青春のもつれ   作:ゆうた660

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第2話 別れの夜と変わらぬ朝の灯火

クィディッチのパーティーから数日後、静まり返ったグリフィンドールの談話室。

 

ハリーは、ジニー・ウィーズリーを呼び出していた。

2人は、テーブル越しに向かい合うように座り、束の間の沈黙が流れた。

 

「ハリー、話って?」

沈黙を破ったのはジニーだった。

 

「ジニー… ごめん、僕たち、終わりにしよう…」

ハリーは気まずそうに、言葉を選ぶようにジニーに別れ話を切り出した。

 

「やっぱりね」

ジニーは、こうなることを理解していたかのように言った。

 

ジニーの反応にハリーは、驚くように目を丸くした。

 

「ハーマイオニー…でしょ?彼女を見るあなたの視線、違うもの」

ジニーの見透かすような言葉に、ハリーは何も言えなかった。

 

ハリーは、喉の奥に何かが詰まったような感覚に襲われ、言葉を探したが、見つからなかった。

 

ジニーは、静かに微笑んだ。どこか寂しげに、でも、確かにハリーの背中を押すような笑顔だった。

 

「でも、ありがとう。あなたは私の憧れだった。短い間だったけど、幸せだったわ」

 

「ジニー…」

 

「大丈夫。私、強いから。…あなたの幸せ、ちゃんと願えるくらいにはね」

ジニーは、凛とした表情でハリーを見つめた。

 

「お礼を言うのは僕の方だ。勝手なこと言ってすまないよ」

頭を下げようとしたハリーに、ジニーはそれを制止しながら言った。

 

「ハリー、私と別れる代わりに一つだけ約束して?ハーマイオニーをしっかり支えてあげるって… 彼女、強そうに見えて抱え込んじゃうから」

 

ハリーは目を伏せ、深く息を吐いた。

 

「……ありがとう、ジニー。君は、本当にすごい人だ」

 

ジニーはわずかに肩をすくめて笑った。

「あんまり褒められると泣いちゃいそうになるから、やめて」

 

「約束するよ」

 

ふたりの間にもう一度、静寂が戻る。

 

ジニーは立ち上がり、ゆっくりと談話室を後にした。

 

扉が閉まる音だけが、静まり返った空間に響いた。

 

ハリーは、男子寮の自分の寝室に戻り、思いふけっていた。

 

彼は、数日前のロンとラベンダーのキスへの嫉妬で、泣き崩れるハーマイオニーを思い出していた。

 

自分の肩にもたれながら、一晩中泣く彼女は、今までこハリーが見てきたハーマイオニーの中でも、一番弱々しい姿と言えるものだった。

 

眠れない夜だった。

カーテンに包まれた四柱ベッドの中で、ハリーは何度も寝返りを打っていた。

 

──ジニーとの別れ。

──泣き崩れたハーマイオニーの肩。

──自分の心が、どこにあるのか。

 

朝が来るころには、ようやくうとうとしていた。

 

 

 

その日、ハリーは中庭の片隅でひとり本を読んでいるハーマイオニーを見つけた。

日差しは柔らかく、風がページを揺らしていた。

 

「……ここにいたんだ」

 

「ハリー? 授業終わったの?」

 

ハーマイオニーは、顔を上げて微笑んだ。

 

その笑顔に、ハリーの胸が少しだけ痛んだ。

 

「……ジニーと、別れたよ」

 

ハリーは、唐突にそう言った。

 

ハーマイオニーは目を見開き、すぐに視線を伏せた。

 

「……そう」

 

「理由は、聞かない?」

 

「……聞かない方がいいと思う」

 

ふたりの間に、風だけが吹き抜けた。

 

「でも……」

ハーマイオニーは、そっと言葉をつないだ。

 

「ジニーは、あなたのこと大好きだったわ。……あなたが幸せになるなら、それでいいって、きっと、思ってる」

 

ハリーは目を伏せた。

その言葉が、自分を責めているように聞こえたのは、気のせいだろうか。

 

「僕……、君を泣かせたロンを、正直許せなかった」

「……」

「君があんなふうに泣いてたのに、僕は、なにもできなかった」

「……十分してくれたじゃない。そばにいてくれた」

 

そう言ったハーマイオニーの声は、どこか震えていた。

 

「ありがとう、ハリー」

 

ハリーは、彼女の震える肩を抱きたいと思った。

けれど、今の関係が壊れると思ってやめた。

 

 

 

そして、ふたりは黙って空を見上げた。

 

青く広がる空には、ぽつんと雲が流れていた。

 

「ねぇハリー、私、鳥になれたらどれだけいいかと思うの」

ハーマイオニーが空を見上げながら小さくつぶやいた。

 

「鳥?」

 

「うん……全部がうまくいかない時、知らない場所に飛んでいけたらって思うの。誰も私を知らないところに、ね…」

 

「それ、いいなぁ… 僕も一緒に行っていい?」

 

「ええ、ハリーなら…」

ふたりは、静かに笑いあった。

 

「そうだ、ハーマイオニー、呪文学の宿題、手伝ってくれない?」

 

「仕方ないわね、今回だけよ」

ハーマイオニーは、ハリーの問いに微笑みながら答えた。

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