ようこそ理系女子と行く教室へ   作:絶対零度

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テストが終わりました。





嵐が過ぎ去って

 

 

 

「「「乾ぱ〜い!!」」」

 

 

3人でグラスをぶつける。祝勝会みたいだ。

 

寮の1室。というか俺の部屋だった。テストが終わった日、クラスでの打ち上げが終わった後、波瑠加が櫛田を呼んで俺の部屋に連れ込んだのだ。

 

 

「無事に乗り切ったな」

 

「うん、作戦も大成功だったしね」

 

「ふふっ、そっちは上手くいったみたいだねっ、うちは災難だったよ?」

 

 

櫛田が困ったように笑う。Dクラスの様子は既に知っていた。

今日の朝、Bクラスでもテストの結果が張り出された。下の方を見たが、皆何とか赤点を回避していた。これなら次のテストも大丈夫だろう。平均点でもCクラスとDクラスの両方に勝つことが出来た。最高の結果だった。

 

 

「それにしてもDクラスの点数ヤバかったんだね、平均点30点以下が2つもあったんでしょ〜」

 

「あははははっ、皆、過去問を当てにしてたから。本番で焦ってたよ」

 

「やっぱりそういう人達なんだ〜、本当いい気味っ、人の事下に見てるからドドーンて落ちるんだよ〜、

ああ最高っ、でもキョーちゃんは大丈夫だったんでしょ?」

 

「ふふっ、私は平気だよ。蒼空野君が教えてくれたから」

 

「櫛田なら俺が何も言わなくても高得点に変わりないだろ。過去問があったところでサボるようには見えない」

 

「確かに。けどさ〜、キョーちゃん、Dクラスの綾小路だっけ?そいつに過去問配るように言われたんだってよ。本当っゲスいよね〜。私達を二重の意味で陥れようとしたんだから、そのままDクラスの奴らに潰されて欲しいよ〜」

 

 

綾小路に対する波瑠加の評価が凄い事になってる。

 

櫛田に会って何日か経った日に彼女を呼び出した日に櫛田に忠告した事を思い出す。

 

 

『今回の中間試験は例年の物とは違う。過去問は参考程度にしか役に立たない。小テストだけは例年と同じみたいだが騙されるな』

 

『教師が話しているのを偶然聞いたんだ。今年は生徒の実力を正確に測るって言ってた。だから奇策は通用しない。もしクラスの誰かに過去問を配るように言われたら断ってくれ。絶対にその役を引き受けるな。絶対だぞ』

 

『櫛田がその事でクラスに責められるのは俺としても気の毒だからな。過去問を配る役は嫌いな奴にでも押し付けると良い』

 

『波瑠加の友達の櫛田に俺から頼みが1つあるんだが、〜〜の噂をDクラスに流してくれないか?』

 

 

櫛田は疑心暗鬼の様子だったが、噂の対価として俺のプライベートポイントを少し押し付けると、取り敢えず俺の言う事を聞いてくれた。折角のDクラスの情報を流す可能性があるスパイ候補だ。彼女の立ち位置は護らなければならない。

 

彼女にはCクラスがBクラスを攻撃したがってると言う噂をDクラスに流して貰った。それを綾小路の耳に届くようにして貰い、その事があって無事今回彼の動きを予測出来たのだ。

 

櫛田から聞いた話だとDクラスでは本来なら退学者が9人出たらしい。それで綾小路が責められていたが、彼は教室を出て行った。少し経って堀北が様子を見に彼の後を追ったようだ。彼彼女が戻ってきた時、退学者の内何人かの退学が取り消されたと言っていた。皆信じられないと言った顔で2人を質問攻めにしたが2人は口を割らなかった。

 

 

「何人かが退学にならなかったって聞いて皆驚いてたよ。それで、須藤君達がなんで自分達は退学のまま何だって綾小路君に詰め寄ってね」

 

「それで授業中もDクラスから声が聞こえたんだ〜。本当っ、面白いよ〜。ずっとやってて良いのに」

 

 

波瑠加はすっかりご機嫌な様子。話してる櫛田も表面上は普通にしてるが、内心では大笑いしているだろう。

 

退学が取り消された者たちは綾小路にその理由を聞き出そうとしたが、彼は茶柱先生に頼み込んだけど受け付けられなかったとの一点張りだった。

 

ホームルームが終わった後、俺と龍園はDクラスの教室をチラリと覗いたが、須藤の点数はぱっと見、不足分は全教科で50点を超えていた。原作通り1点10万での購入ならば、綾小路と堀北のプライベートポイントだけでは彼の点数を買うことは当然不可能であり、一番点数がマシな女子生徒の点数を購入するのも無理だった。

