ようこそ理系女子と行く教室へ 作:絶対零度
さて、いよいよ始動です。
教室に入る。早くも雑談してる者。静かに本を読んでる者。チラチラと周りを見ている者、色々だった。
俺は波瑠加と別れて自分の席に座る。
前の席から長い銀髪が揺れた。
俺はそのまま彼女には話し掛けずに本を読んでいた。
暫く時間が経った。
「あの…」
「ん?」
顔を上げると眼の前の席の女子が此方を振り返っていた。
眠そうな眼と綺麗な銀髪が特徴的な女子。
俺は彼女を知っている。
「その本、好きなのですか?」
「ん?ああ、そうだけど…」
「本当ですかっ」
ぐいっと顔を近づけられた。
綺麗な眼が俺を捉える。
「《魔法界の才子》ですね。もしかして全シリーズ読んでらっしゃるのですか?」
「ああ、1巻から読んでるよ」
「そうなんですねっ、良ければどんな内容か教えて頂けますか?」
「そうだな、簡単に言うと主人公達が入る学校は魔道士のレベルによってクラス分けがされていて、主人公は最底辺のクラスに配属されるんだ。主人公の隣の席の女子は孤高で…」
眼の前の少女は俺の話を眼を輝かせて聞いていた。
一通り話すと彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「面白そうです。私も読んで見ますね。自己紹介が遅れました。私、椎名ひよりと言います」
「蒼空野陽斗だ。前後の席同士、宜しくな」
「はいっ」
椎名の顔がパァッと明るくなった。
そんな椎名を見ていると視線を感じる。一瞬悪寒が走った。椎名はそれを気にもせずに俺にマシンガントークをぶつける。ヤバい。これ後々面倒かも知れない。
椎名と話しながら周りを見る。
知ってる顔が幾つもあった。
真鍋志保、伊吹澪、石崎大地、そして一際目立つ巨漢の山田アルベルト。
そして、後ろの方の席に座る長髪の男子生徒。
龍園翔。
本当に入ったんだ。このCクラスに。
俺は感動しながら彼らを眼に入れた。
後ろの方を見ると監視カメラがあった。
チャイムが鳴り、教師が入って来た。
「新入生諸君、私はCクラスを担当する事になった坂上数馬だ。よろしく頼む。突然だが、この学校にはクラス替えが存在しない。卒業までの3年間、私が担任として君達と学ぶ事になる」
自己紹介を終えた坂上先生。凄い、本物だ。確か原作ではCクラスにこれでもかと言う程肩入れしている先生だった。
学校に関する資料を配布された。
Sシステムの説明が始まった。
「この学校にはSシステムというものが存在する。君達には今から配る学生証のカードがあるから、それを使って敷地内にある施設を利用するように。売店で商品を購入したり、映画料金を支払ったり出来るいわばクレジットカードのようなものだ。金額の代わりにポイントを消費する。1ポイント辺り1円相当の価値がある。この学校でポイントで買えないものは無いからくれぐれも無くさないように。」
おお、本物だ。俺はこの実力至上主義の教室にようこそしたのだ。
「学生証の使い方は至ってシンプル。機械にこの学生証を通すか、提示するだけで利用出来る。ポイントは毎月1日日に自動で振り込まれる事になっている。この学校に入学を果たした君達には全員に10万ポイントが支給されている。」
金額の多さにクラス中が驚く。
ふっと笑う声が後ろから聞こえた。恐らく彼が発したのだろう。
そうだよな、お前はそういう奴だよな。
「この学校は常に実力で生徒を測る。その10万ポイントはこの学校に入学を果たした君達に対する価値と可能性を考慮して学校から振り込まれたものだ。遠慮無く使うと良い。卒業後には学校側が全て回収するから現金に換えるとは出来ない。ついに言っておく、ポイントを他人へ譲渡する事は可能だがカツアゲする事は禁止されている。この学校はいじめに対しては厳しく処罰する。くれぐれも注意するように。」
先生が説明するが生徒達はそれどころじゃない様子だ。
急に10万円相当のポイントが振り込まれたのだから当然である。
「説明は以上だ。何か質問はあるかな?」
「坂上、毎月ポイントが振り込まれるって言うが来月からもずっと10万振り込まれるのか?」
