箱庭でもリライター   作:ヤスズ

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クリスマス番外編

ーーークリスマス。

 

 

それはイエス・キリストの降誕を祝う祭であり、降誕を記念する日。日本語では他に、「降誕祭」、「聖誕祭」、「聖夜」などの呼び方があり、12月25日に祝われる。

 

それを近頃の若者は何を勘違いしているのか、若い男女が集まってイチャイチャ過ごす日だと認識している。今までクリスマスに予定などなかった俺は街中では野次を飛ばし、ネット上ではレスを立て、寝るときには枕を濡らしていた。

 

そんな俺だったがようやく春が来たようだ(季節は冬だが………)。箱庭に来たおかげで女の子と一緒に、仲間ともにクリスマスを過ごすことができる。別にそれ以上の関係というわけではないが、やはり一人で日を跨ぐのとは気持ちの持ちようからして違うモノがある。

 

なお、キリスト教では最も重要な祭りと位置づけられるのはクリスマスではなく、復活祭であり、前夜祭。所謂12月24日の事。

 

ーーーこれはそんな日のお話である。

 

 

 

冬真っ盛りの今日この頃。息をはけば白くなり、鼻や耳が赤く染め上がる程の寒さ。

 

毎日の様に行われているギフトゲームは見る影もなく、イルミネーションで輝く商店街。

 

本日は12月24日。

 

一年に一度の大イベント。

 

"ノーネーム"の涼太、黒ウサギ、ジン、十六夜、飛鳥、耀、レティシアは"サウザンドアイズ"の支店の中の白夜叉の私室にいた。

 

「よくぞ集まった皆の衆!今宵は日頃の疲れを癒し大はしゃぎしてくれ。それではカンパーイ!!」

 

『カンパーイ!!』

 

この催しは白夜叉が招待してくれたのだ。これだけ聞けばなんと心優しい人なんだと思う………尤も白夜叉の事なので黒ウサギを愛でてたいだけだと思うが。

 

だが涼太は知らない。クリスマスを気になる人と一緒に過ごしたいという乙女チックな白夜叉の心の中を。

 

部屋には二つのコタツに鍋が一つずつ置かれている。扉から遠くの鍋は黒ウサギ、白夜叉、ジン、レティシア。

 

もう片方の鍋は涼太、耀、十六夜、飛鳥が囲んでいる。

 

クリスマスに鍋はどうなのか?とは思うが本拠からここまで来るのに冷えた体を温めるには最適だと判断。コタツに潜り込む。

 

鍋の中は元の世界では見たことの無い食材ばかりで、箸が止まった。だが恐る恐る口に運ぶと何とも表現しきれない旨さ。よく考えれば白夜叉は"サウザントアイズ"の幹部で金はかなり持っているはず、恐らく今日のこの日の為に高級は食材を買ってきてくれたのだろう。

 

食べ始めてしばらく経ったあと、気が付くと何処かに行っていた白夜叉が帰ってきた。

 

「鍋にはコレは外せないだろう」

 

「白夜叉様、コレはなんですか?」

 

何やら不安そうな黒ウサギが持ってこられた瓶やら缶やらに、疑問の視線をぶつける。

 

「ん?………ジュースじゃ、ジュース。黒ウサギも飲め飲め」

 

「じゃあ遠慮なく」

 

あれは恐らくチューハイだろう。ラベルに"アルコール度数3%"って書いてあるし………。

 

「おい、お嬢様も飲めよ」

 

「そうね。いただこうかしら」

 

十六夜が悪い顔になりながら飛鳥に缶を渡している。

 

「おんしらはこんなのじゃもの足りんだろ?」

 

そう言って白夜叉がよこしたのは日本酒だった。

 

中々の高級品だそうで、一本でサウザンドアイズ金貨で二枚もするそうだ。

 

「くぅーーー‼︎効くなぁ‼︎」

 

「へぇ?コレは美味いな」

 

涼太と十六夜、白夜叉はガンガン飲んでいる。涼太は元の世界では結構飲む方であり、十六夜は酒に強い体質、白夜叉は言うまでもない。

 

そんな三人を興味津々で見つめる耀。俺と目線がぶつかっても見続けてくる。

 

「なんだ?耀も飲んでみるか?」

 

差し出した日本酒を何も疑いもせず、一気に飲み干した。

 

「なんか変な味かするけど美味しいねこれ。もっと頂戴」

 

酒飲みの輪に入った耀はグビクビ飲んでいく。十六夜、白夜叉も他の全員に飲ませていく。

 

この時はただ少し酔った女性陣(ジンもいたが………)を見てみたかったかだけだったのだ。

 

まさかあんな面倒くさい事になるとは、コレっぽっちも思っていなかった

 

 

 

 

ーーー食事の場に酒が出てきて30分後。

 