 

ついでに他の人達の点数も見たがどう見ても1点や2点の不足ではなかった。今回恐らく点数を購入されて助かってる彼女達も恐らく10点前後足りてない。にも関わらず須藤と池、山内以外の退学候補者は全員助かっていた。

 

となると恐らく綾小路にポイントを貸した生徒が存在する。それも数百万単位のポイントをだ。

 

この時期に彼にそれだけのポイントを貸与するであろう人物を俺は一人しか知らない。

 

堀北学だ。

 

あの生徒会長は綾小路の実力を認めており、彼に妹のクラスを上に上げる可能性を見出している。彼なら自分のプライベートポイントを綾小路に貸与、或いは譲渡する可能性は十分にある。

 

それだけでは無い。

恐らく茶柱先生は購入のポイントを減額した。本来なら過去問は中間テストを乗り切る攻略法として正解だった筈だった。しかし今回は予想外のテスト内容の変更によりそれが出来ないばかりか、茶柱先生が意図的にテスト範囲の変更を遅らせたせいで勉強出来る物も出来なくなってしまった。

 

学校にも報告が必要な為、足りない分は自分のポケットマネーで支払う可能性が高い。そう考えると何方にせよ全員救う事は不可能だったかも知れない。

 

退学者の選別をさせられた綾小路は能力基準か、数的有利不利のどちらを選択するか迫られて、彼は後者を選んだようだ。この方法で6人が救われた。

もし仮に身体能力が高い須藤を残した場合、彼の膨大な不足分の点数が綾小路が保有するプライベートポイントを圧迫し、生き残れる生徒は9人の内、3人以下になってたかもしれない。そう考えると能力基準を捨てた事は理に叶っているようにも思えた。このやり方なら例え教室で説明をするとなっても、点数がマシだった人達は見逃されたと皆に思わせる事も出来る。

 

因みに退学者を6人も救った綾小路だが、彼のクラスでの立ち位置は悪いままだった。元々綾小路が過去問を持ってこなければここまで悲惨な事にはならなかったとDクラスの大半は思っている様子。

 

何がともあれ、これでDクラスに大ダメージを与える事が出来てしまったようだ。龍園も大満足だろう。

 

 

「にしても、Cクラスのリーダー凄かったね。なんて言うかオーラが違ったよ」

 

「一之瀬さんだね。とっても良い人だよっ、私も仲良くなりたくて友達になったんだ」

 

 

波瑠加の言う通りだった。

 

 

 

今日の昼、BクラスにCクラスのメンバーが勢揃いで来た。突然の事にBクラスは硬直していた。テストでCクラスに勝ったとは言え、彼らの方が格上だと言う認識は取れてないようだ。

 

 

『ここがBクラスだねっ、ちょっと良いかな〜』

 

 

本来なら格上のクラスの登場にたじろぐBクラスの面々に断りを入れて、真っ先に入って来て教壇に立ったのはリーダーである一之瀬。その姿にBクラスは全員目を奪われた。

 

 

『急にごめんね〜、今日はBクラスの皆に言わなきゃいけない事があるんだ』

 

『ああ?Cクラスが俺達Bクラスに何のようだ』

 

 

龍園の荒い応対にも一之瀬は気にする様子は無い。堂々とした様子で教壇からBクラスを見やる。

 

 

そして…

 

 

Bクラス全員の前で頭を下げた。

 

 

『え…』

 

 

Bクラスはその光景に呆気にとられた。

 

 

『今までごめんなさい。もう私達のクラスは卑怯な手を使いません』

 

 

同時にCクラス全員が頭を下げた。あまりの光景にBクラスはそれを見て困惑し、オドオドとしていた。皆どう反応して良いか分からない様子だった。

 

 

『ちっ、お前等、何か言い返さないのか』

 

『え、あっ、その、俺達は大丈夫っす…な、なあっ、皆』

 

『あ、はい』

 

『う、うん…』

 

 

龍園と石崎の声に何人かが反応しただけで、皆、一之瀬のオーラに気圧されて言葉が出てこなかった。

 

一之瀬が顔を上げる。

 

 

『そっか、なら今回の事はこれで終わりで良いかな?次からは正々堂々と勝負しに行くねっ』

 

『ちっ、さっさと消えろ。次、俺達に何かしたら必ずテメエらを消し飛ばしてやる』

 

『あははははっ、言うね〜。でも私達は強いよ、次からが本番だよっ、手加減は出来ないから覚悟しておいてねっ』

 

 

龍園の言葉に笑いながら一之瀬はクラスメイトを引き連れて去って行った。

 