俺が手を上げる前に後ろから声がした。聞き覚えのある荒々しい声だった。
「態度に気をつけなさい龍園君。その質問にはポイントは毎月振り込まれるとしか言えません」
「ふっ、そうかよ」
坂上先生の曖昧な回答に彼は笑った。
これだ。これぞ龍園翔。俺も手を上げる。
「どうぞ、蒼空野君」
「先生、入学前に希望の進路に行けると聞きましたが、それはこの学校の生徒全員が対象ですか?」
「その質問には答えられません」
俺の言葉に坂上先生の口元が笑った。坂上先生の言葉にクラスメイトも少しざわついた。あまりにも曖昧な回答だった。俺は続けてもう一つ質問する。
「先生、この学校は退学者が多いですか?それに退学者が多いクラスは毎年どのクラスですか?」
「その質問には答えられません」
「…ありがとうございます」
ザワッと周囲の空気が変わる。退学と言う言葉は気を引き締めるのに効果的だった。
「質問は以上かな?では入学式に間に合わせるように」
坂上先生はそう言って去って行った。
クラスは落ち着かない空気だった。
「皆、さっきの質問は俺がこの学校の仕組みを聞いた俺個人の感想だ。だから今はあまり気にしないでくれ」
取り敢えず俺は声を掛けておく。「何だよ〜」「ビビらせやがって」とクラスメイトは安堵の息を漏らす。後ろから俺の机に近づいて来る足音
「よう」
振り返ると1人の男子生徒が立っていた。
俺を興味の籠もった視線で見ていた。
「お前は…確か龍園で合ってるよな」
「くくくっ…、龍園翔だ。覚えておけ」
「蒼空野陽斗だ」
互いに自己紹介をする。
「早速だが、テメエは何処まで気付いてやがる」
龍園は品定めするような視線で俺を見てきた。俺はバクバク鳴る心臓を抑えて返答する。
「先生はこの学校ではクラス替えが無いと言った。そして龍園が質問した来月からのポイントについて回答しなかった。つまりポイントは授業態度や遅刻・欠席によりクラス単位で変動する。そしてこの学校は退学者が多い。一定のラインを越えられなかった者は即退学になると見て良いだろう」
「くくくっ…凄えな、気に入った。蒼空野、お前俺の部下になれ」
ポイントに関する推理(原作知識の披露)をしたら突然俺の下に付けと言われた。
余程自信があるようだ。
「…分かった。俺はお前の下につく。その代わり、俺の仲間には手を出すな」
「くくくっ…、良いだろう。あの女か?」
波瑠加の方を見てそう言った。多分俺達の方を見ているから気づかれたのだろう。
「そうだ」
「そうか、なら分かってるな?お前には2人分以上働いて貰う」
「…言われなくてもそうするつもりだ」
俺は龍園から連絡先を貰った。龍園はそれだけすると自席に戻った。
「ねえ、陽斗。さっきの質問何?それにあの人何だったの?」
波瑠加が俺の席に来た。彼女は俺が坂上先生にした質問が気になるようだ。
「後で説明する。あいつ、龍園は俺の質問を確認しに来ただけらしい。取り敢えず今日は学校を巡ろう」
「うん、そうだね」
それから入学式が終わり、放課後になると波瑠加を連れて俺は学校のあらゆる所を回った。上級生の各クラスの机の数や、山菜定食を利用している人へのクラスの聞き込み、コンビニやスーパーの無料コーナー、更には特別棟の監視カメラの有無も調べる事が出来た。
夜、俺はそれを全てメールで龍園に送る。
『やるじゃねえか』と一言帰って来た。
それを確認すると俺は電気屋で買ったノートパソコンを開いた。アプリを作成すると複数の音声を作った。
俺がセリフを言うと自動で他の音声に切り替えられるアプリだ。
俺はとある台本を作り、その音声を流して録音し、それを龍園に送った。
『テメエ、初日からやってんな』と帰って来た。今日はノルマ達成だろう。
「陽斗、出来たよ」
キッチンの方を見ると波瑠加が料理を終えた頃だった。半年でよくここまで完成度の高い調理が出来るようになった物だと感心しながら彼女の料理を頂くのだった。
うん、幸せ過ぎる。
と言うわけで、Cクラスでのスタートとなりました。
主人公に色んな物を押し付けられた龍園はどうするのか