏しくなってしまった。故に、非常に
「『女王を守れ!あと、女王の命令に従え』ってカンジかな」
「おそらくな……!知恵の代償は高くつくものだ!」
ミタマがフンッと鼻を鳴らすように息を吐いた。
「さて、ザクロ!ここからどうする!?」
「決まってるでしょお!!」
タカマガモリが、ドガンドガンと道路を踏み鳴らしながら全力で走る、走る!
向かう先は、もちろん女王!
そして腕を振りかぶって……!
「ぶっ殺す!!!」
黒点を、女王に向かって連打連打連打ァ!!!
放たれた黒点たちは黒い光をまとってビル群を、空を駆ける!
女王と兵隊は避けようとする。
だが、女王に寄り添いながらでは、完全に避けきれるものではない。
黒点の何発かがドガドガと当たり、黒煙と炎が空に広がっていく。
女王を守る本能のために、満足な動きができない兵隊アカバチ。
相手を囲いながらジワジワと攻撃するタカマガモリ。
先程までとは正反対の状況。
自律誘導弾が、単なる誘導じゃないからこそ。
イナバくんの操作によって動くからこそできた作戦だ。
このチャンスを逃す手はない!
女王が状況を打開しようとする前に、トドメを!
そう思ってタカマガモリを走らせている。
「アカバチは機動力がある。できれば一撃でぶち殺したいっ!」
アカバチの
「
タカマガモリの手の甲から飛び出るリング状の刃。
格闘用の武器。
これだけで女王アカバチを倒せるかに関しては不安があった。
すると、ミタマが背後から、ポンと私の肩を叩く
「ミタマ?」
「不安がっていては勝てんぞ!気合い入れろ!」
「なっ、えっ、偉そうに!」
説教されたくて相談したわけじゃない!!
私が怒りの矛先をミタマに変えたのを見て、イナバくんはまたアワアワしている。
「一撃で倒す手段ならある!ザクロ、キミの根性と気合次第になるがな」
そう言って、ミタマはドヤ顔する。
いや、表情は見えないけど、絶対してる。
「!ミタマ、アレを使うつもりだね!?」
イナバくんがニヤリとした。
「そうとも!アレだ!」
「アレって?」
「説明はあとだ!気合いを──っ!!」
急に、女王が、アカバチの塊がこちらに向かって全速力で突っ込んだきた!
女王は、このままでは『詰み』だと考えたのだろう。
であれば、相打ちになってでもタカマガモリを沈めて、後続の怪獣に託す!
そういう思考にたどり着いたのだろう。
証拠があるわけじゃないが、なんとなく、そう確信できる。
塊から覗く女王の目から、自暴自棄的な殺気を感じたから。
兵隊が囲い方を変え、1本の鋭い刃のように突進してくる!
ジャジャジャジャ!!!と、雄叫びのような鳴き声を響かせて!!
誘導弾を当てるも、捨て身の勢いは止まらない!!
女王だけじゃなく、兵隊までまとめて倒せる攻撃があるのか!?
私も忘れかけていたけど、機体はボロボロなんだぞ……!
女王を仕留めても、兵隊が突撃すればタダじゃ済まないぞ!?
ええい、ままよ!
タカマガモリの足を止めず、走り続ける!
「この出力ならいけるか!?ザクロ!!叫べ!」
ミタマが命令を出してきた。
「叫ぶ!?何を!?」
「音声認識だ!『ソーラーウインド・セタップ』!」
なんだそりゃ!
いや、考えている時間なんてない!
「ソーラーウインド・セターップ!!」
私の掛け声に合わせて、タカマガモリの関節部のカバーが外れる。
手首、足首、膝裏、肘裏、首……。
機械が露出し、そこから炎が噴き出した!
「うわわわわ!」
「大丈夫だよ!ただの排熱!!それに、タカマガモリは熱に強いんだ!」
「そうなの!?でもなんでこんな事……うわっ!」
タカマガモリの右手の関節が外れて、手が大きくなる!
そして、バチバチと音を立てて発光した!
その光は、青と赤紫が混ざりあった色。
細いトゲのようなものを持っている。
まるで電気エネルギーそのもの。
手を覆う光は、手の形を保ちながらどんどん大きくなる。
タカマガモリの全長の半分ほどにまで膨れあがった。
その巨大で強烈な光は、周囲のビル群を影だけにしてしまうほどだ。
よくわかんないけど、これが凄い武装だってことは分かる!
「出力安定!これならいけるよー!」
「よっし!ぶん殴れえええぇ!!」
「っつあああああああーーーーーーーーッ!!!」
右手をギュッと握ると、巨大な光の手も堅く握られる。
上半身を右へ大きくひねる。
左足を思い切り踏み込み、跳んだ!!
鋭く飛び向かってくるアカバチの塊に、光る拳を突きかえす!!!
「これがタカマガモリの最大攻撃!!
アカバチ群と、銀河電離拳がぶつかる!!
──いや、ぶつかってはいない!?
アカバチ群が、光に呑み込まれると言った方が正しいだろう。
ジジッ!という短い断末魔を最期に、消え失せていく。
それを見た女王は、必死にストップをかけようとするも、間に合わない。
女王も宇宙電離拳に包まれていく。
全身が黒く焦げるも、兵隊アカバチよりも耐えてはいる。
銀河電離拳の光はタカマガモリの手を離れ、球状になって空中にとどまっている。
球状の光はグゥングゥンと圧縮され、女王の身体もグシャグシャに潰れていった。
そして、タカマガモリのジャンプが勢いを失うと同時に──
ズドオオオオオオオオオオオオン!!!
光は一気に弾けて、轟音と共に炎をあげて爆発した。
その衝撃に、周囲のビルの窓や小さな残骸はことごとく割れ、木々は葉を散らし枝は折れる。
モニター越しじゃなかったら、私の耳と目は潰れていただろう。
女王は肉片も残らず消え失せた。
これがタカマガモリの必殺技……!
勝った。
闘いが終わり、一帯は静けさを取り戻した。
私の心臓がバクバクしているのに、今気がついた。
「ゔっ……」
急に身体が痛み、重くなる。
気分も最悪だ。
世界がグルグル回りだしている。
イナバくんが空中を駆け寄ってきた。
「ザクちゃん!だいじょうぶ!?」
「やはりテラス因子の過剰吸引による
「代…償?」
「一時の体調不良だ。そこまで気にすることはない」
「なんで言わなかったの……!」
「言ったら怖じ気付くかと思ってな」
こいつ……!
「互いのケツを拭きあう、それが友情だな。うんうん」
ミタマを罵倒したかったが、そんな元気はもう無かった。
それに、まあ、勝てたし……。
「ミタマ!偉そうにしてないで、ザクちゃんを降ろして布団かけたげて!」
「うお、分かった、分かったよイナバくん」
「んもー!」
そう言って怒るイナバくんの顔。
なにかスッキリとして見えたのは、体調不良が見せた幻覚ではないと思いたい。