鬱病無職の私、スーパーロボットでヒーローになる ―デプレション・オペレーション―   作:さぐものK

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第二章 ボクがボクであるために
6話:ヒーロー生活!?STESからの交信!


 真っ昼間の山梨県某市内住宅地。

 

 風と鳥の声。

 車のエンジン音くらいの静かな通り。

 平日ゆえに人の目は無い。

 

 私のような無職が走るにはちょうどいい環境だ。

 

「はあっ、はぁ……」

 

 久々のジョギング。

 たった15分で汗だくだ。

 脚の筋肉がビキビキとちぎれているのがわかる。

 私は、陸の上で溺れているかのように、空気を求めて口と鼻を拡げて苦しんでいる。

 とてもつらい。

 

 鬱病の私がなーんでこんなことを自主的にしているかと聞かれれば、もちろんパイロットとしての気力と体力作りだ。

 いや、パイロットとしてと言えば少し違うか。

 テンション上げ係として……いや、自分を守るため、かな。

 あの怪獣との戦いで痛感してしまったから。

 『キレるのにも体力が要る』と。

 

 ――結局。

 あの宇宙人との出会いから始まった怪獣との闘いのあと、まる1日は動けなかった。

 初めてペットボトルにオシッコしようか真剣に悩んだほどだ。

 しかし人間そう簡単に尊厳は捨てられなかった。

 こんな私にも自尊心があることを、こんな形で知りとうなかった!

 

 しかしこの体力のままではいずれ第2第3の尿ペット問題が私を襲うかもしれない。

 なので私は仕方なく体力作りをしているというわけだ。

 自分の尊厳を守るためなのだ。

 

 

 そんな私は今、ぜひぜひフガフガと呼吸している。

 虫の息というより豚の息という言葉が似合う。

 いや、私はそんなに太ってはいないが……いないはず……うん。

 よたよたと向かうは、色あせた屋根の安アパート。

 2階へ向かう階段には、サビの目立つ手すりがついている。

 その手すりにすがるように登って我が家……我が部屋に帰宅した。

 

 何度も確認してしっっっかりと鍵をかけた扉。

 周囲を見回し、用心して開けた。

 防犯意識?それもある。

 しかしそれ以上の理由がある。

 

「お帰りなさいザクちゃん!」

 

「いやあ、体力作りとは感心感心!」

 

 ……宇宙人とAIが家にいるからだ。

 

「走行距離は1905メートルほどだね!ザクちゃんの体重と合わせて計算すると消費カロリーはだいたい105カロリー……」

 

「キッッショ!」

 

 耳の長いオコジョのような姿(映像)を持つAIのイナバ。

 …が、唐突に私の個人情報を口にするので、思わず声が出た。

 

「なんで私の走った距離とか体重とか知ってんの!」

 

「体重はこの前ザクちゃんがタカマガモリに乗った時に計測済みだよ。細かい情報かもだけど、パイロットの健康をサポートするのもAIの務めだからね」

 

「……走行距離は?」

 

「なんてったってボクはAIだからね!他人の携帯デバイスに電波経由で侵入して、位置情報を獲得するなんてのはお手の物さ!」

 

「許可した覚えが無いんだけど」

 

 私は目を細めてスマホ不法侵入者を睨む。

 イナバ途端につぶらな目を見開いた。

 ガタガタと震えだす。

 

「もしかしてボク、なんかやっちゃった……ですか?」

 

 ビビりすぎだろ。

 いや、私が前回あんだけ怒りを剥き出しにしたからか……?

 私はハアと溜息をついてうなだれる。

 

「……ま、宇宙人のやることだからってことで、今回は多めに見てあげる」

 

 イナバがホオッと大きく息を吐いて、胸を撫で下ろす。

 そして、頭を下げて謝罪した。

 

「ごめんなさい」

 

「まあ……気をつけてね」

 

 今怒る体力もないし、これでいいだろう。

 

「許す心の大切さ、だな!!うんうん!!!」

 

 うぜぇ。

 

 まるでスーパーロボットのような機械の身体を持つ1メートルほどの小さい宇宙人、ミタマ。

 そいつが謎のパーツで空中に浮かびながら、上から目線(位置的な意味でも)の発言をする。

 

「なんで家にいるんだよ~……」

 

「それは以前説明したろう?」

 

「あの時は尿意がスゴくて聞いてなかった」

 

 ミタマがため息をつく。

 

「……われらが太陽系侵略生物からの防衛組織『STES』は派遣制度で動いている」

 

「ボクらは問題が解決するまで現地に駐留(ちゅうりゅう)しなきゃなんだよ」

 

「だからキミの家に居候しているのだ」

 

 いや、『だから』ってなんだよっ!!

 

「仮設住宅とか作って無いの?」

 

「そうしたかったんだけど……」

 

「今回の怪獣襲来は組織にとっても不意の出来事だった」

 

「時間に余裕があれば、ザクちゃんのような現地人じゃなくて、ちゃんとしたパイロットに引継ぎもできたんだけどねえ」

 

 ……要は準備ができてないまま地球に来ざるを得なかった、ってわけか。

 宇宙の組織って規模のわりには人手不足なのかな。

 

 

「……ところで息は整ったか?もう1周いくか?」

 

 私は首を横に振りまくる。

 

「ま、まあまあまあ!ミタマ、焦っちゃダメだよ。そんなにすぐにパイロットらしくなれるわけじゃないし」

 

 そうだよ、と言いたい。

 ……が、私自身がそれを言うのは卑怯な気がして、言葉を飲み込む。

 

『ちゃんとしたパイロットじゃない』……か。

 ミタマとイナバに信頼されるにはまだかかりそうだ。

 

 

『グワーーーハハハ!!ミタマ!!応答せよ!!!!』

 

 !?

 

 突然室内に野太い男の声が響いた。

 




今回短め、申し訳ない!でもここが区切りいいので……
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