青春のもつれ   作:ゆうた660

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第3話 秋風が吹く村で

11月の金曜日

次の授業への移動中、ハーマイオニーはラベンダーと肩を組んで歩くロンとすれ違った。

 

ロンは、ハーマイオニーに気づいて彼女の方を向いたが、ハーマイオニーは彼を一瞬だけ睨みつけて視線を逸らした。

 

ふたりは、あの夜以来、絶交状態になっていた。

 

今のハーマイオニーは、ロンの姿を見るだけで心がナイフで抉られるような気持ちになっていた。

 

『どうしてあんな人が好きだったんだろう……』

 

次の授業に向かう足取りの中、ハーマイオニーは自分でも驚くくらい悔しさと悲しさに支配されていた。

ラベンダーのあの笑い声も、ロンのあの薄い笑顔も、すべてが心に突き刺さる。

 

あの夜のロンとラベンダーの雨のようなキスを、何度も何度も思い出しては、心がまた傷つく。

 

『でも……もう、泣かないって決めたのに』

 

教室に入る寸前、肩を小さくすくめたとき、後ろから声がした。

 

「……ハーマイオニー?」

 

それは、ハリーだった。

 

「これから授業?」

 

「うん、マグル学の授業よ」

 

「……ハーマイオニー、あのさ」

ハリーはポケットに入れた手を出しかけて、また戻した。

「明日、ホグズミードに……一緒に行かない?」

 

「え?」

 

「気晴らしにさ。たまには、二人で行くのも悪くないかなって……思って」

 

「行きたい… 行きたいわ、ハリー」

ハーマイオニーは、ハリーの誘いに笑顔で答えた。

 

「ありがとう。授業がんばって!」

ハリーは、彼女が笑顔になったのを満足げに見つめて、去っていった。

 

 

翌日、ハリーとハーマイオニーは、ホグワーツの門を抜けて、ホグズミードに向かう石畳の道を下っていた。

 

11月の冷たい朝風が吹きつけ、ふたりは肩をすぼめながら歩いていた。

 

歩くハリーとハーマイオニーの前に同学年のスリザリン生のドラコ・マルフォイとグラップ、ゴイルと遭遇した。

 

「ポッター、ウィーズリーの妹の次はグレンジャーか。趣味が一貫してるな、貧乏と穢れた血。ま、君にはお似合いだろうけどね。女遊びも大概にしろよ」

ドラコは、ハーマイオニーと歩くハリーを煽るように言った。

 

「それしか言えないのか、マルフォイ。

ジニーもハーマイオニーも、自分の道を自分の足で歩く強い女性だ。

君みたいに、血や家の名前でしか人を測れないやつには、理解できないだろうけど」

ハリーは一瞬ムカッとしたが、ドラコにそう返した。

ドラコは、言葉を詰まらせていた。

 

「行きましょう、ハリー。マルフォイに付き合う時間がもったいないわ」

ハーマイオニーは、きっぱりと言い放った。

 

ドラコから離れたふたりは、そのまま石畳をくだり、ホグズミード村へたどり着いた。

 

ハリーの提案で、ふたりは最初、三本の箒に入り、どう遊ぶかの計画を立てることにした。

 

「あら、ハリーにハーマイオニー、いらっしゃい」

お店の扉を開けると、店主のマダム・ロスメルタが気さくに出迎えた。

 

ふたりは席に通され、バタービールを注文した。

 

「そういえば、何も考えずに来ちゃったなぁ」

 

「ふふ、珍しいわね、あなたってちゃんといつも考えているのに」

 

「うーん、今日は君に決めてもらおうかな」

ハリーは、少し考えたあと、ハーマイオニーの方を見て言った。

 

「えっ、私?」

 

「うん、今の君が楽しいって思えることを一緒にしたい…」

 

ハーマイオニーは、ふっと目を伏せてバタービールの泡を指ですくう。

「じゃあ… 湖に行かない?船に乗ってみたいの」

 

「いいね。あそこ、静かだし…」

ハリーは、小さく微笑んだ。

 

ふたりは、三本の箒を出て、村の北にある湖に向かった。

小さなボートを借りて、向かい合うように座った。

 

船に乗り、湖を遊覧している間はしばらく沈黙が続いた。

 

「ハーマイオニーさ、前に、鳥になって遠くに行きたいって行ってただろう?」

沈黙を破ったのはハリーだった。

 

「ええ…」

 

「僕も時々思うんだ…」

ハリーは、静かに言葉を選ぶように語り出した。

 

「"魔法界の英雄”とか"生き残った男の子”とか、肩書きを全部置いといて、静かに暮らしたいってね。例えば、こんな船でマグルの世界の誰も知らない小さな島に行って… 大切な人とふたりでゆっくり暮らす。そんな生活に憧れるんだ」

 

「なんだか… あなたらしいわね。大切な人か… 見つかるわ、きっと…」

ハーマイオニーは、ハリーの言葉に同じトーンで返した。

 

「もう見つかってる」

ハリーは、ハーマイオニーを見つめて小さく笑みを浮かべながら言った。

 

船から上がると、村に来た時より風が強くなっていた。

ハリーは、風の寒さに思わず、両手をさすった。

 

「ハリー、手袋は?」

「忘れた」

ハーマイオニーの問いに、ハリーは寒さを我慢するように答えた。

 

「じゃあ…」

と言って、ハーマイオニーは右手を差し出した。

 

「えっ…?」

「繋いでいれば、寒さも多少和らぐわ!」

ハリーは、左手でハーマイオニーの手袋を嵌めた右手を握った。

 

「ありがとう」

ハリーは、手袋の温度だけでなく、心の底から温かくなる感覚を感じた。

 

それからハリーたちは、ハニーデュークスやバットワーシー雑貨屋など、村のお店を覗きながら歩いた。

ふたりの手は、それからも繋がれたままだった。

 

ハリーとハーマイオニーがホグワーツの校門まで戻ってくると、夕陽が塔の間から差し込んでいた。

ふたりはまだ、そっと手を繋いだままだった。

 

ちょうどそのとき、向かい側からロンとラベンダーが笑いながら歩いてきた。ラベンダーがロンの腕にぴったりと絡みついている。

 

ハーマイオニーの足が、ふと止まった。

ロンもまた、ふたりに気づいたのだろう。歩みを緩め、目を細めてハーマイオニーの手元へと視線を落とした。

ハリーとハーマイオニーが手を繋いでいるのを見たのだ。

 

その目は、驚きとも怒りともつかない感情で揺れていた。

ラベンダーはその様子に気づかず、笑ったままロンに何か話しかけている。

 

ハーマイオニーは、一瞬だけロンの目を見つめた。そして、静かに視線を逸らした。

 

ハリーがそっと言った。

 

「……行こう、ハーマイオニー」

 

「……うん」

 

ふたりはまた歩き出した。

繋いだ手を離すことはなかった。

 

ハリーたちはグリフィンドールの談話室に着くと、ソファに腰掛けた。

 

「ハリー、今日は楽しかったわ、とっても!」

ハーマイオニーは満面の笑みを浮かべハリーに話す。

 

「そりゃ良かった」

ハリーも彼女の笑顔に満足げに笑った。

 

「また行きましょう?ふたりで!」

ハーマイオニーは、『ふたりで』を強調するように言った。

 

「ああ、もちろんだよ」

ハリーが答えると、ふたりは静かに笑いあった。

 

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