鬱病無職の私、スーパーロボットでヒーローになる ―デプレション・オペレーション―   作:さぐものK

19 / 22
19話:逆転の一手!それでも…!?

見捨てられた。

使えないと言われた。

それは何度も味わった経験だった。

でも、裏切られたのは初めてだった。

 

私は悲しくて、顔から出せる液体を出しっぱなしにして立つ。

 

妹が見てる前だっていうのに。

その事実に気づいて、また悲しくなった。

最悪だ。

 

「へ、へへ……俺らを察知したところから考えるに、お前、特警か、その仲間だろ?いいのか?こんな事してよお……リスクがデカすぎるんじゃねえのか?」

 

ツリ目が下卑た笑みを浮かべる。

 

「確かにな。だが、こちらにはこちらの……『仕事を確実に成功しなくてはならない』という正義がある。正義の為なら、多少の悪事は目をつぶらんとな」

 

その言葉にカッとなって吠えた。

 

「多少!?誘拐の手引きが多少の悪事だってのか!?お前!!!」

 

「文句はその病気を根性でなんとかしてから言ったらどうだ!!!」

 

「ぐぐぐ……!!」

 

思えばたしかにそうだ。

今までミタマが私の勝手を容認してきたのは、怪獣退治という目標を果たすためだったように思う。

……逆に言えば、怪獣退治を果たせないなら、私は邪魔なだけ、か。

コイツの本性に、もっと早く気づいていれば……。

 

「俺に……いや、『我々』にとって、地球人の安全も優先順位は高いが、最上位ではないんだよ。なにせ地球人より、外星人の方が数が多いんだからな」

 

…………もはや、何も言う気力が無い。

 

「さて、犯罪者諸君!キミらがその女性(ツバキ)を解放するなら、こちらはこの女性(ザクロ)を渡そう!」

 

タレ目がこちらに、いや、ミタマ(クソ野郎)に銃を向ける。

 

「ざけんな!てめえがその女を渡すのが先だ!」

 

ミタマは大きく、わざとらしいほどのため息を吐いた。

 

「わかった。だがこちらは彼女を拘束する道具を持っていない」

 

そう言って、ミタマはまた私の手首を締めあげる。

痛みと一緒に、なにか硬いものが触れるのを感じた。

 

……!

 

「拘束具は余ってないか?」

 

「……おい!」

 

ツリ目がタレ目にまた、アゴで指示する。

タレ目が、腰につけていた機械仕掛けの輪──おそらく手錠──を、手に持った。

 

「投げ渡してくれ」

 

ミタマの提案。

タレ目はツリ目の顔を見る。

 

ツリ目は片腕でツバキを捕まえつつナイフを突きつけている。

そしてもう片方の腕で、タレ目の持っていた銃を引き抜き、ミタマに向けて構えた。

その状態で、タレ目に命令する。

 

「投げろ!」

 

ツリ目の指示で、タレ目が拘束具を大きく振って投げる!

 

と同時に、ミタマが握っていた私の手首。

その拘束が解かれた!!

 

私は姿勢を低くして、ツリ目に向かって走る!!

 

「んげっ!」

 

「うあああああーーー!!!」

 

そして──手に持っていた、いや、()()()()()()()銃を握りしめ、狙いを定めた!

クソッ!さっきまで泣いていたせいで、視界がぼやける!!

でも当てる!!絶対、当ててやる!!

この為の作戦!!

 

私は気合を入れ、引き金を指で引いた!!!

 

カチッ、と音が鳴り──

 

 

何も、起こらなかった。

 

……あ?

 

何も、起こらなかった!?

 

じゅ、銃、引き金、ちゃんと引いたのに!?

何も出てこない!?なんで!?

弾切れ!?ミタマがやらかした!?

 

目の前が真っ暗になって、脚がもつれて転んでしまった。

 

誰かが、私の腰を踏みつけている。

 

「んんー!!んんんむーーーー!!」

 

ツバキの叫び声がまた一段を大きくなる。

 

「へっ…へへへ……脅かしてんじゃねえよ!!!!」

 

ブチ切れるツリ目の声。

声の位置からして、私を踏んでいるのはコイツだ。

 

「すまない。だが、こうした方がスムーズに引き渡せると思ってな。暴れている地球人の手首を握りつつ拘束具をはめるなんて、俺には難しいんだ」

 

 

 

……途中、硬いものが、ミタマの銃である事には気づいた。

全部、作戦なんだと思った。

誘拐犯を油断させて、私が不意打ちする作戦なんだと。

上手くやれる、やってみせると気合を入れていたのに。

 

……こんな短時間で、2度も裏切られるとは思ってもみなかった。

私は、私はなんて、哀れな……。

 

 

「さ、今度はそっちの番だ。人質(ツバキ)を渡してくれないか?」

 

ミタマの声が、倒れた私の後方から聞こえる。

 

「へへへへ……今ここでお前を撃てば、どっちも手に入れられるとは思わねえか?」

 

「このまま俺を生かしてくれば、キミらが安全に脱出する手引きをしてやるぞ?」

 

ミタマの提案。

一瞬の沈黙。

 

「こっちとしても、キミらが捕まって事情を吐きでもされたらちょっと困るからな。まあ、犯罪者の言う事を特殊警察がどれだけ信用するか、とも思うが」

 

「ムカつく言い方しやがる……」

 

怒り収まらぬ声色の、ツリ目。

 

「……だが、手引きはスゲー欲しい。それに、俺ら2人で人質2人を見張るのは色々面倒だ」

 

何かがドンと叩かれるような音。

誰かの足音。

 

「行け!」

 

どうやらツバキが解放されたようだ。

……もう、それだけ果たされたなら、どうでもいいや。

もう……。

 

 

 

「あれだけ言ったのに、まだキミを信用しているとでも思っていたのか?」

 

ミタマの声。

やめろ、もう、分かったから。

 

「キミの銃の『手首』……じゃない、銃の腕なら既に見せてもらった」

 

 

「だというに、キミに銃を預けるわけがないだろう。考えなかった、のか?『思い出せなかった』、のか??」

 

???なに言ってんだ、こいつ??

 

私がミタマの前で銃を撃ったことなんてない。

タカマガモリに乗った時やってた、黒点(ブラックポイント)の命中率の事を言ってる?

いやでも、あの攻撃はミタマたちが照準補正をかけていたわけだから……ああ?

 

……思い出す??

 

手首????

 

 

 

……あ。

 

 

「オラ!立て!」

 

今度はタレ目が私のケツを蹴り上げた。

見ると、銃を突きつけられている。

私はゆっくりと立つ。

 

 

そして、手首の機械のスイッチを入れた。

私の身体は光をまとい、急にビュンと空に向かって飛んでいく。

 

「あっ!?」

 

という、ツリ目の驚いた声しか届かなかった。

それくらい、高速で飛んだのだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。