残されたBクラスは自分達のライバルクラスのリーダーの貫禄に圧倒された様子だった。『おい、あのリーダーヤバくないか?』『ああ、正にリーダーって感じだ…』とクラスのあちこちで聞こえてくる。原作と違って龍園があまり暴力を使わなかった事が響いて来ているようだ。

 

龍園はそんなクラスメイトを制して、今回頑張った全員を褒め、今日は祝勝会をやるとだけ言ってこの場を収めた。

 

 

 

 

「本当っ、Cクラスのリーダーにはまいったよ〜。

あんなんだけど、きっと内心はどす黒いんじゃない?」

 

「ええっ?駄目だよそんな事言っちゃ〜」

 

 

…波瑠加さん…眼の前の奴がそうです。

一応フォローしておくか。

 

 

「…本当に波瑠加の言う通りだとして、それでもしも彼女みたいな人が味方だったら心強いが、如何せん敵だからな。うちのクラスにもそんな人がいてくれたら助かるんだがな」

 

「確かに…、味方だったらピンチになった色んな時に助けてくれそう」

 

「普段は良い顔して、ここぞという時に悪い本性を出して戦ってくれる人は中々いないからな。本気で一之瀬がそういう奴ならCクラスが羨ましいくらいだ」

 

「え、えっと…2人共そう思うの?」

 

 

櫛田が俺達を交互に見る。俺は頷いた。

 

 

「ああ、もしそんな人が味方だったら、只の善人よも何倍も安心すると思う」

 

「私もそう思うよ。あっ、キョーちゃんを責めてる訳じゃないんだよ?良い子なら良い子のままでいて良いからね?」

 

「…だがもし、クラスの事で少しでもストレス抱えてるなら俺達で良ければ何時でも喜んで聞く」

 

「あっ、それ良いねっ、キョーちゃんなんか無いの?男子がキモいとか、あの女子がウザいとか、何でも言って良いよ」

 

「……」

 

 

困惑した様子の櫛田。まさか自分の素の面が一部とは言え、肯定されると思わなかったのだろう。少し俯いてしまった。

 

 

「…私にも嫌いな人いるよ」

 

「本当っ、言ってみ、悪口なら付き合ってあげるから」

 

「…堀北さん…」

 

「う〜ん、誰だっけ?分からないや」

 

「綾小路って奴と一緒にいる女子だな。確かに人の事見下してそうな感じだ」

 

「…うん、そうだよ…」

 

「そうなんだっ、でもその人今回クラスに過去問ばら撒いたんでしょ?今綾小路と一緒に責められてるんじゃない?じゃあいい気味でしょ?ざまあ無いよ」

 

「そいつがクラスから責められてるうちに楽しんどけ、中々見られないぞ」

 

「……」

 

 

櫛田は少し俯いてる。あっ、少し口元が笑ってる。悪い笑みじゃなくて自然と出ている感じだ。

 

 

 

「それで?他にもいないの?嫌いな人。あっ、堀北の悪口でも良いよ」

 

「うん…、軽井沢さん知ってるかな?」

 

「平田って人の彼女(笑)だっけ?正直全然釣り合ってないよね。何で付き合ったんだろ」

 

「うん、それでね、今日もポイント使い切ったからってプライベートポイント少し渡したの。そしたら幾ら持ってるの?って携帯見られそうになって…」

 

「うわっカツアゲする気満々じゃん。何なのそいつ」

 

 

少しだけ本音を漏らす櫛田に波瑠加が同調する。櫛田も心なしか少し楽しそうだった。

 

 

俺はそれを見ながら今回の一連の流れを頭の中で整理する。

 

…今回確かに俺は綾小路の出鼻を挫いた。過去問対策はバッチリだったし、奴の動きを読むことが出来た。だが奴もこのままでは終わる気は無いだろう。必ず報復してくる筈だ。俺はそれにも対処しなければならない。

 

 

原作と違う展開になったが俺のやる事は変わらない。全力でBクラスを支えて他クラスと戦うだけだ。

 

 

「あはははっ、波瑠加ちゃん、ちょっと酷すぎ〜」

 

「ええ〜、そうでもないって〜」

 

 

Dクラスは確かに原作より弱体化したかも知れない。だが俺は決して容赦はしない。そうでないと簡単に足元を掬われるだろう。

談笑する2人を見て俺は心の火が再び燃え上がったのを感じた。次も俺が勝つ。

 

そう決意しながら俺は楽しそうな2人の話しに入っていくのだった。

 

 

 

 







今回は色んな事態が想定出来たのでどんな展開にしようか迷いました。

ざっくりとした内容ですが、分かりにくいかな?
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