三人は米を求め、草の根を分けてユウスケの荷物を探していた。
風が木々を揺らし、鳥の声が時折響く。夕陽は森の奥に沈みかけている。
「ユウスケどの。これですか?」
与一の声にユウスケが駆け寄る。
そこには、焦げた岩肌のそばに散乱した荷物。
バックパック、転倒した原付、スマホ。
雷の爪痕のような焦げ跡が、そこかしこに残っていた。
「おおっ! 荷物が全部ある! 米も……ありますねぇ!」
ユウスケの声が弾む。
与一も笑みを浮かべ、袋の中の米粒を覗き込む。
「おぉぉ“米”ですか。久しぶりに見ました。敬わないと。」
しかし、信長だけは腕を組み、じっと沈黙していた。
「……」
与一が首をかしげる。
「一番米を食べたがっていたのに、どうしたんですかノブ?」
信長は静かに指をさした。
「いや、嬉しいぞ。だがな……未来の道具が気になってな。その布の持ち手があるのは荷物として分かるが……そこにある“からくり”は何ぞを」
指の先には、転がる原付バイク。
夕陽を受けて、金属のフレームが赤く光る。
「原付ですか? 未来の移動手段です。戦国時代的に言うと、馬よりは機動力が下で……まあ、“一人で乗る荷車”みたいなもんですかね」
与一が目を丸くする。
「へぇ……これが未来の乗り物。馬ではない……私には見当もつきません」
信長が顎をさする。
「見たところ損傷しておるが、動くのか?」
ユウスケは原付を起こし、傷を確認する。
「凹んでるだけですね。ガソリンは……まだ残ってる。HONDAのエンジンを信じましょう」
彼がキーを回すと、
キュルキュル……ブオオオンッ!
エンジンがうなりを上げた。
「おお、ついた……まだ動くのか。こう、またがってですね——」
ユウスケは原付に跨り、軽くその場を一周する。
「おい、後ろに乗せろ!」
信長がニヤリと笑う。
「法律で一人乗りなんですけど」
「うっせぇ、ここは日本じゃねぇ!」
信長はずかずかと後ろにまたがる。
「僕も!」
与一までが軽やかに飛び乗った。
「三人はさすがに定員オーバーですよ……!」
「詰めてくださいよ。私も乗りたいです!」
「よし、出陣じゃあ!」
信長の豪快な声が森に響いた。
仕方なく、ユウスケは原付を走らせた。
だが三人乗りではバランスが危うく、慎重に進むしかない。
「おい! もっとスピード出せんのか!」
「うるさいっ! 一人用なんです!」
「そこを回せば動くんだろ!」
信長が身を乗り出し、アクセルを強引に捻る。
「やめ——っ!」
ブオオオオオオッ!!!
原付は悲鳴のような音を上げ、三人まとめて吹き飛んだ。
ドンッ! 草むらに転がる三人。
「バカッ!! 信長のバカッ!!」
ユウスケが怒鳴る。
「全力でアクセル回す奴がどこにいますか!」
信長はゲラゲラと笑いながら立ち上がった。
「ユウスケ、お前は歩け。運転の仕方はもう見て覚えた。荷物は持ってやるから、走ってこい、ばーか!」
「なに言ってるんですか!? おい、待て信長!!」
信長はアクセルを回し、
原付は再び唸りを上げて廃城の方へ走り去った。
与一は小さく息を吐き、苦笑した。
「……ノブどのは、こういう方なんですよ。お付き合いして数か月になりますが、いつもああでして」
ユウスケは額を押さえ、ため息をつく。
「数か月でよく我慢できましたね……」
「慣れたというより、諦めですね」
与一は柔らかく笑い、森の奥を見つめた。
「でも、不思議と退屈はしません」
ユウスケは少しだけ笑みを返す。
「……わかります。それだけは、すごく」