「皆さんがいっぱいいるのですぅー!アハハハハハハ♪」

 

「僕だって、僕だって、ぐすん。頑張ってるんですよ!コミュニティのリーダー何ですよ!。もうちょっと敬ってくださいよ!!」

 

「スースー」

 

「ちょっとひざひょいくぅん(十六夜君)?普段からわたひのことをいやらしい目で見てどういうこと?」

 

「あー涼太だ。りょーたぁ」

 

黒ウサギは陽気になり、ジンは泣き、レティシアは寝て、飛鳥は怒り、耀は甘えてくる。

 

皆が飲んでいたのは酎ハイだった。アルコール度数3%のほぼ水みたいな酒のはずだったんだが、事は予想以上に面倒くさい事になった。

 

「寝ているレティシアはほっておくとして、………白夜叉。黒ウサギとジンは任せた。涼太は春日部を俺はお嬢様をどうにかする」

 

「「わ、分かった」」

 

こうなってしまえば、酔っていつもと違う女性陣を愛でている暇もなく、仕方なく酔っ払いの相手をすることになった

 

「黒ウサギ。ジンおんしら少し飲み過ぎだ」

 

「あれぇ?白夜叉様はいつの間に分身の術なんて使えるようになったのですかぁ?ウフフ♪」

 

「僕だって………頑張ってるのに!!出番がないだけで裏では夜中まで書物を読んで勉強したり、どうすればコミュニティがより良くなるかを、日夜考えているのに!!どうしてもっと僕の頑張りを書いてくれないんだこの駄作者!ウワァァァァン!!!!」

 

視界が揺れているのか馬鹿なことを言ってる黒ウサギに、とうとうメタ発言までするようになったジン。何とか酔いを覚まさせようとするが一筋縄では行かないようだ。

 

「お嬢様。もういいから寝とけって」

 

「何しゅるのよ。警ひゃつ呼ぶわよ!おまわりしゃーん、こっちれーす!!」

 

あっちはあっちで大変そうだな。呂律が回ってない飛鳥をシドロモドロになりながら対応する十六夜。強気の言葉で十六夜を責める飛鳥のこの図。何だかとてもシュールです。

 

おっと、呑気に観察している場合ではなかった。この中で一番、悪酔いしているのは涼太達と日本酒を飲んでた耀だった。

 

「りょーたぁ、抱っこしてー」

 

「よ、耀!?お前ももう寝ろ」

 

涼太はなんとか寝かしつけようとすると、先程まで赤ちゃんのように甘えてきた態度が急変。目に涙を浮かばせる。

 

「涼太、私のこと嫌いなの?」

 

「そ、そんなことはないが………」

 

次の瞬間には顔を赤くし怒りを顕に。まるで般若のようだと言っておこう。

 

「じゃあ何!?私じゃ不満なの?」

 

「そ、そういう訳でもないんだが………」

 

すると急に自信をなくして欝ゾーンに突入。

 

「そう………だよね。私みたいな幼児体型じゃ嬉しいわけないよね」

 

「どんだけ情緒不安定なんだよ」

 

言葉を発する度に泣き、怒り、欝になる。はっきり言って超………面倒くさい!!

 

結局それぞれが落ち着くまではかなりの時間を有することになってしまった。

 

ーーーもう二度とコイツらには酒は飲ませない!!

 

そう、3人は心に深く刻んだ。

 

 

 

 

それから数時間後酔いが覚めたらしく耀は外に行きたいと言ったのでついて行ってやる。

 

広場にあったベンチに腰掛け空を見る。

 

夜空には箱庭に在籍するコミュニティが存在する証である星々が煌めいている。雲一つなく澄みきった空気がより一層それを引き立てる。

 

「うー寒いな。大丈夫か耀?」

 

「うん。大丈夫だよ」

 

そう言った耀は身体をブルブル震わせていた。明らかに寒そうだった。本拠から来る時に持ってきたマフラーを耀の首にかけてやる。

 

「!?」

 

「少し汗臭いかもしれないけど勘弁な」

 

「あ、ありがと」

 

涼太の匂いがする。何だか落ち着く………そんな匂い。

 

耀はかけられたマフラーを匂い頬を紅くした。

 

「どうした耀、熱でもあるのか?顔が真っ赤だぞ。体調が悪いなら中に入るか?」

 

「大丈夫。その代わり………もう少しこのままでいい?」

 

握り拳一つ分程空いていた二人の距離は零になる。

 

触れてしまえば霧散しそうな、華奢な体。今だ寒さに震える小さな肩が涼太に持たれかかってくる。茶色の髪の毛に茶色掛かったその目には何を写しているのか?そんなことを思わせる宝石のような瞳の上目遣い。

 

(!?ーーーそれは反則だろ‼︎)

 

このまま無言でいると気まづく、理性を保っているのもままならないので気を紛らわすために話を振る。

 

「そうだ。白夜叉から少し早めのお年玉を貰ったことだし、デート行こうぜ。この前約束しただろ?」.

 

「わ、分かった。約束したから仕方ない………仕方ない」

 

約束とは"ペルセウス"とのギフトゲームの時のことである。

 

耀は自分に言い聞かせるように呟いたその時、

 

世のカップルを祝福するような白い光が空から舞い降りた。

 

「ホワイトクリスマスか………これも狙って降ってるなら箱庭も粋なことをしやがる。どうする?そろそろ戻るか」

 

「私はまだここにいてもいいよ。その代わりこの事は皆には内緒。二人だけの秘密」

 

耀はさっきより寄ってきた。と言うより、腕を絡ませて頭を肩に乗っけてきた。ココでふと気付く。周りにはこの完璧なまでの環境に酔いしれたカップルばっかりだ。その中には視線をこちらに向ける野次馬もいたが。

 

ヤバイ!?この距離は!ちっさいけど、めちゃくちゃちっさいけどオパーイが当たってる‼︎これは生殺しだーーー‼︎

 

悶絶している涼太と珍しく積極的な耀を見てニヤニヤする影が二人分あった。

 

「か、春日部さん⁉︎あんなに引っ付いて。信じられないわ」

 

「これは後でからかってやらないとな」

 

「だけど………羨ましいわ。私は元の世界にいたときクリスマスなんて祝ったこともなかったし、周りには一緒になって楽しめる男の子どころか友達すらいなかったもの。けど、箱庭に来て友達が、仲間ができた時は嬉しかった。勿論、十六夜君も大切な仲間よ」

 

「ああ、俺もこんなに楽しいのは久しぶりだ。けどなお嬢様、いや飛鳥。俺で良ければクリスマスを一緒に楽しまないか?勿論、ただの仲間としてではないが」

 

「い、十六夜くん………」

 

飛鳥の言葉に反応して、その穢なき白い首に後ろから腕を回す。耳元に顔を近づけると何か期待に満ちたような、嬉しそうな飛鳥の顔があった。

 

「飛鳥………なんてな!」

 

「え!?」

 

突然の出来事に頭の中が真っ白になり素面に戻る。

 

………至って健康的な顔つきですこと。

 

「冗談だ、冗談。全く初心な反応だな」

 

「〜〜〜〜!!」

 

自分がからかわれたと理解し、再び顔を真っ赤にした飛鳥がポカポカ叩いてくるのを適当に否しながら考える。

 

変な空気に流されて柄にもないこと言っちまったな。俺はどうしちまったんだ。

 

 

何とか自身の野獣を理性で押さえつける涼太。

 

心地良さそうに目を閉じ、身体を寄せる耀。

 

拗ねたようにそっぽを向きながらもチラチラと目を向ける飛鳥。

 

ヤハハと笑いつつも、内心笑い事でない十六夜。

 

そんなことをしているうちに時間は過ぎていった。

 

そして四人は同時にある一点を見る事になる。

 

それを見た四人は無言で微笑んだ。

 

赤い服と帽子に白い髭、何より目立つのはふくよかなそのお腹。トナカイに引かれたソリに乗ったおじいさん。

 

空を駆けたその軌跡には筆記体でこう書かれていた。

 

 

ーーー『Merry X’mas(メリークリスマス)』と。





あとがき座談会コーナー

今日のゲスト耀さん、十六夜さん、何気に初登場の飛鳥さんです!!

「何か多いな、クソ主」

「………うん。ダメダメ主」

「とうとうこの駄作者は気が狂ったか」

「あら?いつもの屑じゃない」

皆さんはいつも通りの平常運転ですね………ところで皆さんクリスマスのご予定は?

「ん?俺は耀とデートだが」

「………涼太ぁ♡」

「どうした?そんなに見せつけたら、可哀想だろ」

「モテない主が悪い」

グハっ!!い、十六夜さんたちはどうですか?

「俺は特に予定は無いが………独り身のお嬢様がここにいるからな」

「べ、別に私はそんな気は………それにまた冗談でしょ!!」

「いや、今回は本気だ!木に気と書いて木気(マジ)と呼ぶくらいに真面目だ!!」

それは何か色々と間違ってますね。

「………十六夜君」

あー、こっちはこっちで聞こえてないようですね。

「じゃあ俺達はそろそろ時間だから」

エッ!?涼太さん!?耀さん!?

「じゃあ行くか!飛鳥」「ええ、そうね」

十六夜さんと飛鳥さんまで!?

ここでも現実でも独り身か………

来年こそは!と毎年思っている今日この頃。

同情してくれる方は感想・評価・お気に入りをお願いします。

みなさん居なくなってしまったのでこの辺で………

次回もよろしくお願いします!!

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